川村雅則「新潟市議会議員・中山均さんの実践報告を聞いて(公務非正規問題自治体議員ネット学習会の記録)」『NAVI』2025年11月23日配信
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※突貫で作成しました。誤字脱字などケアレスミスは見つかり次第、訂正をしていきます。大きな訂正を行いましたら注記します。本文に記載のとおり、本稿に残りうる一切の誤りは筆者の責任によるものです。
本稿は、公務非正規問題自治体議員ネット主催による連続学習会における、新潟市議会議員・中山均さんの実践報告に学んでまとめたもので、主として、人事委員会を取り上げたものです。なんだ人事委員会か、と人事委員会がわがマチには設置されていないことをもって自分たちには関係がない、と脊髄反射的に思われる方(議員、労働組合)がおられるかも、と思いましたので、この一文を加えます。そうした考えは、誤りだと思います。人事委員会が設置されていない自治体の関係者にも/にこそ、本稿はお読みいただきたい。人事委員会がない自治体は、だからこそ、何らかのかたちで、会計年度任用職員の実態把握に取り組まなければならないのです。新潟市人事委員会による、会計年度任用職員の業務内容等を対象にした調査の結果(「会計年度任用職員実態調査報告書」)はそのことを示しています。では、どうぞお読みください。
(追記)中山均さんから、学習会当日のPowerPoint資料をご提供いただきました。こちらをダウンロードしてお使いください。
2025年11月18日公務非正規問題自治体議員ネット主催連続学習会にて
新潟市議会議員・中山均さんの実践報告を聞いて
川村雅則(北海学園大学)
はじめに
公務非正規問題自治体議員ネット主催による連続学習会の第2回目が2025年11月18日に対面とオンラインで開催された。
本学習会のメインテーマは、「それぞれの自治体はどう変わったか──会計年度任用職員制度の今を検証しよう」である。本学習会では、新潟市議会議員・中山均さんに、報告をお願いした。経緯は、新潟市人事委員会が出した「令和7(2025)年職員の給与等に関する報告及び勧告」2025年10月9日に添付された「別冊_会計年度任用職員実態調査報告書(以下、実態調査報告書)」が関係者の間で話題になっていて──筆者も関係者から教わって読んで驚いた一人である──新潟市人事委員会のこうした動きの背景に中山さんを中心とする議員の取り組みがあったと知り、ぜひ、中山さんから直接お話をお伺いしたいと思ったのである(幸い、議員ネットの世話人経由で中山さんとつながることができた)。
本稿は、(1)人事委員会・公平委員会(以下、人事委員会等)[1]の概略を述べた上で、(2)新潟市人事委員会「実態調査報告書」の概略と、(3)新潟市議会議員・中山均さんの取り組みを整理し、(4)筆者の感想をまとめる。必要な箇所だけ読んでいただいて構わない。長々と書いてしまったが、会計年度任用職員の現状を調べさせるなど人事委員会等にその職責を全うさせる取り組みが必要である(!)というのが本稿の主張である。

[1] 本稿では、人事委員会を念頭においている。公平委員会については別途検討する必要がある。
1.人事委員会等の概略
まず、人事委員会等の概略などを、人事委員会等に対する筆者の漠然とした評価もまじえながら整理する。
率直に言って、会計年度任用職員にとって人事委員会等はどう役に立つのか筆者はぴんときていなかった[2]。もっと言えば、何か役に立つのだろうか、と疑問に思っていた。
教科書的に言えば、人事委員会等は、首長(任命権者)から独立した人事機関で、地方公務員の人事行政に対する専門的、中立的な機関である。任命権者の人事権の行使をチェックするなどして、人事行政の適正化はもちろんのこと、地方自治の本旨が実現するよう働く機関とされる。
とりわけ人事委員会には、職員の給与、勤務時間等の勤務条件について、議会と首長に勧告(いわゆる人事委員会勧告)を行う権限がある。
しかしながら、人事委員会が独自の勧告を行うようなことは果たしてあるのだろうか[3]。民間企業の給与実態調査は国(人事院)と共同で行われている。ましてや、会計年度任用職員の給与や勤務条件について独自の勧告をするようなことなど思いもよらない、と考えていた。
図 人事委員会と人事院の関係(人事院の民間給与実態調査)
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出所:総務省「人事委員会制度の概要」より。
あるいは、人事委員会も公平委員会も、いわゆる措置要求・審査請求・苦情処理制度を有している。
自治労(2023)の説明によれば、①措置要求とは、職員の給与や勤務時間等の勤務条件について、当局が維持改善等の適切な措置を執るよう、人事委員会・公平委員会に要求できる制度、②審査請求とは、職員がその意に反して懲戒処分や分限処分などの不利益な処分を受けた場合に、人事委員会・公平委員会にその処分が適切な内容であるかなどについて審査を請求できる制度、③苦情処理とは、職員の勤務条件や服務等に関する苦情について、相談を受け付け、迅速に対応することを目的とした制度、である。自治労(2023)にはその具体例も示されている。なるほど、労働組合がこうした制度を活用し、会計年度任用職員の権利を守ろうというその姿勢は、もちろん評価できるし、そうした運動が広がることを切に願う。
しかしながら、現状では、労働組合の支援が得られぬ会計年度任用職員が多い中で、こうした制度にどの程度の実効性があるだろうか。
例えば、不当に雇い止めされたと思った会計年度任用職員がその問題を持ち込もうにも、そもそも、それは雇い止めではなく、期間満了によるものだと解されるのが一般的であって、(民間の非正規雇用者のように)当該雇い止めの是非をめぐる検証は、果たしてどの程度行われているのだろうか。
あるいは、上司などからハラスメントを受けた会計年度任用職員が措置要求や苦情処理の制度を使ったとしても、速やかに対応がなされることなく期間満了を迎え、再度の任用はされることなく、そこで終了となる(職員としての立場を失った当該職員には制度利用の権利がない)のが一般的なのではないだろうか。だったら、訴えなどせずに我慢して働き続けることを選ぶ──こうした状況が非正規公務員の間で広くみられる実態なのではないだろうか。
筆者のこうした認識は根拠のないことではなく、非正規公務員の間で語られる現状や現実に起きている労使紛争・裁判などを念頭においての認識である[4]。いずれにせよ、イチ会計年度ごとの任用という解釈が厳格に行われている(偽装有期雇用が制度化されている)会計年度任用職員にとって、実効性ある救済措置制度など無いに等しいのではないか、と認識し、この点でも、筆者は人事委員会等にはあまり注目をしてこなかった[5]。
[2] 会計年度任用職員にとっての人事委員会等の役割は、自治労総合組織局(2023)pp.110-115「人事委員会・公平委員会(措置要求、審査請求、苦情処理)」を参照。
[3] この点は、橋本(2023)pp.533-534「二 給与勧告制度の問題点」でも指摘されている。「形式的に国の勧告に倣うということには問題があ」り、「人事委員会は、職員の給与の水準、給与制度適用の実態を十分に斟酌し、かつ、法律で明記されている職務給の原則および均衡の原則が実現されるような内容の給与勧告を行うべきである」。
[4] 例えば、拙稿の「会計年度任用職員にも民間並みの雇い止め規制を」『NAVI』2024年10月11日配信や「名古屋市非正規保育士雇い止め事件からみえてきた国と自治体の共犯関係」『NAVI』2024年12月26日配信のほか、原田仁希(2024)「公共を破壊する会計年度任用職員制度──スクールカウンセラー雇い止め問題」『学習の友』第853号(2024年9月号)pp.42-45、野田恵「法で守られない公務員 会計年度任用職員とは」『新婦人しんぶん』連載記事(2025年4月19日~9月16日)を参照。
[5] 新潟市でこの点、措置要求・審査請求・苦情処理がどう機能しているかは今回は伺っていない。別の機会に教わりたいと思う。
2.新潟市人事委員会「実態調査報告書」を読んだ感想
人事委員会等に対する筆者の認識はそのようなものであったものだから、新潟市人事委員会による実態調査報告書のことを教えてもらって驚き、資料を含め100ページ超の実態報告書をプリントアウトして読んでさらに驚いた。会計年度任用職員を対象に人事委員会がこんなしっかりした調査活動を行ったりするんだ、と。
概略を整理する。「第1 調査の目的」によれば、会計年度任用職員に対して行われた「アンケート結果を踏まえ、人事行政に関する中立的・専門的機関としての立場から、本市の会計年度任用職員について、会計年度任用職員制度の趣旨に則り、職務状況や処遇が適切であるかを確認するため、会計年度任用職員へのヒアリング調査を実施し、検証を行った。」とある。調査方法はヒアリングだ。
その具体的内容は、「第4 調査の概要」の「1 調査方法」にまとめられている。掲載表を以下に転載する。
| 調査期間 | 令和4年8月4日~令和5年1月11 日 |
| 調査者 | 人事委員会事務局職員 2名 |
| 調査対象 | ①常勤職員がいる職種(一般俸給表、医療職俸給表、福祉職俸給表の複数の給料表から選定)、②常勤職員がいない職種のうち、専門性の高い相談業務を行っている職種、③事務系職種(一般事務補助、事務補助、窓口業務)を対象として、旧非常勤職員と会計年度任用職員制度移行後に新たに採用された者の配置人数や、勤務場所の施設区分の違いを踏まえ、調査先・調査人数を抽出した。 |
| 調査方法 | 会計年度任用職員が所属する職場を事務局職員が直接訪問し、厚生労働省の「職務分析実施マニュアル」を参考に作成したヒアリング調書(※資料編 資-3を参照。)を用いて、会計年度任用職員の担う業務内容や業務の難易度、権限の範囲、責任の程度、業務内容が勤務条件通知書や募集案内と一致しているか、業務に必要な知識・技能の習得期間などの聞き取りを行った。併せて、当該職員の管理的立場にある係長級職員からも聞き取りを行い、組織の中での常勤職員と会計年度任用職員の業務分担の考え方について確認を行った。
後日、聞き取った内容を記載したヒアリング調書を調査対象者に送付し、内容に相違がないか確認を行った。 |
出所:新潟市人事委員会「実態調査報告書」pp.6-7より転載。下線は引用者
表中の下線部分、すなわち、厚生労働省の「職務分析実施マニュアル」を参考に作成したヒアリング調書を用いて、9職種(後述)・47名の会計年度任用職員からヒアリングが行われ、併せて、当該職員の係長級職員からもヒアリングが行われているのが特徴である。従事している仕事が正職員の仕事と同じか異なるかをアンケート調査で非正規職員におおまかに尋ねる手法とは違って、詳細な調査が行われている(もちろん、簡易に広く把握する上でアンケート調査という手法も有効ではある)。
そして、報告書では、図書館司書、保健師、保育士、保育補助、発達心理相談員、児童福祉専門相談員、女性相談員、生活支援相談員、事務といった職種ごとに調査結果が記述され、最後に、「第5 総括」がまとめられている(pp.98-100)。
抜き書きすると、「会計年度任用職員は一部の専門的な業務を除き、常勤職員の指示か判断に基づき、日々の業務を行っていることが認められた」という基本認識が述べられた上で、「1 業務配分や人員配置について」は、以下のとおりである。
- 「図書館司書〔略〕・保健師〔略〕及び保育士〔略〕の免許資格職については、専門的な業務において、常勤職員と会計年度任用職員とで大きな違いは見られなかった。とりわけ、会計年度任用職員が主担当として業務を任されているケースがあり、保健師では、取りまとめやリーダーシップ的な役割を任されていたり、保育士では、産休代替職員が配置されないためクラス担任を担っていたりする。」
- 「図書館司書では常勤職員が配置されていない一部の地区図書館に勤務する会計年度任用職員の負担感も他の職場に従事する同種の会計年度任用職員よりも大きいと受けとめられている。」
加えて、「2 処遇(給料・報酬)について」では、次のとおりである。
- 「会計年度任用職員制度移行の前後で期末手当が支給されることになったことへの好意的な意見が見られた一方で、月の給料・報酬の金額の低さへの不満の意見が見られた。」
- 「発達心理相談員〔略〕や女性相談員〔略〕といった、専門性が非常に高いと認められた職種においては、自己研鑽や業務経験を重ねながら、ノウハウを蓄積していくことが、業務を行っていく上で必要であり、経験年数の長さが業務に資するものとして重要と考えられる。したがって、一般的な事務補助の会計年度任用職員と同様に一律の加算上限としていることは適正さを欠く。このような状態が続くことは、有為な人材確保の観点からも懸念がある。」
会計年度任用職員の給料・報酬に関する改正内容が盛り込まれた、2025年6月25日に発出された、いわゆる総務省マニュアルにも言及しながら、委員会の見解が補強されている。
全国各地の自治体においては、会計年度任用職員に対しては、補助的な労働であることなどが強調されることで、その賃金・労働条件の低さが正当化されるのが一般的ではないだろうか。職種によって金額に差はつけられていても、総じて低い金額であるし、しかも、すぐに頭打ちになるような設計であるのが一般的ではないだろうか。新潟市人事委員会がまとめた実態調査報告書は、会計年度任用職員のこうした現状に対する、異議申し立てと言えるだろう。
人事委員会がなぜこうした取り組みを行うに至ったか。本学習会では、中山さんらの取り組みを聞いた。
3.新潟市議会議員・中山均さんの取り組み
本学習会で中山さんが強調したのは、人事委員会の設置されている自治体においてもその機能の一つである労働基準監督機能が十分に働いていないこと、人事委員会が設置されていない一般自治体においては機関そのものが欠如していることである。同機能は、地方公務員法第58条第5項にうたわれている[6]。以下のとおりである。
労働基準法、労働安全衛生法、船員法及び船員災害防止活動の促進に関する法律の規定並びにこれらの規定に基づく命令の規定中第三項の規定により職員に関して適用されるものを適用する場合における職員の勤務条件に関する労働基準監督機関の職権は、地方公共団体の行う労働基準法別表第一第一号から第十号まで及び第十三号から第十五号までに掲げる事業に従事する職員の場合を除き、人事委員会又はその委任を受けた人事委員会の委員(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の長)が行うものとする。

こうした状況下で行われた一つが、中山さんの呼びかけで2021年2月に有志会派・議員によって行われた人事委員会との交渉(!)である。
これは、新潟市が政令市に移行して以来初めてとのことであった。興味深かったのは、このようなかたちで議員から交渉の要望を受けるのは初めてのことであると、人事委員会の職員が心なしか喜んでいるように中山さんの目にはみえた、という点である。人事委員会の職責を理解し、それを全うしたいと思っている職員もいる、ということであろうか。わがマチの人事委員会ももしかしたら、と希望がもてるエピソードである。
あわせて興味深く聞いたのは、人事委員会は労働基本権の制約の代償措置として設けられているために──少々言いづらいがということわり付で──革新系の議員においても人事委員会に対して何かモノを言うという発想をとりづらかったことが全国的にあるのではないか、という中山さんの推測である。とくに従来は、人事院勧告で給与が上がるということが続いていたから、人事委員会に対して申し入れなど行うという発想が弱かったのではないか、という。
なお、中山さんから当時の申し入れ書を後日にお送りいただいたので、以下に添付する。
注:「確定版」を現在探していただいている。見つかり次第、差し替える。
2021年2月5日
人事委員会委員長 兒玉 武雄 様
会計年度任用職員の労働条件・俸給等についての申し入れ
議員 中山均
公正な人事行政に関するご尽力に敬意を表します。
人事委員会は、言うまでもなく、労働基準監督機関として職権を行使すること、職員の苦情を処理することなども担うべき事務とされています。今年度から導入された会計年度任用職員制度についても、職員の労働条件や俸給等の適切性・公正性について、十分かつ積極的な検証が必要と考えます。
その観点から、あらためて以下を申し入れまたは確認したいので、対応・回答をお願いいたします。
1.会計年度任用職員のうち、特に専門職等に適用されている俸給表が適切なのか、あらためて十分検証していただきたい。特に ①専門資格を有する職員の時給(換算)を他の職場での同様職種の時給と比べた場合 ②非常勤職員から移行した職員と、新規採用職員の俸給の差 等についても検証をお願いしたい。
2.11月臨時議会での職員給与に関する条例改正で、新年度から会計年度任用職員の期末手当も削減されることになった。正規職員と会計年度任用職員では「ボーナス」の構成が異なる(会計年度任用職員には「勤勉手当」が支給されておらず、「期末手当」削減分の相対的影響が大きい)ので、単純に「正規職員との均衡」を理由にした同率の削減は極めて不適切と考える。また、そもそも正職員と比べて大きく格差がある中で、1年間という契約期限を区切られている労働者の労働条件をその契約期間中に不利益な変更を行なうことは、公正な人事行政に反するものと言わざるを得ない。
これらの観点から、人事委員会としても当該条例改正のうち会計年度任用職員に関わる部分が公正なのか、あらためて真摯に検討すべきである。
3.12月議会一般質問答弁で明言した職員の苦情などを適切に拾い上げる仕組みの進捗状況はどうなっているか、明らかにしていただきたい。

同じく中山さんの呼びかけで有志会派・議員による処遇改善の市長あて申し入れが2022年11月に行われている。
処遇改善の申し入れを超党派で行う──このような取り組み一つだけでも参考になるのではないか(本稿を読まれている皆さんの自治体では実施されているだろうか)。こちらも、市長宛の申し入れ書を中山さんから提供いただいたので、添付する。
2022年11月18日
新潟市長 中原八一 様
会計年度任用職員の期末手当引き上げと雇用条件改善についての申し入れ
日本共産党新潟市議会議議員団
代表 渡辺 有子ともに躍動する新潟
代表 加藤 大弥市民ネットにいがた
代表 青木 学無所属
小泉 仲之
中山 均
新潟市政の発展のための日々のご尽力に敬意を表します。
さて、本市の人事委員会は去る10月の「報告及び勧告」において、今後、正規職員の初任給や若手職員の月例給を引き上げるとともに、いわゆるボーナスについては勤勉手当を0.1月分引き上げることを勧告しています。一方、勤勉手当が支給されない会計年度任用職員の期末手当については「特定任期付職員及び任期付研究員の期末手当のこれまでの改定の経過並びに国や他の地方公共団体の動向等を踏まえ、検討が必要」として、執行部に検討を求めています。
これまで、会計年度任用職員はこれまで正規職員と同等に期末手当が引き下げられてきました。その一方で勤勉手当が支給されていないことを理由にして今回の「0.1月引き上げ」を適用しないとすれば、これまで執行部が給与改定の際に主張してきた正規職員との「均衡」とは程遠く、むしろ「不均衡」をさらに拡大することにつながります。人事委員会の会計年度任用職員の期末手当に関する言及はそうした背景を考慮したものであると思われます。
そもそも、今回の人事委員会のボーナス引き上げ勧告は、ボーナスの官民格差の調査によってその総額に格差があったことを根拠としているものの、厳密にその中で勤勉手当相当分のみに明確な格差があったことを算出したものでは必ずしもないと認識しています。勤勉手当が支給されていないという制度の不備によって格差が生じてしまうことは、きわめて不公正であり、そもそもの官民格差調整という人勧制度の趣旨からも逸脱するものだと言わなければなりません。
これまでも主張してきた通り、会計年度任用職員については、1 年単位での有期雇用で収入水準は低く、生活手当等も不十分で、「(正規職員との)均衡」とは程遠い不安定な条件下で働いています。その一方で、特に母子保健や保育・学校現場などでは相当の責務・責任を求められた中で就労している場合も少なくありません。
必要なのは地公法第24条の定める生計費をはじめとする各考慮要素を踏まえ、格差是正と公正な労働条件のための真の「均衡」です。
そこで、会計年度任用職員の期末手当・雇用条件等について、下記の通り求めるものです。
1.正規職員の勤勉手当引き上げと「均衡」を保ち、期末手当を少なくとも1月引き上げること。
2.雇用実態の把握を適切に進めるとともに、当事者の声を十分聴取しながら、賃金・雇用条件の改善を図ること。
さて、新潟市人事委員会による実態調査報告書作成の背景に直接的に関わっているのが、新潟市会計年度任用職員の期末手当の削減という勤務条件の不利益変更にあたって、人事委員会の役割(労働基準監督機関としての責務)を人事委員会委員長に質した中山さんの議会質問などの取り組みである。中山さんの説明や当時の議会質問動画などを参考にしながら整理をする。
まず、2020年の秋に、民間給与との比較調査に基づき、国の人事院や多くの人事委員会で正規職員の期末手当の削減が勧告され、勧告通りの削減が実施された。問題は、新潟市を始め多くの自治体で、「正規職員との均衡を図る」という理由で、正規職員だけでなく非正規職員(会計年度任用職員)の期末手当も削減されたことである。そして、人事委員会もそのことを追認した。
言うまでもなく、そもそも正規職員と非正規職員とでは、賃金・労働条件に大きな違いがある。非正規職員は雇用自体が極めて不安定な状況に置かれている。それにもかかわらず、こういうときだけ「均衡」理論が持ち出されるのは極めて問題がある、というのが中山さんの主張だ(それは、この問題に関わる多くの関係者にも共有される思いだろう)。
新潟市では、2021年度は11月臨時会で正規・非正規職員の期末手当が同率で削減された。続く2022年度は、22年11月臨時会で正規職員の手当だけ先行して削減され、非正規職員の分については組合との交渉となり、交渉の結果、削減幅は、正規職員の「0.15ヵ月」から「0.1ヵ月」分に圧縮され、23年2月議会で提案された。削減幅の圧縮は評価できるものの、非正規職員にとってやはり問題は大きいと考え、議案に対する人事委員会の「意見」が述べられる機会に、この問題の見解を人事委員会委員長に対して中山さんは問うこととした。そのときの動画がこちら(「2022年2月新潟市議会 会計年度任用職員期末手当削減議案-人事委員長意見への質疑(新潟市議 中山均)」)である。
動画をぜひご覧いただきたいが、要約すれば、正規職員と非正規職員とでは賃金・労働条件が大きく異なるにも関わらず、引き下げのときだけは「均衡」を理由に引き下げを行うことの妥当性(しかも、22年度と23年度の対応の違いの整合性)や、加えて、それを、労働基準監督機関の役割をもつ人事委員会が無批判に追認していることの問題性などが、質問では問われている、と言えるだろう。中山さんの質問に対して、人事委員会委員長からは、「(労働基準監督権を)積極的には行使してこなかった側面は、無くはない」、「様々な職種が存在する会計年度任用職員について人事委員会で調査を行い、勧告・報告に反映していきたい」といったニュアンスの答弁がなされている。
こうした取り組みなどが人事委員会による調査及び今回の調査報告書の作成につながった、と中山さんは評価をされている。
二点を補足する。
第一は、2022年2月の質問に先立つ前年(2021年)12月議会での、会計年度任用職員に関する中山均さんの一般質問と市の答弁も提供いただいた。人事委員会に対する厳しい(筋の通った)質問などがなされている。こうした積み重ねが人事委員会を動かしたのだとあらためて感じた次第である。資料として添付したのでお読みいただきたい。
第二は、わがマチには人事委員会は設置されていないから、と逃げてはならないことである。人事委員会が設置されていない自治体議員の反応を予想して学習会当日に中山さんが強調していたのは、「第三者的労働基準監督機関の調査によって会計年度任用職員の労働実態が客観的に明らかになったことを考えれば、ことは人事委員会を有する政令市・都道府県だけの問題でなく、そもそも人事委員会を有していない一般自治体においてこそ、任命権者の観点とは独立した第三者的・客観的な調査の必要性がむしろ明確になった」ということである。人事委員会がないからこそ、そもそも実態の把握ができていない蓋然性が高く、せめて第三者的観点からの臨時的な実態調査の必要性が明らかになっているのではないか、という中山さんの問題提起は、至極もっともである。人事委員会が設置されていない自治体こそ、何らかのかたちで実態把握に取り組まなければならないのである。
[6] 橋本(2023)pp.1095-1097「三 非現業の職員に対する労働基準監督機関の権限の行使」も参照。
4.まとめ
筆者は、現状を明らかにするための調査を重視してきた[7]。調査なくして運動なし、調査なくして政策なし、と考えてきた。しかし、人事委員会がこうした調査を行うとは全く考えていなかった。新潟市人事委員会による実態調査報告書を読んで、人事委員会等の役割に対する考え方をあらためさせられた。人事委員会等はこういうことができるんだ(!)と。また、それを実現させた中山さんら自治体議員の取り組みに感服した。そして、こうした取り組みは、どの自治体でも実現させることができる可能性と必要性がある──専門的、中立的機関を標榜する人事委員会等の職責を考えるならば、「必要性がある」(!)──といえよう(「付記」も参照)。
責任ある仕事/重い負担の仕事に従事し、一方で処遇はそれに見合っていない──実態調査報告書に書かれたこうした現状が、新潟市の会計年度任用職員だけに特徴的なものとはまさか言えないだろう。どの自治体の会計年度任用職員にも共通してみられることだと言えよう。であるからこそ、その現状を「可視化」する取り組みを人事委員会等に促すことが必要であること、また、人事委員会等を動かすためにも、議員や労働組合自身が現状を調べることが求められている。
会計年度任用職員制度の問題は、製造責任者である国にある。また、盲目的に追随する首長(任命権者)も共犯関係にある。そして、首長のそうした考えをスルー/追認してしまっている労働組合や議会にも責任がある──以上のように、筆者は主張してきた。ここに、人事委員会や公平委員会の責任を付け加える必要がある。
新潟市人事委員会による今回の取り組みは、そうした責任の自覚のもとに行われたものと言えるだろう。
全国の人事委員会さらには公平委員会が、自らの役割や責任を自覚しているか楽観はできない[8]。しかし、繰り返しになるが、それを後押しすることが自治体議員や労働組合の役割である──そのことを中山さんらの取り組みは提起をしている。付け加えれば、人事委員会等が自らの職責を全うするようになることは、近年各地で聞かれる「公共の再生」の一環をなす、と言えないだろうか。新潟に続こう!
なお、本論からはそれるが、新潟市人事委員会による調査で用いられた、「職務分析実施マニュアル」に基づくヒアリング調書の内容はこれで十分か(調査項目に漏れはないか)、「会計年度任用職員は一部の専門的な業務を除き、常勤職員の指示か判断に基づき、日々の業務を行っている」という分析結果は妥当か、加えて、救済を専門性の高い職種に限っている(ようにみえる)ことに問題はないか、などの論点は機会をあらためたい。
また、中山均さんのご報告(後日の資料提供を含む)に多くを学んだが、本稿に残りうる一切の誤りは筆者の責任によるものであることは言うまでもない。
[7] 例えば、川村雅則(2021)「公務非正規運動の前進のための労働者調査活動」『住民と自治』第704号(2021年12月号)pp.12-16を参照。
[8] 筆者の住む札幌市の人事委員会は、会計年度任用職員問題に対して果たしてどのような仕事をしているのだろうか、きちんと調べる必要があると思った。札幌市ウェブサイト中の「人事委員会の役割」を参照。
付記
今回、人事委員会等に求められている役割を確認する上で、参考文献などをあらためて紐解いた。地方公務員法上、人事委員会等には多くの権限が与えられている。とくに本稿との関係では、人事委員会の有する権限として、第8条第1項の第1号、第2号に注目をしたい。皆さんのマチの人事委員会は、人事行政に関する事項についての調査を行ったり、会計年度任用職員を含む公務員の制度や勤務条件について絶えず研究を行い、その成果を関係者に提出などされているだろうか。
地方公務員法
(人事委員会又は公平委員会の権限)
第八条 人事委員会は、次に掲げる事務を処理する。
一 人事行政に関する事項について調査し、人事記録に関することを管理し、及びその他人事に関する統計報告を作成すること。
二 人事評価、給与、勤務時間その他の勤務条件、研修、厚生福利制度その他職員に関する制度について絶えず研究を行い、その成果を地方公共団体の議会若しくは長又は任命権者に提出すること。
三 人事機関及び職員に関する条例の制定又は改廃に関し、地方公共団体の議会及び長に意見を申し出ること。
四 人事行政の運営に関し、任命権者に勧告すること。
五 給与、勤務時間その他の勤務条件に関し講ずべき措置について地方公共団体の議会及び長に勧告すること。
六 職員の競争試験及び選考並びにこれらに関する事務を行うこと。
七 削除
八 職員の給与がこの法律及びこれに基く条例に適合して行われることを確保するため必要な範囲において、職員に対する給与の支払を監理すること。
九 職員の給与、勤務時間その他の勤務条件に関する措置の要求を審査し、判定し、及び必要な措置を執ること。
十 職員に対する不利益な処分についての審査請求に対する裁決をすること。
十一 前二号に掲げるものを除くほか、職員の苦情を処理すること。
十二 前各号に掲げるものを除く外、法律又は条例に基きその権限に属せしめられた事務
2 公平委員会は、次に掲げる事務を処理する。
一 職員の給与、勤務時間その他の勤務条件に関する措置の要求を審査し、判定し、及び必要な措置を執ること。
二 職員に対する不利益な処分についての審査請求に対する裁決をすること。
三 前二号に掲げるものを除くほか、職員の苦情を処理すること。
四 前三号に掲げるものを除くほか、法律に基づきその権限に属せしめられた事務
3 人事委員会は、第一項第一号、第二号、第六号、第八号及び第十二号に掲げる事務で人事委員会規則で定めるものを当該地方公共団体の他の機関又は人事委員会の事務局長に委任することができる。
4 人事委員会又は公平委員会は、第一項第十一号又は第二項第三号に掲げる事務を委員又は事務局長に委任することができる。
5 人事委員会又は公平委員会は、法律又は条例に基づきその権限に属せしめられた事務に関し、人事委員会規則又は公平委員会規則を制定することができる。
6 人事委員会又は公平委員会は、法律又は条例に基くその権限の行使に関し必要があるときは、証人を喚問し、又は書類若しくはその写の提出を求めることができる。
7 人事委員会又は公平委員会は、人事行政に関する技術的及び専門的な知識、資料その他の便宜の授受のため、国若しくは他の地方公共団体の機関又は特定地方独立行政法人との間に協定を結ぶことができる。
8 第一項第九号及び第十号又は第二項第一号及び第二号の規定により人事委員会又は公平委員会に属せしめられた権限に基く人事委員会又は公平委員会の決定(判定を含む。)及び処分は、人事委員会規則又は公平委員会規則で定める手続により、人事委員会又は公平委員会によつてのみ審査される。
9 前項の規定は、法律問題につき裁判所に出訴する権利に影響を及ぼすものではない。
参考文献
- 自治労総合組織局(2023)『会計年度任用職員の手引き』(株)自治労サービス自治労出版センター
- 地方公務員昇任試験問題研究会(2021)『完全整理 図表でわかる地方公務員法(第3次改訂版)』学陽書房
- 橋本勇(2023)『新版 逐条地方公務員法<第6次改訂版>』学陽書房
資料 2021年12月議会での、会計年度任用職員に関する中山均さんの一般質問と市の答弁
大きな3番に移ります。会計年度任用職員について伺います。
(1)番、雇用条件などについて。
アとして、期末手当が支給される会計年度任用職員、これは要するに一定の労働時間以上の会計年度任用職員ですが、その平均年収。
それからイとして、例えば保育士や発達心理相談員などの専門職の時給がどうなっているか。
ウとして、手当、休暇等の条件は正規職員と比較してどうなっているか伺います。
○議長(古泉幸一) 古俣総務部長。
〔古俣泰規総務部長 登壇〕
◎総務部長(古俣泰規) 会計年度任用職員の雇用条件等のうち、平均年収についてです。
市長部局の会計年度任用職員の今年度の年収を試算いたしますと、フルタイム会計年度任用職員においては約280万円、パートタイムの会計年度任用職員においては、週の勤務時間が人によって様々異なりますが、全体を平均すると約180万円となります。
次に、専門職の時給についてですが、制度上、保育士については1,043円から1,195円、発達心理相談員については1,018円から1,201円でございます。
次に、手当、休暇等の条件についてですが、各種手当については、国の通知に基づき、正規職員と同様に通勤手当、地域手当、期末手当などを支給しておりますが、扶養手当、住居手当、勤勉手当は支給しておりません。また、退職手当については原則、フルタイムの職員で、引き続いて1年を超えて勤務した場合は支給対象となります。
次に、休暇制度については、正規職員とほぼ同様に、任用期間と週当たりの勤務日数に応じて最大20日間の年次有給休暇を付与しているとともに、最長2か月間の療養休暇の取得が可能となっております。また、特別休暇については、フルタイム及び6か月以上の任用期間が定められている者で、かつ週当たり29時間以上勤務するパートタイムの職員は正規職員と同様に取得が可能であり、それ以外のパートタイムの職員についても、出産や忌引などに関する一部の特別休暇が取得可能となっております。
〔中山 均議員 発言の許可を求む〕
○議長(古泉幸一) 中山均議員。
〔中山 均議員 登壇〕
◆中山均 今ほど答弁のあったアの数字については、後ほどの質問に生かしたいと思いますし、イの時給についても、もちろん最低賃金よりは高いわけですけれども、専門的な仕事に従事する人たちにとって十分かというのは、当事者からすれば非常に不十分な額だということを指摘しておきたいと思います。
それから、手当、休暇等の条件ということで、これ所管課と質問について事前に調整する際に、社会保険のことについてもやり取りしたんですが、それは大きな違いはないというようなことだったんですけど、いろいろ調べてみると、1年以上働く人には大きな違いはないんですけども、現実、今ぶつ切りで雇用されている人たちもいるんですよね。これは市長部局じゃなくて、教育委員会なんかであるんですけども、そうすると、学期ごとにその都度解雇というか、その都度リセットされて雇用されているので、通年通しての社会保険はないということで、国保しか加入できないというような状況もある。それと、今答弁にもあったとおり、生活手当、扶養手当とかそうしたものもないということで、非常に不安定な状況になっているということを改めて確認したいと思います。
(2)として、期末手当の削減について。
アとして、この会計年度任用職員の制度導入時に、期末手当を支給する代わりに月例給を削減したことについて、これがどうなのかということが、この間の委員会や本会議でも度々指摘されてきました。納得のいく説明は明らかにされていないし、一定程度の理由は示されていますけども、納得はできない。その妥当性について、具体的に総務省とどういうやり取りをしたのかということを伺います。
イとして、会計年度任用職員はそもそも、先ほどの答弁にもあったとおり年収が低く、それから先ほどの答弁でもあったとおり、そして私が指摘したとおり、手当も限定的で、いろんな条件が不利な状態にあると。以前の質問でも指摘したとおり、資料3ページ目の図を見ていただきたいんですが、正規職員にはボーナスで期末手当のほか勤勉手当が支給されている一方、会計年度任用職員は勤勉手当がない。そういう状況で、昨年11月の人事委員会による正規職員への削減勧告を、今年度から低賃金で不安定な雇用条件にある会計年度任用職員にも適用しました。これ昨年の話ですね。今後もそうしたことが計画されている。今後も含めて、そうした措置が公正と言えるのか。
去年実際にやったことは、このように全く支給されているものが違うのに、同じように0.05か月分期末手当から差っ引くと。正規職員と会計年度任用職員ではボーナスへの影響は大きく違うわけですね。今回は0.05か月分の3倍に当たる0.15か月分を、正規職員は12月から、そして会計年度任用職員は来年からですけど、同じように削減しようとしている。そのとき、理由は均衡を図るためなどと言われましたけれども、こうしたことが公正な均衡なのかということを伺いたいと思います。
○議長(古泉幸一) 古俣総務部長。
〔古俣泰規総務部長 登壇〕
◎総務部長(古俣泰規) 期末手当の削減のうち、総務省とのやり取りについてですが、令和元年12月20日付の総務省からの通知では、単に財政上の制約のみを理由として期末手当の支給について抑制を図ることや、新たに期末手当を支給する一方で給料や報酬について抑制を図ることは、改正法の趣旨に沿わないものであるとしています。それを受け、総務省に確認をしたところ、令和2年3月31日において非常勤・臨時職員で、引き続き4月1日以降も在籍をする職員のうち、制度導入前の給与水準より下がる職員に対して、期末手当を含む年収ベースでの給与決定を行うという本市の取扱いは、総務省が示す職務給に基づく給与決定をした結果であり、改正法の趣旨に反するものではないとの回答を得ております。
次に、人事委員会の削減勧告を会計年度任用職員にも適用することについてですが、会計年度任用職員は地方公務員法上、正規職員と同じ一般職であり、職務給の原則や均衡の原則が適用となります。国の通知において、会計年度任用職員の給与水準については、地域の民間企業の給与水準や常勤職員との均衡等を踏まえ定めることが適当であり、人事委員会による公民比較を通じて民間給与との均衡が図られている常勤職員の給与を基礎とすることとされています。これらを踏まえ、制度導入時から正規職員と同じ俸給表を適用し、期末手当も同じ支給月数でスタートをしており、制度の趣旨からも適当と考えております。
○議長(古泉幸一) 遠藤人事委員会委員長職務代理者。
〔遠藤正人人事委員会委員長職務代理者 登壇〕
◎人事委員会委員長職務代理者(遠藤正人) 期末手当の削減についてのうち、会計年度任用職員への適用及びこうした措置の公正性についてお答えします。
会計年度任用職員は地方公務員法上、一般職に位置づけられています。したがいまして、給与改定は正規職員と同様、職務給の原則や均衡の原則に基づいて行われるべきであり、こうした措置については、地方公務員法の趣旨に合致しているものと考えます。
〔中山 均議員 発言の許可を求む〕
○議長(古泉幸一) 中山均議員。
〔中山 均議員 登壇〕
◆中山均 まず、総務省とのやり取りなんですけど、総務省の通知に関して、そもそも本市としては、その総務省の通知に自分たちがやろうとしていたことが抵触しないか心配になったから聞いているんですよね、やり取りを実際にやっているということは。それをまず確認したいと思います。
それで、総務省とのやり取りも、その内容を所管課からもらって受けましたけれども、納得のいく説明にはなっていませんね。総務省は、新制度において新たに採用される者に対するものであるなどというふうに言っていますけど、これ電話でのやり取りですよね。文書でそういう旨が通知されたことはないんですよね。総務省の通知、自分自身が出した通知を、新潟市と総務省が一緒になってほごにしていると言っても過言ではない、そういうものだと思います。
それと、期末手当の削減について、執行部と人事委員会、同じような答弁でしたけども、特に人事委員会は中立的な立場ですよ。中立的な立場、中立的機関ですよね。実務は市の職員がやっているにせよ、中立機関がそのような市のやっていることの単なる追認でいいのかということを私は言いたい。両方とも均衡の原則とか、同じように一般職だと言いましたけど、給与水準も全然低い、そして手当も全く不利じゃないですか。答弁にもあったとおりですよ。いろんな生活手当はついていない。それでいながら同じ一般職だ、均衡だなどと言って同じように削減する。しかも、その影響額ははるかに会計年度任用職員のほうが大きい。均衡と言うなら、まずその支給されていない勤勉手当とかをちゃんと支給する、しかもそれは制度上可能ですよね。そういうことがなされないで、削減するときばかり均衡だ、均衡だなどということを、執行部だけではなく、人事委員会が言うって何事ですか。この点について、両方からもう一回ずつ答弁をお願いします。
○議長(古泉幸一) 古俣総務部長。
〔古俣泰規総務部長 登壇〕
◎総務部長(古俣泰規) 先ほどの総務省とのやり取りについての再質問でございますけれども、私どもとしましては、新たな制度が導入されるということでございますので、誤った運用があってはならないということで総務省に確認をしたということでございまして、それは文書等のやり取りではなくて電話でのやり取りであったとしても、きっちりと総務省とやり取りができていると認識をしております。
○議長(古泉幸一) 遠藤人事委員会委員長職務代理者。
〔遠藤正人人事委員会委員長職務代理者 登壇〕
◎人事委員会委員長職務代理者(遠藤正人) 先ほどもお答えしたとおり、地方公務員法の趣旨に合致しており、適正に行われたものと思っております。
〔中山 均議員 発言の許可を求む〕
○議長(古泉幸一) 中山均議員。
〔中山 均議員 登壇〕
◆中山均 到底納得できる答弁ではないですよね。特に人事委員会は、こういう場で適切でない表現かもしれませんけれども、そうした答弁はひど過ぎますよ。人事委員会は、先ほど申しましたように中立機関ですよ。そして、民間では労働基準監督機関に当たる、そういった機関が、単純に今の執行部の認識や見解の追認でいいのか。均衡の原則とか言うけど、繰り返しますけど、均衡じゃないじゃないですか。
そして人事委員会は、実際に民間給与と公務員給与を細かに、非常に精緻な作業で調べていますよね。そうした比較をした上で正規職員の減額ということを勧告している。その減額が、そもそも会計年度任用職員には勧告としては対象外であるにもかかわらず、その対象外の会計年度任用職員にも執行部が勝手に適用していると、そういう構造になっているわけだ。そうですよね。人事委員会はあくまでも正規職員の削減を勧告しているんですよ。それを執行部が勝手に会計年度任用職員にまで拡大しているわけですよね、一般職だからというへ理屈を言って。ほかの自治体の人事委員会では、そういうことがないように、正規職員に対する勧告は会計年度任用職員には勧告しないということをちゃんと明言しているところもあるんですよ。本市の人事委員会は、単に正規職員に対する勧告をしているだけで、会計年度任用職員のことについては言及しない。その言及しないことをいいことに、執行部は会計年度任用職員にまで拡大している、そういう構造になっている。会計年度任用職員にまで拡大すること、これもう一回答弁を聞いても地方公務員法の趣旨に合致しているという答弁しか返ってこないでしょうから、もうこれ以上答弁を求めませんけど、これについては厳重に抗議したいと思います。精緻にちゃんと比較して、結果論がいいか悪いかは別にして、比較した結果として正規職員の減額を勧告している。しかし、会計年度任用職員はそんな比較、そもそも同じような労働条件の民間の労働者と比較しているわけじゃないですよね。そういうことをそもそもできないから、そんな作業はできないから勧告していないだけなのにもかかわらず、それを拡大解釈して会計年度任用職員まで拡大しているんですよ、執行部は。これは不当だと思いますけど、そういうことについて、ちゃんと労働者を守る立場から意見するのが人事委員会のはずじゃないですか。そこは肝に銘じていただきたい。コメントがあれば、その次の質問のときに追加して伺いたいと思います。
(3)の質問に移ります。会計年度任用職員の雇用水準、勤務実態等について。
アとして、補助的な業務だけではなく、専門的な業務などに就いている職員もあり、ローテーションも含め自律的に働いている部門もあります。保育の場では、正規職員と同じような業務を担っていることも珍しくありません。こうした実態は十分に把握しているのか伺います。
イとして、今回の人事委員会の勧告では、制度の趣旨に沿った適正な任用及び勤務条件等が確保されるよう引き続き努められたい旨、もっともらしく書かれていますけれども、どのような職場でどのような業務を、どのような会計年度任用職員がどんな働き方で担っているのか具体的な調査のないまま、引き続き適正などと言えるのか。引き続き適正というのは、今現在適正だと認めているということですよね。そのような労働実態なのか、労働実態をちゃんと調査して、必要に応じて市長等に対し勧告すべきではないかということを人事委員会に伺います。
○議長(古泉幸一) 古俣総務部長。
〔古俣泰規総務部長 登壇〕
◎総務部長(古俣泰規) 会計年度任用職員の雇用水準、勤務実態等のうち、十分把握しているのかについてですが、会計年度任用職員の任用に当たっては、従事をしていただく仕事の内容や勤務時間、業務における責任の度合い等を把握、精査するとともに、給与水準などの制度面についても、国の通知に基づき適正な運用に努めております。なお、保育現場の会計年度任用職員につきましても、保育業務における専門性や責任感を持って仕事に従事をしていただいておりますけれども、保育園の運営に係る企画立案などの業務は正規職員が担い、会計年度任用職員は正規職員の指導、助言などの下、業務に従事していただいていると認識をしております。
○議長(古泉幸一) 遠藤人事委員会委員長職務代理者。
〔遠藤正人人事委員会委員長職務代理者 登壇〕
◎人事委員会委員長職務代理者(遠藤正人) 会計年度任用職員の雇用水準、勤務実態等についてのうち、調査及び勧告することについてお答えいたします。
本年の職員の給与等に関する報告及び勧告において、任命権者に対し、制度の趣旨に沿った適正な任用及び勤務条件等が確保されるよう引き続き努められたいと求めたことについては、給与決定を適切に行うことはもちろんのこと、例えば任用期間に不合理な空白期間を設けること、任用時に勤務条件を明示しないことなど、不適切な雇用が行われることのないようにとの趣旨でございます。任命権者においては適切に運用しているとのことですが、本委員会といたしましても、今後どのような調査が可能なのか検討を進めていきたいと考えております。
なお、先ほど、人事委員会が勧告をしていないのにボーナスを引き下げたという御指摘がございましたが、私ども勧告の中では積極的な言及はしておりませんが、先ほども申し上げましたように、適切に給与決定を行ってほしいということで、消極的な勧告はしているということで、それに基づいて市のほうで適切に処理をされたという認識でございます。
○議長(古泉幸一) ここで申し上げます。全体で60分を経過しましたので、質問、答弁は簡潔に願います。
〔中山 均議員 発言の許可を求む〕
○議長(古泉幸一) 中山均議員。
〔中山 均議員 登壇〕
◆中山均 すみません。全体時間を超過しまして申し訳ないです。今ほどの人事委員会の答弁から先に指摘しますと、今後調査、検討するみたいなことでしたけれども、それはぜひやっていただきたい。実際に既に不服申立てみたいなものがあって、人事委員会でも調査していると思うんですけども、直接不服申立てって、やっぱりハードルが高いんですよね。ですから、アンケートであるとか、無記名アンケートも含めて、実際にどうなっているかということをぜひ調べていただきたい。
例えば、さっき言及しましたけども、学校支援員なんかは学期任用によってぶつ切りなんですよ。質問通告を教育長に出していないんで、こういうことを言うのは申し訳ないけれども、ぶつ切りで、その都度解雇されるんですよね。保育の現場でも1年単位の雇用だから、今年から子供の数が少なくなって、保育士の必要人数が少なくなって、結果的に事実上百数十名の方々が、1年単位で次は任用しないということで首切りに遭っているんですよね。そういう実態をちゃんと把握してほしいし、市は、資料でもちょっと触れましたけども、昨年の新制度移行の段階では、そもそもこの膨大な数の会計年度任用職員を、単なる報償費として切り捨てようとさえしていたんですよ。しかも、その不服申立ての窓口さえ、昨年の12月定例会で私が指摘するまで明確にしていなかった。そもそも市が適切に実態把握をしていないし、十分な措置をしていないということは、もうこれまでのやり方でも明確になっているんですよ。だから、そこはやっぱりちゃんと改善してほしいし、人事委員会にも重ねて、こうした実態をちゃんと調査してほしいと思います。
ほかの自治体では、さっきも言ったとおり、あえて会計年度任用職員には適用させるななんていう、事実上そういう勧告をしているところもあるので、そうしたことも含めて検討願いたいと思います。以上です。(拍手)