日本労働弁護団北海道ブロック団員である栗原望弁護士による投稿です。どうぞお読みください。
2021年5月21日、最高裁判所は全国で提起されていた建設アスベスト訴訟について、国や建材メーカーの責任を認める判決を言い渡しました。
建設アスベスト訴訟は、建設作業に従事していた方が、建材に使用されたアスベストによって健康被害を受けたとして、アスベストが健康に害を及ぼす可能性があると分かっていたにもかかわらず、規制権限の行使を行わなかった国及び建材メーカーに対して、損害賠償を求めた集団訴訟です。北海道では、労働弁護団員も多数参加しております北海道建設アスベスト訴訟弁護団が被害に遭われた原告の方のために活動を行ってきました。
今回の最高裁判決では、昭和50年以降(一部の職種については昭和47年以降)に、国が対策を取らなかったことが違法であると判断され、昭和50年以降に建設現場で働いた結果、石綿肺や中皮腫等のアスベスト関連疾患に罹患した方について、国に対して一定の損害賠償の請求が認められました。
他方、建材メーカーについても責任があることは最高裁判決で認められましたが、具体的にどの建材メーカーの建材が疾患の原因となったのかについては、個々の原告ごとに検討が必要であることから、現在も建材メーカーに対する訴訟が継続しております。北海道では、現在第1陣が札幌高等裁判所の判決を受けて上告、第2陣が札幌地方裁判所の判決を受けて控訴をしており、第3陣と第4陣が札幌地方裁判所に係属しております。
最高裁判所判決を受けて、令和3年6月9日に「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」が成立しました。これにより、建設現場で働き、中皮腫・肺がん・石綿肺などのアスベストを原因とする疾患に罹患した方やそのご遺族に対し、一定の要件を満たす場合に国が給付金を支給する給付金制度が新設され、今年の4月頃から給付金制度が開始となりました。給付金の対象となる方は、①昭和50年10月1日から平成16年9月30日までの間に屋内での建設作業現場で働いていた方、または昭和47年10月1日から昭和50年9月30日までの間にアスベストの吹付作業に従事していた方で、②アスベスト関連疾患(じん肺管理区分管理2~4に該当する石綿肺、中皮腫、肺がん、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水)の患者または遺族で、③労働者や一人親方・中小事業主(家族従事者等を含む)である方で、病態区分に応じて、550万円~1300万円の給付金が受けられることになります。他方、建材メーカーに対しては、損害賠償請求訴訟の提起を行う必要がありますし、屋外作業に従事していた方など、最高裁判決で建材メーカーの責任が認められなかった方についても、救済を目指していく必要があります。
給付金制度の利用については、行政認定方式によるもので、必ずしも弁護士に依頼しなくても申請できるような仕組みとなる予定ですが、申請の前提として、アスベストを原因とする疾患であることについて労災の決定を受けていることが必要ですし、申請手続や要件を満たすか不安のある方もいらっしゃると考えられます。
そのため、建設現場の作業で肺がんや中皮腫等のアスベストを原因とする疾患に罹患された方がいらっしゃいましたら、一度北海道建設アスベスト訴訟弁護団(TEL 011-522-8716)にご相談していただければと思います。
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