書籍紹介
大学のハラスメント相談室 ― ハラスメントと向き合うすべての人へ
(北海道大学出版会 櫻井義秀・上田絵理・木村純一・佐藤直弘・柿﨑真実子 著)
日本労働弁護団北海道ブロック 弁護士 上田絵理
大学などの研究機関にて行われるハラスメントはアカデミック・ハラスメントと呼称されます。アカデミック・ハラスメントは各大学で多数発生しています。そのため大学にてハラスメント規定を設けたり、ハラスメント相談室を設け対応されているところはいくつもありますが、私は北海道大学にてハラスメント相談室の専門相談員の一人としてかかわらせていただいています。
ただ、ハラスメント相談室といっても、ハラスメント被害に遭遇した際にどういったことをしてもらえるのか見えにくいかと思います。ハラスメント相談室での業務の内容を知っていただくことは、被害にあった方のアクセスのしやすさにつながりえます。また、相談室の業務やアカデミック・ハラスメントに関する裁判例等を通じてアカデミック・ハラスメント等の実態を知っていただくことは、加害を予防することにもつながります。また、管理者にとっても対応方法を知っていただくことにもつながりうるものかと思います。
そういった観点から以下のような内容を盛り込んで書かれたのがこの書籍です。
第一章ではアカデミック・ハラスメントの定義や判断基準、ハラスメントをどのように認識し対応したら良いのかについて概説を行っています。
第二章においては国内外の実態調査を踏まえた先行研究をレビューしながら、ハラスメントの類型と態様を記載しています。
第三章で模擬事例を示しつつ、ハラスメント相談室の実際の機能について紹介し、相談と調整の一般的なやり方等について説明しています。
第四章では、ハラスメント事案の裁判例をもとにセクシャル・ハラスメント、アカデミック・ハラスメントがどのように認定され、教職員に対する懲戒の量定がきまるのかといったことについて解説しました。
第五章は、北海道大学におけるハラスメント対応の略史等が記載されています。
アカデミック・ハラスメントで悩まれている方はもちろん、大学にて相談室を設けることを検討されている方、それ以外にもアカデミック・ハラスメントとその相談業務等についてお知りになりたい方など広く手に取ってお読みいただければありがたいです。