川村雅則「道内の会計年度任用職員等の臨時・非常勤職員の任用実態──総務省2020年調査の集計結果に基づき」『北海道自治研究 』第626号(2021年3月号)pp.2-19
公益社団法人北海道地方自治研究所が発行する『北海道自治研究』第626号(2021年3月号)に掲載された拙稿「道内の会計年度任用職員等の臨時・非常勤職員の任用実態──総務省2020年調査の集計結果に基づき」の転載です。紙幅の都合で掲載ができなかった表を<補足表>として追加しました(それにあわせて、文章の一部を変更)。総務省調査のデータを活用することで、様々なことが分かります。自分の住むマチの現状を調べるのにお役立てください。
なお、第一に、関連する調査・研究の成果が、上記研究所内に設置された非正規公務労働問題研究会に整理されています。あわせてお読みください。第二に、この原稿のアップロード作業をしていて偶然に知ったのですが、どうやら「政府統計の総合窓口(「統計で見る日本」)」でも調査データが公開されるようになったもようです(「地方公務員の臨時・非常勤職員に関する調査(令和2年度実施分)」)。
1.はじめに
⑴ 本稿の課題と、総務省調査の概要
本稿は、全国の地方公共団体等を対象に総務省が行った2つの調査──「地方公務員の臨時・非常勤職員に関する実態調査」および「会計年度任用職員制度の施行状況等に関する調査」(以下、総務省調査。調査の基準日である2020年4月1日にあわせて、2020総務省調査、2020調査とも呼ぶ)のデータのうち、北海道分のデータ(北海道、道内市町村、一部事務組合等)を開示請求等で入手し、整理をしたものである。
総務省の説明によれば、17年5月17日に「地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律」(平成29年法律第29号)(以下、改定法という)が公布され、20年4月1日から施行されている。改定法附則第2条第2項の規定において、総務大臣は、新たな制度の適正かつ円滑な実施を確保するため、各地方公共団体の任命権者が行う準備及び措置の実施状況を把握した上で、必要があると認めるときは、当該準備及び措置について技術的な助言又は勧告をするものとされている。今次の総務省調査は、この規定に基づき、各地方公共団体における適正な任用・勤務条件等の確保に向けた実施状況等を把握することを目的に行われたものである。両調査の結果は20年12月21日に総務省のウェブサイトで公開されている[1]。本稿はそのうちの北海道分データを整理するものである。
総務省では、自治体の臨時・非常勤職員ならびにその任用状況を対象とした調査を、過去にも行っている。筆者はそのデータを使って、今回同様の作業を行ってきた[2]。今回の手法もそれを踏襲している。
あらかじめ言えば、総務省が発表した全国データにみられる特徴は、北海道においても大きく異なるものではない。ただ、問題の改善に取り組む上でも自治体ごとの基礎データの整理は不可欠の作業と考えている。本稿では、北海道分のデータの集計結果を提示しているが、自治体ごとの基礎データを、筆者の研究室や北海道地方自治研究所・非正規公務労働問題研究会のウェブサイトに別に掲載し、各地の取り組みに貢献したい。
なお、本稿は、『北海学園大学経済論集』への投稿を元々は予定していた原稿(21年6月発行予定)の一部を先行して発表するものである。集計をまだ終えていないデータがあること、また、紙幅の都合で、集計データの提供は最低限にとどめており、なおかつ、文字サイズを大きくするために表を上下に組み直すなどしていることをお断りしておく。詳細は近刊を参照されたい[3]。
⑵ 問題意識
本論に入る前に、新しい非正規公務員制度として設計され、20年4月1日から導入された会計年度任用職員制度に対する筆者の評価について、一言述べておく。
地方自治体においては、国からの地方行政改革によって正職員が減らされる一方で、公共サービスに対する需要は増加・多様化してきた。その中で、地方公務員法や地方自治法など関連する諸法は未整備のままで、臨時・非常勤職員がなし崩しに拡大、活用され続け、国側も何らかの対応を迫られるに至った。今回の法改定はその回答である。 確かに、法改定・新制度は、任用根拠が不明確であった臨時・非常勤職員の法制度上の位置づけを明確にして、特別職非常勤職員、臨時的任用職員を制度の趣旨に沿った者に限定し、残りの一般職非常勤職員には会計年度任用職員という地位を与えた(改定地公法第22条の2)。また、今回の法改定で、期末手当の支給は可能であることが明文化された(法改定の前から労働組合の取り組みで支給が実現されている自治体はあった)。今回の法改定・制度導入を足がかりにして状況を改善しようと取り組んでいる労働組合関係者の存在やその努力を否定するものではない。その点は強調しておきたい。
しかしながら、雇用安定や均等待遇の面で、民間非正規雇用と比べた制度設計上の問題は明らかである[4]。
任用はあくまでも会計年度(1年以内)ごとであり、再度任用は認められたものの、新たな職に就くと解釈され、試用期間が毎年設けられることとなった。労働契約とは異なるのだからと(民間では労働契約法第18 条に基づく)無期雇用転換制度が設けられなかっただけでなく、雇用継続の期待権を念入りに剥奪する制度となった。その上に総務省は、任期ごとの客観的な能力実証のため公募制の採用を助言し、国の非常勤職員制度における運用を例示している。
また、賃金についても、勤続年数〔勤務時間数の誤り──筆者〕で異なる処遇体系が法認され、常勤職員に比べて勤務時間数が1分でも短ければ、期末手当のみの支給だけが容認されたパートタイム型に位置付けられることとなった。不十分ではあるが、一つ一つの労働条件の差異の検証がうたわれた、パートタイム労働法と労働契約法第20条が統合されたパートタイム・有期雇用労働法とは異なる制度設計となった。休暇制度についても、常勤職員とではなく、国の非常勤職員との整合性をとることが助言され、国と異なる対応をとるのであれば(例えば国が「無給」のところを「有給」とするのであれば)、合理的な理由が必要とされた。
あまつさえ、新制度下での期末手当の支給という喧伝に反して、賃金設計の変更で、基本給が下げられ、年収では水準が変わらないか減収になったという事態さえ報じられた。
法制度上の位置付けが明確になったことをもってどこまで評価できるのだろうか。任用条件を低位で標準化ないし平準化する制度設計だったのではないか[5]。
もっとも本稿は、以上の問題意識は横に置いておき、新制度の導入と総務省の助言をうけて、北海道の非正規公務員の人数、配置や任用が果たしてどうなったのかを確認するものである。
2.総務省調査の概要
総務省による説明を使って、調査の目的や内容などを整理しておく。なお、趣意を変えない限りで変更を行っている(例えば「記入」を「入力」という表現にしたり、「6月」という表記を「6か月」に修正している)。
⑴ 総務省調査の対象
この調査の経緯や趣旨は、本稿第一節で触れたとおりである。
調査の対象団体は、都道府県、指定都市、市町村、特別区、一部事務組合等で、計3272団体である。
対象職員は、①特別職非常勤職員、②会計年度任用職員、③臨時的任用職員である[6](図2-1の太線で囲まれた部分)。以下では、三者をまとめて、非正規職員、臨時・非常勤職員とも呼ぶ。
会計年度任用職員のうち「フルタイム」とは、1週間当たりの通常の勤務時間が常勤職員の1週間当たりの通常の勤務時間と同一の職員を指す。「パートタイム」とは、「フルタイム」以外の職員(常勤職員の1週間当たりの通常の勤務時間に比し短い時間である者)を指す。以下、それぞれフルタイム型、パートタイム型と使う。
「任用期間が6か月以上」には、任用期間が6か月以上となることが見込まれる職員を含む。
調査基準日は2020年4月1日である。従来の調査では、任用期間が6か月以上、かつ、1週間当たりの勤務時間が19時間25分以上の者に限定されていた。言い換えれば、それよりも短期間の勤務者や短時間の勤務者(以下、短期間・短時間勤務者と呼ぶ)は調査の対象外だったのが、今回は制度の移行状況を把握するための参考として調査対象となっている(選挙の実施に伴って採用した臨時・非常勤職員については除く)。
⑵ 調査の内容
詳細については調査結果とあわせて本文で紹介するが、両調査の概要は、次のとおりである。総務省調査の表現をそのまま使っている。
○ 地方公務員の臨時・非常勤職員に関する実態調査
・ 職種別・任用根拠別等の職員数の状況(様式1①②)
・ パートタイム〔型〕会計年度任用職員の勤務時間の状況(様式2)
・ 職種別の給料(報酬)額等の状況(様式3)
○ 会計年度任用職員制度の施行状況等に関する調査
・ 【調査票1-1】 地公法第3条第3項第3号の規定に基づき設置する特別職で、法令に基づき設置される職〔略〕を除く独自に設置する職のうち、勤務日数が月の営業日数の半分以上見込まれる職を記載(ア)
・ 【調査票1-2】 パートタイム〔型〕会計年度任用職員のうち、1週間当たりの勤務時間が35時間(週5日勤務、1日7時間相当)以上の職について記載(イ)
・ 【調査票2】 募集・再度任用等:応募制限/再度任用/同じ職種への長期間(10年以上の)任用
・ 【調査票3】 再度任用時の空白期間
・ 【調査票4】 休暇:年次有給休暇以外の休暇の取り扱い/年次休暇の繰り越し
・ 【調査票5】 人事評価
・ 【調査票6】 給与:給料(報酬)の決定方法/期末手当/退職手当/通勤手当(費用弁償)/時間外勤務手当、宿日直手当、休日勤務手当、夜間勤務手当/臨時的任用職員の給与
・ 【調査票7】 会計年度任用職員に係る令和3年度見込み調査(再度任用割合)(ウ)
後者の調査では、会計年度任用職員制度の施行に当たり、導入に向けて整備した制度内容が尋ねられている。調査基準日は20年4月1日で、任用実績がまだなくても、当制度に基づく取り扱いが回答されることになっている。
傍線を引いた3つの調査結果を、本稿では省略する。傍線部(ア)は、労働者性が高いと考えられる特別職非常勤職員が一般職等への移行がなされているかどうかを調べたものである。傍線部(イ)は、パートタイム型会計年度任用職員を長時間働かせている理由で、単なるコスト削減を理由にパートタイム型で働かせていないかどうかを調べたものである。調査結果に基づく総務省の見解では、いずれにおいても問題はみられなかったと判断され
ている。ちなみに後者では、「単に財政上の制約を理由として、短い勤務時間を設定している職は見られない」と評価している。傍線部(ウ)のデータは、集計中である。
⑶ 主な調査結果
<表2-1> 全国における非正規職員の規模(2016年、2020年)
先に全国の主な特徴にふれておく(表2-1)。
第一は、調査対象とされた非正規職員の数は、短期間・短時間勤務者(任用期間が6か月未満又は週の勤務時間が19時間25分未満の者)も含めると、112万5746人もの人数に及ぶことである。
第二に、従来の対象に限定しても、69・4万人で、前回調査の64・3万人から5・1万人が増加している。
第三に、臨時的任用職員や特別職非常勤職員として任用されていた者が会計年度任用職員に移行している。総務省の表現を使えば、任用が適正化されたことになるのだろう。
表は省略するが、会計年度任用職員は、勤務時間数の任用区分は約9割(88・8%)がパートタイム型であり、性別では女性が約4分の3(76・6%)を占める。団体区分別では、市区が36・1万人(58・1%)、都道府県が10・6万人(17・0%)、町村が8・0万人(12・9%)、指定都市が5・8万人(9・4%)。「その他」を除く主な職種は、「一般事務職員」18・3万人(29・4%)「技能労務職員」6・2万人(10・0%)、「保育所保育士」5・8万人(9・3%)である。
3.北海道分データ(北海道、道内市町村、一部事務組合等)の集計結果
⑴ 調査の概要、対象
北海道と指定都市である札幌市の回答は、各団体の人事担当課によって取りまとめられ、市町村と一部事務組合等の分については、北海道の市区町村担当課で取りまとめられた。
対象となった団体は302件である。本稿では、「北海道」、政令市である「札幌市」、札幌市を除く34市(以下、「市群」)、129の町と15の村を足し合わせた144の町村(以下、「町村群」)、そして122の「一部事務組合等」に分けて、結果を示す(以下、団体区分と呼ぶ)。
「一部事務組合等」は、団体数は多いが、非正規職員の人数は少なく、その多くは、「一般事務職員」である。道と市町村は「自治体群」として、「一部事務組合等」とはデータを分けて示した。
以下では、総務省による説明文を使いながら、調査内容の説明をし、結果をまとめていく。
⑵ 職種別・任用根拠別等の職員数の状況
2020調査では、職種別、任用根拠別、男女別、部門別に、臨時・非常勤職員の人数が入力されている。部門(「一般行政」、「教育」、「警察」、「消防」、「公営企業」)別の結果は本稿では省略する。
フルタイムとパートタイムの概念について前節でふれたが、本調査では、臨時・非常勤職員は次のように整理されている。
○ 会計年度任用職員
・ フルタイム型:任用期間が6か月以上/任用期間が6か月未満
・ パートタイム型:任用期間が6か月以上かつ1週間当たり19時間25分以上/任用期間が6か月未満又は1週間当たり19時間25分未満
○ 特別職非常勤職員:任用期間が6か月以上かつ1週間当たり19時間25分以上/任用期間が6か月未満又は1週間当たり19時間25分未満
○ 臨時的任用職員:任用期間が6か月以上/任用期間が6か月未満
本稿では、傍線を引いた者を短期間・短時間勤務者と呼ぶ(過去調査では把握されていなかった者である)。以下の表では、調査で把握された非正規職員全員と、短期間・短時間勤務者を除く者で表記しているので注意されたい。なお表中では、紙幅の都合上「任用期間が」と「1週間当たり」の表記を削っている。また「フルタイム」を「フル」、「パートタイム」を「パート」と略記した表もある。
ア 団体区分別の非正規職員割合
<表3-1> 団体区分別にみた非正規職員と正職員の人数及び非正規職員割合
表3-1は、正職員および非正規職員の人数と非正規職員割合を2012年および2016年の各調査との比較ができるようにまとめたものである。
2016調査では、「一部事務組合等」を除く「自治体群」全体で2万8552人であった非正規職員は、2020調査には2万9536人にまで増加した。全体でみたときの正職員の減少分も反映して、非正規職員割合は17・4%から17・9%に増加した(「市群」や「町村群」では正職員が増加)。団体区分別にみると「市群」で非正規職員が減っている。民間委託が進められていることなどが考えられるが、自治体ごとに原因を調べる必要がある[7]。
なお、正職員数が「北海道」で大きく減る一方で「札幌市」で増えているのは、県費負担教職員に関する権限が都道府県から指定都市に移譲されたことに伴い、従来、都道府県で計上されていた教職員が指定都市に移動されたことによる。
第二に、短期間・短時間勤務者を含む全員でみると、非正規職員数はじつに合計4万6964人である(「一部事務組合等」を含む)。また、その割合は25・7%と、4人に1人の割合である。「市群」や「町村群」では38・7%、45・6%に及ぶ(短期間・短時間勤務者を除いても、30・4%、36・1%)。
なお、「北海道」や「札幌市」で非正規職員割合が低いことについては、例えば、「北海道」では正職員が多い警察部門(1万1969人)を抱えているほか、「北海道」も「札幌市」も教育部門の正職員が多い(3万7322人、1万6人)こと、あるいは、他市町村に比べると「札幌市」では民間委託という選択肢の採用が多いことなどを考慮する必要があるだろう。
<表3-2> 「自治体群」の非正規職員割合
表3 -2は、「一部事務組合等」を除く「自治体群」180団体の非正規職員割合をまとめたものである。数値Aは、短期間・短時間勤務者を除いて算出したもので、数値Bは非正規職員全員を対象に算出したものである。
結果は、短期間・短時間勤務者を除いても(数値A)、平均値は34・0%で、40%以上の割合が180団体のうちの4分の1弱を占める。さらに短期間・短時間勤務者を含めると(数値B)、平均値は42・6%にまで増加し、50%以上の割合もおよそ4分の1を占める。
イ 性別・任用根拠別の非正規職員の特徴
<表3-3> 団体区分別にみた、男女別及び任用根拠別非正規職員(短時間・短期間勤務者を除く群、非正規職員全体)の人数
表3 -3は、非正規職員を男女別、任用根拠別に整理したものである。
まず数値Aでみると、全体(「全道」)では女性の割合が4分の3を占めている。後でもみるとおり、公務の非正規化は、女性が多く働くケア職で顕著である。また、任用根拠別にみると、「会計年度任用職員」が圧倒的多数である(「札幌市」では約1割が「臨時的任用職員」)。
次に短期間・短時間勤務者を含めた数値Bをみると、女性割合は下がる。短期間・短時間勤務者に男性が多いことを反映している。同じく任用根拠別にみると、「北海道」における「臨時的任用職員」の人数が1割を超える。では、どういう職種に男性、短期間・短時間勤務者が多いのか。
<表3-4> 任用根拠×職種別にみた非正規職員、「うち短期間・短時間勤務者を除く者」及び「うち女性職員」の人数
表3-4は、職種別に非正規職員を整理したものである。全体の数値と、そのうちの短期間・短時間勤務者を除く者と、女性職員とを、それぞれ、職種別に整理している。
まず職種別に人数をみると、「一般事務職員」8670人(「うち事務補助職員」5792人)、「技能労務職員」5618人、「保育士等」4706人、「教員・講師」3995人、「医師」3032人の順に多い。このうち「医師」は、短期間・短時間勤務者が9割超で、また女性割合も1割程度の低さである。「技能労務職員」も、医師ほどではないが、男性の多い職種である(女性割合は40・7%)。
逆に全体平均を超えて女性割合が高い職種は、「看護師等」98・7%(女性の非正規職員数は2654人)、「給食調理員」97・9%(同2763人)、「保育士等」96・7%(4553人)、「放課後児童支援員」94・8%(1079人)、「図書館職員」92・3%(743人)である。人数の最多職種である「一般事務職員」の女性割合は85・4%(7403人)である。
ウ 勤務期間・勤務時間にみる非正規職員の特徴
<表3-5①> 団体区分別にみた、勤務時間数×任用期間×男女別会計年度任用職員の人数
<表3-5②> 団体区分別にみた、勤務時間数×任用期間×男女別会計年度任用職員の人数(再掲データ)
表3-5は、会計年度任用職員について、同じく表3-6と表3-7は、特別職非常勤職員と臨時的任用職員について、それぞれ、勤務期間、勤務時間数及び男女別に整理したものである。
前者では、団体区分ごとに違いはあるが、「全道」の数値でみれば、パートタイム型の会計年度任用職員が86・6%を占めること、およそ4分の3(76・1%)を女性が占めることなどが特徴である。
ただし、団体区分別にみると、「町村群」ではフルタイム型の会計年度任用職員が2割を占めている。表は省略するが、その多くは、「その他」376人を除くと、「保育士等」763人(「うち保育所保育士」404人)、「一般事務職員」774人(「うち事務補助職員」338人)、「技能労務職員」517人のほか、「看護師等」250人となっている。
<表3-6> 団体区分別にみた、勤務時間数×任用期間×男女別特別職非常勤職員の人数
<表3-7> 団体区分別にみた、任用期間×男女別臨時的任用職員の人数
後者のうち特別職非常勤職員では、短期間・短時間就労者がほとんどを占めること(「一部事務組合等」は例外)、男性が8割を超えて多い。また、臨時的任用職員では、「北海道」と「札幌市」で9割超を占める。そのうち「北海道」では「任用期間が6か月未満」が多く、札幌市では「任用期間が6か月以上」が多い。
⑶ パートタイム型の会計年度任用職員の勤務時間の状況
<表3-8> 1週間当たりの勤務時間数×職種別にみたパートタイム型会計年度任用職員の人数
表3-8は、勤務時間が週当たり19時間25分以上のパートタイム型会計年度任用職員の1週間当たりの勤務時間を整理したものである。表3-5①に掲載されたのと人数が若干(合計で16人)異なるが、とくに問題は無いと判断して集計を行う。
人数の少ない(特別職非常勤職員での任用が多い)「医師」はさておき、「保育士等」のほか、「技能労務職員」の「うち〔の〕清掃作業員(「ゴミ収集、道路・施設清掃等の清掃業務に従事する者」)」でも長時間勤務者が多い。常勤職員の勤務時間数に比べて1日15分だけ短い週「37時間30分以上」の割合は、順に、28・4%、28・3%である。
ほかに、「技術職員(「技術系の常勤職員が通常行う業務に類似する業務を行う者」)」と「技能労務員(「運転手、電話交換手、清掃機械運転、ごみ収集、家畜防疫作業、電気・ボイラー操作、守衛・庁務員等」)」も「37時間30分以上」が2割を占めている。
なお、団体区分別にみると、「市群」に比べて「町村群」で長時間勤務者が多い。表は省略するが、例えば、「37時間30 分以上」は「市群」で9・8%であるのに対して、「町村群」では27・0%に及ぶ。
⑷ 職種別の給料(報酬)額等の状況
2020調査では、各職種別、各任用根拠別に、最も人数の多い者を対象に給料(報酬)額等の状況が調査されている。その「最も人数の多い者」の考え方が、会計年度任用職員の事務補助職員を例に示されている。同じ給料表でも、どの号級に格付けされているか。また、同じ号級でも、適用されている勤務条件が最も多いのはどのグループか(フルタイム型かパートタイム型か。パートタイム型の場合は、勤務時間数の区分ごとに判断)によって、最も多い人数が判断され、調査対象となる。
さて、該当職種の有無がそれぞれの職種ごとに尋ねられた後、「有り」の場合には、給与の基本額として下記のことが回答されている。
① 給料・報酬の基礎:給料表、号給、給料(報酬)月額
② 地域手当込みの給料月額:給料月額、勤務日数、勤務時間数、1時間当たり換算額
③ 期末手当支給額
右記のうち、①にある「給料表」と「号級」については、常勤職員の給料表を基礎とせずに、(独自の)給与単価が設定されている場合は除く。「給料(報酬)月額」欄については、適用される給料(報酬)額が日給制の場合には「日額×勤務日数」によって、時給制の場合には「時間額×勤務日数×勤務時間数」によって、それぞれ月額ベースに置き換えた上で回答するよう指示されている。
②の「地域手当込みの給料月額」については、地域手当が支給されていない団体では、①の給料月額と同額が回答されている。勤務日数は月当たりの所定勤務日数が想定され、小数点以下は四捨五入により整数とすることが指示されている。
なお、勤務日数や勤務時間数については、集計に時間を要するため、本稿では省略をする。本稿では、傍線を引いた項目を取り上げる。
<表3-9> 職種別にみた、任用根拠別の該当有りの件数及び会計年度任用職員の団体区分別の該当有りの件数
まず表3-9に該当職種が存在するかの回答状況を整理し、その上で、会計年度任用職員の給料(賃金)を取り上げ、①表3 -10に1時間当たり換算額(地域手当込み)を、②表3-11に期末手当を、③表3-12に期末手当の不支給状況を、④表3-13に年収を、それぞれ職種別にまとめた。期末手当の不支給状況は①と②の母数から算出した。期末手当の入力箇所が空欄であったのも、「0」という回答同様に不支給とみなした。年収は、「給料月額(地域手当込み)」に12を乗じて、「期末手当」を足して、算出した。
なお、一見すると異常値に思えるものもみられたが、誤りなのかどうかの判断がつかない。例えば、1時間当たり換算額は非常に高額(1万円)であるが勤務時間数自体は非常に短い看護師のケースなどは、時給をあげることで人手を確保していると考えられた。本稿では、そのまま掲載することにする。平均値だけでなく、中央値、最小値、最大値も示す。
分析結果から得られた主な特徴は以下のとおりである。人数ではなく団体数であることに留意されたい(「事務補助職員」には「一部事務組合等」の結果も数多く含まれる)。
<表3-10> 職種別にみた、会計年度任用職員の1時間当たり換算額
第一に、1時間当たり換算額が1000円未満の団体が多い職種は、「清掃作業員」(67・3%)、「事務補助職員」(66・0%)、「図書館職員」(56・5%)、「給食調理員」(51・8%)である。これらは半数を超えている。次いで「放課後児童支援員」が32・4%である。
<表3-11> 職種別にみた、会計年度任用職員の期末手当
<表3-12> 職種別にみた、会計年度任用職員の期末手当の不支給状況
第二に、期末手当が不支給と思われる状況をみると、「医師」が50%台と高いほか、「看護師」、「保健師」、「清掃作業員」、「教員・講師(義務教育)」では30%台と高い数値である。一方、期末手当が支給されている者のその金額をみると、「医師」を除くどの職種も、平均値は20万円台から30万円台である。人数ベースで多かった「事務補助職員」のほか、「給食調理員」、「清掃作業員」、「図書館職員」、「消費生活相談員」、「放課後児童支援員」のそれは20万円台である。
<表3-13> 職種別にみた、会計年度任用職員の年収(試算)
第三に、年収(試算)をみると、年収200万円未満の割合が大きい職種は、「清掃作業員」(73・3%)、「事務補助職員」(57・7%)、「放課後児童支援員」(52・9%)、「図書館職員」(48・4%)、「給食調理員」(46・1%)である。
⑸ 会計年度任用職員制度の施行状況等に関する調査の結果
以下では、「会計年度任用職員制度の施行状況等に関する調査」の結果をみていく。紙幅の都合により、調査結果に基づきまとめた表は、表3-14を除き、北海道地方自治研究所のウエブサイト上に掲載する。
職種により取り扱いが異なる場合は、最も代表的な職について回答することとされている。「最も代表的な職」については、各団体での判断とされているが、例えば、最も人数の多い職や複数の部署に事象が共通する職などが考えられる、とのことである。以下では、「一部事務組合等」を除く「自治体群」の結果を中心にみていく。
ア 応募制限の有無
採用時又は再度任用時の「応募制限」の有無が尋ねられている。応募制限を設けている場合には、職種と理由(必須)、そして制限の内容も尋ねられている。
<補足表1> 応募制限の有無
補足表1のとおり、応募制限が「有り」という回答は、180団体のうち「町群」で3件であった。ほかに、「一般事務組合等」122件のうち1件が「有り」、13件が無回答であった。
制限「有り」の内容は順に、①全職種が65歳未満。理由は「年金制度改革等の雇用環境の変化を踏まえ、上限を65歳としている」。②事務補助職員が60歳。理由は「業務内容の設定を踏まえ、60歳以下が望ましいと判断した」。③技能労務職員が67歳未満。理由は「屋外作業等もあるため体力を考慮し、募集時は67歳未満としたが、人員が不足する場合や経験等を考慮して67歳以上の採用も行っている」。
イ 再度任用の方法等
再度任用の方法が尋ねられ、上限回数を設けている場合には、その回数・年数についても尋ねられている。なお、「公募を行わない回数等の基準」とは、従前の勤務実績等に基づき能力実証が済んでいると考えられる者が存在し、かつ、その任用実績が一定の回数や年数を下回る間は公募を行わないこととしている場合の、その回数や年数の上限値のこと、と説明されている。雇用の安定という点に関わって注目される設問である。
<表3-14> 会計年度任用職員の再度任用の方法及び上限回数・期間
結果は、表3 -14のとおり、再度任用の方法では、「毎回公募を行い再度任用する」が180団体のうち約半数の91件を占め、「公募を行わない回数等の基準を設けている」が55件で続く。制度上も不安定な雇用であるが、能力実証を厳格に行っていくことを明確にした自治体が8割を占めたことになる。もっとも、「毎回公募を行わず再度任用する」が34件存在すること(うち4件は「市群」)には注目したい。
なお、「回数等の基準」に関連しては、総務省の助言のとおり、上限回数は「2回」が多い。3年に1度の公募制である。もっとも、やはりここでも、総務省による助言よりも多い回数・長い年数で設定している団体もみられることには注目したい。
ウ 同一職種での長期(10年以上)の任用
同一職種での10年以上の任用の有無が尋ねられている。ここでの「10年以上同一の者が同じ職種へ任用される場合」とは、地公法改定前から同一任命権者の下、同じ職種に任用されている期間を通算し、会計年度任用職員として任用される期間を合わせると10年以上となる場合である。どのような職種の組み合わせであれば同じ職種に当たるかは各団体での判断である、とことわった上で例示がされている。例えば、図書館で働く職員であれば図書を扱う性質に照らし、従事する業務の違いや司書資格の有無に関わらず図書館職員として期間を通算する場合や、技能労務職員であれば個々の職によって性質が異なるため、個々の職単位の期間のみ通算する場合などが考えられる、とのことである。
<補足表2> 同一職種での長期の任用
補足表2のとおり、結果は「有り」が多い。180団体のうち124件が「有り」と回答している。「一部事務組合等」では32件が「有り」であった(無回答13件)。
総務省ではこの間、長期にわたって同一人物が同じ職に就くことを否定的にとらえ、身分や処遇の固定化をもたらすおそれがある、期待権を発生させるものではない、と説明してきた。だが、あらためて言うまでもなく、公務の非正規職が臨時的、一時的な仕事に限られない以上、同一職種での長期の任用は生じて当然であると言うべきではないか。
エ 空白期間の有無
再度任用時の空白期間の有無が調べられている。空白期間とは、任用期間を満了した後に、勤務することのない一定期間を置いてから再度同じ職に任用する場合の一定期間のことである。
<補足表3> 空白期間の有無
補足表3のとおり、結果は、いずれも「無し」である(「一部事務組合等」で無回答13件)。全国データでも「有り」は1件もみられなかった。総務省の見解では、「退職手当や社会保険料等を負担しないようにするための、いわゆる「空白期間」の設定は解消された」とのことである。
もっとも、全ての職種で空白期間が果たして解消されたかどうかについては検証が必要である、と筆者は考えている。
オ 休暇
休暇制度の措置状況が調査されている。国の非常勤職員に定められている休暇と同趣旨の休暇制度が措置されているかどうか、また、措置している場合には、「有給」か「無給」かが調べられている。休暇ではなく、職務専念義務免除又はその他(法律、条例、規則等の根拠に基づかない内部通達、運用など)の方法により措置している場合についても、その取り扱い(「有給」か「無給」)の回答が求められている。
調査で示された人事院規則15-15(ウエブサイト上の表中では「人規15-15」と表記)とは、非常勤職員の勤務時間及び休暇について制定されたものであり、第4条第1項では、「年次休暇以外の休暇」について、「各省各庁の長は、次の各号に掲げる場合には、非常勤職員〔略〕に対して当該各号に定める期間の有給の休暇を与えるものとする。」ことが定められている。同条第2項では、同じく「無給の休暇」が定められている。
<補足表4> 休暇制度の取り扱い状況①(国の非常勤職員に「有給」で整備されている休暇)
結果は、まず、国の非常勤職員で「有給」で処理されている休暇については(補足表4)、多くの団体が「すべて措置あり」で、多くが「有給」で処理されている。
もっとも、一部の休暇では、「措置なし」の回答も「市群」を含めて確認される。例えば、「退勤途上(「地震、水害、火災その他の災害又は交通機関の事故等に際して、非常勤職員が退勤途上における身体の危険を回避するため勤務しないことがやむを得ないと認められる場合 必要と認められる期間」)」、「夏季(「非常勤職員が夏季における盆等の諸行事、心身の健康の維持及び増進又は家庭生活の充実のため勤務しないことが相当であると認められる場合 一の年の七月から九月までの期間内における、人事院の定める日を除いて原則として連続する三日の範囲内の期間」)」などがそれである。
<補足表5> 休暇制度の取り扱い状況②(国の非常勤職員に「無給」で整備されている休暇)
次に、国で「無給」で処理されている休暇については(補足表5)、「すべて措置あり」が多い点は共通しているが、扱いは「無給」が中心である。非正規公務員の多くは女性であった。しかし、産前産後休暇、保育時間、子の看護休暇、生理日の就業困難、妊産疾病など、いずれも「無給」が多数である(一部では「措置なし」)。
最後に、会計年度任用職員に対する再度任用時の年次有給休暇の繰り越しの取り扱いが尋ねられている。表は省略するが、結果は、「自治体群」では全てが「繰り越す」と回答している。「一部事務組合等」では2件が「繰り越さない」、13件が無回答である。
カ 人事評価の取り扱い
人事評価の取り扱いについては、職により取り扱いが異なる場合においても、最も代表的な職を回答するのではなく、1団体につき1回答となる。各部門のうち一部でも実施しない場合があれば、「実施しない(一部で実施しない場合を含む)」が回答されている。
<補足表6> 人事評価の取り扱い
補足表6のとおり、結果は、180団体のうち「実施する」が140件で、「実施しない(一部で実施しない場合を含む)」が40件である。
「一部事務組合等」では、122件中「実施する」が92件、「実施しない(一部で実施しない場合を含む)」が17件、無回答が13件であった。
キ 給与
給与に関する各団体からの回答を以下にみていく。
<補足表7> 給料(報酬)の決定方法、期末手当、退職手当、通勤手当(費用弁償)、時間外勤務手当・宿日直手当・休日勤務手当・夜間勤務手当、臨時的任用職員の給与
補足表7のとおり、結果は、第一に、給料(報酬)決定に際しては、常勤職員の給料表を「基礎とする」という回答、職務経験等の要素を「考慮する」という回答が、それぞれ、ほぼ全てを占めている(いずれも175件)。もっとも、それがどの程度の給与水準を保障するかは、本稿ですでにみた表をあらためて参照されたい。
第二に、給料(報酬)水準が、制度導入前の水準と比べて減額となった職種が回答されていた自治体は180団体のうち32件であった。回答の中には、将来的に上昇することが注釈されたケース(例えば、「ほぼ全ての職において任用当初は低い水準だが、再度の任用により職務経験を踏まえた号俸加算が反映されていくと以前の水準より高くなり、一概に水準の高低を判断できない」)もあったが、減額となったという事実に基づき、処理をした。なお、減額の理由は、「マニュアルに基づき適正化したため」が20団体で最多である。
第三に、期末手当の支給対象は、「「任期が6か月以上かつ週の勤務時間が15時間30分以上勤務の者」又はこれより広い対象範囲で期末手当を支給する」が180団体のうち144件である。35団体はそれよりも狭い対象範囲で期末手当を支給するとしている。
第四に、退職手当の支給は、「退職手当条例(案)等に定める支給要件と同様の基準で支給する」団体が140団体である。
第五に、通勤手当(費用弁償)の支給は、「常勤職員と同様の基準で支給する」が多数(152団体)であるが、「異なる基準で支給する」団体も28件存在する。
第六に、時間外勤務手当、宿日直手当、休日勤務手当、夜間勤務手当については、180団体全てが「常勤職員と同様の基準で支給する」と回答している。
第七に、臨時的任用職員の給与については、「常勤職員と同様の給与制度とする」が162団体であるが、「常勤職員と異なる給与制度とする」が5団体、無回答が13団体である。
4.まとめに代えて
総務省調査の北海道分データを整理してきた。さらなる実態把握の必要性という調査・研究上の課題とあわせて、総務省調査の北海道分のデータで明らかになった主な特徴をまとめておく。ここでも「自治体群」の結果を中心にまとめる。
第一に、公務職場で働く非正規職員の規模がいかに大きいかが明らかになった。今次調査で把握されていた短期間・短時間勤務者の人数も含めると、そのことはより一層明らかである。非正規職員割合が4割を超える自治体は6割を超えていた。短期間・短時間勤務者を除いても、非正規職員の平均値は34・0%だった。また、勤務時間数でみたときに、パートタイム型会計年度任用2万4千人強のうち、週31時間以上働く者は9千人を超え、1日の勤務時間が常勤職員より15分短いだけの週「37時間30分以上」の者が3千人を超えていた。そして、仕事の恒常性という点については、10年以上同一の者が同一の職に任用されている実績のある団体が多数に及んだ点からもその一端が示唆される(そもそも、短期間で廃止される職はいかほどなのだろうか)。彼らは不可欠の労働力であることがあらためて確認された。
しかしながら、そうした労働者に対して、雇用安定の面では民間非正規雇用とは逆行した制度しか整備されなかったことは冒頭に述べたとおりである。そして、総務省の助言に従い公募制を導入した自治体は8割を超えた。毎回公募を行うという自治体も半数を占めた。制度導入からちょうど1年を迎えようとしている。再度任用の基準はどのように設けられ、運用されているのか。また、実際に再度任用を拒否されたケースはどのくらいの規模なのか。情報収集が必要である。
関連して、任用に関する調査・研究上の課題に触れておくと、総務省調査にみるとおり、勤続の上限や空白期間は果たして(全ての職で)解消されたのだろうか。というのも、上限をなくしたと回答していても、同じ部署での勤続に制限をかけている自治体もある[8]。運用実態を含めた調査が必要である。
第二に、彼ら公務職場で働く非正規職員の処遇は総じて低かった。時間当たり賃金でみると、労働界の目標値である1500円はおろか、1000円という水準さえ満たしていない職種(団体)は少なくなかった。年収でみても200万円未満という水準が多くの職種で確認された。
多くの自治体で、給料決定に際して常勤職員の給料表を基礎とし、職務経験等の要素を考慮すると回答されていたが、そのことは、労働者の最低生計費が保障され、正当な職務評価に基づく適正な賃金が支給されることを意味するものではないだろう。冒頭に触れたとおり、そもそも、常勤職員との勤務時間が1分でも違えば、彼らは低い処遇体系に位置付けられることが容認される。パートタイム・有期雇用労働法にうたわれたような均等待遇を望むことはできない。そうした中で、賃金に昇給制度(再度任用時の改善)は設けられたのか、昇給がある場合の上限値やその根拠はどのように設定されているかの調査が必要である[9]。
なお、「マニュアルに基づき適正化したため」とはいえ、制度導入前の水準と比べて給料(報酬)が減額となった自治体さえ、2割弱存在した。そして、休暇制度についても、多くの自治体では、総務省の助言に従った内容となっていた(「無給」での取り扱い)。
公務における非正規職の多くはケア職であり、その担い手は女性が中心であった。公務の非正規化は、ケア労働に対する不当な評価や女性差別をはらみながら進んでいる。公務員の制度設計は国の責任にあり、差別や格差・貧困を食い止めることが本来は期待された。しかし、「すべての女性が輝く社会」の実現、女性活躍・一億総活躍というスローガンは虚妄であった。繰り返しになるが、民間非正規と異なり、彼らには雇用安定も均等待遇も制度的に保障されず、さらに労働基本権さえ制約されている。その上に、制度導入前後からすでに、任用の厳格化などによる雇い止め、処遇の引き下げ、あるいは、コロナ禍による負担増など、各種の問題が発生している [10]。
救いは、声をあげる当事者とそれに寄り添う労働組合の存在である。もっとも、そうした労働組合は多くはないと思われる。自治労(2021)によれば、加盟単組のうち、会計年度任用職員を組織化の対象としているのは、今この時点でも39・4%にとどまる。そして、組織化実績(会計年度任用職員の自治労組合員比率)が「0%」の回答単組は72・5%に及ぶ。平和や人権を掲げた既存の大労組が公務のこうした非正規制度を果たしてどう認識するのかが問われている。
【注】
[1] 総務省「会計年度任用職員制度等に関する調査結果(施行状況の概要等)」2020年12月21日。ただし、調査結果の一部は、このページではなく、「会計年度任用職員制度の適正な運用等について(通知)」(令和2年12月21日総行公第196号)にしか添付されていないので注意されたい。
[2] 最も新しいのは、2018年調査データをまとめた川村(2018)。ただし、2018年調査は、それまでの調査と対象範囲が異なるので、本稿では2012年調査と2016年調査の結果を比較に用いている。
[3] 自治体による入力のミスがデータ集計作業の過程で発見されている。判断が可能なものは修正を行っているが、見落としなどがある可能性もある。その場合、近刊の拙稿に正誤表を掲載したい。
[4] この点は、川村(2020a)、川村(2020b)などにまとめた。
[5] タイムリーに出版された、このテーマ(非正規公務員制度、官製ワーキングプア問題)の第一人者である上林陽治氏(公益財団法人地方自治総合研究所研究員)の最新刊及びその初出原稿のタイトルにつけられた、「欺瞞の会計年度任用職員制度」という評価を、制度設計に関わった関係者は否定できるだろうか。
[6] それぞれの定義は、①地方公務員法(地公法)第3条第3項第3号に規定する臨時又は非常勤の顧問、参与、調査員、嘱託員及びこれらの者に準ずる者(専門的な知識経験又は識見を有する者が就く職であって、当該知識経験又は識見に基づき、助言、調査、診断その他総務省令で定める事務を行うもの)として任用されている者。②地公法第22条の2第1項に基づき会計年度任用職員として任用されている者。③地公法第22条の3第1項又は第4項に基づき臨時的に任用されている者。
[7] 非正規公務員問題とセットでとらえる必要のある公共民間労働問題は、本稿では省略する。『北海道新聞』2019年6月4日付朝刊掲載記事「千歳市、窓口を民間委託 住民票交付など14業務で始まる 道内上位10市で初」によれば、このことで「市の正職員や非常勤職員ら約20人を減員でき」るとある。
[8] 例えば札幌市では、会計年度任用職員の再度の任用について「要綱」(「札幌市会計年度任用職員の任用に関する要綱」(令和2(2020)年2月17日総務局長決裁))で次のように定めている。すなわち、「同一部での再度の任用は、当初任用日から3年に達する日の属する年度の末日を限度とする。ただし、人材の確保が困難であるとして設置要綱に特別の定めがある職についてはこの限りではない。/前項の規定により任用の限度に達した者は、その後1年間同一部で任用できないものとする。」
[9] 自治労(2021)では、地方公務員共済や雇用保険の加入状況、公務災害補償の対象者比率のほか、賃金では、前歴加算の有無、昇給の有無、昇給がある場合の最高到達額などが調べられており、貴重である。
[10]各種報道のほか、NPO法人官製ワーキングプア研究会(理事長=白石孝氏)による相談活動の結果などを参照。
【参考文献】
・ 川村雅則(2020a)「地方自治体における官製ワーキングプア問題と、労働組合に期待される取り組み」『POSSE』第44号(2020年3月号)
・ 川村雅則(2020b)「労働界における官民共闘で、雇用安定と賃金底上げ・不合理な格差是正の実現を─非正規雇用をめぐる2020年の労働組合の課題」『労働総研クォータリー』第116号(2020年5月号)
・ 上林陽治(2021)『非正規公務員のリアル─欺瞞の会計年度任用職員制度』日本評論社
・ 全日本自治団体労働組合(2021)『2020年度 自治体会計年度任用職員の賃金・労働条件制度調査結果(最終報告)』2021年1月発行
・ 竹信三恵子、戒能民江、瀬山紀子編著(2020)『官製ワーキングプアの女性たち─あなたを支える人たちのリアル』岩波書店
・ 地方公務員法研究会編(2019)『2020年施行地方公務員法改正マニュアル第2版対応─会計年度任用職員制度の導入等に向けた実務』第一法規
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