川村雅則「議員の力で、ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現を(3)」

川村雅則「議員の力で、ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現を(3)」『NAVI』2024年5月27日配信

 

2024年5月24日に緊急開催した、自治体議員を対象にした学習会「初めて取り組む「会計年度任用職員問題」」での筆者による報告で、下記の(1)(2)の続きです。どうぞお読みください。

川村雅則「議員の力で、ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現を(1)」『NAVI』2024年5月25日配信

川村雅則「議員の力で、ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現を(2)」『NAVI』2024年5月26日配信

 

学習会・オンライン上のようす(2024年5月24日)

 

 

■はじめに

(1)では、雇用面にしぼって会計年度任用職員制度の問題点を報告しました。

(2)では、とはいえ、公募制は自治体の判断でなくすことができること、実際、公募を導入していなかったり、公募を全ての職種でやめた、あるいは、一部の職種でやめた自治体もあることを示してきました。

この(3)では、会計年度任用職員の離職をめぐる問題と、「大量離職通知書制度」を取り上げます。そのことを通じて、会計年度任用職員におかれた状況や、議員の皆さんの具体的な課題を示していきたいと思います。

一般的には、離職が発生している、しかも継続的に発生している、ということは、仕事や職場あるいは広義の労働条件に何らかの問題があるという可能性が示唆されます。ご承知のとおり、学生の就職活動でも、離職率は、その会社の問題性を知る上での一つの指標として使われています。若い人を毎年大量に採用して、一見すると事業拡大しているようにみえても、じつは毎年離職者を大量に発生させているだけかもよ、ご用心を、というわけです。公共サービスに従事する人たちが毎年数多く離職するような職場・自治体でよいのでしょうか。ぜひ考えていただきたい。

もう一つ、この離職問題に関連して取り上げる大量離職通知書制度とは、端的に言えば、大量に離職を発生させるにあたって遵守すべきルールととらえてください。

詳しくは後で説明しますが、このルールが自治体では定着していません。ストレートに言えば、ルールを守っていない自治体があります。ひょっとすると、守ろうとする意思がないのではないか、と勘ぐってしまうような言動も実際に見聞きされます。議員の皆さんのマチではどうでしょうか。ぜひ点検をなさってください。

 

■会計年度任用職員の離職者数を把握しよう

さっそくですが、第一にお願いしたいのは、会計年度任用職員の離職者の人数を把握することです。時期は、年度末の離職者数でよいと思います。

注意すべきは、離職者とは、公募に落ちて離職を余儀なくされた職員だけではありません。公募をうけずに離職した職員や公募にかかる前に離職した職員の全員です。

(1)でも(2)でも公募に力を入れて話をしてきました。しかし実際のところは、公募で落とされる職員だけでなく、それ以外の離職者も結構な人数になることが、調査のなかで明らかになってきました。そこでまずは、皆さんの自治体では、何人が離職をしているのか明らかにしてください。

その上で、第二に、離職の理由を把握して欲しいと思います。

会計年度任用職員は会計年度ごとの雇用という設計になっていますから、担当課では、離職者の全てが「期間満了」で処理されていると推測されますが、私たちがさしあたり把握すべき大分類は、(a)公募に落ちたことによる離職の数と、(b)それ以外の理由による離職の数とでよろしいのではないかと思います。

ここまでは、担当課が保有している情報で把握は可能ではないでしょうか。公募で不合格にした職員の人数情報程度は把握していてしかるべきと考えます。

そこからさらに踏み込んで、「それ以外の理由」の詳細・内訳を調べて欲しいと思います。具体的には、(b-1)仕事・職場・労働条件問題に分類される理由と、(b-2)その他の自己都合理由とに分けられると思います。(b-1)はもちろん、さらに細かく分けていくことになりますが、ここでは割愛します(離職に関する様々な労働者調査が実施されていますからそれを活用できますし、実際に実施することになったらぜひ声をかけてください)。

 

 

 

■職員を対象とした働きがい調査──札幌市の調査例

こうした調査の提案は突飛な発想に聞こえるでしょうか。そんなことはまったくないと私は思います。

公共サービスの担い手の離職が続いているときに、その理由の把握をしなければ、と思うのは一般的な感覚ではないでしょうか。私自身、もしも自分の勤め先である大学でそのようなことが起きたら、原因を把握・分析すべきだと提案しますし、理事会側がしぶっていたら、自分で率先して行います。離職や新規の求人活動、新規採用者に仕事をあらためて教えることにともなうコストなど、馬鹿にはならないでしょう[1]

札幌市でも職員の働きがいなどに関する調査が2023年に実施をされています[2]

そのことを取り上げた記事によれば、札幌市は、教職員や医療従事者らを除く約8千人の職員を対象にして、組織の風土や職場環境、業務への意欲など労働に関する全般的な事項について5段階で評価とあります。質問は、「上司からの支援の充実度」「職場環境」など、その数はなんと約130問だそうです。各部署や各年代が抱える問題点を洗い出し、職員が働きやすい職場環境の構築や管理職の新たな研修など各種施策を検討する、とあります。

また、こうした調査を実施した問題意識の一つには、離職者対策もあげられるようで、同じく記事によれば、昨年度当初の全職員の1.57%に当たる226人が自己都合で退職。このうち30代以下が180人と8割を占め、過去20年で最多だったそうです。

このように職員を対象にした調査を行い、職員が働きやすい環境作りに活かしていくことは、公共サービスの質の向上という観点からも有益ではないでしょうか。

但し、第一に、札幌市のこの調査は、民間事業者に委託して1千万円を超える費用がかかっています。私が提起しているのはそこまで大それた調査ではなく、シンプルなものです。離職者が一定数継続して発生しているのだから離職の現状や離職理由をちゃんと把握して対策に活かしましょう、と自前で行うことを想定しています。

第二に、札幌市のこの調査は、先ほどの説明やあげた数字でお気づきになったかもしれませんが、対象が正職員に限定された調査です。会計年度任用職員は見事に対象外となっています。「責任とやりがいを感じるか」「快適に働くことができる環境か」「上司は部下の意見に耳を傾けているか」など、この調査における質問は、会計年度任用職員にも問われて然るべき質問であると思いますし、むしろ、雇用安定や処遇の面で不利な状況にあるほか、非正規という立場からハラスメント被害を受けやすいとも指摘されている、会計年度任用職員にこそぜひ尋ねて欲しい質問です。

 

 

 

■札幌市の離職者数など

札幌市では、会計年度任用職員にはこうした調査は必要ないのでしょうか。離職者の発生状況からすれば、そのようなことはない、と私は思います。次の表は、札幌市から提供された資料に基づくものです。ちょっと見づらいかもしれませんが、何年勤めて離職をしたかが分かる貴重な資料です。

 

表 会計年度任用職員として一定期間働いた後に翌年度に同一部の部で継続任用されなかった職員の人数とその内訳

翌年度に同一の部で任用されなかった者 計
他の部で任用された者 離職した者
a 2020年度 1076人 653人 423人
b 2021年度 265人 123人 142人
c 2022年度 301人 145人 156人
d 2020年度 2021年度 710人 393人 317人
e 2021年度 2022年度 193人 83人 110人
f 2020年度 2021年度 2022年度 1091人 796人 295人

注1:対象は、年度を通して働き翌年度の4月1日に同一の部で任用されなかった職員。仮に翌年度の10月に同一部で任用されていたとしても、表中では、翌年度に同一部で任用されなかった者に計上されている。また逆に、年度途中で任用され、年度末で同一の部での任用が終了した者は計上されていない。
注2:(a)(d)(f)には、旧制度下の非常勤職員等から引き続いて会計年度任用職員となった者が含まれる。但し、その人数の特定は困難である(本文の「3.会計年度任用職員に関する情報の管理状況」を参照)。
注3:機構改革によって任用部の名称が変わった場合等には、データ集計上は「同一部」と判断できないことから、仮に同じ職に継続任用されていたとしても、「同一部に任用されなかった者」として計上されるなど、集計方法の関係上、実態を完全には反映できない。
資料:札幌市からの提供資料と説明に基づき筆者作成。
出所:川村雅則「札幌市非正規公務員(会計年度任用職員)調査報告──公募制と離職に関する情報の整理」『北海学園大学経済論集』第71巻第1号(2023年6月号)pp.17-37

 

札幌市の会計年度任用職員の離職状況は、例えば、2022年度末では、合計で561人です(c、e、f)。全員が「3年公募」で発生した離職というわけではなく、短期で離職している職員が予想外に多いことが市への聞き取り調査でも明らかになっています[3]。年によってばらつきはありますが、概算で、約4千人の会計年度任用職員に対して561人の離職者ですから、結構な割合です。

関連して、どういう職種の方々が離職をしているのかについても、札幌市から資料を提供いただきました。参考までにご覧ください。

 

2022年度末の札幌市会計年度任用職員の離職に関するデータ(2024年2月28日記)

 

札幌市の場合、同じ部で働き続けられるのが3年という原則もありますから、他の自治体より離職が多く発生している可能性があります[4]

いずれにせよ、離職に関するこうした基礎情報を集めながら、離職の理由さらには就労の実態などの把握に進んでいく必要がある、と私は考えています。

難しい話をしているわけではありません。私たちの目にしっかり見えていなかったかもしれない、公共サービスの担い手の離職問題をまずは「発見」しましょう、そして、離職の背景に仕事・職場・労働条件に関する問題があるなら改善をしましょう、ということです。じつにシンプルです。

 

 

 

■大量離職通知書の作成・提出を定着させて欲しい

話を進めます。

次なる課題は、冒頭に述べましたとおり、大量離職通知書の作成・提出をそれぞれのマチでちゃんと定着させて欲しい、ということです。

この制度は、労働施策総合推進法第27条に基づく制度で、公務員にも民間労働者にもかかわるものです。

両者で適用される内容に差はあるのですが、非正規公務員問題を念頭にざっくり言えば、大量に──ここでは、1つの事業所で1か月に30人以上の──離職者を発生させる場合には、国がすみやかな再就職支援を行うためにも、ハローワークに事前に届け出をするように、ということが義務づけられているのです。人数情報のほか、離職者の再就職の援助のための措置情報の記載も求められています。

 

百聞は一見に如かずで厚生労働省が作成している以下のパンフレットをまずはご覧ください。あわせて、この問題で省庁との交渉などをされてきたグループのお一人である安田真幸さん(連帯労組・杉並)のまとめられた文章をお読みいただけると、内容や論点はおわかりになるかと思います。

 

厚生労働省「<国または地方公共団体の方へ> 離職する職員の再就職のために~「大量離職通知書」について~」

 

 

安田真幸「(緊急レポート:第5弾(最終))厚労省との7/6第3回懇談会報告 「会計年度任用職員全員が対象人数 ⇒ 公募の対象となる人数 ⇒ 「会計年度任用職員のうち、実際に職を失い再就職先が必要な人が対象」で最終確定しました!!」『NAVI』2023年8月25日配信

離職を止められる制度ではないが

申し上げておきたい第一は、この大量離職通知書制度は、職員の離職を食い止められるものではありません。

そう説明すると、この制度やこの制度を定着させる取り組みを軽んじる方もおられますが、それは誤りだと思います。

ルールをちゃんと守っている自治体がある一方で、守らないでいる自治体は、おそらく、公募問題など含めて、職員を大量に離職させることの問題性や負担などを感じていないのではないでしょうか。会計年度任用職員の離職も離職に関する手続きも軽んじられている印象をもっています。

話は少しそれますが、日本は労働分野の規制(労働組合による規制、法制度による規制)が弱い国です。そのことが日本の労働者の状態に深く関わっています。

この大量離職通知書制度も規制の一つと言えるでしょう。規制と言っても、いま述べたとおり、離職そのものを食い止めるような規制ではなく、離職にあたってこの程度のことは最低限行ってください、という水準のものです。それさえも守られずにいるのです。

 

厚生労働省、総務省から通知が出されている

第二は、先の安田(2023)によれば、この制度の運用ないし記載内容の細部が厚生労働省と総務省との間で決着がついたのは、2023年のことです。そのこと自体、会計年度任用職員(非正規公務員)の離職は軽んじられてきた証左とも言えるかもしれません。

そのようななかで、厚生労働省と総務省それぞれから通知が出されました。通知は安田(2023)にリンクが貼られています。本稿からもアクセスできるようにしておきます。

(a)厚労省職業安定局から各都道府県労働局職業安定局長にあてた、2023年6月27日付の通知では、「大量離職通知書」の提出を全ての自治体に対して周知するよう、指示がされています(当該文書はこちら)。

(b)総務省からは、翌日6月28日付で、都道府県の人事担当課と市町村担当課、指定都市の人事担当課などに「事務連絡」が発出されています(当該文書はこちら)。

 

こうした通知が出されたからといって、会計年度任用職員の離職に対する姿勢が急に改善するとは考えられません。そもそも、ひろく公募制が導入され、そのことが必ずしも問題視されているわけではない状況なのですから。

ただ、いずれにせよ、制度の運用や記載内容は定まって厚生労働省・総務省から通知も出されているわけです。皆さんのマチ、とりわけ多数の会計年度任用職員を採用しているマチでは、制度の趣旨や内容が理解され、1つの事業所で1か月に30人以上の離職者の発生という条件を満たした場合には、通知書は作成されているかどうかの点検をなさってください。

 

 

 

■大量離職通知書に関する調査、経験から

私の拙い経験をご紹介します。

昨年(2023年)と今年(2024年)に、北海道労働局に対して、大量離職通知書の開示請求を行いました。

詳細は、別の機会にまとめる予定です。本稿では、その一部だけを紹介します。制度の定着がこのような状況なのか、という参考情報としてお聞きください。

 

2023年の経験

まず、この通知書を初めて開示請求した2023年には、たくさんの通知書(2022年度末分)が入手できるに違いないと予想していたものの、通知書が提出されていたのは全道でわずか5市だけでした。うち1市は、直営事業の委託化にともなう離職の大量発生というケースでした。

想定外の結果でしたが、当該5市のほか、提出のなかった自治体のうち会計年度任用職員を多く任用している北海道と5市に電話照会をしたところ、本来は提出すべきところを提出していない自治体が複数ありました。また、「北海道」からは次のような文書回答を得ました。

「道知事部局では、本庁のほか総合振興局・振興局、各出先機関などに分かれていること、加えて、そもそも、本庁であれば各部、総合振興局・振興局であれば総務課・建設管理部・保健環境部などを1つの事業所ととらえていることから、1つの事業所で30人以上の離職者は発生していない。」

1つの事業所をどうとらえるかなど、制度の趣旨から考えると腑に落ちないところがありますが、「ハローワークからの説明を踏まえた対応である。」とのことでした。

 

2024年の経験

以上の2023年の経験をふまえて、まず、年明け、2024年の1月下旬には、大量離職通知書制度の趣旨をご理解の上、条件に該当したら通知書の提出を行って欲しい、と要請文書を北海道及び35市に対して送りました。

 

川村雅則「北海道及び道内35市に対して大量離職通知書の提出を要請しました」『NAVI』2024年1月24日配信

 

「会計年度ごとの任用制度や一定期間ごとの公募制に賛否どちらの立場であっても、関連する情報の整理は、政策(任用政策)を検証する上で不可欠の作業です。また、民間企業に率先垂範する立場にある自治体に法令遵守が求められることは言うまでもありません。」と要請文書に書きました。

 

・現在の回収状況など

その後、年度が替わっての4月1日に情報開示請求を行いました。本日(2024年5月24日)時点の結果をご紹介します。

まず、2024年3月31日までに提出されたものを開示請求したところ、5市1町(計6市町)から通知書が提出されていました(町のケースは、町が直接運営していた施設を指定管理に移行させることで離職者が発生したというケースでした)。

それ以外の5市のうち「札幌市」は、実際の離職者数のカウントとは異なる手法で通知書が記載されていたので、実際の離職者数の提供をあらためてお願いしているところです。

この6つの市町以外にも、会計年度任用職員数が多い自治体に電話で照会をしてみました。但し、2023年調査に基づき、制度のことが理解されている自治体や、逆に提出は不要と考えている「北海道」は除きました。

結局、会計年度任用職員を500人以上雇っている市(計6市)に電話をしたのですが、計4市が、本来は通知書の提出が必要な自治体でした。しかし、そのうち1市では、今回(2023年度末の分)は提出をしないとのことでした。残り3市の分は、これからあらためて開示請求を予定しています。

 

・若干の感想など

年度末は忙しく、正確な離職者数の把握が困難という意見も聞かれたのですが、ただ、自治体によっては、年内と年明けにわけて公募を行って、離職者を早めに把握している自治体もありました。

もちろん、通知書に記載の数値と実際の数値とで若干のズレが生じるのは仕方がないと考えます。例えば、3月に入ってから急に離職を申し出られた、とか、公募で不合格とした職員が3月の追加公募(再就職支援)で、別部署での継続任用が決まったことなどの理由によるズレです。

離職に関する最低限のルールは守られる必要があります。公募制を採用し離職の発生の可能性を高めるのであればなおのこと、それに対応できる体制をきちんと整えるべきである、と考えます。

最後に、繰り返しになりますが、私は、公募の設置そのものを問題視しています。離職は、極力防止することが望ましいと考えています。あくまでも、公募の設置に自治体側が固執するのであれば、最低限行うべきことがある、とここでは述べているだけである点に留意してください。

 

沖縄・全国の動向など

第一に、沖縄県では、13市町村で離職通知を怠っていたことが報じられています[5]

加えて、同記事によれば、労働組合(「沖縄県労連」)が独自のアンケートを実施されて、2割もの職員が離職をしていたことが判明したとのことです。

このような状況をふまえると、条件に該当した場合、大量離職通知書を自治体に作成・提出してもらうということはもちろん大事ですが、大量離職通知書の条件に該当する/しないにかかわらず、離職者数を明らかにすることそのものも、非常に重要であるとあらためて感じます。

ちなみに、大量離職通知書は、1つの事業所で1か月に30人未満の離職者数の場合でも、「一定程度の規模の離職が予定されており、再就職先が確保されていない場合には、円滑に再就職支援を行う必要があるため〔略〕ご相談ください」となっています(厚生労働省による先のパンフレットを参照)。

第二に、国会での議論も紹介しておきます。伊波洋一(沖縄の風)議員の質疑(2024年5月13日参議院行政監視委員会)です。以下のURLから入ってください(写真もリンク先より)。

https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php

 

クリックして出てきた画面の左側の青字の中ほどの「行政監視委員会」をクリック

→→→検索画面の下にある青帯の「行政監視委員会」開会日:2024年5月13日の青帯をクリック

→→→「発言者一覧」から「伊波洋一(沖縄の風)」をクリック(2時間41分あたり)

 

厚生労働省の答弁によれば、2022年度末の(23年2,3月に提出された)大量離職通知書は、全国で59機関、会計年度任用職員を含め非常勤職員の離職者数は7416人とのことです。

もっとも、任命権者の範囲や再任用職員はどの位含まれるのかは定かではありません。それより何より、北海道の私の拙い経験から考えただけでも、上記の人数には疑義があります。実際の人数はもっと多いと思われるということです。

 

 

■最後に

本稿でも議員の皆さんへのお願いを述べさせていただきました。

皆さんのマチの会計年度任用職員の離職の状況を把握すること、大量離職通知書制度というルールを定着させること──いずれも、離職という問題を通じて、公共サービスの一翼を担っている会計年度任用職員がどのような境遇にあるのか、みえてくるのではないかと思います。

私自身も、調査結果の取りまとめをすみやかに行い、なおかつ、今年(2024年)の年末にも、あらためて要請書を自治体に送付し、この制度の周知に貢献をしたいと思います。

あわせて、制度の趣旨や通知書の記載内容はどのように自治体に説明されているのか、北海道労働局からいちど聞き取りをする必要があると考えています。その結果も皆さんと共有を図りたいと思います。

「ネット」の今後の取り組みで提案が二つあります。

一つは、6月議会で実現した成果やこの間集められた情報をもちよって、第2回の学習会を開催しましょう。

もう一つは、年内に、ぜひ「ネット」と私の研究室で共同で、ウェブアンケートによる当事者調査を実施しましょう。議員の皆さんのお名前と皆さんの所属する自治体議会(自治体)名が記載されたアンケート調査は、どれだけ当事者を勇気づけることでしょうか。調査の結果は、議会活動に活かしていただくことはもちろんのこと、相談活動などに発展させることもできるかもしれません。

 

総務省の調査[6]によれば、北海道では、道議会議員が100人、市議会議員が701人、町村議会議員が1509人、合計で2310人とのことです。これだけの人数の議員に、公共サービスの担い手に起きている問題(公務非正規問題)に関心をお持ちいただけるならば、ほんとうに大きな力になるのではないでしょうか。「ネット」の皆さんの役割はとても大きいと思います。

一緒にがんばりましょう。

 

(完)

 

[1] あまり考えたくありませんが、一定期間ごとにやめてもらうことをもしも望んでいるのであれば、別かもしれません。

[2]「(市職員8000人調査)「働きがい」数値化へ 職場環境など施策検討」『北海道新聞』朝刊2023年11月9日付。ここでの記述は、川村雅則「自治体議員になったつもりで非正規公務員問題を市長に質問してみました(思考実験)その2」『NAVI』2024年2月2日配信から転載(一部、補正)。読んでもらいたくて少しコミカルにまとめていますが、内容や指摘はいたって真面目です。

川村雅則「自治体議員になったつもりで非正規公務員問題を市長に質問してみました(思考実験)その2」

[3] 川村雅則(2023d)「札幌市非正規公務員(会計年度任用職員)調査報告」『北海学園大学経済論集』第71巻第1号(2023年6月号)

川村雅則「札幌市非正規公務員(会計年度任用職員)調査報告」

[4] 札幌市の制度については、川村雅則「札幌市の会計年度任用職員制度の現状を調べてまとめました」『NPO官製ワーキングプア研究会Report(レポート)』第37号(2022年2月号)を参照。

川村雅則「札幌市の会計年度任用職員制度の現状を調べてまとめました」

[5]「13市町村、離職通知怠る/3月県内 非正規30人以上で」『沖縄タイムス』朝刊2024年5月9日付

[6] 総務省「地方公共団体の議会の議員及び長の所属党派別人員調(令和5年12月31日現在)」

 

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