川村雅則「「大量離職通知書」を使って会計年度任用職員の離職状況を調べよう(中間報告)」

本稿は、タイトルどおり、「大量離職通知書」を使って会計年度任用職員の離職の状況を調べよう、と行動を提起するものです。Ⅰで問題意識をまとめ、Ⅱで大量離職通知書制度の説明をし、ⅢとⅣで調査筆者等の結果をまとめています。調査等で一定の成果は得られていると思いますが、資料の制約で十分に調べ切れていない部分もあるため、「中間報告」としています。不十分な箇所を補って、完成版を別の機会に報告したいと思います。どうぞお読みください。

なお、誤字脱字や内容上の誤りなどをみつけましたらその都度訂正をしていきます。大きな訂正を行いましたら注記します。(2023年10月8日記)

 

【お詫び】札幌市会計年度任用職員の2022年度末の離職者数は、570人ではなく561人でした。お詫びして訂正します。詳細は下記をご覧ください。(2024年1月10日記)

■川村雅則「(お詫び)札幌市の会計年度任用職員の離職者数の訂正」『NAVI』2024年1月10日配信
https://roudou-navi.org/2024/01/10/20240110_kawamuramasanori/

 

 

「大量離職通知書」を使って会計年度任用職員の離職状況を調べよう(中間報告)

川村雅則(北海学園大学)

 

 

 

Ⅰ.はじめに

1.会計年度任用職員の離職の状況を調べよう

新たな非正規公務員制度である会計年度任用職員制度を、それぞれの自治体はどう設計し、どう運用しているのか、また、そこで働く人たちはどのような状態であるのか、などを調べてきました[1]。また、その調査の手法や内容を整理することで、関係者(とくに自治体の労働組合と議員)が同様の調査に取り組むことを期待し、北海道労働情報NAVI(以下、NAVI)で配信してきました。

今回は、労働施策総合推進法第27条にうたわれた「大量離職通知書」(以下、単に通知書とも呼ぶ)を使って、各自治体の会計年度任用職員の離職状況に迫ってみました。

この大量離職通知制度についてはⅡで説明しますが、あらかじめ言うと、同制度には、会計年度任用職員の大量離職の発生自体を食い止める力はありません。離職者の発生状況が把握され、そのことで、関係機関が迅速かつ的確な対応をとることができるようになるのみです。言い換えれば、離職者の発生の防止ではなく離職した者への対応です。

しかしながら、離職状況を明らかにする/させる作業には大事な意味があります。

そもそも自治体(首長・行政)は、自らが任命し使用してきた会計年度任用職員でどの位の離職が発生しているのかを把握しているのでしょうか。行政の監視機能が期待されているはずの議会はどうでしょうか。離職の発生状況を把握しなければ、離職がなぜ発生しているのか、その離職は不可避のものなのか、そもそも任用制度のあり方はこれでよいのか、などのことが検証されることはないでしょう。

ここ(本稿)で強調したいのは、離職の状況を調べることが最終のゴールではない、ということです。恒常的・基幹的あるいは専門的な業務に従事していながら、その雇用(任用)がないがしろにされている会計年度任用職員制度を改善すること、そのためにも、離職に関する基礎的な情報を明らかにする作業が求められているのです。

同じような問題意識をもって、この非正規公務員問題に全国各地で取り組んでいる方々と調査・研究プロジェクトを展開していきたいと考えています[2]。今回紹介する離職状況調査がその端緒になれば──そう思ってこの原稿をまとめました。では、順を追って説明していきます。

 

[1] 札幌市に次いで旭川市の制度を筆者は調べてまとめたほか、労働組合のご協力の下、当事者を対象としたウェブアンケート調査を行い、その結果をまとめています。また、神代(2022)により石狩市の状況が、坂本(2022)によって根室市の状況が、それぞれ報告されています。いずれも参考文献をご参照ください。

[2] 例えば、熊本の関係者向けに書いた川村(2023b)をご覧ください。事前準備としての基礎資料の整理・集計方法を整理しています。「公務非正規運動の前進のための労働者調査活動」と題した拙稿もご参照を。

 

2.会計年度任用職員の離職の状況を調べる必要性

1会計年度(1年)の範囲内で任用される会計年度任用職員は、1年を超えて働いていても、それは、雇用の更新ではなく再度の任用で新たな職に就いたものと解されています[3]。ゆえに条件付採用期間が毎年設けられています。そして、一定の期間──総務省は3年を推奨[4]──ごとに公募制が設けられ、現在働いている者も、公募に応じて試験に合格しなければ任用は「継続」されないという制度設計になっています(本稿でいう「継続任用」とは、あくまでも、年度ごとの任用を指します。以下、同様)。労働契約法第18条によって、一定の条件を満たせば無期雇用転換制度が準備された民間の非正規雇用制度と比べても、雇い止めが行われやすい制度設計になっていると言えます。それをまとめたのが図1です。

 

図1 公務と民間の非正規制度の比較

注1:公務におけるaの墨塗箇所は、条件付採用期間(試用期間)。
注2:bの点線は勤務実績に基づく能力実証が認められた箇所。
注3:cの実線は、公募制による能力実証が必要とされる箇所。
出所:筆者作成。

 

そのため、いわゆる3年公募にあわせて(2022年度末)、離職者が数多く発生するのではないかという懸念が報じられました[5]

まず、そもそも、恒常的な仕事にもかかわらず、一定期間ごとに労働者が機械的に公募にかけられることの問題性が確認される必要があります。労働者の雇用・生活や尊厳を軽視した行為と言えるでしょう。

その上で、なのですが、公募で実際にどの位の離職が発生したかは明らかにされたでしょうか。

100人が公募にかけられるからといって、100人が公募で落とされて離職を余儀なくされるわけではありません[6]。そもそもそのように大勢を離職させ人を入れ替えていては、行政サービスはまわらないでしょう。公募にかけられる人数に対して実際の離職の人数はそこまで多く発生しない、とこの問題に取り組む労組関係者や研究者らは予測していました。しかしながら、では、実際に離職はどの位発生したかは明らかにされたでしょうか。その数を明らかにして、任用制度の検証作業を行う必要があります。

整理すると、民間の非正規雇用者に比べても雇い止め・離職が発生しやすい会計年度任用職員を対象にして、第一に、公募にかけられる人数はもちろんのこと、公募で果たして、実際にどの位の職員が2022年度末に離職を余儀なくされたのかを明らかにすることが必要です。

第二に、公募の時期に限らず、どの位の離職が発生しているのかを毎年明らかにすることが必要です。

というのは、離職が発生しなければ、3年ごとなど、公募は統一的に(基準となる年に)行われることになりますが、実際には公募の時期をまたずに離職が発生し、結果、基準の年からずれた公募も行われています。

調査をしてみて明らかになったことなのですが、実際には、公募にかけられる前に短期・期間満了[7]で離職を選択しているケースが少なからず発生しているのです。

そのことも踏まえると、第三に、離職の人数規模だけでなく、離職の理由なども明らかにすることが求められています。公募で落とされた、というだけでなく、上記のとおり、公募をまつことなく短期(期間満了)での離職も発生しています。それは何故なのでしょうか。任用制度や賃金・労働条件の問題がそこに反映されてはいないでしょうか。

まとめると、公募にかけられる人数だけではなく、実際に生じている離職の状況を調べることが、毎年必要であって、その際には、離職の理由も可能な限り明らかにすべきである、となるでしょう。そうした作業を通じて、公募制を含む任用制度のあり方が検証されていくのではないでしょうか。離職状況を明らかにすることは、3年公募を経たまさにいま、必要な作業であると言えないでしょうか。そして、この作業を効率的に進める上で、大量離職通知書が役に立つのです。

 

 

[3] もっとも、この説明は一般市民には分かりづらいからと、求人では、「更新あり」などと記載している自治体は珍しくないと思います(札幌市も旭川市もそうです)。「再度の任用」、「新たな職に就く」というのは、そもそも無理のある説明だと感じます。

[4] 本稿は3年公募を念頭において書いていますが、実際には、毎年公募を行っている自治体もあります。

[5] 例えば、「(ThinkGender)非正規公務員、女性しわよせ DVの相談員、低待遇に疲弊「限界」」『朝日新聞』朝刊2023年3月9日付。「会計年度任用職員制度 非正規公務員「雇い止め」の不安」『読売新聞』朝刊2023年1月20日付。「非正規公務員3200人超雇い止め 旭川など7市で22年度末 雇用不安、サービス低下の恐れ」『北海道新聞』朝刊2023年1月20日付など。

[6] 但し、公募制そのものが問題です。公募制は設けられているけれども再度任用されるのだからことさらに目くじら立てなくてもよいではないか、と労組関係者の一部から聞かれる発言は、公募制そのものがもつ問題性を看過していると言わざるを得ません。繰り返しになりますが、この点は強調をしておきます。

[7] 期間の途中で離職しているケースも実際には存在しますが、ここでの短期とは、期間満了を指します。

 

3.離職の何を明らかにすべきか

大量離職通知書が役に立つのです、と上で書きました。

ただ、前言を撤回するようですが、大量離職通知書は、今後、役に立ちます/立つようにしていかなければなりません、というのが正確な表現かもしれません。

というのも、次の項で述べる理由から、通知書がそもそも自治体で作成されていなかったり、作成されていても記載されている内容が統一されていない可能性があるからです。そこで、ここではいったん、大量離職通知書制度から離れて、上でも示した、会計年度任用職員の離職に関して我々が明らかにすべきことを図で整理しておきます。

図2は、会計年度任用職員が継続任用か離職に至る経路を整理したものです。期間満了が近づいてきた時期からをイメージしています。煩雑さを避けるため、注1のとおり、公募によらない能力実証で継続任用される者は除いています。また期間途中で離職した者も除いています。

 

図2 継続任用と離職の発生経路(公募によらない能力実証で継続任用される者を除く)

注1:これとは別に、公募によらない能力実証で継続任用される者も毎年発生している。
注2:次年度にその職が廃止になるケースでは、【1】へ進む場合もあれば、【2】へ進む場合もある。
出所:筆者作成。

 

さて、【1】~【8】のいずれにも調べるべき意味があるのですが、とくに把握が急がれるのは【4】(公募の採用試験で落とされた人数)や、【8】です。

順に説明します。

第一に、【1】は公募にかけられる者で、【2】は公募に応じずに離職する者です。後者は、公募にかけられる年をまたずに短期(期間満了)で離職する者、公募を機に採用試験は受けずに離職する者が中心であると思われますが、ほかに、次年度に職が廃止になる者や(ゼロかごくわずかだと思われますが)人事評価の結果で離職を余儀なくされる者があげられます

なお、札幌市と旭川市への筆者調査では、公募をまたずに短期(期間満了)で離職を選択する者が予想外に多かったです。離職の理由など含む離職の全体像を明らかにすることが課題です。

第二に、公募の採用試験を経た後には、再度の任用が決まる者(【3】)と落ちた者(【4】)とに分かれるわけですが、後者に対して、当該自治体への再就職支援等を行っている自治体もあります。その場合、再就職支援によって当該自治体に別の職で再度任用されることになります(【5】)。その道がなければ/断たれれば、【6】へ進みます。これによって、再度任用(公募を経た再度任用)される者(【7】)と、離職する者(【8】)とが最終的に決まります。

ところで、第三には、図の注2に書いているとおり、次年度にその職が廃止になるケースがあります。その場合、【1】へ進む(当該自治体の別の職に就くことを希望する)場合もあれば、【2】へ進む場合もあるでしょう。また、職の廃止は、仕事そのものが完全になくなる場合と、民間化される場合とに分かれるでしょうから、後者の場合には、受託者等に雇用されてその仕事に継続して従事することもあるでしょう(自治体がそのことを支援することもあるでしょう)。

繰り返しになりますが、会計年度任用職員がどういう理由で離職に至っているのかを明らかにすることが課題です。

 

 

4.大量離職通知書調査の限界をふまえた行動の提起

今回、大量離職通知書を使って、各自治体の会計年度任用職員の離職の状況を調べてみました。

しかしながら、この制度を所管する厚生労働省の、同制度に対する考えが整理されたのは、3年公募の時期である2022年度末をまたいでのことでした[8]

ゆえに、あらかじめ言えば、第一に、大量離職通知書を作成していない自治体が少なくないのではないか、と思われます。後述のとおり、筆者の今回の調査でも、開示された件数は想定外の少なさでした。

第二に、ハローワークに提出された大量離職通知書の内容が、統一されていない可能性もあります。自治体は、ハローワークと相談して通知書を作成していると思われますが、厚生労働省の見解自体が早い段階で確定していませんでしたから致し方ない面もあろうかと思います。例えば、上記の図2にならってあらかじめいうと、大量離職通知書に記入されていた離職者は、【8】ではなく、【1】+【2】が多いと思われます。

こうした限界があります。

とはいえ、次(2023年度末)の大量離職通知書を作成させる/通知書の内容を改善させるためにも、2022年度末の通知書の作成の有無等を各自治体にまずは照会する作業は欠かせません。そうしなければ、次の機会にも通知書がまた作成がされないおそれがあります。

さて、長々と説明してきましたが、問題関心を今一度、端的に言えば、公共サービスの担い手である会計年度任用職員が、仕事は恒常的であるにもかかわらず、会計年度ごとに雇われ、しかも、一定期間ごとに公募にかけられている、中には、離職を余儀なくされたり自ら離職を選択している者もいる──以上のようなことを見過ごしていてよいのか、ということです。

しかし、状況が可視化されない限り、離職問題など何もなかったことにされるか、あいまいな情報で離職問題が語られることになります。

この問題を検証し制度の改善につなげていくためにも、まずは離職の状況を調べませんか。都道府県、政令市、中核市と調査の対象範囲を広げていきましょう。例えば、筆者は、北海道、札幌市(政令市)、旭川市・函館市(中核市)を担当ができます。読者の皆さん──とりわけ、労働組合の皆さん、自治体議員の皆さんはいかがでしょうか。ご自身が担当できる自治体はないでしょうか。参加する「有志」が増えれば増えるほど、全国的な調査プロジェクトに発展していくことになります。調査プロジェクトを一緒に進めていきませんか。

 

[8] この点は当事者団体や労働組合らによって行われた厚生労働省ヒアリングの結果や、同ヒアリングを経て整理された資料などに詳しいです。安田真幸氏(連帯労働者組合・杉並執行委員)がNAVIに報告しています。安田氏の報告は全5回に及びますが、最後の安田(2023)をご参照ください。

 

 

 

Ⅱ.大量離職通知書制度の概要

それでは、大量離職通知書制度の説明に移ります。通知書そのものも資料として掲載しています。制度の把握をされている方は、Ⅲに飛んでいただいて構いません。

 

1.制度の要点

制度の要点をあらかじめまとめると、1つの事業所で1か月に30人以上の離職者が発生する場合には、最後の離職が生じる日の1か月前までに、大量離職通知書を作成し、ハローワークに届け出る義務が生じます。30人というこの人数には、常勤職員(正規職員)も含みます。離職者とは離職が確定した者です。

安田(2023)で対象となる離職者を説明すると、「実際に職を失い再就職先が必要な人」で、具体的には、「定年退職者(再任用が決まった人を除く)+再任用退職者+有期雇用職員(任期付き職員・臨時的任用職員・会計年度任用職員など)で期間満了退職者」です。そのうち、「会計年度任用職員に絞ると、公募に再応募し不合格となった人に加え、(様々な理由で)期間満了で退職した人」が対象となります。

但し、繰り返しになりますが、この内容が確定したのは、2023年度に入ってからですから、上記の内容で自治体が回答しているとは限らないことに留意してください。

 

関連する資料を以下に掲載します。本稿では、資料②を「パンフレット」、資料③を「様式」と称して用いていきます。

 

資料① 厚生労働省「大量離職通知書」(ページ名は「再就職援助計画」と「大量離職届・大量離職通知書」)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/other36/index.html

資料② 厚生労働省「(パンフレット)<国または地方公共団体の方へ>離職する職員の再就職のために~「大量離職通知書」について~」[9]

https://www.mhlw.go.jp/content/001061753.pdf

資料③ 厚生労働省「大量離職通知書の様式(Word版)」(ページ名は「大量離職届及び大量離職通知書 各様式」)

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001061670.doc

 

では、順に説明していきます。

 

[9] 但し、安田(2023)で言及されているように、厚生労働省のサイトに掲載されているのは古いパンフレットのままです。改訂版は、安田(2023)中の資料1をご参照ください。

http://www.econ.hokkai-s-u.ac.jp/~masanori/20230825_yasudamasaki01

 

資料 大量離職通知書(表面、裏面)

 

 

2.労働施策総合推進法及び大量離職通知書の目的等

第一に、労働施策総合推進法は、「国が、少子高齢化による人口構造の変化等の経済社会情勢の変化に対応して、労働に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、労働市場の機能が適切に発揮され、労働者の多様な事情に応じた雇用の安定及び職業生活の充実並びに労働生産性の向上を促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、経済及び社会の発展並びに完全雇用の達成に資することを目的とする。」とあります。

第二に、同法の第27条では「大量の雇用変動の届出等」がうたわれています。その条文は以下のとおりです(下線は、「パンフレット」の記載にならって筆者が引きました)。

 

第二十七条 事業主は、その事業所における雇用量の変動(事業規模の縮小その他の理由により一定期間内に相当数の離職者が発生することをいう。)であつて、厚生労働省令で定める場合に該当するもの(以下この条において「大量雇用変動」という。)については、当該大量雇用変動の前に、厚生労働省令で定めるところにより、当該離職者の数その他の厚生労働省令で定める事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。

2 国又は地方公共団体に係る大量雇用変動については、前項の規定は、適用しない。この場合において、国又は地方公共団体の任命権者(委任を受けて任命権を行う者を含む。第二十八条第三項において同じ。)は、当該大量雇用変動の前に、政令で定めるところにより、厚生労働大臣に通知するものとする。

3 第一項の規定による届出又は前項の規定による通知があつたときは、国は、次に掲げる措置を講ずることにより、当該届出又は通知に係る労働者の再就職の促進に努めるものとする。

一 職業安定機関において、相互に連絡を緊密にしつつ、当該労働者の求めに応じて、その離職前から、当該労働者その他の関係者に対する雇用情報の提供並びに広範囲にわたる求人の開拓及び職業紹介を行うこと。

二 公共職業能力開発施設において必要な職業訓練を行うこと。

 

第三に、大量離職通知書は「地域の労働力需給に影響を与えるような大量の雇用変動に対して、職業安定機関等が迅速かつ的確に対応を行えるようにすること。」を目的としています(先に示した資料②厚生労働省サイトをご参照ください)。この点は、覚えておいてください。通知書作成をしていなかったことが明らかになった自治体の、その理由の妥当性を後で考える際に参照します。

 

3.提出の条件及び離職者の定義

第四に、通知書は、1つの事業所で1か月に30人以上の離職者が生じる場合、最後の離職が生じる日の1か月前までに、ハローワークに提出しなければなりません。1つの事業所/1か月に30人以上/最後の離職が生じる日の1か月前までに/などがポイントになります。

なお、離職者が30人未満であっても、自治体には、一定の対応が求められていることは強調したい点です。

「パンフレット」によれば、「30人未満の離職者が生じる場合については、「大量離職通知書」の提出義務はありませんが、一定程度の規模の離職が予定されており、再就職先が確保されていない場合には、円滑に再就職支援を行う必要があるため、ハローワークに「大量離職通知書」の提出等についてご相談ください。」とあります。

第五に、離職者とは、どういう人でしょうか。離職者とは、任用期間満了により離職する場合であっても、6か月を超えて引き続き任用されている者は離職者に含まれます。

ただし、下のいずれかの項目に該当する者、職員本人の都合または職員の責めに帰すべき理由により離職する者は除かれます。

日雇い、または期間を定めて任用されている者(引き続き任用されている期間が6か月以下である者に限る)

・試用期間中の者(14日を超えて引き続き任用されている者を除く)

・常時勤務に服することを要しない者として任用されている者

パートタイム(短時間勤務者)であっても、離職する場合は離職者に含まれます。

ただし、任用期間満了後に再度任用されることが決定された者は、離職者に該当せず、選考等の結果、離職することが確定した者が離職者に含まれます。ですから、公募にかけられるだけでは(先の図の【1】の段階では)、ここでいう離職者にはあたらない──そのように最終的には決着がつけられました。

以上の離職者の説明は「パンフレット」によります(下線は筆者)。

 

なお、上記の下線を引いた箇所に関連して、二点補足します。

一つには、6か月を超えて任用されるかどうかで離職者に含まれるかどうかについて。この点は、後の計算式であらためて言及します。

もう一つには、作業が遅れたのか、最後の下線の「任用期間満了後に再度任用されることが決定された者」(図の【3】+【5】)が確定する前に通知書が提出されているケースが今回は多かったと思われること(結果として、図の【1】+【2】が離職者として通知されていると思われること)です。解雇予告との関係や当事者の再就職の準備の都合もありますから、2月中には合否結果が確定される必要があります。

 

4.大量離職通知書に記載する内容

第六に、大量離職通知書に記載する内容は次のとおりです(様式から転載)。

①下記の離職に係る事業所(名称、所在地)
②下記の離職が生じる年月日又は期間
③雇用形態(計/うち常勤職員/うち非常勤職員)×年齢〔別にみた〕
④離職者数
⑤職種×年齢〔別にみた〕
⑥離職者数
⑦再就職の援助のための措置
⑧再就職先の確保の状況

このうち我々がとくに知りたいのは、離職者数のうちの非常勤職員の人数(③×④)、再就職の援助のための措置の有無及びその内容(⑦)そしてその実績(⑧)などです。

なお、第一に、大量離職通知書でいう非常勤職員の概念などはⅢでふれます。

第二に、⑦⑧に関わって、再就職の援助が手厚いことや実績が高いことは評価されるべきことですが、そもそも、有期雇用の濫用・公募制をやめて不必要な離職者を発生させない制度づくりが必要である、と考えます。

 

 

 

Ⅲ.大量離職通知書を使った離職状況調査の結果

Ⅲでは、筆者の今回の調査の結果をまとめます。調査の課題もあわせて述べていきます。

 

1.行政文書開示請求の概要

 大量離職通知書の開示請求を北海道労働局(長)に対して行いました。

具体的には、2023年8月22日に、「北海道及び北海道内の市町村から〔道内の職業安定所に対して〕提出された、労働施策総合推進法第27条に基づく大量離職通知書」の開示を北海道労働局に対して求めました。

提出された時期・期間は少し長めにとって、「令和5〔2023〕年1月1日~令和5年7月31日の間」としました。自治体からの大量離職通知書の提出が過去にはあまりなされず、2022年度末から本格化するような状況であったことによります(この点は、安田氏による報告をご参照ください)。実際、筆者が2023年にヒアリングを行った札幌市も旭川市も、通知書を作成・提出したのは今回が初めてのことでした。

 

2.開示された通知書

情報開示の結果は9月11日付けで行われました。しかしながら、開示されたのは、5つの自治体が作成した通知書のみでした。五十音順に、以下の五市です。

 

旭川市、帯広市、北広島市、釧路市、札幌市

 

このような開示の結果(通知書の提出状況)は、筆者には想定外でした。2021年4月1日を基準日とする、「令和3〔2021〕年度会計年度任用職員制度の施行状況等に関する調査」(以下、2021総務省調査)を集計した川村(2022c)によれば、北海道及び35市に限っても、多くの自治体が3年(ないし2回の再度任用)で公募にかける制度設計になっていたからです。

表1をご覧ください。北海道及び道内35市の会計年度任用職員の人数と公募の採用状況を整理したものです。会計年度任用職員の人数は、基準日が2020年4月1日の総務省「会計年度任用職員制度等に関する調査」(以下、2020総務省調査[10])から整理しました。

 

表1 北海道及び道内35市の会計年度任用職員数及び主な公募の状況/単位:人

公募の有無及び主な公募制注3 公募の有無及び主な公募制注3 公募の有無及び主な公募制注3
短期間・短時間勤務者注1 その他注2 短期間・短時間勤務者注1 その他注2 短期間・短時間勤務者注1 その他注2
北海道 3124 1357 1767 2回/2年以上3年未満 留萌市 275 7 268 毎回 千歳市 829 273 556 4回/5年以上6年未満
札幌市 3842 913 2929 3年以上4年未満 苫小牧市 552 350 202 毎回 滝川市 468 128 340 毎回
函館市 982 137 845 4回/5年以上6年未満 稚内市 417 50 367 2回 砂川市 366 43 323 5回
小樽市 838 268 570 2回 美唄市 295 64 231 2回 歌志内市 92 27 65 毎回
旭川市 2043 536 1507 2回 芦別市 131 25 106 2回/3年以上4年未満 深川市 186 13 173 2回
室蘭市 621 60 561 3回 江別市 883 344 539 2回/3年以上4年未満 富良野市 207 29 178 2回
釧路市 1118 239 879 2回 赤平市 194 7 187 公募を行わない 登別市 373 109 264 2回
帯広市 1212 394 818 4回 紋別市 204 49 155 2回 恵庭市 365 63 302 4回
北見市 678 3 675 4回 士別市 397 65 332 公募を行わない 伊達市 261 97 164 公募を行わない
夕張市 119 64 55 毎回 名寄市 610 79 531 2年以上3年未満 北広島市 378 123 255 4回
岩見沢市 620 36 584 2回 三笠市 133 12 121 毎回 石狩市 251 44 207 4回
網走市 203 20 183 2回 根室市 282 31 251 公募を行わない 北斗市 116 10 106 4回

注1:「短期間・短時間勤務者」とは、「フルタイム6か月未満(x)+パートタイム6月未満又は19時間25分未満(y)」。
注2:「その他」とは、「フルタイム6か月以上(a)+パートタイム6か月以上かつ19時間25分以上(b)」。
注3:「公募の有無及び主な公募制」のうち後者に関しては、「上限回数を設けている場合、上限回数(回)」「上限通算任用期間を設けている場合、上限期間(年)」のうち主なものを掲載した(一部の例外的な職種を除き、当該自治体で採用されている公募制は統一されている)。なお、表に記載のとおり、上限回数と上限期間の両方の回答を掲載している自治体もあった。
注4:札幌市の回答が「3年以上4年未満」となっているのは、「2年以上3年未満」の誤りではないかと思われる(3年間で公募)。
出所:会計年度任用職員の人数は2020総務省調査より、主な公募制の状況は2021総務省調査より。

 

こうした結果に基づき、少なからぬ自治体が通知書を作成・提出していると予測していました。しかし、提出は5市に限られました。

こうした提出状況は、(a)自治体の多くは、30人以上の離職者を発生などさせていないということのあらわれなのか、それとも、(b)30人以上の離職者を発生はさせたけれども通知書の提出は必要ないと多くの自治体で考えられていることのあらわれなのか──時間はかかりますが、この点を明らかにする必要があります(こういう作業を進めるためにも多くの「有志」が必要です)。

とくに、上記の川村(2022c)によれば、5市のうち旭川市・釧路市・札幌市で採用されているのは3年公募制ですが、帯広市・北広島市では5年公募制です。それでも、両市からは今回通知書が提出されています(但し、後でみるとおり、北広島市では職の廃止という自体が発生した影響が大きいかもしれません)。

また、繰り返しになりますが、大量離職通知書を提出しなければならない「30人以上」の離職者とは、会計年度任用職員に限られたものではありません。

こうした事実から考えると、話を会計年度任用職員に限定しても、一定の職員数を抱えた自治体で、かつ、3年公募制を採用した自治体で、通知書を作成しなくてよい状況に果たしてあったのかどうかは疑問が残るところであります。

 

[10] 2020総務省調査のうち北海道及び道内市町村等のデータを入手し集計・分析作業を行ってまとめた川村(2021a)も参照。

 

 

3.5市の通知書に記載されていた内容

1)通知書の通知日等

 

表2 5市の大量離職通知書の通知日及び「離職が生じる年月日又は期間」

通知(提出)日 ②下記の離職が生じる年月日又は期間
旭川市 2023年3月17日 2023年3月31日
帯広市 2023年2月28日 2023年3月31日
北広島市 2023年2月27日 2023年3月31日
釧路市 2023年2月28日 2023年3月31日
札幌市 2023年3月31日 2023年3月1日から2023年3月31日まで

出所:大量離職通知書より筆者作成。

 

表2は、大量離職通知書の通知日及び「離職が生じる年月日又は期間」です。

まず後者をみると、「②離職が生じる年月日又は期間」については、(1)旭川市、帯広市、北広島市、釧路市は「令和5年3月31日」と記載されています。(2)札幌市のみが「令和5年3月1日から令和5年3月31日」までと記載されています。

次に前者をみると、札幌市も旭川市も、最後の離職者が発生する日の1か月前までの提出はできていません。

但し、札幌市については、そのことが功を奏してか、確定した離職者数が通知書に書かれることになりました。

 

 

2)離職者数とその規模

 

表3 5市の会計年度任用職員及び大量離職通知書に基づく離職者の人数/単位:人、%

会計年度任用職員 計 離職者 計 非常勤職員の離職者が会計年度任用職員に占める割合(%)
短期間・短時間勤務者注1 その他注2 うち雇用保険被保険者数注3 45歳以上60歳未満 うち常勤職員注4 うち非常勤職員注4
A(a+b) a b B(e+f) c d e f f/A f/b
旭川市 2043 536 1507 252 165 83 50 202 9.9 13.4
帯広市 1212 394 818 127 21 49 78 6.4 9.5
北広島市 378 123 255 75 45 32 44 31 8.2 12.2
釧路市 1118 239 879 326 236 161 141 185 16.5 21.0
札幌市 3842 913 2929 801 590 257 231 570 14.8 19.5
合計 8593 2205 6388 1581 1036 554 515 1066 12.4 16.7

注1:「短期間・短時間勤務者」とは、「フルタイム6か月未満(x)+パートタイム6月未満又は19時間25分未満(y)」。
注2:「その他」とは、「フルタイム6か月以上(a)+パートタイム6か月以上かつ19時間25分以上(b)」
注3:帯広市では、「うち雇用保険被保険者数」は掲載されていなかった。
注4:「うち常勤職員」と「うち非常勤職員」とを足し合わせると「離職者 計」となる。
出所:「A.会計年度任用職員」の数値は2020総務省調査より、「B.離職者」に関する数値は「大量離職通知書」の「④離職者数」より転記。

 

5つの自治体の会計年度任用職員数と離職者数を表3にまとめました。

前者は、2020総務省調査より転記し、後者は「大量離職通知書」から転記しました。時期が異なる数値であることには留意してください。

様式によれば、離職者数については次のような記載が求められています。

3 離職者数

(1) ④の計欄には、離職者数のうち届出時において雇用保険の被保険者である者の数を記入すること。

(2) ④の計及び⑥欄には、通知時の年齢が45歳以上60歳未満の者の数を記入すること。

(3) ④及び⑥欄の離職者数のうち障害者がある場合には、その内数を同欄に括弧書きで記入すること。

 

そして、非常勤職員など、雇用形態の定義は次のように記載されています。

2 雇用形態の定義

③欄の「非常勤職員」とは、「常勤職員」以外の職員をいう。勤務形態としては、①日々雇い入れられる職員、②勤務時間が常勤職員の1週間の勤務時間の4分の3以下の職員、③再任用短時間勤務職員等をいう。ただし、審議会の委員等毎日勤務に服することを要しない者等は除く。

 

非常勤職員とは、常勤職員以外の職員だと定義されています。よって非常勤職員には、会計年度任用職員のほか、再任用短時間勤務職員が含まれている可能性があります。

ところで、想定外だったのは、勤務形態の例示のうち、②に従うと、勤務時間数の長い会計年度任用職員は「常勤職員」に分類されることです。自治体がどう回答しているか、確認をする必要があります。あわせて、厚生労働省の考えも確認する必要があります[11]

 

さて、結果をみます。

第一に、非常勤職員の離職者数は1000人を超えます。

但し、繰り返しになりますが、確定された離職者の人数ではなく、札幌市以外は、離職が予定された人数が回答されていました(旭川市の確定した離職者数は、筆者調査で確認済みで、173人です)。

第二に、そのことを踏まえて、非常勤職員の離職者が会計年度任用職員に占める割合を計算してみました。

通知書に記載される離職者には6か月未満の者は含まれないことを考えると、本来は、任用期間が6か月未満の者を会計年度任用職員全体から除く必要がありますが、その作業はできません。除き(引き)すぎではありますが、短期間・短時間勤務者を除いた数値を母数にした割合も掲載しました。

ここでは、会計年度任用職員全体を母数にした数値(表中のf/A)をみます。結果は、6.4%(帯広市)~16.5%(釧路市)です。

 札幌市を除いて、通知書に記載されたのが、公募にかけられる者を含む離職が予定されていた人数であることを考えると、予想外に低いと感じました(但し、帯広市と北広島市は5年公募制)。短期間・短時間勤務者を除いて計算しても(表中のf/b)、9.5%~21.0%です。3年を待たずに、短期(期間満了)で離職が発生していることを背景に、公募の時期が分散しているのでしょうか。個々の自治体ごとに事情を調べる必要があります。

第三に、そうした中で、札幌市の非常勤職員の離職者割合が相対的に大きいです(14.8%、19.5%)。

札幌市は、予定された離職者ではなく、確定した離職者数が記載されています。また、会計年度任用職員制度に移る前の旧制度(旧臨時・非常勤職員制度)下の勤続年数も計算に入れられて公募が開始されています、つまり、公募の時期が他の自治体に比べて分散していると思われます。

以上のことを踏まえると、札幌市の離職者割合の高さは、公募にかかる前の短期離職が多いことのほか、札幌市の独自ルールである同一部3年ルールの反映していることなどが理由として考えられます。川村(2023c)にも記載しましたが、離職の詳細を明らかにすることが課題です。

 

3)職種ごとの離職者数

 

表4 職種別にみた5市の離職者数

⑤職種 ⑥離職者数
45歳以上60歳未満
旭川市 事務 252人 83人
事務 50人 27人
事務 202人 56人
帯広市 事務 127人 21人
事務 49人 0人
事務 78人 21人
北広島市 事務 2人 2人
福祉 41人 30人
釧路市 労務職/資格職/特殊専任職/事務職/統括職/指導職/その他 労務職66人/資格職117人/特殊専任職9人/事務職90人/統括職16人/指導職23人/その他5人 労務職24人/資格職60人/特殊専任職3人/事務職54人/統括職13人/指導職4人/その他3人
労務職/資格職/特殊専任職/事務職/統括職/指導職/その他 労務職13人/資格職69人/特殊専任職2人/事務職14人/統括職16人/指導職23人/その他4人 労務職5人/資格職36人/特殊専任職1人/事務職8人/統括職13人/指導職4人/その他4人
労務職/資格職/特殊専任職/事務職/統括職/指導職/その他 労務職53人/資格職48人/特殊専任職7人/事務職76人/その他1人 労務職19人/資格職24人/特殊専任職2人/事務職46人/その他1人
札幌市 行政職 651人 245人
現業職 150人 12人

出所:「大量離職通知書」の「⑤職種」「⑥離職者数」を転記。

 

表4は、職種別に整理された離職者数です。この点について「様式」によれば、次のような記載が求められています。

4 ⑤欄には、離職することとなる者の職種をおおむね人事院規則9―2(俸給表の適用範囲)等の規定に基づく職種に従って記入すること。ただし、1職種についての⑥欄の離職者数が10人未満である場合には「その他」として一括して記入して差し支えないこと。

 

但し、結果をみると、職種ごとの離職者数が詳細に記載されているのは釧路市のみでした。

また、様式の「作り」をみると、離職者の「計」、「うち常勤職員」、「うち非常勤職員」ごとに、職種別の離職者数を記載するようにみえます。旭川市、帯広市、釧路市の回答は、そのようになっていました(表4の中段と下段の数値を足すと上段の数値になります)。北広島市と札幌市の記載はそのようにはなっていませんでした[12]

なお、札幌市では、「行政職」と「現業職」に分けてその人数が記されているのみでした。

 

4)再就職の援助措置と実績

 

表5 5市の再就職援助のための措置及び再就職先の確保状況

⑦再就職の援助のための措置 ⑧再就職先の確保の状況
旭川市 1 常勤職員の再就職に備え、旭川市退職職員人材バンクを導入。
2 非常勤職員(会計年度任用職員)のうち、希望者に対して、必要に応じて別部署での募集を案内。
〔枠外に記載〕非常勤職員202人は3/17時点で4月以降に旭川市で勤務する予定がない人数。内30~40人が公募中の旭川市の求人へ応募中であり、変動する可能性あり。
帯広市 1 退職者向けに再任用職員任用の希望調査を実施。
2 4月1日任用の会計年度任用職員の周知を実施。
2事業所 10人
北広島市 ①事務 令和5年度の新規募集について案内をメール配信し応募を促した。
②福祉 学童クラブ事業の委託化に伴う離職。委託契約において受託者に対し、希望者の継続雇用や雇用期間、賃金や休暇等の処遇に配慮し、現状水準を確保するとともに雇用の安定化に努めるものとする旨を記載し、継続雇用の希望について聴取。受託者は希望者と令和4年12月に面談し、希望者全員の継続雇用が内定している。
■■■■■■ 1事業所 71人
釧路市 再就職活動に関する休暇等への配慮 0事業所 0人
札幌市

注:北広島市の「⑧再就職先の確保の状況」の黒塗りは、開示された通知書のままである。
出所:「大量離職通知書」の「⑦再就職の援助のための措置」「⑧再就職先の確保の状況」より転記。

 

表5には、「⑦再就職援助のための措置」「⑧再就職先の確保状況」を転記しました。それぞれの自治体では、どのような再就職支援が行われ、かつ、再就職の実績が(通知書提出時点で)得られているでしょうか。

まず、「様式」によれば、これらの箇所には次のような記載が求められています。

 

5 ⑦欄には、(イ)再就職の援助の体制及び(ロ)実施し、又は実施を予定している再就職の援助のための具体的な方法を、以下の例のように記入すること。

(例)

(イ) ○月○日に、○○○部に再就職相談室を設置し、○○部長を責任者とし、○人の担当者を置く。

(ロ) 1 再就職に備え、○○に係る職業訓練を、○月○日から○日間、○人に実施。

2 再就職相談室において、離職予定者の再就職希望を把握中。

3 ○○公共職業安定所による離職前の集団相談会の実施(○月○旬を希望)。

4 再就職先として確保した事業所の担当者と離職予定者の面接会を実施(○月○日から実施予定)。

6 ⑧欄には、再就職先の確保を行っている場合に、届出時までに確保した再就職先の事業所数及び受入れ可能人数を記入すること。なお、ここには、離職予定者が当該再就職先の事業所に採用されることが内定している段階のものにとどまらず、当該再就職先の事業所から申出を受けている段階のものも含め記入すること。

 

個々の自治体ごとに結果を確認していきます。

第一に、旭川市では、「2 非常勤職員(会計年度任用職員)のうち、希望者に対して、必要に応じて別部署での募集を案内。」と記載されています。その結果を反映してか、先述のとおり、離職者数は、通知書には202人と記載されているものの、最終的には173人にまで減ったとのことでした。

第二に、離職者数が127人(うち非常勤職員は78人)の帯広市では、2事業所で10人の再就職先が確保と記載されています。

第三に、北広島市では、「学童クラブ事業の委託化に伴う離職」があったとのことです。通知書を読む限りでは、雇用を希望する全員の継続雇用が内定しているようであること、結果、75人のうち71人の再就職先が確保されていることが記載されています。

なお、後述の照会結果もあわせると、北広島市の75人とは、離職が予定された者というよりは、離職が確定した人数(職が廃止される人数)がほとんどを占めるものと思われます。

第四に、釧路市については、記載自体はとくに目立った内容はありません。

なお、釧路市の通知書には、欄外に「当初の国の制度により、勤務成績等に応じて再度の任用を行うことができる上限が連続2会計年度であるため、制度施行3年度目にあたる今年度末に公募を行うもの。」と記載されていました。

総務省が助言している、というのは間違いありませんが、昨年末の通知(「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル(第2版)の修正等について(令和4年12月23日)」)で、「具体の取扱いについては、各地方公共団体において、平等取扱いの原則及び成績主義を踏まえ、地域の実情等に応じつつ、適切に対応されたい。」と自治体の判断にゆだねる姿勢を総務省はみせています。そもそも制度設計上、公募制の採用は義務づけられているわけでもありません。念のためそのことをここで確認しておきます[13]

最後に、札幌市はどちらも空欄です。

川村(2023c)に書いたとおり、「具体的な対応策は予定していない」、「理由は、まず、急に発生した離職ではなく、原則として3年で公募にかけられることは当事者に伝えていることと、また、部を移れば会計年度任用職員として働き続けることは可能であること。公募の対象になる職員に対してそれらの情報提供は、現在も行われていることによる。」と説明されています。

 

 

[11] 関東圏で調査を進めている安田氏によれば、新宿区では、4分の3を超える会計年度任用職員の離職者は「常勤職員」に分類されているとのことでした。今回の筆者調査でも、会計年度任用職員が常勤職員に分類されているケースがあります(本文を参照)。厚生労働省がこの点をどう考えているかの確認はとれていませんが、通知書の「作り」は、会計年度任用職員の離職者数あるいは任用形態ごとの離職者数が明確になるようにすべきでしょう。

[12] 安田氏によれば、厚生労働省の担当者の説明では、常勤と非常勤に分けてではなく、全体で一括して、職種ごとの数を記入するとのことだったそうです。分けた回答(情報)が必要ではないかと筆者は思います。

[13] 労働組合の取り組みによって公募制を導入させなかった道内の事例として、坂本(2022)による根室市の事例をご参照ください。

 

 

4.釧路市、帯広市、北広島市への照会

通知書を作成していた5市のうち、札幌市と旭川市については別途調査を事前に行っていましたので、ここでは割愛し、残りの3市について、通知書の内容の照会を電話で行いました。但し、北広島市からは文書での照会を求められましたのでそのように対応し、かつ、回答も文書で頂戴しました[14]

 

1)釧路市

釧路市への照会の結果、離職者とは、離職が確定した人数ではなく、公募にかけられる職員など離職の予定者数を書いていること。ゆえに、実際には公募の採用試験に受かって継続で働いている方も「相当数いる」こと。確定した離職者数や「相当数いる」継続任用の職員数は、現時点ですぐに示すことはできないことなどが示されました。

ところで、表3でみたとおり、任用されている会計年度任用職員の人数に照らして離職者数の人数が多く感じられました。通知書に記載されている人数が、公募にかけられる者を含む離職が予定された人数であることを考えると、とくに多いわけではありませんが、旭川市に比べると多いです。

とはいえ、離職予定者の割合が高いことは、短期の離職を発生させていないことを指すかもしれませんから、その限りにおいては、否定的にとらえるべきではないかもしれません。つまり、本来の公募年数をまたずに短期で離職が数多く発生していれば、公募の発生が分散されて、ある年度の離職予定者割合は低く示されることになりますし、逆に、公募以外での短期での離職が発生していなければ、公募の基準年の離職予定者割合は高く示される、ということです。

 

2)帯広市

電話による照会の結果、次のことを教わりました。

帯広市においては、大量離職通知書の作成は今回が初めてであること。

記載された数値は、離職の予定者であること(2月28日時点で、年度末の離職予定者を記載。非常勤職員は、公募にかけられる者など離職が予定された者であること)。

非常勤職員には、再任用の短時間職員は、今回は含まれていないこと。

なお、帯広市の会計年度任用職員の公募制については、5年公募制(4回まで再度任用可)であると筆者は認識していましたが、この点について確認をしたところ、原則は5年公募制であるが、制度導入時に、事務補助員だけは3年公募制にしたとのことでした。

関連して、事務補助員の人数、公募の時期、公募にかけられたうち再度任用された職員の人数などを尋ねて回答をいただきました。最後の点については、30人程度は再度任用されていると教わりました。

「⑧再就職先の確保の状況」に記載された「2事業所10人」の詳細は不明でしたが、帯広市も含まれるという説明をいただきました。

 

3)北広島市

北広島市からは文書による回答を頂戴しました。明らかになったことは次のとおりです。

まず、大量離職通知書を同市で作成したのは今回が初めてであること。

市の公募制は、「北広島市会計年度任用職員の給与及び費用弁償に関する条例施行規則第16条に定める職種を除き」、いわゆる5年公募制であること。

通知書に記載されている人数は、2月27日時点で離職を予定していた人数であること。

非常勤職員の定義については、通知書裏面の説明に基づき、週の勤務時間が常勤職員の4分の3以下である職員を非常勤職員としていること。

学童クラブ委託化に伴う離職者は71人であること。

離職理由の内訳は、職の廃止に伴う離職者数が71人、公募採用試験に落ちての離職者が4人、自己都合の離職者が0人であること。

大量離職通知書の作成に関する事務的負担は、特にないとのこと。

北広島市からの回答は以上のとおりでした。

なお、同市では、非常勤職員を通知書の説明に従って整理していました。ということは、市からの回答書には直接記載されてはいませんでしたが、(学童クラブ委託化に伴う人数と非常勤職員の定義から推測しても)「常勤職員」の離職者として記載されていた44人も、会計年度任用職員であるのではないかと思われます。

 

 

[14] 正確な回答を得るためにも、文書での照会・回答が望ましいと一連の取り組みを経て思いました。

 

 

5.大量離職通知書の確認ポイント

以上の調査結果を踏まえて、大量離職通知書が作成・届出されている場合でも、以下のようなことが確認されるべきと思います。

  • 離職者数とは、予定されていた離職者数か確定された離職者数か
  • 公募にかけられた人数は何人か
  • 公募に受かった人数と落ちた人数はそれぞれ何人か
  • 常勤職員、非常勤職員の定義と、常勤職員/非常勤職員それぞれの、任用形態別離職者数(あるいは、会計年度任用職員の離職者数)は何人か
  • 確保された再就職先や再就職の条件はどのようなものか

 

 

 

Ⅳ.通知書を作成・提出していなかった自治体への照会

1.調査の概要

北海道と5市に情報照会を行いました。

北海道労働局(長)への情報開示制度で漏れがあったとは思いませんでしたが、ただ、大量離職通知制度に対する厚生労働省の考えが固まったのが遅かったため、もしかしたら、(通知書の作成はされたけれども)提出はされなかった可能性などがあるかもしれない、ことを考えたのです。通知書が5市からしか提出されていなかった、というのは筆者にとってはそのぐらい想定外のことでした。

表1のとおり、とくに北海道は、会計年度任用職員の人数が多い自治体です(全体で3124人、短期間・短時間勤務者を除いても1767人)。その北海道から通知書が提出されていないのは何故なのだろうと疑問に思い、正式な情報開示請求の手続きを行いました。

また、会計年度任用職員の人数が多い市として、小樽市、江別市、北見市、函館市、室蘭市の5市を選び、電話による照会を行いました(2023年9月26日)。担当者からその場でご回答いただいたのが2件、折り返し電話をいただいたのが2件、まだご返信をいただいていないのが1件です(2023年10月6日時点)。

正式な文書で照会したわけではありませんし、聞き取った内容は、決済を受けた市の公式な見解ではありません。ですから、あくまでも参考情報として、あるいは、皆さんが自治体に照会を行う際のポイントを知るための情報として、お読みください。

 

2.北海道からの回答

まず北海道からの回答は、通知書は作成していない、というものでした。理由を照会したところ、下記の回答に整理されました。なお、下線は筆者によるものです。

 

  • 大量離職通知書は、1つの事業所で30人以上の離職者が発生する場合に作成する必要がある。
  • しかし道知事部局では、本庁のほか総合振興局・振興局、各出先機関などに分かれていること、加えて、そもそも、本庁であれば各部、総合振興局・振興局であれば総務課・建設管理部・保健環境部などを1つの事業所ととらえていることから、1つの事業所で30人以上の離職者は発生していない。
  • 以上は、ハローワークからの説明を踏まえた対応である。

 

以上の回答はどう評価すべきでしょうか。

Ⅱで述べた労働施策総合推進法の目的、あるいは、限定して、大量離職通知書の作成目的(「地域の労働力需給に影響を与えるような大量の雇用変動に対して、職業安定機関等が迅速かつ的確に対応を行えるようにすること。」)に照らして、事業所単位を限定することには、どのような合理的な意味があるでしょうか。

「地域の労働力需給」を念頭におくという意味では、「本庁のほか総合振興局・振興局、各出先機関などに分かれていること」をもって、それぞれを1つの事業所とみなすことはなるほど理解ができます。

しかしながら、「本庁であれば各部、総合振興局・振興局であれば総務課・建設管理部・保健環境部などを1つの事業所ととらえ」ることにはどのような意味があるのか、制度の趣旨に照らして妥当なのか、今回の照会だけでは理解ができませんでした。あらためての機会でその趣旨などを教わりたいと思います。

 

3.5市からの回答

・A市

大量離職通知書は作成していないとのことでした。なぜかを尋ねたところ、3年公募制をうたっているが、2022年度末の公募制は見送られたから、とのことでした。公募を見送った理由は不明であること、自己都合離職などで欠員が生じた職については公募をかけていることなどを教えていただきました。

今回限りなのかどうかは分かりませんが、同市が公募制を見送った理由は、日をあらためてぜひ調べにいきたいと思いました。

なお、大量離職通知書について情報のやりとりをしましたが、厚生労働省からの通知の内容が正確に理解されていないように感じました。今回は公募制そのものが見送られたとのことですが、正確な情報の普及が課題であると感じました。

 

・B市

当日の折り返しの電話で、大量離職通知書を作成する条件に同市は該当しなかった、と教えていただきました。

すなわち、30人以上の離職者は発生していないので、今回は通知書を作成していないこと。ちなみに、過去・旧制度下においては、民間委託を行った際に通知書を作成したことがあることを教えていただきました。

念のため、常勤職員も含めて30人に達しなかったのかどうか、会計年度任用職員はどの位の人数が公募にかけられたのかなども尋ねました。後者の数値は150人超でした。なお、公募に落ちた人数をそく示すのは難しいようでした。

いずれにせよ、離職者が全体で30人に達しなかったから通知書を作成しなかったこと、過去に作成の経験があるように通知書の存在自体は認識されてことなどが明らかになったのは成果でした。

 

・C市

本来は作成の必要があったが、今回は、大量離職通知書を作成していない旨を回答いただきました。

公募にかけられた人数や合格者/不合格者の人数などをいますぐに示すことは難しいとのことでしたが、会計年度任用職員だけで、離職(が確定した)者は、30人以上はいること、しかしながら、大量離職通知書は作成していないこと、今後通知書を作成するかどうか市の方針はとくに何も聞いていないことなどを教えていただきました。

 

・D市

離職票作成を担当している職員にご対応いただきました。大量離職通知書は聞いたことがないとのことで、周囲にも確認した上で折り返し連絡をいただくことになっていました。1週間後に再びこちらから照会の連絡をしてみましたが、担当者は不在で、まだ結果を聞くことができていません。回答をいただき次第追記します。10月10日にご回答をいただきました。〕

今回の照会を機に、調べて、この制度のことを初めて知った。2023年度末から通知書を作成していくことにした、とご回答をいただきました。

同市の会計年度任用職員の離職者数(概算)などを照会したところ、年度末の離職者は60人ぐらいはいるが、公募で落ちる職員はほとんどいないと認識している。3年の公募を機に期間満了で辞める方や、公募をまたずに期間満了で(1年ないし2年で)辞める方が中心と認識している、とのことでした。

 

・E市

調べてみたが作成した形跡はなかった、との連絡を数日後の折り返しの電話で教えていただきました。

大量離職通知書を次回以降に作成する予定があるかどうか尋ねたところ、ハローワークと調整して対応を検討する、とのことでした。「対応を検討する」というのは、今後は通知書を作成することが前提であると考えてよいか、と確認をしましたが、明確な回答は得られませんでした。

念のため、会計年度任用職員の離職者が2022年度末にどの位発生したかを尋ねたところ、調べないといますぐには回答できないとの回答でした。ハローワークとこの件で連絡をとった形跡がないようでしたので、大量離職通知書に関する総務省の見解などを筆者から伝えておきました。

 

突然の電話による照会にもかかわらず、丁寧にご回答をいただいた自治体の皆さまにこの場を借りて感謝申し上げます。

ところで、通知書を作成していない背景には様々な理由があることなどを考えると、通知書を作成していない自治体には、下記のようなことを文書で照会したほうがよいと思うに至りました。順不同で書き記しておきます。

 

  • 大量離職通知書を作成していないのは事実かどうか
  • 通知書を作成しなかったのはなぜか(提出の条件に達しなかったからか、それとも、条件に達していたが作成する必要はないと考えたのか、など)
  • 提出の条件に該当しなかったから作成しなかった、という回答の場合でも、「常勤職員」を含めて提出の条件に該当しなかったのかどうか、公募に落ちた人数だけでなく「期間満了(自己都合)」の離職を含めて提出の条件に該当しなかったのかどうか
  • どの位の会計年度任用職員が公募にかけられたのか、その合否の人数はそれぞれ何人か
  • ハローワークから大量離職通知書に関する情報提供などは受けたかどうか〔今後のためにも、正確な情報が届いているかどうか確認をするのが趣旨です〕
  • 過去の、職の廃止や民間化の際に、通知書を作成した経験はあるかどうか

 

 

 

Ⅴ.まとめに代えて

仕事は恒常的で、基幹的な労働力であるにもかかわらず、会計年度任用職員は、制度的に非常に不安定な立場におかれています。3年公募の前には雇い止めを懸念する報道も少なからずみられました。しかし、その後、実際に公募で雇い止めになった人数はどの位なのか、また、公募で雇い止めになった者を含む離職者全体はどの位発生しているのか、などは明らかにされていません。離職の実態を明らかにすることで任用制度の改善につなげたいと考え、大量離職通知書を使って、会計年度任用職員の離職状況に迫ってみました。

今回の調査・取り組みで明らかになったことや課題をあらためて整理します。

第一に、各自治体の会計年度任用職員の離職者数を効率的に知ることができると期待して、大量離職通知書の情報開示を北海道労働局に対して行いましたが、通知書は5市からしか提出されていませんでした。

しかしながら、第二に、会計年度任用職員の多い幾つかの自治体(北海道、5市)に対して、離職状況の照会を行った結果、提出の条件に該当しているのに通知書を作成していない自治体──当該自治体自身は、条件に該当しないと判断しているケースを含む──もあることが明らかになりました。このこと自体が成果だと思います。労組や議員には、自らの自治体はどうであるのか確認をぜひお願いしたいと思います。

第三に、大量離職通知書制度に関する厚生労働省の考えが固まったのが2023年度に入ってからのため、札幌市を除き、通知書の離職者には、公募にかけられる者など離職が予定された者の人数が回答されていました。つまり、図2の【8】ではなく、【1】+【2】が回答されていました。

第四に、札幌市では570人561人、旭川市では173人の離職者(「確定」された「非常勤職員」の離職者)が発生していました。また、北広島市では職の廃止に伴う離職が70人超発生していました。釧路市や帯広市の確定した離職者数は今回の調査では明らかにできませんでした。

なお、通知書の「常勤職員」の離職者にも、会計年度任用職員の離職者が含まれる可能性があり、確認が必要です。

 

さて、今後は、条件に該当した自治体には、大量離職通知書の確実な作成・提出を求めていくことが必要です。

また、厚生労働省に対しては、大量離職通知書の記載内容について改善を求めていくことが必要であると今回の取り組みを通じて思いました。

とはいえ、大量離職通知書制度の性格を考えても、我々が必要な情報(図2の【1】~【8】)の全てが通知書で把握されるようになるとは思えません。公募にかけられる人数や公募採用試験の結果(合否別の人数)、離職理由別離職者数などを含めた、離職に関する情報照会を、個々の自治体に対して行っていく必要があります。そのことを通じて、現行の会計年度任用職員制度の検証作業が進むのではないでしょうか。

自治体の数を考えると気が遠くなりそうな作業ではありますが、1つの自治体に1人の有志が確保されれば──労働組合(ナショナルセンター)や議員に決起していただければ──不可能なことではまったくありません。

SDGs「流行」の自治体で、誰一人取り残さないための取り組み、ディーセントワークやジェンダー平等の実現に向けた取り組みを後押ししていきましょう[15]

 

 

[15] 拙稿(2023d)でも取り上げたとおり、ここ札幌市では、3期目を迎えた札幌市市長の施政方針には次のように書かれています。「誰もが、住み慣れた地域で自立した生活を送り、社会との関わりの中で、生きがいを感じながら充実した毎日を過ごすことができる、そのような街をつくり上げていくことが求められている。」と。公共サービスの従事者であり札幌市民でもある会計年度任用職員は、市長の視野に果たして入っているでしょうか。

 

 

 

参考文献

川村雅則(2021a)「道内の会計年度任用職員等の臨時・非常勤職員の任用実態──総務省2020年調査の集計結果に基づき」『北海道自治研究』第626号(2021年3月号)

川村雅則(2021b)「札幌市の会計年度任用職員制度の現状──2021年調査に基づき」『北海道自治研究』第634号(2021年11月号)

川村雅則(2021c)「公務非正規運動の前進のための労働者調査活動」『住民と自治』第704号(2021年12月号)

川村雅則(2022a)「札幌市会計年度任用職員制度における「同一部3年ルール」の例外について」『NAVI』2022年1月7日配信

川村雅則(2022b)「札幌市の会計年度任用職員制度の現状を調べてまとめました」『NPO法人官製ワーキングプア研究会レポート』第37号(2022年2月号)

川村雅則(2022c)「会計年度任用職員制度の公募制問題と、総務省調査にみる北海道及び道内35市の公募制導入状況(2022年度反貧困ネット北海道連続学習会)」『NAVI』2022年11月23日配信

川村雅則(2023a)「北海道及び道内市町村で働く624人の会計年度任用職員の声(2022年度 北海道・非正規公務員調査 中間報告)」『NAVI』2023年1月5日配信

川村雅則(2023b)「なくそう!官製ワーキングプア : あなたのマチの非正規公務員問題を調べる」『雇用構築学研究所監修News letter』第67号(2023年5月)4-21

川村雅則(2023c)「札幌市非正規公務員(会計年度任用職員)調査報告」『北海学園大学経済論集』第71巻第1号(2023年6月号)17-37

川村雅則(2023d)「会計年度任用職員の3年公募の結果・離職の状況などを調べよう」『NPO法人官製ワーキングプア研究会レポート』第43号(2023年8月号)

川村雅則(2023e)「【未定稿】旭川市非正規公務員(会計年度任用職員)調査報告」『NAVI』2023年9月12日配信

神代知花子(2022)「石狩市の非正規公務員問題と問題解決に向けた議員活動」『NAVI』2022年7月31日配信

坂本勇治(2022)「根室市の会計年度任用職員制度と労働組合の取り組み」『NAVI』2022年11月26日配信

安田真幸(2023)「(緊急レポート:第5弾(最終))厚労省との7/6第3回懇談会報告 「会計年度任用職員全員が対象人数 ⇒ 公募の対象となる人数 ⇒ 「会計年度任用職員のうち、実際に職を失い再就職先が必要な人が対象」で最終確定しました!!」『NAVI』8月25日配信

 

 

参考文献は以下のコンテンツからご覧ください。

川村雅則「【教材庫】非正規公務員・会計年度任用職員(2023年10月3日)」

 

 

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