田中綾「(書評)働く三十六歌仙著『うたわない女はいない』」

田中綾(書評)

◇今週の一冊 働く三十六歌仙著『うたわない女はいない』(中央公論新社、2023年)

 

『北海道新聞』日曜版2023年8月13日付「書棚から歌を」からの転載です。

 

 

 

・子の熱で休んだ人を助け合うときだけ我らきっとプリキュア

遠藤翠

 

掲出歌は、女性が働くことをテーマに募集された「おしごと小町短歌大賞」の受賞作。愛知県在住、30代会社員の歌である。

 

「プリキュア」シリーズは女児向けアニメで、力を合わせて悪の組織と戦う女子らのチームの物語。子の発熱で急に休みを取った先輩を、女性同士でフォローするさまがたとえられているが、「助け合うときだけ」という限定の表現に注目したい。普段はやや距離のある関係性かもしれないが、必要な折には支え合い、チームで成果を出すという職業人意識もうかがえる。きれい事に終わらせない歌いぶりに、リアリティーが感じられる。

 

その賞の選考過程に加え、女性歌人36人の歌とエッセーを収めた『うたわない女はいない』には、道内在住者も4人いた。職場や業界全体の旧弊、あらわな壁、もやもやとした感情が言語化され、個人の歌であり、かつ、多数の声の代弁のようでもある。

 

・業界の未来を語るおじいさんおじさんおじさんおじいさんおじ

浅田瑠衣(会社員)

 

・ロボットもニュースも男がつくるものビルは勃ちわたしは製氷器

北山あさひ(テレビ番組制作スタッフ)

 

北山は、在京・在阪テレビ局のコンテンツ制作部門の、女性最高責任者の不在(2022年7月現在)にも触れ、最新ニュースも取り入れながら問題意識の共有をうながしている。続編も読みたい。

 

 

 

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