公契約運動を進めるためには現場の実態把握が不可欠です。2021年度に実施された函館市と北海道の公共工事現場での調査結果を鈴木亙さん(建交労函館支部)からご提供いただきました。どうぞお読みください。
鈴木亙「2021年度 函館市・北海道 公共工事現場調査」『建設政策研究所』第206号(2022年11月号)pp.42-43

■函館での公共工事現場調査の概要
2021年度の函館での現場調査は、コロナ感染拡大が進む中で行われました。
例年と同じ方法を行うことが出来ず、アンケートを事前に現場事務所へFAXして現場事務所を訪問しての調査活動となりました。
そのため例年に比べてアンケートの回答数が少なく、現場代理人からの対話もあまりできない現状となりました。
函館市は土木部の協力で土木現場3現場・建築現場3現場、北海道は渡島総合振興局入札契約課の協力により土木現場3現場を選定し、を調査しました。
アンケート回収は9現場43名にとどまりましたが、氏名・住所を記入してくれたのは例年並みの20名(46.5%)にのぼりました。
■調査結果の特徴について
以下は函館調査分24名と北海道調査分の19名をあわせた43名の分析になります。
(1)建設業の経験年数では、「30年以上」の経験者が11名(26%)が1番多く、続いて「20年~25年」と「25年~30年」が6名ずつ(14%)という結果です。
「1年未満」は4名(9%)、「1年~5年未満」は5名(12%)、「5年~10年未満」は4名(9%)、「10年~15年未満」は2名(5%)、「15年~20年未満」は4名(9%)──これからの建設業を担う経験年数の短い方はいるのが分かりますが、中核を担う人材の少なさが目立つ結果となりました。
(2)建設業の就労形態では、「通年雇用」が34名(79%)となりました。「一人親方」が5名(11.6%)、「季節雇用」が3名(7%)となり、冬場の働き口があるのかが気になりました。
(3)あなたの会社は、「元請け」が4名(9%)、「1次下請け」が31名(72%)、「2次以下の下請け」が6名(14%)の回答になりました。
(4)雇入通知書について、「もらった」という回答は35名(81%)となりました。
一方での「もらっていない」が3名(7%)、「わからない」が3名(7%)というのは、高い比率ではないかと思います。
(5)函館市と北海道の日給者の賃金について、普通作業員は10,000円程度で設計労務単価の60%に満たない賃金でした。回答のあった内装工・警備・大工・重機オペ・型枠工の各職種も設計労務単価の47%から57%の賃金回答となりました。
9年連続で現場調査に入っていますが、日給者の賃金は、9年前とほぼ変わらない水準でした。
函館市日給者平均
職種 | 日給今年平均(円) | 積算単価(円) | 比率(%) |
普通作業員 | 10,285 | 17,300 | 59.4% |
内装工 | 13,000 | 24,500 | 53.0% |
警備 | 7,200 | 13,900 | 51.7% |
大工 | 12,250 | 25,100 | 48.8% |
重機オペ | 12,000 | 20,900 | 57.4% |
北海道日給者平均
職種 | 日給今年平均(円) | 積算単価(円) | 比率(%) |
普通作業員 | 10,000 | 17,300 | 57.8% |
型枠工 | 11,750 | 23,300 | 50.4% |
大工 | 12,000 | 25,100 | 47.8% |
(6)休日について、35名(81%)が「毎週日曜日」との回答となりました。
「毎週土曜日と日曜休み」が5名(12%)の回答、未回答が3名(7%)の回答となりました。
(7)コロナ禍の仕事量について、仕事量が昨年に比べて29名(67%)が「変わらない」、「仕事量が減った」の回答が14名(33%)の回答となりました。昨年に比べて29名が「変わらない」との結果は仕事量がどれだけあったかが気になる回答となります。
今年の現場調査では具体的に聞くのも大事かと思いました。
(8)有給休暇について、昨年「有給休暇をとった」のは9名(21%)の回答、「有給休暇をとっていない」は29名(67%)との回答になりました。7割弱近くが有給休暇を取得していない現状の回答になりました。
有給休暇年間5日間が義務化になったが、全く進んでいない状況であることがわかりました。
(9)建退共について、「手帳を持っていない」が7名(16%)、「会社に預けてある」が31名(72%)との回答になりました。会社に手帳を預けている31名のうち8名が「見たことがない」という回答になり、証紙が貼り付けされているか企業側と労働者側で確認できる方法をとる必要がある回答です。
(10)公的年金について、通年で厚生年金が33名(77%)、年間を通じて国民年金に加入が4名(9%)、年間を通じてどちらの年金に加入していないのが2名(5%)と年金未加入者が2名もいる気になる回答となりました。
(11)健康保険について、社会保険加入が22名(51%)、建設国保加入が8名(19%)、国民健康保険加入が11名(26%)の回答になりました。社会保険加入率が5割という低い水準が気になる回答となりました。
■終わりに
函館市交渉を毎年行っている事により、今年も現場調査に入ることができます。
今函館市土木部が現場を選定してくれておりますが、現役労働者を組合員に加入させるという長き課題について、今年こそはとの思いもあり、コロナ感染の状況も見ながら函館市とあわせて北海道現場調査も進めてまいります。
現場労働者の生の声を、私が聞いて自治体の担当者に伝えるという大事な役目もあり、1歩でも2歩でも建交労函館支部の要求が進むようこれからも頑張りたいと思います。
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