2022年春闘を前に、本当の意味での賃金ボトムアップを実現するためにも見直すべきことは何か、大切にすべき視点と力の集中点は何か。道労連の提起と実践にについて述べているコラムです。
実現したイメージと実現までのロードマップを共有する
道労連ではこの間、①「企業内主義」春闘、②「リセット型」春闘、③「現地集合現地解散」春闘からの転換を提起し、必要な変革を呼びかけてきました。
コロナ以前から、ストライキは片手で数えられるほどに減少し、「統一要求」はスローガン的な機能にとどまり、妥結・決着は個々バラバラで流れ解散。同業種における労組のない職場への波及効果は皆無に等しい状況です。
「地域春闘」などの統一行動は「アピール行動」の枠内にとどまり、個別企業を超えて、横断的な統一要求を勝ち取るための本格的な結集軸をつくるまでには至っていません。「一年のうち、どこで交渉しようが大差ないのではないか」との声があがるほど、春闘における「統一」機能と役割が希薄になっています。
要求水準を問題視しているわけではありません。強調したいのは、一度も実現したことがないような中身であるほど、「実現するとどう変わるのか」のイメージと、「どのように実現するのか」のロードマップを作り、それをみんなで共有できているか、という点が重要になります。この取り組みが出来ていないと、本部と職場、役員と組合などの間での「温度差」を拡大してしまうのではないでしょうか。
賃金も運動もボトムアップをつくり出す春闘へ
北海道の最低賃金は、この5年間で103円(月額換算17,819円)アップしています。各組織でこの5年間、時給はいくら引上げたのか、月給はいくら引き上げたのか、積算してみてください。少なからぬ職場で、「最賃引上げ額以下」の賃上げに止まっていると思います。
労組が掲げる「賃金の底上げ」は、一番底辺の水準のみが引きあがることではなく、ボトムが引きあがることで全体の水準も同様に引きあげていくことです。そうでなければ、賃金が低位平準化されていくことになりかねません。
最低賃金について考える時、生存権・セーフティーネットとしての機能と、賃金の下限規制としての機能の両側面をふまえ、春闘をたたかうことが重要だと思います。
未熟練労働者の賃金は上がるけど、熟練労働者の賃金は停滞したまま。結果的に熟練労働者の相対的な価値が下方修正されることになります。非正規も、正規も、すべての労働者の賃金を底上げするたたかいで結集軸を広く、太くしていく春闘へ。労組が方針を見直し、運動を具体化することが求められています。
思い出してください。1年8か月におよぶ現場の不安・苦悩・奮闘を。感染対策をはじめ物理的にも、精神的にも負荷が増大し、私生活まで行動制限される中で、時間額にして28円、月額にして約4700円。その金額に見合うだけの労働をしてきたことに誇りと怒りを持ち、堂々と胸をはりましょう。ストライキを構えて闘いましょう。 「団結こそ力」です。誰も置いてきぼりにしない春闘にしましょう。
筆者:北海道労働組合総連合 事務局長 出口 憲次
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