川村雅則「5月24日の学習会に参加される自治体議員の皆さまへの「宿題」」

以下は、自治体議員を対象に5月24日(金)に開催される学習会の参加者に向けた簡単な「宿題」です。参加を予定されている方は、可能な範囲で取り組んでみてください。

なお、学習会参加者向けではありますが、地域住民の皆さん、大学生の皆さんにも関心をもっていただき、もし可能であれば、取り組んでいただけると幸いです。

 

 

 

自治体議員の皆さま

 

日々のご奮闘に敬意を表します。

さて、5月24日(金)に開催される、「緊急開催【議員向け学習会】初めて取り組む「会計年度任用職員問題」」への参加登録をありがとうございます。

当日の学習会がいっそう実りあるものとなるよう、ご自身のマチの会計年度任用職員制度の状況をお調べになってきていただくことを提案します。

あまり難しくお考えいただく必要はありません。

公務職場では正規の公務員だけでなく非正規の公務員も多数働いていること、一方で、非正規公務員には雇われ方や賃金・処遇がきちんと整備されているわけではないことなどを、以下の作業を通じて、より具体的に知っていただく機会になれば幸いです。可能な範囲で取り組んでみてください。

なお、第一に、担当部署で情報は整理されているでしょうから、協力を得るとよいと思います。

第二に、非正規公務員は、会計年度任用職員のほか、特別職非常勤職員、臨時的任用職員にわかれますが、今回は、会計年度任用職員に焦点をしぼって調べていきましょう。

 

1.会計年度任用職員の人数

(1)あなたのマチには会計年度任用職員は何人働いていますか。直近のデータで調べてください。

(2)可能であれば、下記の少し細かい情報も入手してください。

  • 男女別の人数
  • どこで働いているのか=部署別の人数
  • どんな仕事に従事しているのか=職種別の人数
  • 勤務時間数=フルタイム型/パートタイム型*の人数

*ほとんどは、パートタイム型であると思います。何時間が主流かも調べてみてください

 

2.採用・公募・離職

いったん採用されても、一定年数ごとに公募に応じなければ働き続けることができない仕組みを導入している自治体が数多くみられます。公募制と言います。総務省では3年ごとの公募を自治体に対して助言しています。

(1)皆さんのマチではどうでしょうか。調べてみてください。

公募が導入されている場合には、何年ごとの公募かを調べてください。

全ての職種に導入されているのかどうかも調べてください(職種によって導入していなかったり、「標準」よりも年数を長く設定している場合があります)。

(2)公募が行われた年に、どの位の人数が公募にかけられ、なおかつ、公募で落ちた/落とされた人数はどの位でしょうか。

なお、職員の採用時期はばらばらでしょうし、旧制度時代からの勤務年数もカウントしている場合には、例えば、3年公募制を導入している自治体でも、すでに複数回公募が行われているケースもあろうかと思います。その場合、最も多くの人数が公募にかけられた年の実績を調べてみてください(5年公募を採用している自治体の場合には、今年度末に大きな公募が行われることになります)。

(3)昨年度末(今年2023年の3月末)に、会計年度任用職員の離職者はどの位発生しましたか。

公募で落とされた人数だけではなく、「自発的」な離職を含め、すべての離職者の人数を把握してください。

 

3.賃金(基本賃金、期末・勤勉手当)

非正規公務員に限らず、非正規労働者の労働条件の特徴の最たるものは、賃金が低いことです。

(1)皆さんのマチの会計年度任用職員の賃金(基本賃金)はどうでしょうか。

賃金は職種ごとに決まっていますから、職種ごとの把握をしてください。

その際、勤続によってどこまで上昇していくのか(いくらまで昇級していくのか)もあわせて調べてみてください。

(2)期末手当は支給されていますか。支給されている場合、年間で何か月分が支給されていますか。

(3)勤勉手当は支給される予定ですか。支給が予定されている場合、何か月分の支給が予定されていますか。

 

4.非正規問題とジェンダー

最後に、皆さんにちょっと考えてきていただきたいことがあります。

おそらく皆さんのマチでも、会計年度任用職員の雇用は不安定で、賃金は低いと思います。

しかし、議会においても、そのことはあまり問題視されていないのではないでしょうか。その理由としてあげられる最たるものは、会計年度任用職員の多くは女性だからです。女性で扶養されているから問題ないのでは? という認識が大方なのではないでしょうか。

しかしそれは事実でしょうか。彼女たちは扶養されているのでしょうか。また、労働者の雇用や労働条件は、扶養されているかどうかで決められるべきものなのでしょうか。百歩譲ってそうだと言うのであれば、皆さんのマチでは、会計年度任用職員の採用時には、扶養されているかどうかをご本人にお尋ねになっているのでしょうか。

女性だから、扶養されているだろうから、というのは、いわば思考停止を引き起こすマジックワードのようなものです。可能であれば当事者にも話を聞きながらこの問題を考えてきていただけると幸いです。

では、当日にお会いできることを楽しみにしています。

 

 

(メインの参考記事)

川村雅則「札幌市の会計年度任用職員制度の現状を調べてまとめました」『NPO官製ワーキングプア研究会レポート』第37号(2022年2月号)

非正規公務員などの当事者団体である「公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)」共同代表のはむねっと瀬山紀子さんの配信記事

 

 

(その他の参考記事)

川村雅則 「なくそう!官製ワーキングプア──あなたのマチの非正規公務員問題を調べる」雇用構築学研究所監修『ニューズレター』第67号(2023年5月号)pp.4-21

川村雅則「なくそう!官製ワーキングプア──あなたのマチの非正規公務員問題を調べる」

川村雅則「北海道及び道内35市における非正規公務員等データ──総務省2020年調査結果に基づき」『NAVI』2021年12月12日配信

川村雅則「北海道及び道内35市における非正規公務員等データ──総務省2020年調査結果に基づき」

川村雅則「ディーセントワーク概念からみた会計年度任用職員制度」『ガバナンス』第274号(2024年2月号)pp.36-38

川村雅則「ディーセントワーク概念からみた会計年度任用職員制度」

 

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