川村雅則「北海道及び道内35市に対して大量離職通知書の提出を要請しました」

北海道及び道内の35市(の会計年度任用職員の任命権者各位)に対して、大量離職通知書の提出の要請を2024年1月24日付で行いました。「なくそう! 官製ワーキングプア」集会実行委員会による首都圏での取り組みに続くものです。

会計年度ごとの任用制度や一定期間ごとに行われる公募制を見直し、仕事の実態にあわせた安定雇用を実現することが、会計年度任用職員(非正規公務員)制度において急がれる課題です。欠陥制度をつくった総務省の責任が問われるのは言うまでもありませんが、会計年度任用職員の任命権者である自治体自身にもできること、しなければならないことがあります。その一つが離職者の把握です。会計年度任用職員に多くの離職者を発生させていながら、その把握を怠っている自治体が少なくありません。今回の取り組みによって、大量離職通知書を各自治体が適切に作成・提出するようになることは、安定雇用の実現に向けて重要な意味をもつと考えます。首都圏、北海道に続く取り組みを切望します。

 

北海道及び道内35市に対して大量離職通知書の提出を要請(2024年1月24日付)

 

 

大量離職通知書の提出について(要請)

 

日ごろ、会計年度任用職員の雇用(任用)の安定と待遇改善に取り組まれていることに敬意を表します。

 

さて、自治体においては、公共サービスの担い手としていわゆる非正規公務員が急増しています。一方で、法の整備は進まずに、雇用不安や低賃金の問題が現場から指摘されてきました。私たちも、調査・研究活動を通じてそのような実態を明らかにして、問題を提起してきました。

2020年度から新たな非正規公務員制度が始まりました。当事者等がこの新制度に期待をしたものの、まず任用制度の設計は、彼らの就労の実態に反して会計年度ごとの任用となりました。加えて、多くの自治体で、総務省の助言にならい、一定期間ごとの(多くは3年ごとの)公募制が導入されました。そして実際、3年公募の前後には、会計年度任用職員の離職問題が各地で報じられる事態となりました。

 

こうした中で、2023年6月28日には総務省から全国の自治体へ「大量離職通知書」の提出を促す事務連絡が発出されました。離職者を出さないよう最大限の努力を行っても30 人以上の離職者が出る場合には、事前に十分な説明を行い、適切な雇用保障や再就職支援を行った上で「大量離職通知書」を届け出ることが求められています。

そこでこのたびは、2023年度末に「大量離職通知書」の提出が適切に行われるよう、北海道及び北海道内35市に対して、この要請書を送らせていただくこととしました。

会計年度ごとの任用制度や一定期間ごとの公募制に賛否どちらの立場であっても、関連する情報の整理は、政策(任用政策)を検証する上で不可欠の作業です。また、民間企業に率先垂範する立場にある自治体に法令遵守が求められることは言うまでもありません。

条件に該当した場合には、大量離職通知書を地元のハローワークに提出するようお願いします。裏面もご覧ください。2023年末の総務省通知など関連資料も同封しました。

お手数をおかけしますが、首長をはじめとした任命権者の皆様にお伝え頂くようお願いいたします。時期を見て、2023年度末の離職状況について、情報公開請求をさせていただきます。

ぶしつけなお願いとなり大変恐縮ですが、本調査・研究活動へのご理解とご協力を賜りますよう、どうぞよろしくお願いします。

 

〔 連絡先は略 〕

 

 

<参考:離職者数の数え方などについての情報提供>

 

「大量離職通知書」は、「離職者数が30人以上となる場合」、「1ヶ月以上前に提出」しなければなりません。作成の具体的方法は、地元のハローワークと相談いただくこととなりますが、関係者(※)の整理では下記が適切と考えます。

 

1 提出単位は「任命権者ごとに」となります。

2 大量離職者数の数え方については、厚労省との懇談を踏まえ、以下のように整理しています。

① 常勤職員

・定年退職者中、再任用されなかった人数

・再任用(フルタイム)職員の退職者人数

・任期付(フルタイム)職員の退職者人数

② 非常勤職員

・会計年度任用(フルタイムを含めた)職員中、再度任用されなかった人数および年度末

に期間満了で退職した人数

・臨時的任用職員の年度末退職者人数

・再任用(短時間)職員の退職者人数

・任期付き(短時間)職員の退職者人数

 

 

◆以下の資料を同封しました。

2023年6 月28日付け総務省通知(p1,2)

札幌市が2022年度末に提出した「大量離職通知書」(p3)(※※)

北海道及び35市(札幌市含む)別にみた再度任用における公募の実施状況(p4)(※※※)

 

 

(※)今回の取り組みは、首都圏を中心に、官製ワーキングプア問題の解消に取り組む個人・団体の皆さんと一緒に取り組んでいます(同団体では、厚生労働省や総務省からの直接の情報収集や意見交換もされています)。

(※※)通知書に記載されている数字は3年公募で離職が予定されていた会計年度任用職員の人数です。実際に離職した職員の人数ではありません。厚生労働省による離職者の対象範囲が明確になっていなかったことから、2022年度末にハローワークに通知書を提出した道内の自治体のいずれもが、離職が予定された職員数で回答をしていました。この点が厚生労働省で整理され、総務省との調整も終わって、6月28日付けの通知発出となりました。

(※※※)総務省による2023年調査のデータより作成しました。詳細は、川村雅則「(暫定版)総務省・会計年度任用職員制度等の2023調査データの集計」『北海道労働情報NAVI』2024年1月15日配信をご参照ください。

 

 

 

(関連記事)

川村雅則「札幌市非正規公務員(会計年度任用職員)調査報告」『北海学園大学経済論集』第71巻第1号(2023年6月号)pp.17-37

川村雅則「(暫定版)総務省・会計年度任用職員制度等の2023調査データの集計」『NAVI』2024年1月15日配信

「なくそう! 官製ワーキングプア」集会実行委員会「大量離職通知書提出について(要請)」『NAVI』2024年1月21日配信

 

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