1部 学生アルバイトにみる学生の不満とワークルール
2部 学生アルバイトと学費・奨学金・生活問題
北海学園大学経済学部で取りまとめられている『地域研修報告書2025』に投稿した、ゼミで実施した調査結果の一部です。
例年と同じく、アンケート調査や聞き取り調査を通じて、学生アルバイト等の実態把握につとめました。1部では、学生がアルバイト先で遭遇している問題・トラブル状況のほか、アルバイトで感じている各種の不満の把握につとめました。2部では、アルバイト等のほか、学費負担や奨学金利用、物価高騰下における生活実態の把握につとめました。それぞれの調査結果は、下記の白書にまとめました。本稿はその一部を紹介するものです。
北海学園大学に在籍する全ての学生を対象にして、2025年7月にウェブアンケート調査を、1部と2部のそれぞれで実施した。有効回答はそれぞれ289人、127人である。
【1部】
第一に、アンケート調査で不満が最も多かった(正確には「とくに不満はない」が最も少なかった)のは、賃金に関連する訴えである(表1)。
表1 給与・賃金(交通費を含む)に関する不満やトラブルの有無【複数回答可、1部】
単位:人、%
| 289 | 100.0 | |
| ①時給が低い、仕事に見合っていないと感じる | 100 | 34.6 |
| ②昇給がない、上がる仕組みが不透明 | 73 | 25.3 |
| ③扶養の上限(103万円・130万円)を超えないように時間を制限しなければならない | 75 | 26.0 |
| ④準備・片付け・着替えなどの時間に給与が出ない | 63 | 21.8 |
| ⑤勤務時間が1分単位で計算されず、切り捨てられる | 55 | 19.0 |
| ⑥交通費支給の契約をしているのに支給されない(全く支給されない、一部しか支給されない、を含む) | 13 | 4.5 |
| ⑦制服や作業着を用意する費用が支給されない(ヘルメット・軍手・エプロンなど) | 24 | 8.3 |
| ⑧とくに不満はない | 90 | 31.1 |
| ⑨その他 | 3 | 1.0 |
そのうち、「①時給が低い、仕事に見合っていないと感じる」(34.6%)や「②昇給がない、上がる仕組みが不透明」(25.3%)は──差別的な運用がなされているのでなければ──ただちに法に違反するものではないが、それに対して、「④準備・片付け・着替えなどの時間に給与が出ない」(21.8%)や「⑤勤務時間が1分単位で計算されず、切り捨てられる」(19.0%)は法に違反している。しかもその割合が少なくない。すみやかに是正が求められる。
第二は、賃金の結果でも垣間見られたが、業務負担や責任の重さである(表2)。
表2 業務の負担や責任の重さに対する不満の有無【複数回答可、1部】
単位:人、%
| 289 | 100.0 | |
| ①社員並みの仕事や責任を求められる | 49 | 17.0 |
| ②トラブルやクレーム対応をさせられる | 43 | 14.9 |
| ③業務の量が多すぎる・人手不足の中働かされる | 93 | 32.2 |
| ④他のアルバイトに仕事を教えたり指導的な役割を求められる | 61 | 21.1 |
| ⑤他のアルバイトのまとめ役をさせられる | 25 | 8.7 |
| ⑥とくに不満はない | 135 | 46.7 |
| ⑦その他 | 6 | 2.1 |
とくに「③業務の量が多すぎる・人手不足の中働かされる」は32.2%、「④他のアルバイトに仕事を教えたり指導的な役割を求められる」が21.1%であった。2割を切るが、「①社員並みの仕事や責任を求められる」(17.0%)や「②トラブルやクレーム対応をさせられる」(14.9%)という回答も少なくなかった。また、これらの回答は、学年が上がるほど(経験年数が長くなるほど)多く、アルバイト先で彼らが「重宝」されていることがうかがえる。
第三に、法制度の整備・強化が必要だと思われる問題もある。例えば、勤務時間外の連絡への対応である。情報通信技術の発展やスマートフォンの普及に伴い、労働者に対して企業は勤務時間外でも連絡が容易にできてしまう。「つながらない権利」をどうするかが課題となっている。本調査でも、SNSを通じて頻繁にアルバイト先から連絡が来ている状況が確認された(表3)。
表3 勤務時間外の日常的な連絡の有無【複数回答可、1部】
単位:人、%
| 289 | 100 | |
| ①シフトに追加で入ることのお願いやシフトの変更・調整について | 207 | 71.6 |
| ②仕事内容・手順に関すること(顧客情報・顧客対応を含む) | 114 | 39.4 |
| ③次の勤務者への引継ぎ・申し送り事項 | 39 | 13.5 |
| ④仕事上のミスの注意・指摘。指導 | 63 | 21.8 |
| ⑤とくに勤務時間外の連絡はない | 59 | 20.4 |
| ⑥その他 | 1 | 0.3 |
連絡の内容は、「①シフトに追加で入ることのお願いやシフトの変更・調整について」が7割と多数であったほか、「②仕事内容・手順に関すること(顧客情報・顧客対応を含む)」(39.4%)や、「④仕事上のミスの注意・指摘。指導」(21.8%)、「③次の勤務者への引継ぎ・申し送り事項」(13.5%)など、本来は、勤務時間内に終わらせるべきものも少なくなかった。
同じく第四に、身だしなみに関するルールである。身だしなみは、本来は個人の自由である。しかし、安全性や効率性など合理的な理由によって制限を受けることがある。もっとも、その線引きは必ずしも明確ではない。本調査では、女性(女子学生)で訴えが多く、「⑥とくに不満はない」は50.7%にとどまった(表4)。
表4 身だしなみルールに対する不満の有無【複数回答可、1部】
単位:人、%
| 全体 | 性別 | |||||
| 男性 | 女性 | |||||
| 289 | 100.0 | 143 | 100.0 | 144 | 100.0 | |
| ①頭髪(髪色・長さなど) | 65 | 22.5 | 22 | 15.4 | 42 | 29.2 |
| ②ネイル | 37 | 12.8 | 1 | 0.7 | 36 | 25.0 |
| ③メイク | 7 | 2.4 | 7 | 4.9 | ||
| ④ピアス・アクセサリー類 | 44 | 15.2 | 13 | 9.1 | 31 | 21.5 |
| ⑤服装・制服の着こなし | 35 | 12.1 | 17 | 11.9 | 18 | 12.5 |
| ⑥とくに不満はない | 181 | 62.6 | 107 | 74.8 | 73 | 50.7 |
| ⑦その他 | 1 | 0.3 | 1 | 0.7 | ||
女性の回答を取り上げると、「①頭髪(髪色・長さなど)」が29.2%、「②ネイル」が25.0%、「④ピアス・アクセサリー類」が21.5%であった。これらは、どこまでが制限をされる必要があるものなのだろうか。仮に合理的な理由で制約されるものであったとして、学生たちにそのことは十分に説明されているだろうか。
【2部】
昼に働き夜に学ぶ2部生では、アルバイトに費やす時間が長い。本調査によれば、週の勤務時間数が20時間以上の者は、40.4%に及んだ。
表5 アルバイト収入の使途【2部】
単位:人、%
| 全体 | 住まいの種類別 | |||||
| 実家暮らし | 一人暮らし | |||||
| 99 | 100.0 | 57 | 100.0 | 42 | 100.0 | |
| 遊び・趣味等に使うお金を稼ぐため | 17 | 17.2 | 15 | 26.3 | 2 | 4.8 |
| どちらかといえば遊び・趣味等に使うお金を稼ぐため | 21 | 21.2 | 15 | 26.3 | 6 | 14.3 |
| どちらかといえば学費・生活費等を稼ぐため | 21 | 21.2 | 10 | 17.5 | 11 | 26.2 |
| 学費・生活費等を稼ぐため | 20 | 20.2 | 6 | 10.5 | 14 | 33.3 |
| どちらも半々 | 20 | 20.2 | 11 | 19.3 | 9 | 21.4 |
| (再掲)「学費・生活費等」計 | 41.4 | 28.1 | 59.5 | |||
アルバイト収入の使途を尋ねたところ(表5)、「学費・生活費を稼ぐため」と回答した学生が20.2%で、「どちらかといえば」(21.2%)を足し合わせると、4割(41.4%)を占める。一人暮らし学生に限定すると、その値は、6割(内訳は、33.3%、26.2%)に達する(遊び・趣味等と「どちらも半々」を含めると80.9%)。
2部では、学費を親に支払ってもらっているという回答が相対的に少ない。学費負担者・原資を複数選択してもらった後にそのうち主な一つのみをあげてもらったところ、「親」は49.6%にとどまり、代わりに、「貸与型の奨学金」が15.7%、「自分自身のアルバイト収入」が13.4%、「授業料の減免」が11.0%と続いた。一人暮らし学生では、「仕送り(授業料や家賃・水道光熱費は含まない)」を受けていないものは半数を超えた(54.5%)。
表6 現在採用している生活防衛策【複数回答可、2部】
単位:人、%
| 全体 | 住まいの種類別 | |||||
| 実家暮らし | 一人暮らし | |||||
| 127 | 100.0 | 72 | 100.0 | 55 | 100.0 | |
| 〔無回答〕 | 6 | 4.7 | 4 | 5.6 | 2 | 3.6 |
| ①アルバイトを増やした | 32 | 25.2 | 16 | 22.2 | 16 | 29.1 |
| ②奨学金の貸与額を増やした | 2 | 1.6 | 2 | 3.6 | ||
| ③食費(食材費、外食費)を減らした | 38 | 29.9 | 11 | 15.3 | 27 | 49.1 |
| ④水道光熱費を減らした | 10 | 7.9 | 2 | 2.8 | 8 | 14.5 |
| ⑤その他の生活に要する各種の費用を減らした | 17 | 13.4 | 6 | 8.3 | 11 | 20.0 |
| ⑥遊び・趣味等に費やすお金を減らした | 60 | 47.2 | 27 | 37.5 | 33 | 60.0 |
| ⑦お金のかかるようなことはなるべく控えるようにしている | 64 | 50.4 | 30 | 41.7 | 34 | 61.8 |
| ⑧以上のようなことはとくにしていない | 29 | 22.8 | 25 | 34.7 | 4 | 7.3 |
| ⑨その他 | ||||||
物価高騰下で採用している生活防衛策を尋ねたところ(表6、複数回答可)、「⑦お金のかかるようなことはなるべく控えるようにしている」、「⑥遊び・趣味等に費やすお金を減らした」がそれぞれ半数前後を占めているが、これらの回答もやはり一人暮らし学生で6割前後と多かった。加えて一人暮らし学生は、「③食費を減らした」も約半数(49.1%)を占めて多いのが特徴である。なお、生活防衛策では、「①アルバイトを増やした」という選択も多く、一人暮らし学生では29.1%、実家暮らし学生でも22.2%である。
以上は調査結果のごく一部である。1部、2部ともに、例年通り、ワークルール教育の必要性を感じさせる結果が把握されている。今年度の『白書』は、次のURLかQRコードにアクセスし「学生アルバイト白書」で検索の上、ご覧ください。https://roudou-navi.org/
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