政府・財界推しの「新しい働き方」にひそむワナ
「ウィズ・コロナ、ポスト・コロナ時代の『新しい働き方』」というフレーズは、政府の成長戦略や経済界の提言にとどまらず、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上でもよく目にする。テレワーク、副業・兼業、フリーランスといった働き方を選択することによって、「多様で柔軟な働き方」が可能となり、労働者の企業定着率も高まる、と宣伝されている。
長く普及しなかったテレワークは、コロナ禍で一気に広がりi)、副業・兼業を認める企業も、現在の2割程度から増えつつあるといわれている。自営業者数は減少傾向にあるが、副業としてウーバーイーツのようなフリーランス業の労働者も目立つようになってきた。
「多様で柔軟な働き方」と聞くと、これまでの「画一的で硬直的な働き方」よりも働きやすくなるのでは?と、好印象をもつ人も多いだろう。あるいは、自らは選択しなくとも、やりたい人はやればいい、と考える人もいるかもしれない。
しかし、私たちは、キーワードがまとうイメージに惑わされることなく、その影響を過小評価することもなく、日本経団連ii)はじめ、先駆的な経営者たちが実際に何を考え、やろうとしているのかをつかむ必要がある。日本経団連は広報にとどまらず、「新しい働き方」を阻害する労働法や社内のルール、慣行を洗い出し、企業や政府に対する働きかけを活発に行っており、政府はその要請にそった作業を粛々とこなしている。
結論を先取りしていえば、「新しい働き方」には働き方を改悪するワナが仕掛けられており、無警戒でいるのは危険である。それを労働者に知らせ、職場での防御や法制度の改悪を防ぐたたかいを急いで広げたい。
《「柔軟な働き方」とは?》
日本経団連の定義によれば、「柔軟な働き方」とは「時間・空間にとらわれない働き方」のことを指す。テレワークによって、特定のオフィスや工場、店舗、現場等でなく、自宅やサテライト・オフィス、カフェ、電車のなかで仕事ができるようになることを、「空間にとらわれない働き方」という。テレワークに馴染まない業務があることは、日本経団連も認めているが、現業系や対人業務系の仕事でも、無理と決めつけず、遠隔操作・遠隔監視技術、リモート商談、モバイルオーダーやキャッシュレス決済といった技術を試みるべきと提案している。一方、「時間の制約」とは、労働基準法をふまえて定められた事業場の所定労働時間や始業・終業時間、時間外・休日労働にかかわる労使協定(36協定)などを指す。「新しい働き方」では、空間的に会社から離れると同時に、労働時間の管理も労働者自らが行うようになり、どこで、どれだけの時間働いたかといったことにはとらわれず、生み出す価値によって評価され、処遇されるようになる、とされる。働くことにおける時間・空間の制約からの自由の発展として、ひとつの企業に縛られることなく、副業・兼業、自営で働くことも奨励されている。
《「多様な働き方」とは?》
「多様な働き方」は、「複線的なキャリア形成」と言い換えられている。すでに非正規雇用は4割まで広がり、多様な雇用形態は定着しているが、最近言われ始めているのは、正社員層の多様化・分解である。新卒一括採用、長期雇用慣行、年功序列、多様な職務を経験させる「総合職」を特徴とする「メンバーシップ型」雇用を減らし、「特定の仕事・職務、役割・ポスト」を限定し、適合する人材を中途採用していく「ジョブ型雇用」を増やし、組み合わせていくことが提唱されている。中途採用の増加に反対する労働者はいないと思うが、この施策のコインの裏面には「解雇自由」の促進がある。中途採用の対象となるスキルのある労働者が、求職者として労働市場に存在するためには、「人材流動化」を進める必要があるというわけである。
またその際、求職者が新しい仕事に適合するスキルをもっていなくては話にならないが、「メンバーシップ型」のように企業内で育成するわけではないので、労働者には自己啓発型のスキルアップ、キャリア形成や「学びなおし」が求められる。ひとつの企業で通用する固有の技術・技能や知識を深めるだけでなく、様々な企業で就労・就業して経験をつむ(副業・兼業)ことや、リカレント教育を受けることが、「新しい働き方」を実践する労働者の常識とされる。さらに、個々の労働者の学習履歴・職歴・資格等の個人データは、企業が活用できるプラットフォームに整備され、「学びと経験の見える化」がなされることで、人材の円滑な異動が可能になるというのである。
《働き方改革フェーズⅡ》
要するに、政府と財界がひろげようとしている「多様で柔軟な働き方」とは、労働者にとって働きやすい、生活しやすい状況をつくることを直接の目的とはしておらず、使用者にとって都合のよい働かせ方の選択肢を増やすことが目標とされている。労働時間の把握や管理はせず、労働時間管理の責任も労働者に負わせることで、コスト(割増賃金や法定福利費用等)をかけずに、目標達成まで働かせ、必要がなくなれば簡単に解雇もしくは契約解除ができるようにしたいということである。そのため、日本経団連は、労働時間法制や指針、法令解釈を見直し、抜け穴を拡大し、解雇規制を骨抜きにする制度づくりの要求を政府にあげており、政府は粛々とその声に従っている。
こうした「新しい働き方」を進めつつある今の局面を、日本経団連は「働き方改革フェーズⅡ」と呼んでいる。安倍政権時代の働き方改革フェーズⅠ(2018年法改正)では、選挙での労働者の支持獲得のため、まがりなりにも長時間労働の是正、年次有給休暇の取得促進、同一労働同一賃金といった、労働者保護に資する目標が掲げられていた。これに対し、フェーズⅡの目標は「労働者のエンゲージメントの向上により、アウトプットを最大化すること」とされる。エンゲージメントとは、「会社や仕事に主体的に貢献する意欲や姿勢」を意味する。つまり、「時間・空間にとらわれない働き方」をするようになった労働者が、主体的に会社や仕事に貢献し、成果・付加価値(アウトプット)を最大化させることが目標というわけである。まさに、経営者のための「働かせ方改革」といえるのではないか。
《「働きがい」「働きやすさ」は実現する?》
では、どうやって主体的な働き(エンゲージメント)の向上を実現させようというのか。以前であれば、会社への高い忠誠心・一体感にもとづく長時間・過密労働だったかもしれないが、働き方改革フェーズⅡでは、「働きがい」と「働きやすさ」が重要とされている点に特徴がある。
まず、「働きがい」を高める施策としてあげられているのは
- 企業理念・事業目的の共有
- 自律的・主体的な業務遂行
- 自律的なキャリア形成(その支援)
- 公正な人事・賃金制度
- メンバーシップ型とジョブ型雇用の最適な組み合わせ(自社型雇用システム)
である。
そして「働きやすさ」を高める施策としては
- 場所・時間にとらわれない働き方(テレワーク、フレックスタイム、裁量労働制等)
- 外国人、障がい者、LGBT等の多様な人材(ダイバーシティ)とその包含(インクルージョン)
- 安全・安心、健康の確保
- 育児・介護・病気治療と仕事の両立支援
- AIやロボティクスなどデジタル技術の活用
が、あげられている。
「働きがい」と「働きやすさ」を高めるならば、悪い話ではない。しかし上記の施策で、本当に「働きがい」「働きやすさ」が実現できるかといえば、疑問がわく。特に施策において、「自律」が強調されている点に注意しなければならない。事細かに管理者に指示されて受動的に働くより、働き方や業務遂行の方法を自己決定して目標を達成する方が「働きがい」は得られやすく、働く場所や時間が自由であるほうが「働きやすい」こともあるだろう。しかし、後で見るように、日本経団連のいう「自律した働き方」とは、端的に言えば、労働者保護法制に頼らず、会社・使用者に雇用や労働時間の管理責任を問わない働き方である。自宅で労働時間規制を気にせず働くことができるからといって、労使の力関係の差は変わるわけではなく、むしろ、納期内での目標達成を、労働時間規制の制約なしに求められ、労働者はより過酷な状況に陥る可能性が高い。その際の長時間労働も自己責任とされてしまう(みなされた所定労働時間内に業務遂行できないのは労働者の能力の問題等とされる)。
結局、日本経団連の描く「新しい働き方」を突き詰めると、以下のようになる。使用者は働き手に対し、目標・納期の共有と、達成した場合の一定の報酬支払いを約束し、目標達成の方法(働き方)は働き手に任せるが、安全と健康の確保、業務遂行にかかる経費は働き手の自己責任・負担とする。これは、労働契約ではなく、請負・業務委託契約で働け、というのに等しい。今回の特集のテーマである「雇用類似の働き方」の中に本稿を置いたのも、「新しい働き方」という切り込み方で、フリーランスを典型労働としかねない経済団体の要求だからである。
「新しい働き方」の仕掛けに、私たちは敏感である必要がある。以下、施策のいくつかをとりあげ、問題点をみていこう。
《テレワークで自律的働き方?~労働時間規制の緩和のワナ》
テレワークは感染防止や通勤時間の解消に役立つことから、労働者の中にも一定の支持がある。労働組合としては、一般的な8時間労働規制のもと、客観的方法による労働時間の把握・記録を徹底させ、私生活と仕事との境界を曖昧にしないことや、自宅を就労場所とする経費の使用者負担、プライバシー保護、監視の禁止などの運用ルールを協約化して守らせれば、これを必要とする労働者に対して、一定の「働きやすさ」を保障する施策にもなりえよう。
しかし、経済界がテレワークに求めているのは、労働時間規制を骨抜きにすることである。例えば、「みなし労働時間制」の採用。みなし労働時間制とは、あらかじめ一定時間を働いたものとみなし、実労働時間による管理をせず、未払い残業を多発させる制度である。そのうち「裁量労働制」は、対象業務が限定的で導入手続きもそれなりに厳格なので、違法な導入については行政指導を行いやすい。そこで日本経団連は、その要件緩和・対象業務拡大を求めているが、最近はより手っ取り早く使えそうな「事業場外みなし労働時間制」を普及させようとしている。本来、事業場外みなし労働時間制は、携帯電話のない時代の外回りの営業職のように「労働時間を算定し難いとき」に適用されるもので、テレワークのように端末の回線が常時接続され、メールも携帯電話も使えて上司との連絡も労働時間の算定も容易なケースでは制度の適用は不可能である。しかし、日本経団連はテレワーク・ガイドラインを改悪iii)して要件を見直すことによって、活用できるようにしようと画策している。
同時に、テレワークでは、事業場での働き方以上に長時間労働となる傾向があることがわかっており、厚生労働省は「テレワークを行う際の時間外・休日・深夜労働の原則禁止」をガイドラインに掲載しているが、これについても、経団連は修正を求めている。
さらに、1月に発表した「経営労働政策特別委員会報告」では、「新しい労働時間法制」の採用も求め出した。一定の健康確保を措置し、業務遂行の手段・方法を労働者本人に委ねることを要件として、「働く場所・時間帯をすべて本人に委ねる」労働時間法制を実現すべきだというのである。健康確保措置としてあげられているのは、四半期ごとの医師の面接指導、複数月で長時間労働になった場合の除外、労使委員会による就労状況のデータでの確認と改善の審議、健康や仕事の成果についての相談窓口の設置などで、それらを満たした場合、「時間外労働に対する割増賃金支払い義務が免除される法的効果を付与する」べきだという。「高度プロフェッショナル制度」とは異なり、対象者の年収要件などなく、「すべての働き手が適用対象となりうる」というから、その影響は甚大である。採用時に、この制度に合意する人だけ労働契約を結ぶというやり方で、労働者に労働時間規制の適用除外を無理強いすることも可能である。
日本経団連のいう「働きやすさ」を高める措置には、長時間労働、未払い残業の合法化、健康破壊につながるネタが大量に仕込まれているのである。
《ジョブ型雇用~解雇しやすい雇用創出のワナ》
次に「ジョブ型雇用」についてみておこう。職務を明確にするため、職務分析によって、仕事の内容を具体的に明確にして労働契約を結ぶこと自体は問題はないが、既にふれたように、「ジョブ型雇用」に経済界がこめた狙いについては、注意すべき点が多々ある。
ひとつは、ジョブ型雇用とは別の話であるはずの成果型賃金による処遇の個別化、労働組合の交渉による集団的賃金決定からの分離が目論まれていることである。ジョブ型で職務が明確であるなら、賃金決定もわかりやすい職務給とされるイメージがあるが、職務や役割の重要度・難易度に対して、単一の賃金水準が設定されるシングル・レートの職務給を採用する企業は、正規雇用の場合、あまり存在しない。多くの企業は、従事する職務に関する目標の達成度や業務の成果にもとづいて、昇給のみならず降給も行う範囲給(レンジ・レートの広い給与)を採用している。この人事評価には、会社の一方的な判断が入りやすくiv)、努力して成果をあげても、総額人件費が固定されているから、昇給しないこともある。また、労働組合活動を嫌悪した嫌がらせの降給なども、人事評価のフィルターで隠されることで証明しにくく、組合活動の妨害にもつかわれる。
もうひとつの問題は、すでに指摘した解雇の容易化である。現在の労働法制・判例法理では、事業所や部門が閉鎖され、採用された職務(ジョブ)の仕事がなくなったとしても、会社は解雇を回避し、他の職務や事業所での雇用に努力をつくすことが求められている。日本経団連は、この法理を崩すため、職務や事業所を限定した労働契約を結び、その条件がなくなった場合の解雇は合法と主張し、リストラしやすい労働者を増やそうと考えている。
この動きと連動して、成立が狙われているのが、「無効な解雇を金銭で有効にする制度」である。司法判断で解雇が無効とされ、地位確認が認められるケースであっても、一定の「労働契約解消金」を支払えば解雇が成立するという制度で、解消金の金額は予め見込める水準が明示されるため、使用者はいくら金を準備しておけば、ロックアウト解雇のような違法解雇ができるかを予見できるようになる。いわば、解雇自由法制の成立であり、これによって一定の職歴のある人材が労働市場にあふれ、中途採用も活発化、人材ビジネスの市場も拡大するというわけである。
《副業・兼業 ~雇用責任の軽減と長時間労働のワナ》
コロナ禍による残業の減少や休業手当による賃金減額によって、労働者の収入は減っており、労働組合のある職場でも、組合員の間から、副業・兼業を求める声があがる事態となっている。非正規で働く労働者の間では、すでにダブルワークは珍しくないこともあり、若手を中心に副業をはじめる人も現れている。労働組合としては、本業における賃上げ闘争への結集を訴えると同時に、副業の危険性(長時間労働による健康障害、労災の多発等)も伝え、団結を強めるべき場面である。
一方、政府は副業・兼業の普及促進に向け着々と作業を進めている。2018年1月には、厚生労働省はモデル就業規則から「副業・兼業禁止規定」を削除し、副業・兼業を認める内容に書き換えた。この頃、日本経団連は副業・兼業の解禁に消極的であり、変化を主導したのは人材ビジネス業者であったが、その後、日本経団連も姿勢を転換、2020年9月には「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が改訂された。その際、使用者側からは「労働時間の通算制度」(労働基準法第38条。複数の会社との契約で働く労働者の労働時間を通算)の廃止要求があがっており、法改悪のおそれもあったが、結果的にはそこまでには至らなかった。ただし、労働時間を通算する義務を使用者に課す要件として「労働者の(事前の)自己申告制」が明記され、事後の行政による指導監督が、労働者の未申告を理由として及ばなくなるような手が打たれた。また、簡便な労働時間管理の方法(管理モデル)を策定、副業先との合意であらかじめ時間外労働を措定し「固定残業代」を払う方法も創設(みなし時間を超えた場合は割増賃金支払いは必要)、副業解禁への後押しを強めた。
さらに注目すべき副業・兼業ガイドラインの変質は、「労働者の権利としての副業」で普及を正当化しているのに、「使用者の指示による副業」を想定し、その場合は「健康確保措置を実施することが適当」等としたことである(従来のガイドラインでは「使用者が推奨している場合」とされていた)。使用者の指示による副業とはどういうことか。自らの雇用する労働者を他の企業で働かせるのは、派遣事業許可を得ていなければ、職業安定法違反であるが、厚生労働省はガイドライン検討の審議会ではこうした法的視点での問題の検討をせず、10月時点では見解を求めても答弁不能であった(その後、出向の一形態として処理しようとしているらしい)。その法的問題は別途追及するとして、ここでは、使用者が副業について、使用者責任を免れながらも使用者の指示により、他社での多様な業務をさせるために悪用することすら想定しているという点をおさえておきたい。
加えていうなら、現在、副業・兼業を認めている企業の多くが、「雇用でない副業に限り許可する」との就業規則をもっている。請負・業務委託の副業ならば、労働時間通算制度による割増賃金支払い義務を負わずに、他社での就業が可能であるという点が意識されているのである。副業・兼業が、使用者主導での労働者のフリーランス化推進策の一環であることの証左といえよう。
《雇用類似就業者の要求と労働組合》
「新しい働き方」にこめられた経済界の狙いをみてきた。それは多様な回路を通じて、労働者を労働者保護法制から切り離し、フリーランス化させていくことである。あらためて、「働きがい」「働きやすさ」を実現するといわれるテレワーク、副業・兼業、ジョブ型雇用などの施策や人事管理制度が、実際には、真逆の効果を生むものであることを共有しておきたい。全労連は、現在進められている施策のうち、法制度改悪にかかわる課題については、その阻止と法制度改善に向けて積極的に運動をしていく。一方、職場段階での導入・運用がなされる場合は、職場単位の労働組合において、制度がもたらす影響を、労働者の間で十分に話し合い、働き方の改悪をもたらさないような規制をかける取り組みを求めたい。
そのうえで、本誌の特集に寄せていえば、すでに、全労連加盟の各労働組合においても、雇用類似で働く組合員が多数おり、労働者保護を受けない不利な立場でありながら、労働組合の交渉力を発揮し、労働条件改善のために奮闘されていることを指摘しておきたい。そのなかには、労基法上の労働者とみなすべきケースもあれば、個人事業主とみなすべきケースもある。要求としても、労働者性に基づく賃上げ等とされる場合もあれば、委託契約における報酬の改善と表現される場合もあるが、事業者性が高いケースであっても、契約相手(使用者)との関係では労働法の保護がないぶん、より過酷な条件で働かされることも多い。報酬単価の引き上げ、自己負担とされる経費の軽減、仕事の配分の公平など、労働組合の交渉で要求を前進させているが、契約解除や業務の割り振りの変更などで労働組合に攻撃を仕掛けることも多く、雇用労働者よりもはるかに厳しいたたかいを強いられている。
あらためて労働契約・労働法の大切さをかみしめるとともに、労働者と同じ業務を、はるかに不利な条件で請け負うことの多いフリーランスの待遇改善にむけた支援・協力、組織拡大などを意識的に行うことを呼びかけたい。最低賃金規制のない報酬で働くフリーランスが広がれば、雇用労働者の労働条件も当然、引き下げられる。雇用労働者とフリーランスは、いわば同じ船に乗るものとして、共闘して、賃上げ闘争と単価引き上げ闘争にのぞむのだ、という姿勢でコロナ禍のなかの21春闘をたたかいたい。
(注)
i)テレワークが政策に盛り込まれたのは平成12年「IT基本戦略」や13年「e-japan戦略」に遡る。当時は交通量抑制等による環境負荷軽減措置とされていた。それが平成14年「e-Japan重点計画-2002」から「雇用形態の多様化」の手段とされ、平成15年e-Japan戦略IIで企業内制度の整備や労働法制の規制見直し、公務員への推進が掲げられるようになった。コロナ禍の20年春に休業の代替措置として急増、その後、適用対象者数は減少したが、恒常化させる企業も出てきている。
ii)日本経団連「。新成長戦略」2020年11月17日、「経営労働政策特別委員会報告」2021年1月19日による。
iii)厚生労働省「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」2018年2月では、①情報通信機器が使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと、②随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないことの両方を満たせば、テレワークにおける事業場外みなし制の適用が可能としているが、このガイドラインも、既に緩められたものとなっている。
iv)最近の目標管理制度は、2000年初頭に流行った成果主義におけるものとは異なり、労働者が目標を設定するのでなく、役割や職務に応じた目標が会社から提示され、その達成度を評価するものとなっている。労働者による目標のコントロールを許さないためである。
( 月刊全労連2021年4月号掲載 )
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