水野谷武志「雇用労働者における有償労働の時間量・行動場所・時間帯」

 

長時間労働問題及び過労死・過労自殺問題の解決は,21世紀の持ち越された日本社会の大きな課題の1つである。私は経済統計を専門としている立場から,労働時間統計を使って長時間労働の実態にアプローチすることを研究テーマの1つとしている。

では,なぜ統計を使うのか。長時間労働の実態に迫るのであれば,例えば,過重労働に苦しんでいる労働者やそのような労働者の相談に乗っている労働組合など,より具体的で個別事例を聞き取り調査などで明らかにする方法が有効である。この方法はもちろん重要であるが,個別の実態には他の事例との比較,あるいは全体との対比が必要であり,この両面からのアプローチによって優れた実態把握につなげることができる。統計は,個別事例を具体的に捉えることはできないが,個別事例を含む対象全体の傾向や構成を捉えることに貢献できる。

標題の論文では,雇用労働者の労働時間(論文では「有償労働時間」という用語を使用)について,その長さだけではなく,時間帯や場所がどうなっているのかを明らかにしようとした。主な結果として,男性正規雇用者では,実際に働いた時間に通勤や職場での食事などの時間を含めると11時間(平日)を超えること,早朝に働く割合が増加していることがわかった。また,非正規雇用者では,特に女性の就業の深夜化の可能性を指摘した。詳しい分析の方法や結果については以下のリンク先の論文を読んでいただければ幸いである。

 

〔以下、リンク先へ〕

水野谷武志(2019)「雇用労働者における有償労働の時間量・行動場所・時間帯:『社会生活基本調査』ミクロ統計による分析」『社会科学研究』東京大学社会科学研究所,第70巻,第1号,pp.115-137

 

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