川村雅則「今こそ有期雇用の乱用を問う、無期転換運動に労組は全力投入を」

機関紙連合通信社が発行する『連合通信(特信版)』第1223号(2017年12月20日、2018年1月5日合併号)に掲載された原稿です。お読みください。

 

 

今、雇用安定社会が実現するかどうかの岐路にあります。2012年の労働契約法改正で有期雇用者に無期雇用転換(雇用安定)の道が開かれました。ところが、その申し出が大量に発生する18年4月1日を前に、雇い止めなどの脱法行為が相次いでいるからです。労働組合の正念場です。

 

推進・黙認されてきた有期雇用

「1年単位の雇用なのでいつ切られるか不安」「更新時期が近づくたびに夜も眠れなくなる」

非正規雇用者からよく聞かれる声です。日本では、仕事に期限はないのに有期で人を雇い続ける(反復更新する)ことが法制度上、容認されてきました。いわば有期雇用の乱用です。

使用者側における有期雇用のメリットは、雇用調整が容易である点。経営危機や生産変動に対する「緩衝材」としての役割を有期雇用者は持たされてきました。仕事内容や責任が同じでも、雇用形態が異なれば低処遇が可能という点も拡大に拍車をかけました。多くは女性で家計補助的な就労と位置づけられ、労働界も全体として、こうした状況を黙認してきました。

ここにやっと規制が導入されたのが、12年の労働契約法改正だったのです。

 

生かそう改正労契法

 

改正労契法は、同一の事業者との間での労働契約期間が通算で5年を超えた有期雇用者に対し、無期雇用に転換する権利を与えます。多くの労働者が18年4月1日にその申し出が可能になります。使用者は申し出を拒否できません。

ただ、合理的な理由がなくても有期で人を雇うこと自体は許されており、「入口規制」をどうするかという問題は未整備です。権利を得るのに「5年」もかかるのは長すぎます。非正規公務員が同法の適用除外になっている点を含め課題は少なくありません。

しかしながら改正法のインパクトは大きい。モノ言えぬ非正規雇用者2千万人(「労働力調査」によれば、少なく見積もってそのうちの7割が有期雇用者)の「世界」に、安定した雇用が持ち込まれることの意義を想像してみてください。

 

無期転換運動で労組の再生を

 

今、次々に表面化しているのが、雇い止めや通算契約期間をゼロにするクーリングなどの脱法行為です。

例えば大学業界では、改正法の趣旨通りに無期転換を実現すると明言した国立大学法人などは1割未満です(文科省調べ)。東北大などでは数千人単位での雇い止めが予告されています。大手自動車メーカーがクーリングを企図していることも報じられました。

労働法は労働組合の力があってこそ効力を発揮します。今回の無期雇用転換も同じ。労組に問われているのは、有期で雇われ続ける不条理への共感的な理解であり、そもそも「5年」を待つ必要はありません。

残された期間はわずか。労働組合・労働運動の再生をかけた正念場です。

 

 

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