川村雅則「働き方改革で私たちの働き方はどうなるのか」

北海学園大学学報』第115号(2018年9月1日発行)に掲載された原稿です。

 

 

今年6月29日に成立した働き方改革関連法で働く人たちは幸せになるだろうか。

そうは思わない。

日本の職場に今必要なのは、過労死の温床となっている長時間残業(しかもそれは往々にして不払い残業)と先の見えぬ非正規雇用の濫用を解消して、働けば食べていける条件の整備である。ILO(国際労働機関)が提唱し、働きがいのある人間らしい仕事と訳されるディーセント・ワークの実現は、途上国だけではなく、先進諸国とりわけ労働法制の脆弱な日本でこそ急務の課題である。

では今回の改革はそれに貢献しないのか。労働時間制度に焦点をしぼって考えてみよう。

労使協定で青天井になっていた時間外労働に上限規制が設けられた。これは労働者保護につながる規制の強化に分類される。しかしながらその水準はといえば、休日労働を含めると毎月80時間の残業を可能にする(俗に過労死ラインと言われる)水準である。それが法で認められた。しかも人手不足で長時間労働が深刻な建設業や自動車運送業ではこの規制水準さえ適用を5年間猶予された。

それでもこれを規制の強化と評価するならば、では、抱き合わせで導入された、一部専門職を労働時間規制の対象から完全に外す高度プロフェッショナル制度や、法案から削られた裁量労働制の拡大はどうか。これらの規制の緩和は、自由な働き方をもたらすのか。その根拠は示されたか。過労死遺族らがこれらの制度導入になぜ反対していたのか。ちなみに高プロは、一部報道機関で言われていた「成果型労働」でも「脱時間給制度」でもない。これらは現行制度でも可能である。

改革法は制定された。

しかし忘れてはならないことがある。働き方を規定する法制度の整備はたしかに重要であるが、加えて、労働条件の決定は労使が対等の立場で行うこと、そのために憲法や労働法は、団結権を通じた労働者の「参加」を期待していることである。つまり働き方を決めるのは私たちであるという視点が、「私たちの働き方はどうなるのか」をうらなう上で不可欠なのだ。幻想に振り回されず、主権者として考え、行動することもそこには含まれる。私たちこそが改革の主体である。

 

 

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