「5つの指標」で要求も組織も前進めざす
全労連・道労連の諸先輩がこの30年余の歴史の中で積み上げてきた数々の運動の功績は素晴らしいものであると思います。
その一方で、道労連の組織趨勢は過去最高時との対比で46%にまで減少しており、全労連加盟のローカルセンターの中でも減少幅は最大です。「組織変革」にこだわる理由は、道労連が持っている経験の蓄積、全道のネットワーク、そして何よりも現場の組合員の力を上手く活かすことができ、戦略的に機能させることができれば、労働運動における新しい峰をつくることができ、組織も運動も大きく前進させうる可能性があると感じているからです。
そのための分析・総括・方針化を行うために道労連では「5つの指標」を位置づけています。
【5つの指標】
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要求は前進したか
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職場の団結は強まったか
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新たな参加・活動家は増えたか
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道労連(産別)の信頼は高まったか
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道労連(産別)は拡大されたか
オルガナイザーを増やすためにも体系化されたトレーニングが必須
社会運動・労働運動の中で広く活用されている手法を代表するものとして、「コミュニティ・オーガナイジング」(以下、COと記述)があります。
このCOがとても優れていると感じた一つには、1対1での対話を基本に関係づくりをすすめていく方法や、要求実現までの道筋を逆算して戦術を効果的に配置していく戦略づくりなどが実践型トレーニングとして体系化され、「誰でもできる」ように設計されていることです。
組合員に「がんばって対話しよう」と言うだけでなく、対話のお手本を実演してみせることができるでしょうか。労働組合の役員・オルグが実演できないことを、現場で押し付けるような状況になってはいなでしょうか。
担い手や、増やす人を増やすためには、「クセが強い(その人にしかできない)」徒弟型では無理です。誰でも再現可能なものでなければ、担い手をどんどん増やしていくことなどできないからです。COの有用性を実感しています。
ゴールなきマラソンは走れない..ゴールと道筋をしめす戦略の重要性
運動の柱=署名という構図が反射的に導き出されてはいないでしょうか。「1年間で何種類の署名を何筆集めたのか?」と質問されたときに即答できるでしょうか。現場に協力を呼びかけた数々の署名がどのように使われ、どのような成果に結びついたのか説明できるでしょうか。本部段階ですらキャパシティ・オーバーになり把握できないことが効果的なのか。問い直すことが大切です。
ゴールなきマラソンを走り続けられる人は、ほとんどいません。労働組合の要求は、職場要求から産別要求(制度や構造的な課題)になるほど、実現には影響力と時間を要します。「いつかは良くなるさ」型の労働運動から、短期、中期、長期の時間軸で、どこまで到達するのかを計測できるよう転換をすすめています。
横断的な運動と組織化への挑戦が全労連・道労連の未来をつくる
この間の組織変革では、労働組合の活動と役割を広く知らせる「見える化」(市民講座など)や、「偉い人」ではなく組合員を主役に位置付ける参加型・双方向型の取り組みに加え、道労連の組織拡大を前進させることを最重視しています。道労連を増やして、地区労連を活性化するためには、産別での組織拡大を前進させることが必須です。そのためには個別の職場・企業内だけではなく、横断的な要求闘争と組織化を結合した運動に挑戦することが必要です。
その具体化として、産別の支部段階で実践型講座を通じた組織化キャンペーンや、道労連執行委員会で産別方針を共有して組織化キャンペーンにつなげるための「提案&コーチング」などがあります。道労連の組織変革はまだまだ試行錯誤の途中です。試行錯誤しアップデートしながら、要求も組織も前進させる好循環につなげていくため挑戦を続けます。
道労連事務局長 出口憲次
(※「学習の友」2020年10月号より転載)