全労連公務部会 臨時非常勤専門委員会「非正規公務員の雇用安定と処遇改善を求める提言(2022年6月)」

全労連公務部会 臨時非常勤専門委員会による「非正規公務員の雇用安定と処遇改善を求める提言」が2022年6月29日に発表されました。公務職場における非正規労働者の現状なども取りまとめられており、貴重です。どうぞお読みください。

 

 

はじめに

 

政府は、1980年代以降、低成長経済の下で公的セクターを縮小する新自由主義経済を推し進め、中央省庁再編などを通じて正規の公務員を大幅に減らしてきた。また、企画部門と実施部門の切り分けが進められ、実施部門となる国の地方出先機関縮小や地方自治体の合併が進められた。

一般職の国家公務員は現在28万人余りであり、1980年頃の90万人余りから大幅に減少している。また、地方公務員も1994年の328万人余りから280万人余りへと約15%減少した。

その間、公務の職場では、高齢化社会の進展や国民・住民ニーズの多様化により、人による対応の欠かせない新たな行政サービスが求められてきた。公務員人件費の抑制が声高に叫ばれるなか、現場では正規雇用ではなく非正規雇用を増やすことで人手不足を補う手法がとられ、その結果、国民・住民に直接接する職員の多くが非正規である公務職場が急増した。

国・自治体の非正規公務員は、保育、教育、雇用、福祉など、人びとの生活に不可欠な対人業務を基本とした職場で働いている。非正規公務員の約4人に3人が女性であり、専門的な知識・技能・経験が求められる業務を担っているにもかかわらず、劣悪な処遇に置かれ、日本全体のジェンダー格差の拡大・固定化させている。

現場で欠かせない非正規公務員は、現実には長期の雇用継続・反復が行われることもあり、「日々雇用」などとしていた法制度との乖離が大きくなった。そのため、2009年に国で「期間業務職員」制度が、2020年に自治体で「会計年度任用職員」制度が創設されたが、一会計年度内の任用(雇用)とされ、更新時の公募強制、恣意的な雇止め、ハラスメント、ワーキングプア水準の処遇など、多くの矛盾が生じている。

非正規公務員を増大させたことは、安定した行政サービスを提供する人的・社会的基盤を脆弱にしただけでなく、社会全体の非正規化、低賃金労働の拡大につながった。この背景にある財界・企業の人件費抑制策は、国内経済の主要な位置を占める労働者の個人消費を低下させ、日本経済に悪影響を及ぼしている。

誰もが安心して働き、暮らせる、持続可能な社会の実現にむけて、国や自治体は今こそ、自ら雇う非正規公務員の雇用の安定と処遇の改善に全力を注ぐ必要がある。そのために措置すべき法制度について、以下の通り提言する。

 

 

【1】提言

 

◯ 「任期の定めのない常勤職員を中心とする公務運営」という国家公務員法・地方公務員法の原則のもと、常勤的な職には常勤職員を任用すること

  

◯ 民間の非正規労働者に適用されている労働契約法に準じ、非正規公務員にも無期転換権を保障すること

  

◯ 新たな非常勤職員の任用を除く更新における公募制度を廃止すること

 

 ◯ 現在、専門的・恒常的な職を担っている非正規公務員を常勤職員に任用替えする立法的措置を行うこと

  

◯ 任期の定めのない短時間公務員制度を創設すること

  

◯ 非正規公務員の任用についてはあくまで臨時的業務や一定期間に欠員が生じる場合などに限定すること。なお、処遇については常勤職員と同様とすること

  

◯ 常勤職員と非正規公務員の賃金、諸手当、休暇制度、共済制度などの労働条件や福利厚生における不合理な格差をなくすこと

 

 ◯ 非正規公務員のフルタイム勤務職員と短時間勤務職員の不合理な格差を直ちになくし、勤務時間の長さに応じた均等待遇をはかること

 

 

以上提言するにあたり、非正規労働者をめぐる状況をはじめ、公務職場の状況などを以下に説明する。

 

 

【2】非正規労働者をめぐる状況

総務省の労働力調査では、雇用形態を勤め先での呼称に応じ、「正規の職員・従業員」、「パ-ト」、「アルバイト」、「労働者派遣事業所の派遣社員」、「契約社員」、「嘱託」、「その他」の7つに区分している。そして、「正規の職員・従業員」以外の6区分をまとめて「非正規の職員・従業員」としている。統計では、1990年に881万人だった非正規雇用者数は、2021年に2054万人となっている。なお、2014年以降初めて2020年に昨年比で減少したことに続き、2年連続で減少した。

リーマンショックで不安定雇用労働者が多数失業したことから、全労連など労働組合が企業に対する雇用責任の強化を強く求め、2013年に労働契約法が改正され、無期転換権が導入された。さらに、「働き方改革」の一環として「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」を進められることとなり、パート・有期法が改正されて2020年4月1日(中小企業は2021年4月1日)から、①不合理な待遇差の禁止、②労働者に対する待遇に関する説明義務の強化、③裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備が規定された。

2020年10月13日と15日、旧労働契約法20条をめぐって争われた裁判に対し、最高裁が判決を下した。争点は、同一事業所で働く無期雇用労働者と有期雇用労働者の間の諸手当の支給に関する格差の是非であったが、最高裁は一時金の格差について不合理ではないとした一方、扶養手当などについては格差を不合理と判断した。最高裁の判断は、手当等の趣旨・目的に即して判断されたとなっているが、2020年12月に厚生労働省が定めた「同一労働同一賃金ガイドライン」からみて、問題があるといわざるを得ない。

厚生労働省の「賃金構造統計調査」における「雇用形態・性別・年齢階級別賃金及び雇用形態間賃金格差」(2021年)では、正規とそれ以外の賃金水準において、男女計では、正社員・正職員323.4千円(年齢42.3歳、勤続年数12.8年)に対し、正社員・正職員以外216.7千円(年齢49.6歳、勤続年数9.5年)となっている。男女別にみると、男性では、正社員・正職員348.8千円に対し、正社員・正職員以外241.3 千円、女性では、正社員・正職員270.6千円に対し、正社員・正職員以外195.4千円となっている。雇用形態間賃金格差(正社員・正職員=100)は、男女計67.0、男性69.2、女性72.2となっている。なお、男女計でみると賃金格差が最も大きいのは、企業規模別では大企業で、主な産業別では「卸売業,小売業」となっている。賃金水準では、依然として格差が大きいままとなっている。

 

 

【3】非正規公務員とは

公務職場では現在も非正規公務員が増え続けている。非正規公務員のほとんどは常勤職員と同じ職場で同じ仕事をしながら賃金や処遇に大きな差をつけられ、雇用契約への不安を抱えながら仕事をしている。

この提言では、期間業務職員などの非常勤職員、会計年度任用職員、臨時的任用職員などを「非正規公務員」として定義し、労働者とはいいがたい委員・顧問や地方自治体の特別職などと再任用職員を除いている。なお、勤務時間については正規職員と同等な職員だけでなく、パートタイムなど短時間勤務職員も含める。

全労連公務部会・公務労組連絡会は2009年に臨時・非常勤職員専門委員会を設置し、2010年から2015年まで官製ワーキングプア告発集会を開催し、非正規公務員の雇用、賃金・労働条件などの不合理な格差や雇い止めの実態などを現場から告発してきた。2018年には非正規公務員が置かれている実態を明らかにした「非正規公務員酷書」を発行し、国会議員要請などの運動を展開した。

2021年はコロナ危機の下でオンラインミーティング(「不合理な格差」「不安定な雇用」)や「非正規公務員の無期転換制度を求めるシンポジウム」、2022年には「非正規公務員オンライン学習会」を開催し、現場の実態を告発し、問題点を明らかにした。

民間労働者と違い、公務員は労働基本権が大きく制約されており、労働契約法やパート・有期労働法、最低賃金法が適用除外となっている。その権利制約の代償として人事院勧告制度などが設けられているが、非正規公務員はその対象からも外れ、法の狭間に置かれていることが、不合理な格差の解消や雇い止め阻止のたたかいを困難にしている。

そのなかで、正規・非正規、公務・民間を超えた連帯、職場を基礎にした中央や地方の運動によって、非正規公務員の賃金や一時金、各種休暇、休業制度などを一定程度改善させてきた。しかし、雇い止めや不合理な格差など、まだまだ多くの問題や課題が残されている。

 

① 国における非正規公務員の状況と実態

内閣人事局「一般職国家公務員在職状況統計表」によれば、2021年7月1日時点の国の非常勤職員数は159,257人。そのうち定型的公務労働の枠組みから外れる委員・顧問・参与等職員(22,298人)、保護司(46,448人)、水門等水位観測員(4,244人)を除く86,267人が常勤職員と同じ職場で働く非常勤職員の母数である。同時点の常勤職員数269,101人を合わせた(再任用職員数16,228人を除く)国家公務全体の非常勤職員割合は24.3%であり、厚生労働省が数(41,865人)・割合(56.7%)とも最大で、その大半が全国のハローワークなど労働行政で働く非常勤職員である。

国の非常勤職員のうち、1週間あたりの勤務時間が常勤職員の勤務時間の3/4を超える期間業務職員の数は39,587人(女性割合約77.3%)であり、そのうちフルタイム勤務が12,500人(女性割合約78.9%)、3/4超フルタイム未満が27,087人(女性割合約76.6%)となっている。

非常勤職員の労働の特徴は、その職務が常勤職員の職務と明確に区分されておらず、法制度上も職務と任用形態との関係が曖昧で、常勤職員が担ってきた職務を非常勤職員で置き換えることが可能な仕組みになっていることである。それゆえ、新自由主義的な「小さな政府」が志向され半永続的な定員削減政策が続けられるもとで、それまで常勤職員が担ってきた恒常的・専門的・継続的な公務が、現場の常勤職員が減らされるなか非常勤職員の雇用を大幅に増やすことで補われてきた経緯がある。

国公労連が国で働く非正規職員を対象に実施した2021年のアンケートでは、「職場で不満に感じていること」(3つ以内選択式)という設問に対して「雇用契約を更新されないのではないか」が60.3%、「職場や仕事がなくなるのではないか」が29.2%と多数を占め、「退職金がない・少ない」(27.1%)、「賃金が安い」(19.8%)等と比べても、雇用不安の解消に非常勤職員の要求が集中している。

賃金水準その他の労働条件は各府省の予算の範囲内で決められるとされ、賃金単価や昇給制度について政府による統一的な調査も行われていない。国公労連のアンケートでは時給900円台が多い職場から時給1,500円以上が半数を占める職場まで、府省や職場によって大きく異なることが分かっている。

 

② 教育現場における非正規教職員の状況と実態

今、学校現場では、非正規教職員を抜きにして1日たりとも教育活動が成り立たない事態となっている。文部科学省の「令和3年度公立小・中学校教職員定数調査」によれば、全国の小・中学校に配置されている教員のうち臨時的任用教員[産休代替・育休代替・配偶者同行休業代替を含まない]が4万2979人(7.3%)、非常勤講師等[非常勤講師・育児短時間勤務代替職員を常勤1人当たり勤務時間で換算した数]が9429人(1.6%)となっている。10年前(2011年)と比較すると、教員定数が58万9794人から58万6360人に3434人減っている。これに対し、実際に配置された教員数(実数・換算数)は、196人減(正規教員1983人減、臨時的任用教員1612人増、非常勤講師等[換算数]175人増)に止まっている。これは、地方自治体が独自措置で3238人配置して、国の教員定数減を学校現場の実情に合わせて押し止めているとみることができるが、その大半は非正規であり、教育現場の非正規化も深刻な状況にある。こうした問題の根本には、人手不足による慢性的な長時間過密労働の中で、国の定数1人分を複数の非常勤・短時間勤務教職員に置き換えることを可能にする「定数くずし」(2001年)、給与水準の引き下げによる定数増を可能にする「総額裁量制」(2004年)などの制度改悪により、地方自治体に安上がりで目先の教職員数だけを増やすような教職員配置が広がったことが大きな要因と考えられる。

しかし、長期にわたって非正規で働き続けることは、教職員に不安定雇用を強いるだけではなく、継続して子どもたちによい教育をしたいという思いを軽視するものである。また、非正規雇用となると、長期的・継続的な視野に立った研修や校務分掌等の役割を担うことも難しく、日本の教育全体として見たときにも「子どもの最善の利益」であるべき教育の質を大きく低下させることにもつながる。非正規教職員の正規採用化をすすめるなど、抜本的な改善が喫緊の課題である。

また、会計年度任用職員制度が始まってから非常勤教職員について“職の見直し”が行われ、正規教職員との均等待遇が図られるものと期待されていたにもかかわらず、期末手当支給が支給されないなど、多くの非常勤教職員の処遇改善が行われないという実態が明らかにされている。会計年度任用職員にすることで賃金・手当が増加することを避けたい自治体が、業務そのもののアウトソーシングをねらう動きも見られる。条例によって非常勤職員の賃金・処遇を改善するための法改正の趣旨が大きく損なわれ、公務の民間委託がいっそうすすめられるおそれが出ている。

 

③ 自治体における非正規職員の状況と実態

地方自治体では、「集中改革プラン」の下で徹底的に人員削減やアウトソーシングが行われてきた。地方公務員はピーク時327.8万人が現在276.2万人と51万人減っている。こうした大幅な定員や人員削減が行われてきた一方で、行政需要が高まる中、新たな業務への対応、退職者補充等の対応を非正規公務員に置き換えることにより行われてきた。これまで正規職員が担ってきた業務も含め、非正規職員が重要な役割を果たしており、もはや非正規職員抜きにして、公務・公共サービスを支えることのできない存在となっている。

総務省の調査(2020年)では臨時・非常勤の地方公務員は69万4473人、そのうち会計年度任用職員が約62万人を占める。さらに任用期間6か月未満又は勤務時間が週19時間25分未満の43万1273人を含めると合計112万5746人となる。全職員に占める割合は平均3~4人に1人が非正規公務員という実態である。

2020年4月に始まった会計年度任用職員制度は、非正規職員の「処遇改善」が趣旨であったはずが、「業務内容や責任、職務経験等に見合わず賃金水準が低い」「期末手当支給と引き換えに月例給の引き下げ」「病気休暇が有給でない」「処遇改善回避を狙ったパートタイム化」など多くの不適切な扱いが報告されている。とりわけ、窓口や相談業務、ケア労働と言われる保育士、看護師、給食調理員など女性の多い職種に集中しているのが特徴である。会計年度任用職員のほぼ約8割が女性であり、ジェンダー差別とも問われかねない課題である。

賃金水準については、総務省が示している「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル」において「当該非常勤職員の職務と類似する職務に従事する常勤職員の属する職務の級の初号俸の俸給月額を基礎として」とされており、多くの自治体で行政職給料表(一)1級1号給を基礎として定められている。総務省の調査(2020年)によると、事務補助職員では約7割の自治体で時間給1,000円以下となっている。

また、なかでも労災で療養中や妊娠中の「任期の満了」による雇い止めなど、労基法や労契法の趣旨に反する脱法的な取扱いも報告されている。

 

 

【4】非正規公務員の雇用安定と処遇改善にむけた課題

1.非正規公務員の雇用安定

公務公共サービスは、国民のいのちやくらし、営業を支え、子どもたちに行き届いた教育を行うという点からも求められるのは、専門性や継続性,安定性である。国も自治体も公務運営は「任期の定めのない常勤職員を中心とする」のが基本であり、非常勤職員はその名の通り例外である。

しかし、政府は行政需要が高まっているにもかかわらず、「小さな政府」の名の下に公務員の大幅な定数削減、人員削減を行ってきた。その一方で、不足する人員、退職者補充、新たな業務を非正規公務員で補充してきた。問題なのは専門性や継続性、安定性が求められる常勤的な仕事であるにもかかわらず雇用が不安定、賃金や労働条件が常勤職員よりも劣悪な非正規公務員で補充していることである。

国の非常勤職員は原則として1年以内の任用で、再度の更新は2回までとなっている。3年を超えて働き続ける場合は公募によって採用されなければならない。自治体の会計年度任用職員も総務省の「事務処理マニュアル」で国の非常勤職員をモデルに原則1年以内の任用期間で更新は3~5年としているところが多い。この公募という仕組みによって、非正規公務員は働き続けたくても問答無用で雇い止めとなっている。非正規公務員から「制度的パワハラ」とも言われている。

非常勤職員の公募について国は「国家公務員法の平等取扱原則及び任免の根本基準に照らし、非常勤職員を含む職員の採用・再採用に当たっては、国民に広く平等に官職を公開し、最も能力・適性の面から優れた者を公正に任用することが求められることから、原則として公募を経ることが必要であると考えており、公募要件を撤廃することは適当でない」と言うが、そもそも正規公務員を採用すべきところを非正規公務員で対応してきたこと自体が問題である。したがって直ちに更新にかかる公募という仕組みを廃止すべきである。

また、公務員の雇用は、雇用契約ではなく任用という行政処分である点で大きな違いがある。雇用契約であれば解雇制限が適用され、不十分な点や課題が多くあるとはいえ労働契約法で無期転換制度によって働き続ける権利がある。しかし、非正規公務員の場合は任用であるために民間の非正規労働者に当然に認められている解雇制限や労働契約法の無期転換権がない。この事が公務職場で働く非正規公務員の雇用を不安定にしている。したがって、常勤職員を採用することを前提としながらも当面、労働契約法の無期転換権のような権利や、パート・有期労働法を非正規公務員にも適用させるように法制度を変えていく事が必要である。

さらに、自然災害や新型コロナ危機で対応する職員が不足するなどの支障が出ている。この事からもこれまでの定数削減や人員削減、公務のアウトソーシングを抜本的に見直して常勤職員を大幅に増やすことが求められている。常勤的な仕事や働き方をしている非正規公務員を正規化していくことが、働いている職員にとってもサービスを受ける国民や住民、子どもたちにとっても必要である。全体の奉仕者としてふさわしい本来の公務のあり方である。

非正規公務員の雇用安定にむけて、正規職員化を前提として直ちに3年公募を廃止すること。公務の大原則は、「任期の定めのない常勤職員を中心とする公務運営」であるが、短時間勤務でなければ働き続けることができない場合があるため、任期の定めのない短時間勤務を創設することが求められる。したがって、フルタイム・短時間とも常勤的な職には常勤職員を任用すること。当面、無期転換権のような制度を創設することが求められる。

 

2.処遇改善にむけて

① 国家公務員では

労働組合や現場の非常勤職員の要求・運動により、夏季休暇や慶弔休暇の新設、一時金支給の拡大、両立支援制度の拡充など、非常勤職員の処遇は少しずつ改善されてきた。しかし、常勤職員との処遇格差は依然として大きく、民間事業所に求められている同一労働同一賃金ガイドラインの内容に照らしても、ただちに改善すべき労働条件課題が多い。

現場の非常勤職員から強い要求がある労働条件は、現在無給休暇となっている病気休暇の有給化、年次有給休暇の採用当初付与(現行は採用後半年経過で付与)、住居手当・扶養手当・寒冷地手当など「生活関連手当」と呼ばれる手当の支給である。人事院はこれらの要求に対し、「民間企業の勤務条件制度等調査」の結果における各制度の導入率が不十分であるという理由で措置を見送ってきているが、政府が民間事業所に求めている均等・均衡待遇の考え方は同一事業所における均等・均衡待遇であり、「情勢適応」のみを理由に公務部内の均等待遇を放棄することは国民の理解を得られにくい状況になってきている。2021年人事院勧告時の報告では、非常勤職員の両立支援制度の拡充について「妊娠、出産、育児等のライフイベントが生じ得ることは常勤、非常勤といった勤務形態で変わるものではないことから」と説明し、これまでよりも踏み込んだ考え方を示したが、予期せぬ病気やケガに際して安心して休めること、寒冷地の暖房費、家族の扶養や住居確保などについても「ライフ(命)」そのものの問題であり、同様の考え方で「常勤、非常勤といった勤務形態で変わるものではない」ことから、早急な改善措置が必要である。

 

② 教職員では

臨時的任用教員は、正規教員と同様に担任業務や分掌、教科指導を行い、子どもや保護者に対して責任を負い教育現場を支えている。しかし、その給与は「2級適用」「1級適用で上限あり」「1級適用で上限なし」など自治体によって異なる。地公法および地方自治法改正に伴い、「1級」から「2級」にした自治体もあるが、「1級」のまま改善しない自治体が依然として数多くある。

会計年度任用職員(非常勤講師等)については、ほとんどの自治体が年間勤務時間に上限を設けており、上限を超えて行われた労働を勤務と見なさず、時間外勤務手当どころか時給すら支払われていない状況がある。会計年度任用職員の正確な勤務時間把握と時間外勤務手当支給を実現し、さらには所定勤務時間を拡大させることは、他の職員の負担軽減や子どもの教育条件向上にもつながる重要な課題である。期末手当の支給については、総務省が「週あたりの勤務時間が15.5時間を越えることを基準に」としたうえ、多くの自治体が週あたりの勤務時間を「年間勤務時間を52週で割った時間」としたために、学校現場のほとんどの会計年度任用職員が支給対象から外されてしまっている。また、自治体によっては期末手当を支給する代わりに時間単価を切り下げ、その結果、支給対象から外れた職員はもちろん支給対象となった職員でも年収が減ってしまったという事例もある。

様々な課題を抱える教育現場を、豊かな教育実践経験や確かな実務能力で支えている非正規教職員の「同一労働・同一賃金」「職務給の原則」に基づく「2級適用」も含め、賃金水準や休暇制度などの「均等待遇」実現に向けたとりくみが、全国各地で求められる。また、「教員不足」「教育に穴があく」実態が明らかにされるなかで、長期の教職経験をもつ非正規教職員の正規化をめぐる採用選考のあり方も、重要な課題の一つである。

 

③ 自治体職員では

会計年度任用職員制度への移行に際しては、様々な格差が残された。正規・非正規の労働条件格差はもとより、自治体によっても賃金水準や休暇制度などに大きな開きが生じている。

特に問題なのがフルタイムと短時間勤務との処遇格差である。短時間勤務職員には退職手当を含む諸手当(期末手当除く)が支給されない制度となっている。このため自治体当局が合理的な根拠を示さず、諸手当を支給しない意図を持ってフルタイムの仕事を短時間勤務職員に置き換えた問題が頻発している。

直ちにフルタイムと短時間勤務職員の不合理な格差をなくすよう制度改正が必要である。そして、勤務時間の長さによる時間比例によって均等待遇が図られるべきである。

くわえて、2022年度は会計年度任用職員制度の運用開始から3年目を迎える。多くの自治体では総務省がマニュアルで示した「公募によらない再度の任用の上限回数」、いわゆる「3年目の壁」にあたる年となる。理不尽な「雇止め」を生じさせることがないよう、雇用安定を求める取組みが一層重要となる。こうした改善によって非正規化に歯止めをかけ、公務公共サービスの拡充につなげていくことが必要である。

 

以 上

 

 

(関連記事)

木村憲一「労働行政で働く非常勤職員の任用実態と労働条件」

小松康則「「声をあげたことで希望を感じた」組合員が力を発揮する労働組合をめざして」

出口憲次「「コミュニティ・オーガナイジング」の実践で労働運動の展望を切りひらく」

 

(参考情報)

国公労連『(パンフレット)非正規公務員を差別しないで! 国の非常勤職員の手記』

 

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