『(書籍)お隣の非正規公務員』プラットフォーム(2025年6月3日作成、最終更新6月21日)

 

※2025年6月21日、北海道新聞の記事を追加しました
※2025年6月21日、本書が発売されました

 

 

本書の紹介

総勢14名で執筆した北海道の非正規公務員問題をテーマにした書籍が、6月21日に北海道新聞社から発行予定です。

14名は、労働組合(自治体労組、教職員組合)、自治体議員、弁護士、新聞記者に研究者など、この問題に関心をもち、それぞれの立場で問題解決に取り組む、多彩な顔ぶれで、かつ、全員が北海道で活動する人たちです。

 

タイトルは、『お隣の非正規公務員──地域を変える、北海道から変える』。

メインタイトルにつきましては、同社から2022年に出版された『お隣は外国人──北海道で働く、暮らす』を意識しました。外国人労働者・技能実習生と同様に、まだまだ十分に知られていないけれども、私たちにとって身近で、なおかつ、私たちの暮らしを支える労働者(非正規公務員)の存在に光があたることを願ってつけました。

サブタイトル(地域を変える、北海道から変える)につきましては、この非正規公務員問題は、言うまでもなく国・国政の問題を背景にしていますが、同時に、地域(地方自治体、地方政府、地方政治)で起きている問題でもあります。公務・自治体リストラを進める国を変えるためにも、地域を変える/地域から変えることが求められています。その仕事を、執筆者はもちろんのこと、読者である皆さんと一緒に進めて行けたら、という思いを込めてつけました。

本の出版は、それ自体が重要な仕事であることは言うまでもありませんが、もっと大事なのは、問題を実際に解決していくことです。

本書をお読みいただければ分かるとおり、この非正規公務員問題は、非情に「奥行き」があり、根本的な解決のためには多くの力が必要です。

この「ページ」は、そうした取り組みに役立つ情報発信・交流の場として整備していきます。ぜひご活用ください。

 

先行する『お隣は外国人』ともども広く読まれることを願う(書影は上記リンク先より)

 

 

本書の目次

 

序 非正規公務員問題への実践的・多角的なアプローチ / 川村雅則

第1章[実像]非正規公務員の姿

1 会計年度任用職員制度とは / 川村雅則
2 北海道の非正規公務員のあらまし / 川村雅則
3 私のみた非正規公務員問題 / 市村信子

コラム① 差別の構造と向き合う / 伊藤誠一

第2章[背景]公務の非正規化はどのように進められてきたか / 川村雅則

コラム② 民間化の何が問題か / 川村雅則

第3章[法律]憲法・労働法・行政法からみた問題点 / 山本完自

1 非正規雇用者の権利保障の現状
2 民間にも劣る会計年度任用職員制度
3 労働基本権の制約という問題

第4章[議員]自治体議員にできること

1 非正規職員の身分差別解消へ / 神代知花子
2 自分らしく働くために / 江川あや
3 労働の価値を決めるのは誰か / 柏野大介

コラム③ 図書館員の質が保てない / 斎藤仁史

第5章[組合]労働組合にできること

1 自治労北海道本部の取り組み / 吉田雅人
2 北海道自治労連の取り組み / 東原 勉

コラム④ 教育の先が見えない / 佐野和孝
コラム⑤ 本当の先生じゃない? / 道端剛樹
コラム⑥ 「イヤイヤ学童保育」でいいの? / 林亜紀子

第6章[提言]ディーセントワーク実現のために / 川村雅則

コラム⑦ 日本語教師の8割が非正規とボランティア / 藤原安佐

 

 

労働相談等の窓口

本書は、労働組合、弁護士、自治体議員、新聞記者、研究者らで執筆されています。いずれも、この非正規公務員問題の解決にそれぞれの立場で取り組んでいます。職場の問題を解決したい、労働相談をしてみたい、情報を提供したい、などございましたら、以下までご連絡ください。

自治労(全日本自治団体労働組合)北海道本部   北海道自治労連(日本自治体労働組合総連合)   北教組(北海道教職員組合)   北海道高教組(北海道高等学校教職員組合連合会)   日本労働弁護団北海道ブロック(※北海道ブロックの箇所を参照)   公務非正規問題 自治体議員ネット  北海道新聞への情報提供   川村雅則・北海学園大学

 

非正規公務員関連データ

※Googleスプレッドシート上での作図の手法をまだマスターしておりません。そのためひとまずは表データでの提供となります

本書関連図表データ

こちらから👈

※以下の図表を提供しています(適宜、追加予定)

表 地方公共団体の職員数の推移(全国、各年4月1日現在)

表 自治体×部門別にみた正職員の人数 ※ここから北海道のデータ

表 団体区分×任用形態別にみた正職員の人数、非正規職員(臨時・非常勤職員)の人数及び非正規職員割合

表 自治体×任用形態別にみた非正規職員の人数

表 団体区分×任用形態×男女別にみた非正規職員の人数及び女性割合

表 自治体×任用形態×男女別にみた非正規職員の人数及び女性割合

表 団体区分×勤務期間・勤務時間別にみた会計年度任用職員の人数

表 団体区分×勤務期間・勤務時間別にみた特別職非常勤職員及び臨時的任用職員の人数

表 自治体×任用形態×勤務期間・勤務時間数別にみた非正規職員(臨時・非常勤職員)の人数

※ここまで。適宜追加予定

 

図書館関連図表データ

こちらから👈

表 雇用形態等別にみた「大学図書館(計)」における職員数の推移
表 雇用形態等別にみた「公共図書館(計)」における職員数の推移
表 北海道/札幌市/市群/町村群/一部事務組合別にみた図書館職員(会計年度任用職員)の人数、うち女性の人数、女性割合及び賃金(「地域手当込みの1時間当たりの平均給料額」)の平均値
表 自治体別にみた図書館職員(会計年度任用職員)の人数、うち女性の人数、女性割合及び賃金(「地域手当込みの1時間当たりの平均給料額」)

川村雅則「図書館雇用・図書館問題に関する教材庫」を参照

 

各自治体の情報

※情報は最新のものとは限りません(調査当時から状況が改善されている場合もある)のでご注意ください
※現行の制約下で、よりよい条件・制度を設けている他の自治体の経験などにも学んでいきましょう

 

川村雅則「【未定稿】江別市非正規公務員(会計年度任用職員)調査報告」『北海学園大学経済論集』第73巻第2号(2025年11月号)掲載予定

川村雅則(2025)「広島市非正規公務員(会計年度任用職員)調査報告(1)広島市からの聞き取り調査に基づき」北海学園大学開発研究所『開発論集』第115号(2025年3月号)pp.107-132

川村雅則(2025)「高松市非正規公務員(会計年度任用職員)調査報告(1)高松市からの聞き取り調査に基づき」北海学園大学開発研究所『開発論集』第115号(2025年3月号)pp.83-106

川村雅則「旭川市非正規公務員(会計年度任用職員)調査報告──制度と労働条件の概要」『北海学園大学経済論集』第71巻第3号(2023年12月号)pp.37-54

川村雅則「札幌市非正規公務員(会計年度任用職員)調査報告──公募制と離職に関する情報の整理」『季刊北海学園大学経済論集』第71巻第1号(2023年6月号)pp.17-37

川村雅則「札幌市の会計年度任用職員制度の現状を調べてまとめました」『NPO官製ワーキングプア研究会Report(レポート)』第37号(2022年2月号)

川村雅則「札幌市の会計年度任用職員制度の現状──二〇二一年調査に基づき(非正規公務労働問題研究会レポート)」『北海道自治研究』第634号(2021年11月号)pp.2-21

川村雅則「道内の会計年度任用職員等の臨時・非常勤職員の任用実態──総務省2020年調査の集計結果に基づき」『北海道自治研究 』第626号(2021年3月号)pp.2-19

 

北海道新聞による記事

非正規公務員に関する最近の記事

※北海道新聞 無料会員登録(道新IDの取得)は こちら👈 より

<検証 北見市プラン>③非正規職員減員 声出せぬ立場に狙い撃ち【全5回】/水野薫 有料記事/2025年1月31日 18:49(2月6日 15:42更新)

<社説>非正規公務員 安定雇用と処遇改善を/2025年1月30日 4:00

増える非正規公務員 処遇改善進めるには/市村信子 会員限定記事/2025年1月15日 9:59(1月16日 9:06更新)

非正規公務員の雇用安定化なるか 北海道内8市、再任用の公募試験廃止 札幌も見直し検討/市村信子 会員限定記事/2024年10月29日 4:00(11月4日 18:09更新)

会計年度職員の再任 市「2回まで」変えず 江別・後藤市長、市議会で表明/土門寛治 有料記事/2024年9月13日 21:47

満期の非正規666人雇い止め 北見市24年度末 事務補助職の採用大幅減へ/水野薫 有料記事/2024年9月13日 18:46

非正規公務員の処遇改善へ議員ネット 全道から超党派の10人参加し発足/市村信子 会員限定記事/2024年8月9日 22:43(8月9日 23:38更新)

「使い捨て」年収150万円届かず 非正規公務員の女性、待遇に嘆き/市村信子 会員限定記事/2024年7月1日 4:00(7月1日 12:10更新)

非正規公務員「賃上げ差別」町村4割 23年度分、専門家が道に開示請求/会員限定記事/2024年7月1日 4:00(7月1日 8:10更新)

非正規公務員の賃上げ、道内8市で昨年度実施せず 9市は勤勉手当少なく 専門家「差別に当たる」/市村信子 会員限定記事/2024年6月21日 13:16(6月24日 19:06更新)

 

構造改革(自治体構造改革)に関する過去の記事

本書第2章では、30年ほど振り返って「公務の非正規化はどのように進められてきたか」を整理しています。この間、三位一体改革や平成の大合併など、地方への富の分配を切り詰めて自治体財政をひっ迫させ、そして、公務員のリストラを図る「構造改革」が進められてきました。現在の自治体のありようをみる際にその点を見落としてはならないと思います。

本書第2章執筆にあたっては、北海道新聞の過去の記事に多くを学びました。北海道新聞社からの了解を得て、その一部をここで紹介します。

<揺れる自治体 三位一体改革の功罪>上*負担の移譲*財源不足 地方を直撃 2003/12/24 (水) 北海道新聞朝刊全道(総合) 1ページ 1658文字

*再建策見直し

「せっかくまとめてもらった市の財政再建プランも、また見直しだな」。来年度政府予算案の編成作業真っただ中の東京・霞が関で「三位一体改革」の概要を尋ねて回った稚内市の横田耕一市長は二十二日、市役所に戻ると執務室で財政担当職員にこうつぶやいた。

同市は十一月下旬、二〇〇四-〇八年度に見込まれた計百四十億円の財源不足を三十二億円にまで圧縮するプランをまとめたばかり。しかし、この改革による補助金、交付税の削減で想定していた歳入に穴があく公算が大きくなったのだ。

プランでは、計画中の廃棄物最終処分場の建設費を当初の八十八億円から二十六億円に削る大型事業見直しのほか、各課の冷蔵庫やポットの電気代として一台ごとに月千円を徴収する「涙ぐましい努力」(横田市長)を積み上げた。

年明けに始まる市の予算編成作業では、地域活性化基金など計六十八億円の“貯金”からの取り崩しも視野に入れなければならない情勢だ。「改革」が自治体の努力を吹き飛ばしかねない。

*「つけ回しだ」

全国知事会など地方六団体は今回の改革に冷ややかで、補助金、交付税の削減と並び、もう一つの柱である税源移譲が不十分だと指摘する。「ひっ迫する国の財政事情を地方につけ回しているだけではないのか」

例えば、補助金の削減額約一兆円のうち、公共事業は最も多い約四千五百億円を削減する。しかし、削減分の財源をそっくり手当てすることにはなっていない。

総務省は不足額を埋めるため地方交付税を「極力充てる」方針だが、肝心の交付税も来年度は九千億円削減の見通しで、自治体の財源不足をとても補えないという。

こうしたことの背景にあるのは危機的な財政状態だ。国の借金は五百兆円、地方も二百兆円。気の遠くなるような巨額債務を放置できない。これが自治体への税財源移譲よりも、補助金、交付税の削減幅が大きいことにつながる。

三位一体改革の中身は、国の財政改革に近い。自治体にとって、それは国からの「負担の移譲」でしかないわけだ。

*迫られる合併

この負担は人口が少なく、お金も足りない自治体ほど重くのしかかる。道内の市町村の中には、財政基盤の強化のために合併へと駆り立てられるところも少なくない。

「(網走管内置戸、訓子府、留辺蘂の)三町の枠組みで合併議論を始めたい」。十七日の置戸町議会。井上久男町長は合併に関する質問に答え、議会で初めて合併に踏み込んだ。

置戸町は人間ばん馬やオケクラフトなど特色あるまちづくりで全国に知られ、自立を求める気風が強い。同町が九月中旬、隣接する二町と設置した広域連携の協議会でも、合併ではなく、介護保険や公共施設の運営などの共同化を進める方向となっていた。

その事情を一変させたのは政府の地方制度調査会(地制調)が十一月中旬にまとめた最終答申。都道府県が「一万人未満」の自治体に合併を勧告できると明記され、人口約四千人のマチに大きな衝撃となった。

加えて今回の三位一体改革。井上町長は「地制調の答申で制度的に追いつめられ、今度は財政面でムチを打たれた」と胸の内を明かす。

地方分権を加速させると期待されたはずの「三位一体改革」は中央主導で進んだ。地方には厳しい内容だ。小泉純一郎首相に近い政府高官は、分権と同時に、改革には負担が伴うと指摘する。「地方も覚悟が必要です」

国と地方の税財政を見直す「三位一体」改革の初年度となる二〇〇四年度政府予算案が固まった。「地方にできることは地方に」と小泉首相は改革の理由を説明した。その理念は予算案にどう反映されたのか。自治の現場で探った。

◇「三位一体」改革の初年度予算案◇

小泉構造改革の柱のひとつで、補助金削減と税源移譲、地方交付税改革の3つを同時に進める。初年度の2004年度政府予算案では《1》公共事業や公立保育所への補助金など総額1兆円削減《2》国税である所得税の一部4249億円を地方譲与税とする《3》交付税は総額9000億円を削減する-で決着した。

 

<社説>地方財政*厳し過ぎる交付税削減 2004/02/24 (火) 北海道新聞朝刊全道(総合) 2ページ 1079文字

道内自治体が相次いで新年度予算案を発表しているが、財政難の悲鳴がいつにも増して大きい。

小樽市は事実上の赤字予算編成を余儀なくされ、道も財政再建策を講じても二〇〇七年度には破たんするとの試算をまとめた。

最大の原因は、歳入の柱のひとつである地方交付税の削減だ。政府は「三位一体の改革」の名の下、地方財政改革を進めようとしているが、現実には地方交付税の削減ばかりが先行し、自治体を一方的に締め付けている。

これも「小泉改革」のひとつの帰結だ。非情さの表れと言ってもよい。

国と地方の長期債務は〇三年度末で合わせて六百八十六兆円にも上り、思い切った改革は避けられない。

それにしても、地方が納得できるものでなければ、地方財政改革の名に値しない。短期的には、自治体の破たんが相次ぐような事態を避ける工夫がぜひとも必要だ。

小樽市は、不足する十九億円を雑入として計上した。当てのない金額で、事実上、〇五年度予算を先食いする。

異例の事態だが、道内では第二、第三の小樽市が相次ぐ可能性がある。地方交付税の削減は四年目に入り、多くの市町村は、各種の基金を取り崩して対応しているのが現実だからだ。

新年度は、財源穴埋めのための臨時財政対策債(臨財債)も大幅に縮減され、地方交付税と合わせた削減幅は前年度比12・0%となった。

財務省は地方の財源不足論に反論している。三位一体改革に伴って創設される所得譲与税、特例交付金などの増収を挙げ、「歳入全体では削減は1・8%にすぎない」と説明。臨財債については「そもそも財源に見込むことがおかしい」と突き放している。

地方の立場に立つべき総務省も、麻生太郎総務相が小樽市の赤字予算について「首長の経営資質や才能、やり方が問われる時代」と述べるなど、一層のスリム化を求めるばかりだ。

木で鼻をくくったような話ではないか。地方の財政難の背景には、景気対策として「お付き合い」させられた公共事業の負担分の返済が重荷となっていることを忘れてもらっては困る。

法令に縛られてリストラが進まなかったり、住民基本台帳ネットワークなど地方には緊急性のない事務事業の負担も、決して軽いものではない。

政府は、地方に努力を迫る前に、自らの責任を自覚するべきだろう。中でも、一方で市町村を締め付けながら、地方交付税の優遇を掲げて合併を迫る総務省は、二重に罪深い。

もちろん地方も、引き続き歳出削減に知恵を絞ることは必要だ。それでも立ち行かないことをきちんと証明した上で、政府に財源の補てん措置をはっきりと求めるべきである。

道はその先頭に立ってほしい。

 

釧路市*職員定数300人削減*06-10年度*改革プラン決定*助成など61項目見直し 2006/09/07 (木) 北海道新聞朝刊地方(釧路・根室) 切抜 30ページ 722文字

釧路市行財政改革推進本部(本部長・伊東良孝市長)は六日、行財政改革案「活力創生釧路市集中改革プラン」(二○○六-一○年度)を決めた。期間中、一般会計で年五十億円超の財源不足が生じると試算した上で、その対策として、一○年度までに約三百人の職員定数を削減する一方、市民生活に関連する助成など六十一項目の事務事業を見直し対象としている。同プランは、十三日招集の定例市議会に報告する。(島田季一)

同プランは一般会計の財源不足予測として、○七年度約五十一億五千万円、○八年度約五十三億円、○九年度約五十四億五千万円、一○年度約五十億円と試算している。

財源対策として《1》事務事業や使用料・手数料などの見直し《2》職員給与・定数の見直し《3》事務事業の外部委託化《4》第三セクターなど外郭団体の見直し-を柱としている。

職員定数の見直し計画では、○五年度当初の定数二千七百八十三人に対し、一○年度当初は二千四百七十五人で三百八人を削減。既に本年度当初で三十八人を減らした。一○年度時点での削減率は11・1%で、政令指定都市を除いた市町村の全国平均7・9%(目標値)を大幅に上回る。

事務事業の外部委託化では、具体的な実施年度を明記。ごみ収集業務は○九年度、小学校給食センターは一三年度、中学校給食センターは一一年度から、いずれも全面的に民間委託する。

事務事業の見直しについては、市民モニター制度の廃止や、助成・補助金の見直しなど市民生活に影響のあるものとして六十一項目を挙げ、来年度予算で具体的に実施するか検討する考え。

増収策として、伊東市長は六日の推進本部会議で、市税などの収納対策の強化と、広告などによる新たな収入確保の検討を指示したという。

 

道内首長アンケート*住民にしわ寄せ鮮明*行政サービス*維持困難6割 2007/03/10 (土) 北海道新聞朝刊全道(総合) 図表 切抜 4ページ 1126文字

北海道新聞社が行った道内市町村長アンケートでは、各市町村の財政状況の深刻さがあらためて浮かび上がり、「現行の行政サービスの水準を維持できない」との回答が全体の63・1%に及んだ。「維持できる」はわずか4・0%にとどまり、多くの自治体で財政難のしわ寄せが住民生活に及ぶ可能性が高いことが分かった。

「市町村が抱える課題」(複数回答)で最も多かったのは、「硬直化した財政の立て直し」(55・1%)。これに続くのが「老朽化した公共施設の更新」(49・4%)や「住民サービスの範囲見直し」(43・2%)、「受益と負担の見直し」(33・5%)など、行政サービスに関連するテーマが並んだ。

福祉や保健、医療分野での住民ニーズでは、全体の95・5%が「今後、増加する」と答えた。十勝管内清水町は「高齢化進行による社会保障費負担増などが見込まれる」、同管内新得町も「景気低迷で若い世代が都市部へ移動し、高齢化率上昇に拍車がかかる」と指摘した。

現行の行政サービスのレベルをできるだけ維持するために必要な対策(複数回答)としては、「民間委託やボランティアなど住民との連携・協働」が41・5%で最多を占め、歳出削減とともに住民に協力を求める姿勢が見てとれる。

一方、多くの首長が財政健全化に向けた具体策の柱に掲げるのが人件費の削減。職員給与の削減目標は「10-20%未満」が33・3%、「5-10%未満」が13・9%だったが、「20%以上」も6・9%あった。このうち留萌市は給与総額の28・2%、上川管内占冠村が28%、同管内鷹栖町と空知管内栗山町、上砂川町が25%を掲げた。

職員数の削減では、「5-10%未満」が37・7%、「10-15%未満」が24・7%で上位を占めた。具体的な削減率として、三笠市が最高の55・5%としたほか、胆振管内豊浦町、桧山管内乙部町、網走管内滝上町などが「30%超」とした。

五年後の財政状況の見通しを聞いたところ、「過疎地域の税収確保は困難」(後志管内共和町)、「新型交付税導入で交付税が減ると予想される」(日高管内日高町)など三分の二近い首長が厳しい財政運営を予想した。

このほか、現在十四ある支庁を六つの生活経済圏ごとに再編する道の支庁制度改革については「反対」(49・4%)が「賛成」(42・0%)を上回った。

道州制特区推進法については「評価しない」(1・7%)、「あまり評価しない」(52・8%)の「不支持派」が54・5%と過半数を占め、「評価する」(1・1%)、「ある程度評価する」(42・0%)の「支持派」を上回った。同法については「制度としては賛成に近いが、具体的内容がないに等しい」(新得町)など厳しい意見が相次いだ。

 

<自治が変わる>第4部 道内市町村長アンケートから*1*見えない将来*交付税削減を不安視 2007/03/13 (火) 北海道新聞朝刊全道(総合) 図表 切抜 4ページ 1298文字

国が新年度に本格化させる歳出・歳入一体改革は、地方のムダをいかにそぎ落とすかにも重点が置かれ、道内の市町村には、そうした国の方針が都市と地方の格差を広げるとの懸念も広がっている。北海道新聞の道内市町村長アンケートで明らかになった首長たちの「本音」を土台に、道内自治体の将来設計を探る。

「財政健全化計画に沿って頑張るしかないが、計画通りに財政が改善する、とは言い切れなかった」。本年度決算が一千万円の赤字に転落する空知管内上砂川町。アンケートで問われた「財政状況の五年後の見通し」について、あえて「無回答」を選択した。

同町は昨年末、不適切な長期借り入れ(ヤミ起債)の一括返済を余儀なくされた。財政再建団体転落を回避するため、道の指導を受け、町長給与を30%、職員給与を20%カットする人件費削減や、証明書発行手数料の値上げなどを柱とした健全化計画を策定した。

それでも先行きが不透明なのは、歳入の半分を占める地方交付税の「今後の動向がまったく読めない」(総務財政課)からだ。

*議場を廃止

同様に本年度決算で赤字転落する歌志内市は三月末、五十三年の歴史を刻んだ市議会議場を廃止。市役所別館の会議室に議場を移すが、これも財政健全化計画に沿った措置だ。

同市の場合、計画上は交付税が○六年度の二十六億円から一一年度で二十億円まで減るとした。だが、これはあくまで推計で、ある幹部は「これ以上、交付税を低く見積もると、六年で黒字化する計画を作れない」と打ち明ける。

アンケートでは、道内市町村長の60・8%が今後も「交付税は減少する」との見通しを示し、98%が財政運営上の課題として「交付税の縮減傾向」を挙げている。どの程度減らされるのか「将来推計が読めない」(岩倉博文苫小牧市長)のは、財政を預かる首長の共通した悩みだ。

*歳出減急ぐ

地方交付税は本来、地方のサービス格差を埋めるために配分される地方固有の財源だが、小泉純一郎前政権の三位一体改革で、○一年度から四分の三近くにまで減少。政府が○六年に決定した「骨太の方針」では、一一年度までは確実に削減していく方針が示された。

これは今後、景気が順調に回復しても、税収増などの恩恵が、地方交付税の交付団体にはほとんど及ばないことを意味する。道内では、原子力発電所の立地で税収の多い後志管内泊村を除くすべての市町村が交付団体で、いずれも綱渡りの財政運営を強いられている。

各市町村は生き残りをかけ、歳出削減に躍起だ。首長の52%は「人件費削減」を歳出削減の柱に考えており、このうち92%が職員数を減らす予定。

一方、政府は一○年度までに地方公務員の定員を5・7%純減するという前提で、交付税の額をはじいていく考えだ。政府にとって、各首長が考える職員減は既に織り込み済みというわけだ。

「地方が行財政改革を進めても、国はそれ以上に小規模自治体に対する財源措置を圧縮してくる」(空知管内栗山町の椿原紀昭町長)。首長たちからはそんな嘆き節が聞こえてくる。

 

 

その他の情報

■川村雅則「北海道の公立学校を支える非正規教職員(非正規公務員の教員と職員)の人数、職種など──北海道教育委員会の資料に基づき」『NAVI』2024年12月9日配信

川村雅則「北海道の公立学校を支える非正規教職員(非正規公務員の教員と職員)の人数、職種など」

 

■川村雅則「図書館雇用・図書館問題に関する教材庫」『NAVI』2025年3月30日(最終更新)

川村雅則「図書館雇用・図書館問題に関する教材庫(2025年3月30日)」

 

■非正規労働問題全般、公務非正規問題に関連する様々な投稿

 

 

 

 

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