川村雅則「自治体議員との学習会、総務省調査データの取りまとめ──2024年上半期・北海道の取り組み」

NPO法人官製ワーキングプア研究会が発行する『レポート』第46号(2024年7月に発行予定)に掲載予定の原稿です。これからの校正で加筆修正を行うかもしれません。ご了承のうえお読みください。(2024年6月19日記)  →『レポート』が発行されました(2024年7月21日)

 

川村雅則「自治体議員との学習会、総務省調査データの取りまとめ──2024年上半期・北海道の取り組み」『NPO官製ワーキングプア研究会レポート』第46号(2024年7月号)pp.2-4

 

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自治体議員との学習会、総務省調査データの取りまとめ──2024年上半期・北海道の取り組み

 

川村雅則(北海学園大学)

 

Ⅰ.はじめに

ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を会計年度任用職員の世界に実現する、という目的で、この間、取り組みを進め、共同で管理・運営する情報サイト「北海道労働情報NAVI」(以下、NAVI)に雑文を書き散らかしてきました。各地の取り組みに役立てていただければ、という思いで要点を本稿ではまとめます。詳細は元の原稿を参照してください。

なお、(1)紙幅の都合でURLは割愛しています。NAVIに転載した本稿ではURLをつけていますのでご活用ください。(2)筆者の問題意識を整理した「非正規公務員が安⼼して働き続けられる職場・仕事の実現に向けて」『KOKKO』第55号(2024年5月号)pp.27-43も参考になさってください。

 

Ⅱ.会計年度任用職員の公募・離職問題を中心に自治体議員と学習会を開催

1)自治体議員とともに

【元原稿】川村雅則「議員の力で、ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現を(1)~(3)」『NAVI』2024年5月25日~27日配信 ※3回に分けて配信

(1) (2) (3)

 

2024年5月24日(金)14時~、私の職場である北海学園大学を会場にし、オンラインも併用して、現職の自治体議員による学習会を開催しました。主催は、「公務非正規問題 自治体議員ネット(仮)準備会」で、オンライン参加を含め参加者は計16名でした。

自治体も会派もこえて──学習会・オンライン上のようす(2024年5月24日)

 

もう何年も前に、公務非正規問題に関する学習会を自治体議員と開催し、SNSでゆるやかな情報交換を続けてきたのですが、会計年度任用職員制度が始まってはや4年が経過。今年度末には5年公募が発動されます。より多くの議員に参加を呼びかけて、この問題に一緒に取り組んでいく必要があるのではないか──そんな思いが中心メンバーで共有され、今回の学習会の開催に至りました。

非正規問題への取り組みが労働組合に提起されていながら、率直に申し上げて、単組のレベルにおいては、十分に取り組み切れていないのが実態と思われるなかで、会計年度任用職員など公共サービスの担い手の直面する問題を、行政監視機能を役割とする議員がチェックをして、その是正を求めていく。全国津々浦々の議場で、「不安定な雇用をなくしましょう、公正な賃金・処遇を実現しましょう」という声が──全国で3万人を超える自治体議員の声が──響き渡れば、どれだけ大きな力になるでしょうか。もちろん、団交会場ででもそのような声が響き渡ることを願っている私としては、期待しているのは議員と労働組合の共同です。

 

表Ⅱ-1 北海道及び全国の自治体議会議員数

出所:総務省「地方公共団体の議会の議員及び長の所属党派別人員調(2023年12月31日)」より作成。

 

もっとも、この間も言及していますが、首長や議員のジェンダーバランスや年齢バランスの著しい偏り(例えば表Ⅱ-1は自治体議員の男女別人数)という現状をふまえると、これらの地方政治の世界においても、女性の就労に対する考えや女性向きと社会でみなされている職業に対する認識をあらためていくこと──会計年度任用職員の多くは女性ですから──が課題になるであろうことは申し上げておきます。

 

2)公募制の廃止に向けて

学習会では、会計年度任用職員の公募問題に力を入れました。現在働いている職員を一定期間ごとに公募にかけることがいかに当事者の不安を惹起し、働く者の尊厳を傷つけるものであるか。しかも、人が足りない、人が集まらないというなかで、労力をかけて公募や選考を行うことは、経済性や効率性の観点からも果たして有効なのか。公募や選考の実態を明らかにするという課題も含めて問題提起しました。

 

図Ⅱ-1 公募は自治体の判断でなくすことができる

注1:公務におけるaの墨塗箇所は、条件付採用期間(試用期間)。bの点線は勤務実績に基づく能力実証が認められた箇所。cの実線は、公募制による能力実証が必要とされる箇所。
注2:上段は総務省の助言に従った場合の基本パターン、下段は公募を廃止したパターン。
出所:筆者作成。

 

一方で、全国では8割超の自治体が導入しているこの公募制は、自治体の判断でやめることも可能です(図Ⅱ-1)。そのことを参加者で確認しました。

元原稿に書いていないことで3点を補足します。

第一は、問題を正確に理解することの重要性です。会計年度任用職員の制度設計は、会計年度ごとの任用、一定期間ごとの公募など、有期雇用の濫用を制度化したようなものであって、不安定雇用になるのは必然です。民間の非正規制度(無期転換制度を含む)と比べながらその問題性を正確に理解しました。と同時に、総務省は、公募を義務づけてはいないことを総務省マニュアルから確認をしました。

第二に、関連して、高い心理的安全性が確保されたなかでの集団での学習会の重要性です。複雑な会計年度任用職員制度問題について、素朴な疑問をお互いに出し合いながら学ぶことが、議会での質問を強化する上で大事だと思いました。

第三は、総務省からの照会に対して自分のマチはどう回答しているか、を確認することです。自分のマチが総務省にどう回答したのかを議員など関係者が確認されていないケースが意外に少なくないという印象をもっています(この点は、Ⅲでもふれます)。

 

3)自分で調べてみないとわからないこともある

前項の三つ目の提起に関連して、次のような事実をご紹介しておきます。

今回の学習会の幹事役の一人で当会の会員でもある石狩市議会議員のくましろちかこさんが、ご自身のマチの5年公募の廃止に向けて何か役立つ情報を得ようと、公募を実施していない(一部職種での未実施を含む)という道内の自治体に電話による照会を行いました。

そうしましたところ、一部職種での公募未実施という事実をあまりオープンにして欲しくないとある自治体から言われたとのことでした。きっと、全ての職種の公募廃止にはつなげたくないのでしょう。これはとくに驚くべきことではなく、人手不足から一部の職種だけに限定して公募を実施しないケースは私も見聞きしています(ずいぶんと身勝手だとは思いますが、ここではこれ以上言及しません)。

問題は、そういう事実──総務省への表向きの回答と実態との乖離──を当該自治体の議員など関係者はご存じなのかどうか、ということです。ぜひ、その回答内容の意味するところまで含めて、総務省調査に自分のマチがどう回答したかの把握をなさってください。

なお、公募をなくそうと活動されている方々にとって、くましろさんの取り組みは示唆に富むと思います。レポートをぜひお読みください(くましろちかこ「『公募』をなくそう!~会計年度任用職員に関する議会質問の取り組み~」『NAVI』2024年6月7日配信)。

 

Ⅲ.会計年度任用職員の給与等調査にみる問題──総務省調査の北海道分データの取りまとめから

【元原稿】川村雅則「会計年度任用職員の給与等(勤勉手当・給与改定・最低賃金)に関する総務省調査(2023年12月)の北海道及び道内市町村データの集計結果(中間報告)」『NAVI』2024年5月31日配信

 

総務省が2023年12月に実施した「会計年度任用職員の給与等調査」をご存じでしょうか。勤勉手当関係、給与改定関係、最低賃金関係といった三つの柱で構成されています。

北海道と札幌市のデータは、当該自治体から得られたのですが、その他の市と町村については、いつもであれば、情報公開制度を使って北海道(市町村課)から個別データが一括で得られるところ、今回は、集計した結果の提供となりました(理由は元原稿をご参照ください)。以下、結果のいくつかを紹介します。

 

1)勤勉手当は支給されるのか──勤勉手当関係

表Ⅲ-1 勤勉手当を支給するか、常勤職員と同じ月数か

 

例えば、会計年度任用職員に2024年度から勤勉手当を支給するか、という問いに対しては(表Ⅲ-1の(a))、「北海道」と「札幌市」は「支給する」でしたが、「市群」では34件中2件が、「町村群」では144件中25件が、それぞれ「支給しない」と回答していました。

また、支給月数が常勤職員と同じかを尋ねた設問に対しては(同表(b))、「市群」では、32件中7件(21.9%)が、「町村群」では、無回答の5件を除く114件中31件(27.2%)が、「常勤職員と異なる月数」でした。

なお、表は省略しますが、「支給する」と回答したなかで、1.0か月未満の回答は、「市群」で7件、「町村群」で14件でした。

どのような理由で差をつけたのか、その理由は果たして合理的といえるのかを明らかにする必要があります。

 

2)給与は4月に遡って改定されるのか──給与改定関係

公務員の賃金制度は民間とは異なります。人事委員会が置かれている団体の地方公務員の場合、国の人事院勧告の内容や民間の賃金水準の動向に基づき人事委員会による勧告が行われ、給与改定方針が決定され、給与条例改正案が議会に提出され、改正案の成立後公布施行という手順となります(総務省「地方公務員の給与の体系と給与決定の仕組み」より)。その分だけ給与改定の実施時期が遅れますが、改定は、4月に遡って行われています。2023年には、給与勧告制度で増額改定が勧告されましたが、会計年度任用職員についてはどうでしょうか。

 

表Ⅲ-2 2023年4月に遡及して給与改定を行うか

 

結果は(表Ⅲ-2)、「北海道」は「実施する」で、「札幌市」は「実施しない」です。

「市群」では、34件中8件(23.5%)が、「町村群」では、144件中56件(38.9%)が「実施しない」と回答しています。なぜでしょうか。

表は省略しますが、実施しない理由は、7つの選択肢(複数回答可)から選択されています。「任用時に労働条件を既に示しており、年度途中での契約変更が困難であるため」、「システムが未対応であるため」、「条例等で給与改定の適用時期を定めているため」などが理由として数多くあがっていますが、妥当でしょうか。

なお、総務省では、2023年5月2日の段階で、「常勤職員の給与改定が行われた場合における会計年度任用職員の給与に係る取扱いについて」という通知を出し、「改定の実施時期を含め、当該常勤職員の給与の改定に係る取扱いに準じて改定することを基本とするよう」自治体にお願いをしているほか、同年12月27日にも、「会計年度任用職員制度の適正な運用等について」通知を出して、同様のことを依頼しています。

 

3)給料・報酬は最賃を下回っていないか──最低賃金関係

最後に、給料・報酬単価が最低賃金を下回る会計年度任用職員の有無を尋ねた結果です。

公務員には最低賃金法が適用されません(但し、技能労務職員、企業職員は除く)。但しそれは、最低賃金を上回る賃金の支給が本来は予定されているからであって、最賃割れを容認するのが法の趣旨ではありません。2022年12月23日に総務省から出された「会計年度任用職員制度の適正な運用等について(通知)」でも、「適切な給与設定」においては、「地域の実情等を踏まえ、適切に決定する必要があること。その際、地域の実情等には、最低賃金が含まれることに留意すること。」が明記されています。

表は省略しますが、「市群」では34件中4件で、「町村群」では144件中12件で、給料・報酬単価が最低賃金を下回る会計年度任用職員が「有」と回答しています。しかも、そのうち「市群」では3件で、「町村群」では4件で、技能労務職員・企業職員でも「有」と回答しています。

 

4)調査結果をふまえて

第一に、総務省調査への回答を含め、自らのマチの会計年度任用職員制度と運用の状況をつぶさにお調べください。

第二に、正職と非正規とのあいだに格差が設けられているとすれば、その格差は合理的なものかを検証してください。

民間では、パートタイム労働法と労働契約法第20条が統合されたパートタイム・有期雇用労働法が2020年4月1日から施行されています。一つ一つの格差についての説明を使用者に義務づけた民間の労働政策の動向を意識しながら、格差の検証をなさってください。

補足すると、(問題是正のための)通知が国からも出されているから、というのは確かに一つのよりどころにはなるのですが、その国は、会計年度任用職員の制度設計にあたり、正職員(常勤職員)と会計年度任用職員とのあいだに、あるいは、フルタイム型の会計年度任用職員とパートタイム型の会計年度任用職員とのあいだに、数々の格差を容認してきました。それらも含めてあらためて検証をしていきましょう。民間非正規の格差是正、公正賃金を求める運動との合流が期待されます。

 

Ⅳ.足下・地方から始めよう

公務員数の削減に象徴されるように、長年にわたる新自由主義改革・構造改革政治によって、公共サービスが毀損されてきました。

その立て直しを図ろうとする動きが地方から始まっています。こうした動きは国内にとどまるものではなく、公共サービスの再公営化、ミュニシパリズム(地域主権主義、住民参加による地域民主主義)という世界的な潮流でもあります。会計年度任用職員問題をはじめ公共サービスの担い手問題に取り組むことは、その大事な柱ではないでしょうか。

仲間づくりを含めて取り組みを力強く進めていきましょう。

 

 

 

(関連記事)

くましろちかこ「『公募』をなくそう!~会計年度任用職員に関する議会質問の取り組み~」『NAVI』2024年6月7日配信

瀬山紀子「安定した雇用と見合う賃金を求めて~公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)3年間の活動から~」『日本の進路』2024年5月号掲載

 

川村雅則「議員の力で、ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現を(1)」『NAVI』2024年5月25日配信

川村雅則「議員の力で、ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現を(2)」『NAVI』2024年5月26日配信

川村雅則「議員の力で、ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現を(3)」『NAVI』2024年5月27日配信

川村雅則「会計年度任用職員の給与等(勤勉手当・給与改定・最低賃金)に関する総務省調査(2023年12月)の北海道及び道内市町村データの集計結果(中間報告)」『NAVI』2024年5月31日配信

川村雅則「⾮正規公務員が安⼼して働き続けられる職場・仕事の実現に向けて」『KOKKO』第55号(2024年5月号)pp.27-43

川村雅則「大量離職通知制度に関する北海道労働局への質問とご回答」『NAVI』2024年6月15日配信

 

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