パタゴニアユニオン「パタゴニア日本支社に非正規スタッフへの無期転換逃れ撤回を求めます」

私たち無期転換逃れ阻止プロジェクト(略称、ムキプロ)は、民間職場においても公務職場においても、安心して働き続けることができる社会の実現を目指して活動する、労働組合・弁護士・学者・市民で構成された団体です。

ムキプロでは、3月7日に、当団体主催・日本労働弁護団北海道ブロック共催で、参加者75名で「非正規/働き続けたいシンポジウム」を開催しました。

当日の次第は以下のとおりです。

1.竹信航介弁護士(日本労働弁護団北海道ブロック)「雇い止め・無期転換逃れに関する基本的な法律の解説」

2.現場の闘いの報告

(1)パタゴニアユニオン代表 藤川瑞穂
(2)東海大学教職員組合 執行委員長 佐々木信吾
(3)くしろ児童厚生員ユニオン 特別執行委員 中谷公子

3.川村雅則教授(北海学園大学)「3つの雇い止め・無期転換逃れの整理」

ムキプロ事務局の責任で現在、当日の報告をまとめる作業に着手しています。

まずは現場の闘いの報告その1です。どうぞお読みください。

 

 

パタゴニア日本支社に非正規スタッフへの無期転換逃れ撤回を求めます

パタゴニアユニオン代表 藤川瑞穂

 

資料 入社から現在に至るまで、労働組合としての取り組みなど

2019年4月 パートタイマーとして入社。

2021年7月 同じストアで働く仲間が、、、。札幌地域労組に電話相談。

2022年2月 第1回団体交渉。「(社員を)入れ替えてフレッシュに」←⁈⁈

この後、4回目まで対話は平行線。

2022年5月 ユニオン加入を呼びかけるDMを全国の直営店22店舗、本社、リペアセンターへ。各店マネージャーに即回収される。

2022年7月 パタゴニアユニオン結成。記者会見後、ユニオンとして第1回目の団体交渉。「日本の経済が停滞しているのは雇用の流動性がないから」

2022年9月・11月 基本労働協約案、ほとんど全て不合意。ユニオン宛ての郵便物の取り継ぎを拒否。→ユニオンはどこに存在するか。

2023年2月 署名キャンペーン開始 「パタゴニア日本支社に非正規スタッフへの無期転換逃れ撤回を求めます」

出所:当日配布資料より。

 

 

本日はどうぞよろしくお願いします。

竹信弁護士の話を聞いていて率直に感じたのは、今自分が働いているパタゴニア日本支社で行われていることというのは、まさに、教科書通りの無期転換逃れ、ある意味で正統派の無期転換逃れなのだということです。そのことをしみじみと感じながら、話を伺っていました。

本日は、私が入社してから現在に至るまでのこと、ユニオンを結成してから会社とどのようなやり取りがあったのかということをお話ししたいと思います。

私が働くパタゴニア日本支社は、アメリカに本社を置きますアウトドアウェアの製造販売を行っている会社になります。使っていただいている方がおられるかもしれませんし、このパタゴニアのラベル──P-6ラベルと私達は呼んでいますが、これがついた服を街で見かけたことのある方もおられるのではないでしょうか。登山・クライミング、サーフィン、フィッシングなどフィールドで使うアウトドアウェアや、製造者に公正な価格が保障されていることが認証された、フェアトレード・サーティファイド縫製の衣類を製造しています。

私が入社しましたのは2019年4月で、パタゴニア社の直営店でパートタイマーとして働き始めました。

入社の面接のときに、この契約は5年までだから、という話をされました。そのとき、私自身、労働契約法改正がうんぬんという認識は非常に薄くて、話された内容が正直言ってよく飲み込めていない部分がありました。自分がどういう条件で働かなければならないのか、少しピンときてない部分があったんですけれども、この会社で働きたいっていう気持ちと、それから、パートタイマーとしての契約は5年までだけれどもその後に社員になるっていう方法も提示されたんですね。社員になれば続けられるという話だったので、この年齢で新しく仕事を始めて社員登用の道が開けているのかって、逆に驚いて、そういう会社なんだ、すごく楽しみだな、と思って入社しました。

その後、面接で説明されたことに疑問を持ちつつも働き続けていたんですが、2021年の7月に、ストアで一緒に働いた同じパートタイマーの仲間が突然、退職をしました。どうしたんだろうと思っていたら、結局、この雇い止めの背景には例の5年問題があることが分かりました。面接でピンときてなかったものが目の前で現実化したことにある意味非常にショックを受けました。というのも、パタゴニアという会社は、社員を非常に大切にするというメッセージを、働いている私達だけでなく社会的にも出している会社です。しかし、この5年雇い止めの問題が実際に目の前で起きたわけです。

その時点でようやく、これは会社の姿勢として何か問題があるんじゃないかという問題意識を持つことができて、札幌地域労組に相談をしたわけです。このとき、まもなく5年を迎えるというスタッフが同じ店の中にいましたし、全国で直営店が22店舗ありますので、同じような立場で働いているパートタイマーは必ずいるはずです。こうした状況をこのままにしていていいはずがないと思いました。こういう形で人が身を切られる、働き続けたいのに働き続けられない、雇い止めしたところは新しく人を入れ替える──こうした状況はやっぱり受け入れがたい、何かできることはないかということで、現在に至ったわけです。

※        ※        ※

札幌地域労組につながって相談をする中で、やはりこれは労働組合として団体交渉をしなければならないと教わりましたので、私が札幌地域労組に個人加盟して、第1回目の団体交渉を行いました。

私と札幌地域労組の桃井さんと鈴木さんの3人で、会社側の弁護士と人事担当者と話し合いました。そして、この5年上限というルールをなぜ設けているのか質問したところ、労働契約法18条に対応するためだというのが会社側の回答だったんですね。それで先ほど、教科書通りの無期転換逃れ、正統派の無期転換逃れ、と述べたわけです。

「期待権」をコントロールするためにやっている、パタゴニアで働きたいスタッフはたくさんいるので、スタッフを入れ替えて「フレッシュ」にしたいっていうことを会社側から言われました。この「フレッシュ」という言葉は私にとってすごく衝撃的でした。フレッシュという言葉を人間に使うんだと思いました。おそらく生涯忘れられない言葉だと思うんですけど、逆に言えば、私たちが長く働くことでフレッシュさが失われるのかと疑問でした。こんな調子で会社の態度というのは、働いている人たちに対して非常にある意味で冷淡だと思いました。

そして会社が主張したのは、これは違法ではない、ということです。でもこちらは、違法であるかどうかではなくて、これはパタゴニアとしてふさわしいことなのか、ということを問うているわけなんですけれども、違法ではないので全く問題はありません、と返ってくる。

こういうやりとりで、札幌地域労組の力を借りて4回の団体交渉を終えたのですが、このままの形で団体交渉を続けても、この状況を突破していくのは難しいだろうということで、社内のスタッフに呼びかけて、ユニオンを結成することにしました。

幸い、4人が集まってくれましたので組合を結成することができました。ただ、加入を呼びかける段階で、DMを全国の22店舗の直営店、本社、リペアセンターに出して、ユニオンを作ります・加入しませんか・何か働きづらさを感じていませんか、と呼びかけたんですけれども、即、各店舗のマネージャーに回収されてしまいました。ですから、DMが届いたことすら知らないスタッフがほとんどだったと思います。

そんなこともありながら、一応2022年の7月に、パタゴニアユニオンを結成し、記者会見などをメディアの方々に取り上げていただき、そして、ユニオンとしての第1回目の団体交渉を行いました。

ユニオンを作って、パタゴニアで行われていることがメディアで取り上げられたことで、会社に対して少しは圧力をかけられたんじゃないかなと思っていたのですが、会社の態度は全く一緒で、日本の経済が停滞しているのは雇用の流動性がないからだ、ということを団体交渉では主張されてしまい、日本の雇用の流動性や経済の停滞まで私達は背負わされてしまったのか、と思いました。

ただ、流動性と言いますけど、流動性を背負わせられているのは、有期雇用のパートタイムが主であって、正社員のような安全地帯にいる人たちがパートタイマーに向かって、流動性が必要だよねっていうのはフェアではないと私は思います。

ユニオンができたので、基本的な労働協約を結びたいと思っても、それは法で決まっていることだから、とほぼほぼ却下される状況。その中でも、札幌地域労組から郵便物がきてもそれは取り次がれない状況が続いています。ユニオンの存在などないものであるかのような扱いを終始一貫して会社は取り続けているんですね。

ユニオンができましたということを社内のスタッフに対して会社の人事担当者が説明するときも、「社外にユニオンができた」と言い方をする。パタゴニアで働いている私達がユニオンを作って、内側から、これはおかしいと声を上げているのに、外部のものであるかのような言い方や振る舞いをするのはおかしいと思います。フレッシュにしたいうんぬんと言ったときと同じで、働いている私達が非常に軽視されている、粗末に扱われていると感じます。

本質的にはパタゴニアは、働いている人間を大切に扱わない、思い通りにならなければ、強い力をかけてくる会社なのだと態度で示してしまっている。

※        ※        ※

パタゴニアは、故郷である地球を守るためにビジネスを行う、という企業理念、ミッション・ステートメントを掲げています。この高い企業理念に全くふさわしくないことが行われている。そのことの矛盾は、内側にいる私達こそが言わなきゃならないことだと思ってここまで活動してきました。

道のりはかなり険しいと言いますか、正直、成果はなかなか手にすることができていない状況ですが、それでも、やっぱりこれは、働く私の権利ですし、一緒に働いている仲間の権利でもあるし、さらには、パタゴニアという会社をこえて全ての働く人たちの権利に関わることでもある。ですから、自分たちはみんなの権利のために声を上げているんだと思っています。

社会運動というものに初めて関わるようになって1年が経ちますが、声を上げるということは決して怖いことではない。上げてしまえば全く怖くなくなる、ということを、働いていて今苦しい状況にある人たちや仕事で追い詰められているような人たちに、ぜひ伝えたいと思います。

雑ぱくですが、まずはこれで報告を終えたいと思います。

 

 

(関連サイト)

パタゴニア日本支社に無期転換逃れ撤回を求めます
https://www.change.org/p/StopPatagoniaJP

パタゴニアユニオン@無期転換逃れ問題 Twitter
https://twitter.com/patagonia_union

札幌地域労組・パタゴニア
https://sapporo-general-union.net/tag/%E3%83%91%E3%82%BF%E3%82%B4%E3%83%8B%E3%82%A2/

 

 

 

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