川村雅則「ようこそ!新人の皆さん 若者と職場へのアドバイス」

『連合通信特信版』第1294号(2021年3月20日号)に掲載された記事です。記事中で「労働組合がない職場でも安心を。地域には皆さんが一人からでも入れる労働組合があるのです。」と述べました。では、札幌にはどんな個人加盟ユニオン(一人からでも入れる労働組合)があるのでしょうか。資料として付けました。

若者たちが希望と不安を抱えながら、新しく職業生活を始める4月。一方、迎え入れる職場にとっても、やや緊張する季節でしょう。今、双方にとって何が必要か。非正規労働やワーキングプア、貧困など若者の置かれている事情に詳しい北海学園大学の川村雅則教授にアドバイスしてもらいました。

コロナ下の就活で苦労して得た内定。どんなつらいことでも、会社に言われた通り我慢して働かなければ……。そう思っている人は少なくないでしょう。

そもそも賃金や労働時間などの労働条件は、経営者が決めるものであって、皆さんにできるのは、耐え忍ぶことか、嫌なら辞めることぐらい、そう思っていませんか。学生時代のアルバイトでも、シフトの一方的な変更や残業代の不払い、ミスの弁償やノルマ・買い取りなど不条理に従うのは珍しくなかったはず。だとすれば、そう思うのは無理もありませんね。

しかし、それは違うのです。誰かが決めたことを一方的に押し付けられるのは民主主義社会のルールではないのだと知ってほしい。意思決定の場に参加して、自分の考えを主張する。職場の労働条件についても同じで、労働者と使用者が話し合って決めるのが雇用社会のルールです。

もっとも、一人で声を上げてもそれは通りません。みんなの声をまとめて使用者にぶつける必要があります。それこそが労働組合の役割です。教科書で習いましたよね。使用者と対等の立場に立つための唯一の手段が労働組合です。

問題が一つもない職場なんてありえません。そんな時、労働組合に相談することから始めてみてはどうでしょうか。労働組合がない職場でも安心を。地域には皆さんが一人からでも入れる労働組合があるのです。

 

先輩の皆さんへ/若者に向き合える職場に

職場に入ってくる若者と接する時、まずは生きてきた時代が全く違うことを念頭に置いてほしい。一度失敗したら再挑戦の難しい就職活動の重圧に、奨学金という多額の借金。自己責任社会を生き抜いてきた彼らに、「連帯・団結の力で問題を解決しよう」と言っても、まずピンときません。

そもそも、労働組合に接する機会などなく成長したのですから。「私鉄のストで学校が休みになった」なんて話は遠い世界の出来事です。逆に「ストなんて迷惑だ」という考えの方に引っ張られる可能性もあるかもしれません。

でも誤解しないでほしいのは、苦しむ労働者への想像力や共感力を彼らがもっていない訳では全くない、ということです。むしろ、ワーキングプアから職業生活を始めることも珍しくない彼らの世代こそ、客観的には、労働組合や政治の力を必要としていると言えないでしょうか。

そして、そうした彼らは上の世代に比べて人権感覚に敏感な側面も持っています。単身赴任や長時間労働を忌避する思い、男性の育児参加や夫婦別姓、性的少数派を指すLGBTの権利などへの関心は高いと感じています。

ただ、それらの課題の解決には、集団の力や政治の力が必要であることを、実感として持てていないのだと思います。変えた経験がないのですから。

 

●問われている私たち

 

若い世代が持つ労働組合への素朴な疑問や人権への関心に、職場の先輩たちがどれだけ向き合えるのかが逆に問われているように思います。

彼らが安心して何でも意見を言える組合の運営になっているのか、疑問に対してふに落ちるまで丁寧に説明できているのか。その辺りから、これまでの活動を省みる機会にしてみてはどうでしょうか。

 

資料 札幌にある個人加盟ユニオンの例

札幌地域労組

ウェブサイト https://sapporo-general-union.net/
所在地 〒060-0806 札幌市北区北6条西7丁目自治労会館3F
☎ 011-756-7790
e-mail sgu@s-union.gr.jp

札幌地域労組は、現在、札幌近郊の約100職場に単組・支部を置き、約2000名の組合員が加盟しています。

私たちは、あらゆる職種、階層の労働者に門戸を開いています。みなさんたち学生アルバイトだけでなくパートタイマー・臨職・嘱託・契約社員などいわゆる非正規雇用と呼ばれる人たちも、法的には正社員と同等の権利を持っていますが、そのことが必ずしも知られていません。私たちは、こうした不安定な雇用を余儀なくされた人たちの組合加入も積極的に進めています。

新たな組合結成や不当解雇などの権利侵害と闘うテクニックは、どこの組合にも負けないノウハウを持っていると自負しています。気軽に相談してください。

 

ローカルユニオン「結」

ウェブサイト http://sapporotikuroren.ciao.jp/
所在地 〒060-0909 札幌市東区北9条東1丁目2-22 北海道労働センター2F
☎ 011-557-8481
e-mail union_yui@yahoo.co.jp

「ローカルユニオン結」は、ひとりでもだれでも入れる新しいタイプの労働組合です。とくに、アルバイトとして働くみなさんや、臨時・パート・契約・派遣で働く人たちにピッタリの労働組合です。

結成は2005年4月で、当時わずか24人だった組合員は、現在では約400人にまで増えています。

私たちは、ひとりひとりの悩みにしっかり寄り添い、みんなで問題解決と要求の実現を図ります。首切りやパワハラなど深刻な問題に対しても、労働者の味方に徹する弁護士、社会保険労務士、専門の相談員が知恵を出し合って、敏速に対応します。強力な体制です。困ったときは一人で悩まずに気軽に連絡をください。

 

 

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