川村雅則「議員の力で、ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現を(2)」

川村雅則「議員の力で、ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現を(2)」『NAVI』2024年5月26日配信

 

2024年5月24日に緊急開催した、自治体議員を対象にした学習会「初めて取り組む「会計年度任用職員問題」」での筆者による報告をまとめたもので、川村雅則「議員の力で、ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現を(1)」の続きです。どうぞお読みください。

【加筆修正】

・道内144町村の、職種別にみた再度任用時の公募の実施状況を参考資料として追加しました(2024年5月30日記)

 

学習会・対面会場のようす(2024年5月24日)

 

 

■公募は自治体の判断でなくすことが可能

後半に入ります。

本日の報告は、雇用面に焦点をあてています。前半では、民間の非正規雇用制度、あるいは、民間の非正規雇用に関する政策と比べた際の、会計年度任用職員制度の問題点をみてきました。民間の非正規雇用に関する制度・政策を万能と言うつもりは全くありませんが、端的に言えば、その民間と比べてもひどいということです。ご理解いただきたいのは、制度的にそのようになっている、ということです。ですから、総務省の責任において、制度を変えさせなければなりません。

しかしながら、自治体にもできることがあります。

本日強調したいのは、再度任用時における公募は、自治体の判断でなくすことができる、ということです。自治体の判断で制度をよりマシに、いえ、ずいぶんとマシにできるのです。

図をご覧ください。

 

図 再度任用時における公募は自治体の判断でなくすことが可能

出所:筆者作成

 

前半で示した、民間の非正規雇用制度と比べた際の会計年度任用職員制度の図を思い出してください。

その上で、上記の図をご覧ください。公募を示すc(実線)がなくなって、b(点線)に置き換わっています。制度上、1年ごとの雇用である点は残念ながら変えることはできませんが、公募はなくせることを示しています。

どうか、自分が職員の立場になったつもりで考えてください。一定期間ごとに公募にさらされる機会のなくなることが心理的な負担の面からどれだけ意義のあることか。職員の就労意欲の向上や尊厳の確保、という観点からも意義のあることだと私は思います。逆に言えば、いま働いている職員を一定期間ごとに公募にかけるというのは、いかに問題ある行為かと私は考えます[1]

 

 

道内ではどの自治体が公募をなくしているか

さて、では、道内ではどの自治体が公募をなくしているでしょうか。2023総務省調査から作成した次の表をご覧ください。

 

表 北海道及び道内35市の職種における、再度任用時の公募の実施状況

単位:件

合計 合計 合計
北海道 9 0 9 0 留萌市 8 8 0 0 千歳市 9 0 9 0
札幌市 14 0 14 0 苫小牧市 11 8 0 3 滝川市 11 0 0 11
函館市 12 0 12 0 稚内市 10 0 10 0 砂川市 11 0 11 0
小樽市 14 0 0 14 美唄市 11 0 11 0 歌志内市 10 10 0 0
旭川市 13 0 13 0 芦別市 13 0 13 0 深川市 8 0 8 0
室蘭市 11 0 11 0 江別市 13 0 4 9 富良野市 10 0 10 0
釧路市 14 0 14 0 赤平市 11 0 0 11 登別市 11 0 11 0
帯広市 11 0 11 0 紋別市 9 0 9 0 恵庭市 10 0 10 0
北見市 11 0 11 0 士別市 13 3 0 10 伊達市 10 0 0 10
夕張市 8 8 0 0 名寄市 12 0 0 12 北広島市 9 0 9 0
岩見沢市 13 0 13 0 三笠市 12 11 0 1 石狩市 9 0 9 0
網走市 11 0 11 0 根室市 14 0 0 14 北斗市 7 0 7 0

注:①毎回公募を行い再度任用する、②公募を行わない回数等の基準を設けている、③毎回公募を行わず再度任用する。
出所:2023総務省調査より筆者作成。

 

総務省調査に回答した全ての職種(正確には、部門×職種)において、③(「毎回公募を行わず再度任用する」)が選択されているのは、小樽市、赤平市、名寄市、根室市、滝川市、伊達市の6市です。一部(一つ以上の意)の職種において③が選択されているのが苫小牧市、江別市、士別市、三笠市の4市です。

それぞれの自治体において様々な議論、とりわけ労使における議論があったことと思います。

一部の職種に限定して公募を導入しなかった/廃止した自治体については、どういう議論がなされてたどりついた結果なのかによって評価は異なることになるのではないか、と考えています。この点は後でふれます。

なお、第一に、今回の学習会に先立って、公募を行っていない自治体を対象にくましろさんが電話による聞き取りをされています。なんらかのかたちでまとめて「ネット」の共有財にしていただければと思います。

第二に、以下は、労働組合ががんばって公募を導入させなかった根室市のケースで、以前に学習会でお話をしていただいたときの記録です。処遇面の改善を含めここまでのことができるのか、という貴重な実践例として必読文献です。ぜひお読みください。

 

坂本勇治「根室市の会計年度任用職員制度と労働組合の取り組み」『NAVI』2022年11月26日配信

坂本勇治「根室市の会計年度任用職員制度と労働組合の取り組み(2022年度反貧困ネット北海道連続学習会)」

 

公募を導入していない自治体は全国ではどの位か

ところで、公募を導入していない自治体は全国ではどの位あるでしょうか。参考までに拙稿[2]から該当部分(表、文章)を転載しておきます。違和を感じる表現ですが、「公募の実施に関する基準がない団体」の箇所です。

 

表 団体区分別にみた公募の実施状況(公募の実施に関する基準の設定状況)

単位:件、%

回答団体数 いずれかの部門・職種において、公募の実施に関する基準がある団体 公募の実施に関する基準がない団体 (参考)2021年調査における、公募の実施に関する基準がない団体
毎回公募を行い再度任用する部門・職種がある 公募を行わない回数等の基準を設けている部門・職種がある
都道府県 47 47 100.0% 19 40.4% 47 100.0% 0 0.0% 0 0.0%
指定都市 20 19 95.0% 7 35.0% 19 95.0% 1 5.0% 1 5.0%
市区 795 702 88.3% 220 27.7% 520 65.4% 93 11.7% 90 11.3%
町村 926 759 82.0% 441 47.6% 324 35.0% 167 18.0% 134 14.5%
合計 1788 1527 85.4% 687 38.4% 910 50.9% 261 14.6% 225 12.6%
(参考)2021年調査の合計 1788 1563 87.4% 723 40.4% 899 50.3% 225 12.6%

注1:一部事務組合等は除いて計算。
注2:同一自治体で「毎回公募を行い再度任用する部門・職種」と「公募を行わない回答数等の基準を設けている部門・職種」の両方を有するケースもあるため、合計で100%にはならない。
注3:回答団体の数(合計、団体区分別)は、2023年調査も2021年調査も同じ。
出所:2023総務省調査より作成。

 

一部事務組合等を除く自治体での公募の実施状況をみると、「いずれかの部門・職種において、公募の実施に関する基準がある団体」は1788件のうち85.4%で、「公募の実施に関する基準がない団体」は14.6%です。

後者、すなわち公募を実施していないのは、都道府県ではゼロ、指定都市では20件のうち広島市のみ、市区では795件のうち93件(11.7%)、町村では926件のうち167件(18.0%)です。

参考情報として掲載された前回調査(2021年度)の結果と比べると、公募を実施しない自治体が、市区で3件、町村で33件増えています。全体の中ではまだまだ少数派ですが、公募を実施しない自治体が増えています。

〔以上、川村雅則「会計年度任用職員の再度任用における公募は必要なのか」NPO法人官製ワーキングプア研究会が発行する『レポート』第45号(2024年3月号)より〕

こうした全国の動向もふまえて取り組みを進めていただきたいと思います。

 

 

■現場からの批判が総務省を動かした

公募をやめる自治体が出てきていることには、現場からの批判につき動かされて(と私は理解していますが)、総務省の姿勢が変化していることがあげられると思います。この点をご紹介します。

その前に、あらためて何度でも確認したいのは、そもそも公募制の導入は義務ではないということです。ですから、新制度(会計年度任用職員制度)が始まる際に、公募を導入しない自治体もありました。先ほどあげた根室市もそうです。義務と勘違いしている関係者が少なくありませんので、くどいようですが強調しておきます。

その上で、前半でもご紹介した、いわゆる総務省マニュアルの変化から、総務省の姿勢の変化を確認しましょう。

まず、そもそも総務省マニュアル(第2版)では、再度任用時の公募について次のように書かれていました。

 

問6-2 会計年度任用職員について、再度の任用が想定される場合であっても、必ず公募を実施する必要があるか。

○会計年度任用職員の採用に当たっては、任期ごとに客観的な能力実証を行うことが必要である。

○その際、選考においては公募を行うことが法律上必須ではないが、できる限り広く募集を行うことが望ましい。

例えば、国の期間業務職員については、平等取扱いの原則及び成績主義を踏まえ、公募によらず従前の勤務実績に基づく能力の実証により再度の任用を行うことができるのは原則2回までとしている。

その際の能力実証の方法については、面接及び従前の勤務実績に基づき適切に行う必要があるとされている。

○再度の任用については、各地方公共団体において、平等取扱いの原則及び成績主義を踏まえ、地域の実情等に応じつつ、任期ごとに客観的な能力実証を行うよう、適切に対応されたい。

出所:総務省マニュアル(第2版)より(レイアウトの一部を変更=改行している)。

 

これは会計年度任用職員制度が始まる前、2018年10月18日に出されたものです。

あらためて確認をしておくと、国の非正規公務員の場合を紹介しながら、「任期ごとに客観的な能力実証を行うことが必要である。」ことが述べられていますが、しかしながら、公募を行わなければならないとは書かれていません。「地域の実情等に応じつつ」という言葉も入っています。ですから、先ほど申し上げたとおり、この段階から、公募は義務では別にありませんでした。

とはいえ、新しく始まる制度(会計年度任用職員制度)で自治体独自の判断が容易ではなかったこと、加えて、公募によらない再度の任用は「原則2回までとしている。」などと書かれていたら、自治体の側は、このルールに従わなくてはならないのだろうかと思っても仕方がなかったかもしれません。

以上は、好意的に解釈すれば、の話であって、なかには、国がこう言っているのだからまあ従っておこう、ととくに深く考えずに従った自治体もあれば、一定期間ごとに職員の雇用を切ることができる機会を残しておきたいと考え、この総務省の説明(Q&A)を盾にして公募を導入した自治体もあったかもしれません。

いずれにせよ、一部の自治体を除いて、総務省の助言どおりの状況ができてしまいました。

しかしながら、これはおかしい、と当事者や労働組合が批判の声をあげました。議員の皆さんたちのなかにも、議会で批判をされてきた方がおられると思います。報道でも問題が繰り返し取り上げられました。そして、もちろん私たち研究者も、制度の導入前から、民間の無期転換制度と対比させながら、このような制度設計はおかしいと批判をしてきました。

現場からのこうした批判にこたえるかたちで、総務省マニュアル(第2版)の修正版が2022年の年末に出されました。【再度の任用】については、次のような修正と追加が行われていました。転載します。

 

<今回の修正>

問6-2 会計年度任用職員について、再度の任用が想定される場合であっても、必ず公募を実施する必要があるか。

○再度の任用が想定される場合の能力実証及び募集についても、各地方公 共団体において、平等取扱いの原則及び成績主義を踏まえ、地域の実情等に応じつつ、適切に対応されたい。

なお、会計年度任用職員の採用に当たっては、任期ごとに客観的な能力実証を行うことが必要である。

またその際、選考においては公募を行うことが法律上必須ではないが、できる限り広く募集を行うことが望ましい。例えば、国の期間業務職員については、平等取扱いの原則及び成績主義を踏まえ、公募によらず従前の勤務実績に基づく能力の実証により再度の任用を行うことができるのは、同一の者について連続原則2回を限度とするよう努めるものまでとしている。その際の能力実証の方法については、面接及び従前の勤務実績に基づき適切に行う必要があるとされている。

○再度の任用については、各地方公共団体において、平等取扱いの原則及び成績主義を踏まえ、地域の実情等に応じつつ、任期ごとに客観的な能力実証を行うよう、適切に対応されたい。

 

<今回の追加>

問6-6 各地方公共団体においては、問6-2に記載された、公募によらず従前の勤務実績に基づく能力の実証により再度の任用を行うことができるのは原則2回までとする国の取扱いと同じ取扱いをしなければならないか。

○具体の取扱いについては、各地方公共団体において、平等取扱いの原則及び成績主義を踏まえ、地域の実情等に応じつつ、適切に対応されたい

出所:総務省「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル(第2版)の修正等について(令和4年12月23日総行公第148号・総行給第82号・総行福第358号・総行安第49号)」の「別紙2」より。着色・下線・取り消し線は総務省による。

 

いかがでしょうか。

まず、「修正」部分では、国の非正規公務員に適用しているルールの説明が修正されています。その上で、「追加」部分では、国と同じようにしなければならないのか、という「問」に対して、そのとおり、とは回答されていません。国と同じようにしなくてよい、とは明言されておらず、原則を踏まえた相変わらずの回答が繰り返されているだけですが、しかしながら、そもそも、こうした、国と同じようにしなければならないのか、という「問」と「回答」が新たに設けられた意味、背景をよく考えていただきたいのです。

もう一度確認しますが、はじめから、どこにも、公募制の導入は義務とは書かれていないのです。その上で、今回の総務省マニュアル(第2版)の修正版が出されたのです(注)。

注:「総務省の姿勢が変化している」と上で書きましたし、学習会当日も申し上げました。しかし、いささか皮肉に聞こえるかもしれませんが、「総務省の姿勢は変化などしていませんよ。公募は義務だなどとは、一貫して、言っていませんよ」と総務省の担当者からは言われるかもしれません。

 

なお、私は、職員の採用のあり方はなんでもありだと言っているわけではありません。総務省が言うとおり、平等取扱いの原則や成績主義にのっとって採用は行われるべきであると考えます。しかしそれは、公募制を導入することとは異なる話です(この点は後でふれます)。

いや、それでも公募はやはり必要だ、とお考えになりますでしょうか。

その場合、総務省がそう言っているから、という理屈は──総務省がわざわざマニュアルのこのような修正版まで出してきた後では、いっそう───通用しないでしょう。

公募をこれからも続けるのであれば、それは、行政と、労働組合と、議員である皆さんとが、すなわち労使と議会とが、選択した結果なのだということは自覚をしてください(もちろん、労働組合として反対しているのだけれども押し切られているというケースもあれば、議員として反対しているのだけれども議会で通らないというケースもあるかとは思いますが)。

総務省が言っているから、などという説明はやめて、非正規公務員が従事している事業の性格や就労の実態などに基づき、自分たちのアタマで考えて判断をしていただきたいと思います。

 

 

■公募を必要とする理由や公募・選考の実態を検証する

とはいえ、公募は義務だと誤解して自らの意思に反して公募を導入してしまっていた自治体や、よく考えずに公募を導入していた自治体であれば、公募の撤回は容易でしょうけれども、自らの意思で公募を導入していたような自治体であれば、総務省マニュアルのQ&Aに修正があったぐらいでは、公募の撤回は容易ではないと思います。残念ながら、労働組合が明確に反対の意思表示をしていないという自治体もあるでしょう。

そのようななかでも、議員の皆さんには、当事者(会計年度任用職員)の声も集めながら、粘り強く論戦を挑んでいただきたい。

行政の側が皆さんに対してなんと説明しているのか十分に存じ上げないのですが、例えば、予算が確保できるかどうかわからないから、という説明がときどき聞かれます。しかし、予算はそんなに毎年大きく変動するのでしょうか。逆にお聞きしたい。仮にそうだとして、それが全ての職員を一律に公募にかける理由になるのでしょうか。雑な回答に対しては、簡単に引き下がらないでいただきたい。

もう一つは、再度任用時の「公募」や「選考」の「手法」や「内容」を検証して欲しいのです。

とくに専門性の高い職種に関しては、果たしてどのような選考が行われているのでしょうか。

ある自治体の調査では、レポートを課していると伺ったものですから、では、そのレポートはどのような内容なのでしょうか? レポート内容を毎回考えるのも大変ではないでしょうか? とさらに質問を重ねていくと、どうも、レポート(と面接)による選考にはなっているものの形がい化している、おもてだっては言えないけれども──そう説明されているような回答内容でした。

レポートではなく面接の場合でも同様です。果たして、どのような面接が行われ、どのような基準で合否の判断がなされているのでしょうか。

私も大学の教員ですから、対象こそ学生という点で異なりますが、選考(選抜)試験がいかに大変かは理解しています。ですから逆にお聞きしたいのです。大勢の職員を対象にして、公務の職場では、毎年の人事評価に加えて、果たして、どのような選考が行われているのか、と。拙稿に書いた一部を以下に転載します。

 

一定期間ごとに公募を行うとすれば、ハローワークや自治体の広報誌などに求人を出す必要があるでしょう。平等取扱いの原則に立てば、関係者や周辺への周知だけでは十分ではありません。ひろく公告しなければならないでしょう。

公募を採用した自治体では、どのような選考がなされているのでしょうか。面接試験やレポート試験が課されているのでしょうか(職種によっては実技試験などが課されているケースもあるのでしょうか)。面接をするにしても、いいかげんな面接は許されません。1人あたり少なくとも15分、20分は時間をかけているのでしょうか。

とりわけ資格職など専門性の高い職種についてはどのような選考が行われているのでしょうか。ジェネラリスト型の職員(正規公務員)に、ジョブ型の会計年度任用職員の能力の適切な評価はできているのでしょうか。

面接試験やレポート試験を課した後には、あらかじめ設けていた評価基準に基づき、適切な評価・選考を行わなければなりません。結果については、当然記録なども作成されているのでしょう。そして、決裁へと進んでいくのでしょう。

出所:「⾮正規公務員が安⼼して働き続けられる職場・仕事の実現に向けて」『KOKKO』第55号(2024年5月号)より〔5月31日に解禁〕。注釈2にあげた拙稿の一部を補正して利用。

 

少なからぬ職員の手を止めて、このようなことを一定期間ごとに行うことに一体どのような意義があるのでしょうか。切られる不安を感じさせながら職員を働かせる不健全な雇用管理であると私自身は思っていますが、経済性や効率性の観点からもいかがなものでしょうか。

余談ですが、こうした雇用管理を行っている自治体で仮にSDGsが掲げられているとすれば、その看板は下ろさなければならない、と首長は気づかれるのではないでしょうか。本稿テーマに関連して言えば、ディーセントワークやジェンダー平等を実現しようとする意思、そして、誰一人取り残さないという意思をもって、SDGsは掲げられるべきだと考えます。

 

出所:国際連合広報センターより。

 

 

■最終ゴールと中間ゴール──ディーセントワーク・雇用安定の実現に向けて

整理します。

まず、私たちの最終ゴールはディーセントワークの実現ですが、雇用面に限定すれば、有期雇用の濫用をやめさせることです。その重要な一歩として、公募をやめさせることを提起しています。

総務省は、公募を義務づけてはいません。これからも公募を続けるというなら、合理的な理由を自治体側であげる必要がある、と申し上げました。

住民に雇用の機会を広く提供しなければ、と平等取扱いの原則をあげる自治体もありますが、それは、例えば「議員の奥さんだから採用してあげて」といった縁故採用や人種・信条による差別を禁じる内容であって、平等取扱い原則だからと、一度採用した職員に一定期間ごとに公募まで課すのは、明らかに行き過ぎであると私は考えます。民間の非正規雇用の政策動向とも整合がとれません。

なお、公募を仮にやめさせても、無期転換制度は非正規公務員にはありませんし、年度ごとの雇用である点には変更ありません。そこは国の制度を変える必要があります。

しかし、繰り返しになりますが、公募の廃止は自治体の判断でできることです。国が行うべきことと自治体が行うべきこととを分けながら、自治体は自治体で、できることをすべきです。さしあたり、公募制を廃止して、「定年」[3]までの事実上の雇用継続を実現することがそれに該当します。

 

一度に公募制を廃止することができなくても

議員の皆さんには、公募の廃止に向けてご尽力いただきたいと思います。

しかし、反対する方々もおられるでしょうから、一気には進まない可能性もあるかと思います。平等取扱い原則を公募設置の理由として掲げながら、本音のところでは、いつでも切ることができる状態で非正規公務員を使っていたい、というまことに残念な、差別的な考えも聞かれるような状況ですから。

そのようななかでは、中間ゴール、短期目標を設定することもアリかと思います。

例えば、公募の年数を延長させることが考えられます。現在3年で公募のところを5年に延長する、5年のところを10年に延長する、などです。あるいは、専門性の高い職種に限定して公募制を廃止することも考えられます。

ここで、先ほどみた、一部の職種で公募が廃止にされている自治体のことを思い出して欲しいのです。一部の職種における公募の廃止をどう評価すべきでしょうか。

本当は公募を続けたいのだけれども、この職種は人も集まらなくて採用が難しいから、という理由で仕方がなくそのようにした(公募を一部の職種で廃止した)のか、それとも、労働組合や議員からの批判に真摯に向き合ったものの、全ての職種での公募の廃止に一度に踏み切るのはどうしても躊躇してしまうからと、まずは、試験的に一部の職種で試みられた結果なのか。両者には、おそらく、会計年度任用職員(制度)に対するまなざしやその後の展開で大きな違いが生じるのではないか、と私は思います。後者であって欲しいと思います。

大事なのは、公募制はなぜ廃止されなければならないのか、という理由や最終のゴール(ディーセントワークの実現)を見失わないことです。

公募が不要であるのは、当該職種の専門性の高さゆえではありません。専門性の高さは、賃金に反映させるべき[4]であって、公募を入れるかどうかとは関係がありません。冒頭で申し上げたとおり、そもそも、仕事が恒常的であれば、本来は、有期雇用の反復更新の継続(有期雇用の濫用)自体が認められるべきではないのですから。

付け加えておくと、今は人手不足だから公募制をやめておこうか、という考えも、では、人手が余ってきたら(そのような状況が再び訪れることはあまり想定できませんが)公募を再開するのでしょうか。公募をやめる理由や最終のゴールを見失わないで欲しいと思います。

 

 

繰り返しの記述が多くなってしまいました。また、少し乱暴な表現もあったかもしれません。お詫びします。公募をなくすことはとても大事なことですが、それが最終のゴールではなく、事業の性格や就労の実態にあわせて、公共サービスの担い手である会計年度任用職員の雇用をよりよいものにしていく(ディーセントワークを実現する)ことが私たちの目指すべきゴールであることをあらためて確認したいと思います。

なお、現状はそこからいかにかけ離れているかを示す、会計年度任用職員の離職問題・「大量離職者通知制度」については、(3)で報告します。

 

(後半の1、終了)

 

 

[1] 会計年度任用職員制度のベースになった国の非正規公務員の公募においてもそのことが問題になっています。パワハラ公募と称してわかりやすいコンテンツが作られていますので参考にしてください。国公労連『非正規公務員を差別しないで! 国の非常勤職員の手記』

[2]川村雅則「会計年度任用職員の再度任用における公募は必要なのか」NPO法人官製ワーキングプア研究会が発行する『レポート』第45号(2024年3月号)

[3] 1年の有期雇用なのですから、定年が設けられているのは本来はおかしなことですが、実際には、常勤職員(正職員)にあわせて定年制を設けた上で、問題なく働けるのであれば、それ以降の継続任用を認める、というのが落としどころではないかと考えています。その際、正規の公務員と異なり、非正規の公務員は、低賃金で雇用され続けたことから、年金額が低いことも十分に考慮される必要があるでしょう。

[4] 但し、どの職種においても、働けばまともな生活がしていけるよう最低生計費を満たすこと(賃金の底上げ)が前提です。また仕事の評価にあたっては、専門性の高さだけではなく、仕事の負担や労働条件なども考慮する必要があります。いわゆる職務分析・評価の問題です。

 

 

(参考資料)道内144町村の、職種別にみた再度任用時の公募の実施状況/単位:件

 

合計 合計
当別町 6 0 6 0 苫前町 6 0 0 6
新篠津村 2 2 0 0 羽幌町 9 0 0 9
松前町 11 11 0 0 初山別村 5 3 0 2
福島町 8 8 0 0 遠別町 8 3 0 5
知内町 2 2 0 0 天塩町 9 9 0 0
木古内町 7 0 0 7 猿払村 9 0 0 9
七飯町 8 2 6 0 浜頓別町 7 1 0 6
鹿部町 7 0 7 0 中頓別町 10 10 0 0
森町 12 0 0 12 枝幸町 12 12 0 0
八雲町 12 0 0 12 豊富町 6 0 0 6
長万部町 9 0 0 9 礼文町 13 13 0 0
江差町 10 0 10 0 利尻町 2 0 0 2
上ノ国町 7 0 7 0 利尻富士町 9 0 0 9
厚沢部町 10 10 0 0 幌延町 13 0 13 0
乙部町 4 0 0 4 美幌町 12 0 0 12
奥尻町 8 0 8 0 津別町 2 0 0 2
今金町 7 7 0 0 斜里町 13 0 0 13
せたな町 13 13 0 0 清里町 3 3 0 0
島牧村 14 14 0 0 小清水町 3 3 0 0
寿都町 3 3 0 0 訓子府町 10 0 0 10
黒松内町 6 0 6 0 置戸町 7 0 0 7
蘭越町 14 0 0 14 佐呂間町 7 0 0 7
ニセコ町 2 0 0 2 遠軽町 9 9 0 0
真狩村 1 0 1 0 湧別町 7 0 7 0
留寿都村 6 4 0 2 滝上町 11 0 0 11
喜茂別町 5 0 5 0 興部町 14 14 0 0
京極町 5 5 0 0 西興部村 4 4 0 0
倶知安町 9 0 9 0 雄武町 14 0 0 14
共和町 7 0 0 7 大空町 3 3 0 0
岩内町 14 0 14 0 豊浦町 1 1 0 0
泊村 5 5 0 0 壮瞥町 9 0 9 0
神恵内村 2 2 0 0 白老町 10 0 10 0
積丹町 4 0 4 0 厚真町 11 11 0 0
古平町 6 0 0 6 洞爺湖町 11 0 0 11
仁木町 5 0 0 5 安平町 5 5 0 0
余市町 11 11 0 0 むかわ町 13 13 0 0
赤井川村 3 0 0 3 日高町 13 0 13 0
南幌町 7 0 7 0 平取町 12 0 12 0
奈井江町 14 14 0 0 新冠町 11 0 0 11
上砂川町 9 9 0 0 浦河町 9 9 0 0
由仁町 6 6 0 0 様似町 10 0 10 0
長沼町 8 8 0 0 えりも町 14 14 0 0
栗山町 6 6 0 0 新ひだか町 8 0 8 0
月形町 14 14 0 0 音更町 9 9 0 0
浦臼町 5 5 0 0 士幌町 14 14 0 0
新十津川町 4 4 0 0 上士幌町 10 10 0 0
妹背牛町 6 0 6 0 鹿追町 14 0 0 14
秩父別町 4 4 0 0 新得町 9 0 0 9
雨竜町 1 1 0 0 清水町 8 0 0 8
北竜町 7 7 0 0 芽室町 13 13 0 0
沼田町 9 9 0 0 中札内村 6 0 0 6
鷹栖町 14 14 0 0 更別村 8 2 0 6
東神楽町 11 0 11 0 大樹町 13 0 0 13
当麻町 14 0 14 0 広尾町 10 10 0 0
比布町 6 6 0 0 幕別町 10 10 0 0
愛別町 3 0 3 0 池田町 7 0 2 5
上川町 12 12 0 0 豊頃町 9 0 0 9
東川町 8 0 8 0 本別町 13 13 0 0
美瑛町 10 10 0 0 足寄町 12 12 0 0
上富良野町 10 10 0 0 陸別町 5 5 0 0
中富良野町 7 1 6 0 浦幌町 9 9 0 0
南富良野町 8 0 8 0 釧路町 10 0 10 0
占冠村 5 5 0 0 厚岸町 13 13 0 0
和寒町 14 0 0 14 浜中町 9 0 0 9
剣淵町 10 10 0 0 標茶町 13 13 0 0
下川町 13 0 13 0 弟子屈町 13 13 0 0
美深町 8 1 0 7 鶴居村 10 6 0 4
音威子府村 4 4 0 0 白糠町 10 0 10 0
中川町 9 0 9 0 別海町 10 2 0 8
幌加内町 6 6 0 0 中標津町 11 0 11 0
増毛町 9 0 0 9 標津町 10 10 0 0
小平町 4 4 0 0 羅臼町 10 0 10 0

注:①毎回公募を行い再度任用する、②公募を行わない回数等の基準を設けている、③毎回公募を行わず再度任用する。
出所:2023総務省調査より筆者作成。

 

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