東北大学職員組合・東北大学雇止め訴訟弁護団「東北大学雇止め訴訟での仙台地裁判決に対する声明」

2022年6月27日、仙台地方裁判所は、東北大学職員組合の組合員による地位確認請求を求める訴訟(2018 年4 月4 日)について、原告の請求を棄却する判決を出しました(原告は控訴)。

同判決に対して東北大学職員組合と東北大学雇止め訴訟弁護団から声明が出されました。声明をお読みいただき、有期雇用の濫用をなくし安心して働くことのできる社会を実現するための取り組みに皆さまのご支援をよろしくお願い致します。

 

 

声明:本日の仙台地方裁判所による判決は、無期転換逃れの雇止めの違法性を看過した不当な判決です

2022 年6 月27 日
東北大学職員組合

1 本日午後、仙台地方裁判所は、東北大学職員組合の組合員による地位確認請求を求める訴訟(2018 年4 月4 日)について、原告の請求を棄却する判決を出した。

2 この訴訟は「有期雇用契約を12 年間継続して毎年更新してきた原告が、2018 年3 月31 日に雇止めされた事案。原告と同様に、長期間にわたって契約更新を繰り返してきたにもかかわらず、東北大学から雇止めされた有期雇用契約者は300 名以上にのぼる。本件訴訟は、本件雇止めが労働契約法18 条に基づく無期転換申込権の発生を阻止する目的でなされた違法無効なものであることを明らかにし、原告の労働契約上の権利、労働者としての尊厳の回復を求める」ものであった。

3 争点は、同じ職場で同様の業務を担い12 年も更新を重ねてきた原告の契約更新の合理的期待権があったかどうか、本件雇止めが客観的に合理的な理由、社会通念上の相当性があったかどうかであった。すなわち、東北大学における無期転換を回避するための雇止めが労働契約法第19 条第1 号または第2 号により無効かどうかが問われた。

4 本日の判決は、原告の合理的期待権を認めないばかりか、東北大学における雇止めが労働契約法に反するとはいえないと判断したものであり、無期転換逃れの雇止めの違法性を明らかに看過した不当な判決であると言わざるをえない。

5 本件は、東北大学は2014 年に就業規則を改訂し、非正規職員の労働契約期間の上限を5 年以内とし、2013 年に遡って適用したことに端を発する。これは、有期労働契約者の雇用の安定のために創設された無期転換ルール(労働契約法第18 条)の趣旨目的を潜脱する目的(無期転換権発生回避目的)であった。そのため2018 年3 月末に、原告を含む300 名の大量雇い止めが生じた。これは明らかに社会正義に反し、非正規職員の尊厳を踏みにじるものである。

6 改正労働契約法の趣旨に反し、多くの大学や企業において、5年上限の就業規則が設けられ、無期転換権が発生する前に雇止めされるケースが多い。また大学等及び研究開発法人の研究者,教員等については,無期転換申込権発生までの期間を5 年から10 年とする特例が法的に設けられたが、2023 年3 月末がその10 年にあたり、我が国では2500 名以上が雇止めの対象となっている。

本日の仙台地方裁判所による判決は、有期労働契約者の雇用の安定のための労働契約法の趣旨を理解せず、我が国の労働者の約4 割を占める非正規労働者の地位と待遇をますます悪化させるものとして、社会全体に大きな影響を与えるものである。

7 私たちは本判決を不服として,控訴審では必ずや本判決の不当な判断を是正させ、非正規職員の無期転換に向けた全面的解決に臨む決意をここに表明する。

以 上

 

 

東北大学雇止め訴訟 仙台地裁不当判決に対する弁護団声明

2022年6月27日
東北大学雇止め訴訟弁護団

1 本日、仙台地方裁判所第3民事部(髙橋彩裁判長)は、東北大学の非正規職員(有期労働契約者)として12年にわたり契約更新を繰り返して勤務継続していた原告が、2018年3月31日に東北大学が行った雇止めは無効であるとして地位確認等の請求をしていた訴訟(平成30年(ワ)第887号。なお、本訴訟は2018年2月1日に申し立てた労働審判が不成立で終了した結果、訴訟に移行したものである。)において、原告の請求を棄却するとの判決を言い渡した。

2 2013年4月に施行された労働契約法18条は、有期労働契約者の雇用の安定を図り、有期労働契約者が人間らしい生活を営むことができるようにとの趣旨から、通算5年を超えて有期労働契約が継続した場合において、当該労働者が無期契約の申込みをしたときに使用者はこれを承諾したものとみなすという、いわゆる無期転換ルールを規定した。これによれば、原告は、2018年4月1日に無期転換権を行使して無期労働契約になることができた。

これに対して、東北大学は、それまで実質的に更新上限(3年)を超えての契約更新を繰り返していたにもかかわらず、2014年4月に就業規則を変更して「5年上限」規定を定め、かつ、その適用を2013年4月に遡らせて無期転換権が発生する前に雇止めする方針を打ち出し、2018年3月31日に原告を含む有期労働契約者300名以上を雇止めしたのであった。

このような東北大学の雇止めは、無期転換ルールの趣旨目的を潜脱する目的(無期転換権発生回避目的)で行われたものであって、明らかに社会正義に反し、原告ら有期労働契約者の尊厳を踏みにじるものであった。

本訴訟は、このような東北大学雇止めが許されるのかを正面から問うものであった。

3 本日の判決は、「無期転換申込権の発生を回避することを目的とした雇止めをしたことをもって、直ちに労働契約法に抵触するものではない」としたほか、「謝金業務」を労働契約と認めないなど、形式的な判断で契約更新の合理的期待を否定するものであって、極めて不当である。原告及び弁護団は、控訴審において、判断が是正されることを確信し、仙台地裁判決の誤りを分析して控訴審に臨む決意である。

以上

 

 

(参考資料)

「非正規職員は消耗品ですか? ―東北大学における大量雇止めとのたたかい」学習の友社、770円(税込)

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