水野谷武志「過労死防止啓発授業のご報告」

過労死等防止対策推進全国センターが発行するニュース第15号(2024年1月発行)への投稿です。どうぞお読みください。

 

過労死防止啓発授業のご報告

北海学園大学経済学部教員 水野谷武志

 

北海道の啓発授業については,過労死等防止対策推進北海道センターのメンバーが担っており,2023年度の実施は計27件を数えました。そのうちの1件であった北海道札幌厚別高等学校の啓発授業(11月2日)を「北海道過労死を考える家族の会」の村山百合子さんとともに担当しましたので,その様子と感想を簡単にご報告いたします。

高校の担当教師との事前のやりとりで,聴講する生徒は公民科「時事問題研究」という授業を履修している3年生36名で,新聞記事を題材に時事問題について調べたり,グループディスカッションをしていることを教えていただき,重要な時事問題の1つとして「働くこと」や過労死問題に関心を寄せてくれやすい生徒であることがわかりました。私の専門は経済統計で,研究テーマの1つとして,日本の長時間労働問題を各種統計で分析してきたことから,過労死問題にも強い関心を寄せてきました。そのような大学教員と過労死遺族の組み合わせでどのような授業を展開するが良いかを考えた結果,村山さんからの具体的な体験談をメインとし,その導入として私から過労死問題の概要を説明することにしました。概要と言っても限られて時間と私の能力不足がありますので,過労死等防止対策白書に掲載されている脳・心臓疾患及び精神障害に係る労災統計を解説することによって,日本でどのくらいの人が過労で命を失っているのかを考えてもらうことを狙いました。布石として労災統計が言う労災請求件数や認定件数の定義を説明した上で,これは過労死・過労自殺の実際の人数の「一端」でしかないという「種明かし」をしました。また,統計は全体の傾向を知る上では有効だが,一人一人の物語は見えないので,物事をよりリアルに多面的に知るには統計だけではダメで,具体的な事例に学ぶ必要を訴えて,村山さんの体験談につなぎました。

村山さんからは,亡くなられた息子さんの人生が紹介され,また苦労に苦労を重ねたあげくに労災申請が認められなかったことが語られ,まさに労災統計の「認定」の実態が具体的に伝えられました。北海道内の過労自死事案が紹介された上で,命より大切な仕事はないこと,コンビニや病院や物流などの便利なサービスを支えている人が疲弊していないか思いを巡らせてほしいことも語られました。

高校生は遺族の話に聞き入っていました。私は今回初めて啓発授業の講師を務めましたが,遺族のリアルで具体的な話しの理解を深めるために私のような労災補償制度や統計の話しが役立ちうると感じました。反省点は,全体として50分という限られた時間であったことに加えて私の経験不足も重なって,私の話が長くなってしまい,村山さんの講演時間及び質疑応答の時間が十分にとれなかったことです。今後は,時間配分に気をつけて,高校生とキャッチボールができるように改善していきたいと思います。

 

 

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