木村憲一「労働行政で働く非常勤職員の任用実態と労働条件」

非正規雇用問題は民間にも公務員の世界にも存在します。とくに公務分野では、民間非正規に比べても、制度が複雑で問題が深刻です。労働行政で働く非常勤職員の雇用(任用)、労働条件について寄稿していただきました。

 

出所:国公労連「非正規公務員を差別しないで! 国の非常勤職員の手記」より。

 

全労働は、厚生労働省の内、旧労働省の職員でつくる労働組合で、非常勤職員も特別組合員として組織化しています。特別とつきますが、特別なのは組合費だけで、その他は常勤職員とまったく同じ立場です。しかし、非常勤職員としての任用条件(民間でいう労働条件)は、実に多種多様です。

 

 

まず、任用条件上で大きく区分けをすると、図の左半分が、いわゆる「給与法適用」となる月給制の公務員です。そして、右半分の内「相談員等」と書かれている部分が日給制の公務員で、さらにその右側は時給制となっています。日給制で1年契約で働いている公務員を労働行政の職場では「相談員」と総称しており、対外的に非常勤職員と認識される皆さんとなります。

非常勤職員の私たちの職場における仕事内容は、仕事探しの専門的知識を持つ就職促進支援ナビゲーター、諸法令や助成金等の知識をもって求人を受け付ける事業所支援アドバイザーや雇用保険の実務を担当する雇用保険相談員など、多様な分野に至っています。

厚生労働省全体では構成人員の半数以上、ハローワークの職業相談業務に至っては9割が非常勤であるとの報道もあるなど、もはや非常勤職員なしでは行政は機能しないというのが現状です。

 

さて、その非常勤職員のうち特に重要な役割を担っているのが「期間業務職員」という勤務時間の長い非常勤職員です。この職員の任用期間は、いまでこそ最大1年間(年度末まで)とされていますが、2010年の10月までは日々雇用職員、すなわち、日雇い公務員という扱いでした。そもそも、非常勤職員は、臨時的、補助的な任用しか想定しておらず、行政は常勤職員で運用するという前提は今も変わっていません。そのことは、非常勤職員の給料の名称が「諸謝金」であることからもみてとれます。つまり、会議に参加いただく有識者への謝礼金の枠組みを流用しているのです。これだけをみても、いかに国が非常勤職員の立場をないがしろにしてきたかがわかりますし、そうした制度のはざまにおくことで、退職手当法や休暇制度など様々な処遇の枠外においてきました。

しかし、労働組合に非常勤職員が組織化され当事者の声が届くようになり、官製ワーキングプア問題への批判の高まりもあって、1年契約を前提とした期間業務職員という枠組みができて、様々な処遇改善が図られるようになりました。ところが一方で、国民の受けが良い公務員バッシングの一環として、非常勤職員の常勤化防止(公務員試験を経ない任用枠に常に同じ者が採用されることで、広く国民の任用機会が失われるとの批判)も、国会審議の中であわせて実現が求めれられ、目下最大の課題といえる「公開公募制度」も期間業務職員のルールとして組み込まれてしまいました。

この制度の一番の問題は、能力が実証され、その職務があっても、更新できるのは2回まで、3回目は一般応募となることです。なんだそんなことか、厳しい現実はもっとあると思われるかもしれませんが、当事者の思い、抱える職場の雰囲気、そして選考実務にかかる影響は深刻で、まさに「行政の無駄、非効率」そのものです。

 

そもそも3回目で公募なので、「3年間」ではありません。くわえて、毎年の政府の事業予算により任用枠は減ることもあります。実際に次年度の任用数が決まるのは、予算が国会で採決される12月末を経て、地方出先機関においては1月中旬です。もし、自分の職務の数が保たれても、他の職員の枠が少なくなれば、他の職員が自分の枠に応募することもあり得ます。そして、ここに一般の応募者も殺到するのです。

労働組合がしっかりしていれば、1年間の評価をきちんと伝え、不安を助長しないよう働きかけることもできますが、所属長に何のプレッシャーも与えることができなければ、まさに面接一発勝負のブラックボックスな選考が待ち構えており、ルールの見えない雇止めも横行する可能性が生まれます。もともと、任用期間は年度末まで、もし、評価してきた能力がふさわしくなければ、任用中に適切に指導し、改善されなければ更新できないことを明確に伝えるべきですが、評価を適切にできていない、指導や伝達能力のない管理者に限って、ブラックボックスを活用したがるのは想像のとおりであり、得てしてそれは恣意的な判断に陥ります。

自分の能力がきちんと評価されているのか、そもそも何の基準で評価されてきたのか、良かれと思って提言してきた言葉が一つ一つが、上司の私に対する評価につながっていないか。職員・相談員同士の人間関係にミスがあったかもしれない。誰かがあなたのことを嫌っていると噂をしている。こうした、心を壊す一つ一つの要素が優秀な職員を貶め、職場の連帯感を失わせています。

非常勤職員が制度本来の臨時的、補助的な役割であるならば、議論の余地もありますが、現実として非常勤職員は恒常的、専門的業務を担っており、現状において「公開公募制度」はまったく機能していません。「公務員を減らすことが国民受けする」という、極めて稚拙な、実態を無視した遺物的な政策の狭間で、目的にそぐわない制度が無意味かつ無慈悲に、一国民である非常勤職員を苦しめ、行政能力を低下させている現実があります。

 

非常勤職員は、期間業務職員が制度化されるまで、賃金、休暇、福利厚生等あらゆる面で改善の埒外におかれてきました。繰り返しお伝えしますが、非常勤職員は、本来常勤職員が担うべき職務を任されています。その職員が、健康診断もなく(2006年実施)、通勤手当もなく(06年実施)、残業手当もなく(08年実施)、忌引き休暇もなく(09年実施)、育児・介護休業もなく(11年実施)、祝日がある月は給料が減り(11年改善)、ボーナスもなく(17年実施)、昇給もなく(18年実施)、夏期休暇もなかった(20年実施)のです。

通勤手当や、期末手当は、同一労働同一賃金の高まりを受け、やっと職員とほぼ同等になりました。休暇は制度化されても、全ての非常勤職員に適用されているのではなく、運動により制度開始後、徐々に適用を広げています。特に忌引き休暇は、制度があっても、1日の労働時間が常勤職員と同じでなければ取得できないという理不尽がありました。当時の非常勤職員は、常勤職員から15分短い労働時間で任用されていました。任用間もない非常勤職員は、たった15分の違いで、有給休暇も取れず欠勤をして、減給され葬儀にいったのです。ちなみに1日の労働時間が同一か否かで判断されますから、たとえば8時間勤務(現在常勤は7時間45分)であれば16日勤務でも忌引き休暇を適用できたのに、1日15分労働時間が短いだけで休暇がない。これは、決してあえて作った理不尽ではなく、為政者には非常勤職員が「見えていなかった」のです。

 

私たち国家公務員には、労働基準法も、労契法も、パート労働法など、あらゆる労働法規が適用されていません。いま、掲げてきた課題は、労契法の無期転換、パート労働法の差別的取り扱いの禁止など、様々な法によって本来守られるべきものです。国家公務員であること、そして非常勤職員であることで損なわれてよい理屈は一つもありません。公務の非常勤問題は人権問題だと私たちは主張します。公僕であるものの人権がないがしろにされて、どうしてその役割が果たせるのか。労働組合法もまた適用されない私たちですが、あるべき公務をめざす運動を続けていきます。

 

 

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