くしろ児童厚生員ユニオン「釧路市の学童保育にみる会計年度任用職員制度と労働組合の取り組み」

無期転換逃れ阻止プロジェクト(略称、ムキプロ)が3月7日に開催した「非正規/働き続けたいシンポジウム」の報告第3弾です。

くしろ児童厚生員ユニオンからの報告を、ムキプロ事務局の責任で取りまとめました。

以下の報告とあわせてお読みください。

パタゴニアユニオン「パタゴニア日本支社に非正規スタッフへの無期転換逃れ撤回を求めます」

東海大学教職員組合「無期転換逃れに対する非常勤講師組合のたたかいと、懸念される文科省の動向」 〔←確認中〕

 

なお、くしろ児童厚生員ユニオンからは、非正規公務労働問題研究会(主査:川村雅則)で過去にお話を聞いて、下記の論文にまとめています。本報告とあわせてご参照ください。

川村雅則、正木浩司「釧路市における臨時・嘱託職員の現状と労働組合の取り組み──2017年調査の結果に基づき『北海道自治研究』第590号(2018年3月号)

 

 

 

 

 

釧路市の学童保育にみる会計年度任用職員制度と労働組合の取り組み

 

くしろ児童厚生員ユニオン 特別執行委員 中谷公子

 

 

皆さんこんばんは。お仕事の後にお疲れ様です。私は釧路市で学童の職員として働いています。

労働組合は、私がここに就職したときにはもうありまして、元々は市の労働組合の中の分会という形だったみたいなんですが、やっぱり自分たちのことは自分たち自身で頑張ろうということで、市の分会から抜けて、単独で、児童館の先生だけで組合を作りました。単独の組合になってもう18年になります。

私自身は、何か問題を解決しなきゃとかそこまで深く考えて組合に入ったわけではなく、組合があるんだ、だったら入ろう、とあまり考えずに組合に入りました。

私が子どもの頃って、ストライキでバスが止まったりとか労働組合の活動がすごい盛んな時期だったんですよね。ですから、労働組合ってなんだろうというわけではなく、労働組合のことは知ってはいました。ですから、なんとなくですが、組合は必要だなという思いで入りました。

そうしまして働いていたところ、私が入った頃はまだそうでもなかったんですが、ここ数年は保育士自体が足りていない状況になっています。学童の職員って、大部分が保育士の資格を持って入ってきてるんですよね。そうなると近年は、保育士の不足でただでさえ人材確保ができない上に、学童の職場は処遇が悪いということも重なって、人が入ってきてくれない。

市当局と交渉はしますが、私達は公務員なので、地方自治法という縛りがあります。その根本部分を変えていかないと、処遇はなかなか良くなりません。ですから、どちらかというと現場の状況をよくするには、もっと上のほう、法律を変えるようにもっていかなければ厳しい。市当局のほうでも、処遇を良くしてあげたいし、人も来て欲しいと思っているんですが、それがなかなかうまくいかない。

※           ※           ※

組合が大事にしているのは、保育士の視点です。

結局、人、つまり保育士がいないことで、子どもの遊びがどうしても制限されちゃうんですよね。人が足りないと公園に行けなかったり、人が足りないから今日はみんなでちょっとビデオ見ようかとか、そういうことが起きてしまう。そうなると児童の健全育成など難しくなってしまいますよね。

そして、現場がどういう状況になっているのか、現場で何が起きているのか知ってもらうために組合は絶対必要だと思って活動をしてきています。

というのも、市役所の私達の上司もなかなか時間がなくて、それこそ今、各自治体でも人が足りていないので、現場のことを把握する時間がそこまでないんですね。

だから、現場のことは現場が訴えないと、同じ課なのに状況が全くわからない。そういうことが起きるので、やはりそういう意味でも組合がすごく大事で、状況を粘り強く訴えていくしかないなというところです。

※           ※           ※

今回の公募の問題なんですが、3年前の2020年度から、臨時非常勤だった私達の名前が会計年度任用職員制度に変わりました。それまでは、各自治体によっても、公募の年数は違ったんです。

だけれども、今回、会計年度任用職員制度を導入するにあたって、国家公務員の臨時非常勤は3年に一度公募しています、と国が例に出してしまったので、各自治体とも右にならえで、3年に一度の公募でいいんじゃないか、ということに変わったんです。

ただ、他の課のことはちょっとわかりませんが、学童の職場では、先ほど言ったように、人手不足がもう数年続いています。それこそ、欠員がない年は、多分ここ5,6年の間はないと思います。4月の時点ですでに欠員なんですよ。

学童の現場におけるこうした人手不足の状況に対して、国は、無資格の人でも入れるように法律を変えてしまったんですね。釧路市でも1館に1人の無資格者が入れるようになりました。

ところが、それでも人が集まらない状況です。そんな中で3年の公募って必要なんでしょうか。つい先日の団体交渉でもこの話をしましたが、やっぱり、国が例として示しているから、と国が言うことに自治体が乗っかっちゃう感じなんですよね。

児童館は、小学生の子どもと遊ぶことが多いので、若い職員も欲しいんですけども、それこそ今の若い子って、私達の時代には人生のレールの中に結婚が乗っかっていたのに対して、若い子たちは、人生のレールの中に結婚というものが乗っかっていない。

いや、それがいいとか悪いとか言いたいんじゃなくて、ここで言いたいのは、次の年に仕事があるかないかも分からないようなところにはちょっと行けないなってなるんですよ。私達の時代のように、結婚して夫に養ってもらうから問題ない、自分の仕事は家計を助けるためのパートだから問題ない、という感覚ではないんですよね。

ですから、今回の3年公募制なんて続けていると、なおさら人が来ない状況になっていくと思います。今年の4月も、何人の欠員で始まるんだろう、子どもに事故がなければいいんだけれども、心配に思っているところです。

※           ※           ※

ちなみに、会計年度任用職員制度が導入されるまでは、釧路市は「更新」が10年できたんですよね。ただし、10年で頭打ちで、それ以降は、他の課の臨時・非常勤に移らないと働き続けることはできなかった。

会計年度任用職員制度の導入でそれが撤廃をされて、3年の公募が導入され、試験に合格さえすれば、あらためて任用されますよとなったので、私自身は、10年でそれ以上は絶対に更新ができないよりはいいのかなって思っていました。そして実際、私達は専門職で、人材確保が難しい場所でもありますので、基本的には再任用されることにはなってはいます。

とはいえ、学童の職場でも、実際に試験に受からなかった方も出てきましたから、10年の上限が撤廃されたことをもってよかったと言えるのかは、そう単純な話ではないと思っています。やっぱり大本の雇用不安の解決が必要だと思います。

あわせて、会計年度任用職員制度が導入されるまでは、学童は、例外的なルールを勝ち取っていて、最初は「厚生員」という名前なんですが、10年経過後には、「主任」の試験を受けて、それに受かったらまた10年働くことができて、「主任」の後には「館長」の試験を受けることができて、「館長」になったらまた10年を働くことができるというルールがありました(資料を参照)。

※           ※           ※

組合で長くたたかってきました。要求を勝ち取るのもなかなか難しかったりするんですけれども、やっぱり粘り強く状況を話して、市当局にも分かってもらうしかないのかなと思いながら頑張っています。

私からの報告は以上です。ありがとうございました。

 

 

資料 児童厚生員だけに適用されている勤続上限のルール

釧路市の嘱託職員は、原則として一〇年で勤続期間が終了となることは既述のとおりである。その唯一の例外が児童厚生員である。

児童厚生員は、一般の児童厚生員で一〇年、主任児童厚生員で一〇年、館長で一〇年を働くことができるようになっている。一般から主任へは七年目から、主任から館長へは六年目から、面接試験を経て、昇格することができる。計算上は三職種の合計三〇年を働くことができるようになっているが、実際には、早めに昇格させられてしまい、残りの期間を放棄せざるを得ないのが現状であり、例えば七年目で主任になった者は、一般児童厚生員としての残り四年間の勤続期間を放棄することになる。主任から館長への移行は、以前は四年目からだったが、館長職のなり手が少ないという事情もあって、数年前に六年目からに変更になった。希望者が少ない理由の一つは、早くに昇格してしまうと、合計勤続年数が短くなってしまうこと、館長になると子どもと接する機会がなくなってしまうことによる。

出所:川村・正木(2018)より転載。

 

 

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