川村雅則「会計年度任用職員の公募制と離職に関する調査報告(中間報告)」『NAVI』2025年7月31日配信
北海道及び道内35市を対象に、会計年度任用職員の公募実施状況等に関する簡易な内容のアンケート調査(以下、公募状況等調査)を6月から7月にかけて実施した。自治体独自のルールが設けられているなど、制度の面も、実態の面も、正確に把握するためには、直接の聞き取り調査が必要であることをこの間の自治体調査で感じている。本調査はそのことを踏まえた、簡易な調査であることをはじめにお断りしておく。
上記の公募状況等調査に先立ち、道内各自治体から提出された大量離職通知書の情報開示を4月に行い、およそ1か月後に公開された情報内容の照会を、公募状況等調査と一緒に行った(大量離職通知書調査)。
本稿はその中間報告である[1]。お忙しいところご回答いただいた自治体の担当者の皆さまにはこの場を借りて深く感謝を申し上げます[2]。
(2025年7月29日記)
Ⅰ.公募状況等調査の概要
上記のとおり、簡易な内容のアンケート調査票を用いて、北海道及び道内35市を対象に会計年度任用職員の公募状況等に関する調査を行った。
1.有期雇用の濫用の制度化──会計年度任用職員の任用の基本設計
この調査の目的は、会計年度任用職員の公募制度の導入・継続/廃止状況(以下、実施状況)を明らかにすることである。
公募制の簡単な説明をする。
会計年度任用職員の任用は、制度上は、一会計年度ごとの任用であり、「毎年改めて(新規に)任用される」と厳格に解釈されている。よって、試用期間にあたる条件付採用期間も任用のたびに設けられることになる。総務省がこの解釈を変更しない限り、この条件付採用期間を廃止することはできない。
あわせて、平等取扱い原則や成績主義という観点を理由にあげて、一定年数ごとに、公募に応じて選考に受からなければ働き続けられないという制度を設けている自治体が多い。これが公募制である。国の非正規公務員(非常勤職員)制度を念頭において総務省が助言した3年という期間を採用している自治体が多く、3年公募制などと言われていた。
会計年度任用職員制度(新制度)が2020年度に導入される以前から臨時・非常勤職員の雇用の不安定さについては問題となっていたが、新制度に移行して、状況は悪化した。有期雇用の濫用がいわば「制度化」され、民間の非正規雇用制度でまがりなりにも進められる雇用安定化政策(労働契約第18条、無期雇用転換制度)に逆行することとなった。
そのようななかで、自治体の判断で実施可能な公募制の廃止が関係者の課題になっていた。
2.人事院・総務省通知(2024年)を受けて
当事者団体や労働組合などからの批判や人手不足などの事態を受けてか、2024年6月に、3年公募に関する文言が国の非正規公務員に関する人事院通知から削除された。それを受けて、総務省マニュアルからも、3年公募に関する助言規定が削除されることとなった。人事院・総務省のこうした変化を受けて、各自治体における公募制はどうなっただろうか。この点を明らかにしたいと思った[3]。
総務省が2024年12月に発表した調査結果(「2024年度会計年度任用職員制度の施行状況等に関する調査結果」)では、「再度任用における公募の実施状況」が調べられている。しかし同調査は、2024年4月1日時点の状況を尋ねたものであって、上記の6月通知が出される以前の状況が回答されている[4]。今年度も調査が行われるだろうが、結果の発表はまた2025年末になると思われる。それでは遅く、状況を速やかに把握し、関係者の取り組み(例えば労働組合であれば団体交渉、議員であれば議会質問)に活かしてもらうことが課題であった。
以上のような理由から本調査を行った。
3.本調査の内容
本調査は、回答者の負担を極力少なくし、もって、回収率を上げることをねらい、調査項目は少なくした[5]。
まずは(1)公募の実施状況を尋ね、(2)公募を導入しているという自治体には、公募の周期や公募以外の任用制限[6]の有無、公募導入の理由や公募を入れていることでの支障を尋ねた。(3)公募を導入していないか廃止したという自治体には、その時期や効果、あるいは、公募を実施しないことでの現時点での支障や将来的な懸念を尋ねた。
最後に、(4)非正規公務員制度の改善を国が検討していること[7]を踏まえ、国に対する要望を尋ねた(自由記述)。
なお、(a)同じ自治体内でも、任命権者によって公募の状況が異なることも考えられた[8]。そのため、本調査では、首長部局における2025年4月1日時点の状況に限定して回答していただいた。(b)ここでの公募制とは、再度任用時における一定期間ごとの公募を指す(採用時の公募は除く)ことを調査票に明記した。
Ⅱ.大量離職通知書調査の概要
北海道内のハローワークに自治体から2024年度末に提出された大量離職通知書について情報開示請求を行い、開示された情報について自治体に照会を行った。大量離職通知書制度の説明を含め、調査の概要を以下に記す[9]。
1.大量離職通知書制度と筆者の問題意識
まず、自治体は、離職者を大量に発生させる場合には、大量離職通知書を作成しハローワークに提出しなければならない[10]。
具体的には、「一つの事業所において、1か月以内の期間に、30人以上の離職者の発生が見込まれるとき」である(ここでの一つの事業所とは、「任命権者」ごとと解されている)。「地域の労働力需給に影響を与えるような大量の雇用変動に対して、職業安定機関等が迅速かつ的確に対応を行えるようにすること」が目的である。雇用期間満了による離職者も対象となる(但し「6ヶ月以内の雇用期間満了者」は除かれる)。
公募制を採用している自治体では、公募制を採用していない自治体に比べて、離職者が多く発生し大量離職通知書を作成・提出しなければならない可能性がその分だけ高まる、と考えられる。
しかしながら、これまで自治体では、大量離職通知書の作成が義務づけられていることが必ずしも認識されていなかったようで、本来は作成・提出の必要があっても、それがなされていないケースが少なくないようであることがこの間の筆者調査で明らかになっている[11]。今後、厚生労働行政の尽力で情報の周知が図られることを期待する[12]。
筆者は(のほか、この取り組みを進める関係者[13])は、そもそも離職者を発生させない任用のあり方が自治体に求められていると考えている。
しかし、公募は継続する、ということが当該自治体の関係者(首長だけでなく、議員・議会や労働組合)の意思であるならば、少なくとも、遵法精神にのっとり、大量離職通知書の作成・提出という最低限のルールは遵守し、離職者の再就職等を支援することが関係者に求められると考える[14]。
以上のような問題意識で、(1)まずは、下記の内容で大量離職通知書を2025年4月14日に開示請求した。すなわち、「令和7〔2025〕年1月1日~令和7〔2025〕年4月14日の間で北海道及び北海道内の市町村から提出された、労働施策総合推進法第27条に基づく「大量離職通知書」」の開示請求を行った。(2)およそ一か月後に情報が開示された。9市・12件の情報が得られた。
2.提出(記載)された数値の検証が必要な理由
もっとも、この通知書は、本来は「最後の離職が生じる日の少なくとも1か月前まで」に作成・提出が求められるものであるのだが、公募・選考・合否の確定・離職者数の集約等の作業が間に合っていないのか、離職が確定された段階ではなく、公募にかける人数そのものを記載して提出している自治体が少なくないことが過去の調査で明らかになっている。その場合、当然のことながら、記載される人数は非常に多くなる。
脇道にそれるが、この点ひとつを取っても、一定期間ごとに短期間で公募・選考を行うことに無理があると考えるのだが──加えて言えば、大量離職通知書がそのような内容でも問題なく受理されているのであれば、この大量離職通知書制度は本来の役割を果たしていると言えるのかと疑問に思われてならないのだが──ここではそのことは問わない。
ここで明らかにすべきは、通知書に記載された数値が、確定された離職者数であるのか、それとも、公募にかける人数など暫定的な離職者数であるのか、ということである。そのことを当該自治体に確認する必要がある。
そこで本調査では、通知書に記載された数値がどのような数値(上記のどちらの数値)であるのかを当該自治体に照会をした。具体的には、公募状況等調査の調査票とあわせて、調査票を送付した。
3.調査の内容
照会した内容は以下の3点である。
すなわち、当該自治体に対して、通知書に記載された内容(人数情報)を調査票に示した上で、(1)「常勤職員」には会計年度任用職員は含まれているかどうか[15]、(2)「非常勤職員」の人数は、確定した離職者であるかどうか、(3)上記(2)の人数が暫定的なものであるとすれば、後日に確定した(集約された)離職者の人数は何人であるのか、ということである[16]。
Ⅲ.両調査の結果
二つの調査の結果を報告する。
1.公募状況等調査の結果
6月10日に調査票を発送し、「今月〔6月〕末を目処にご回答の上、同封した封筒に入れてご返送を」お願いした。同じ内容をメールで回答しても構わない旨もお伝えした。7月7日(月)までのあいだに、26市からの回答があった。
7月9日(水)に、残りの自治体に対して調査への協力のお願いの連絡を行った。9市に対しては電話で、組織が大きい北海道に対してはメールで、連絡を行った。必要に応じて、調査票を再送もした。
その後、7月25日(金)までのあいだに7市から回答をいただいた。
以上の計33市[17]からの回答を一覧にまとめたのが公募状況等調査の結果一覧表である。
1)公募の実施状況
まず、今回の調査のメインテーマである公募の実施状況をみる。
結果は、「①全ての職種に公募を導入している」が9件、「②一部に例外はあるが、原則として公募を導入している」が7件、「③公募は導入していない/廃止した」が16件(但し1件は注釈付)となっている。
以上の他に、本調査の選択肢では回答しづらかった(「①とも③とも回答しにくい」ため)に無回答というケースが1件あった(旭川市)[18]。
さて、2024総務省調査(基準日は2024年4月1日)で「毎回公募を行わず再度任用する」と回答したのは6件(小樽市、赤平市、名寄市、根室市、滝川市、伊達市)のみ[19]であったから、公募を廃止したという自治体が大きく増えたことになる。
なお、「②一部に例外はあるが、原則として公募を導入している」自治体には、例外の職種・条件等も尋ねている。専門性等が公募を行わない(例外の)理由となっているようである。
2)公募を実施する理由など
公募を実施しているという自治体(旭川市を含む17市が該当)に対して尋ねた質問のうち、3つの回答をみる。公募の周期情報は割愛するので表を参照されたい。
第一に、「公募以外に、「●年まで」など、同一部署での任用や同一職種での任用に上限を設けていますか。設けている場合には、その内容を教えてください。」と尋ねた。
結果は、4市が「設けている」と回答した。そのうち2市は、注釈にすでに記載のとおり、札幌市(同一部3年ルール)と江別市(通算6年制)である。詳細は拙稿を参照されたい。他の2市の自治体については以下の内容であった。
- 北斗市:同一の者につき4回を上限としている
- 函館市:1年ごとに公募する職において、公募による選考の結果、同一人を同一の職務内容で採用する場合、連続して4回を上限とする
こうした独自ルールを設けている自治体もあるが、総務省調査ではみえてこないことに留意が必要である。
第二に、公募や同一部署等での任用上限を導入している理由について、「その他」を含む4つの選択肢を設けて、当てはまるものの全てに○をつけていただいた。
結果は、まず17市のうち5市が無回答であった[20]。残り12市をみると回答は以下のとおりである。
- 「ア.ほかの地域住民に対しても平等に雇用機会を提供する必要があるから」が10件
- 「イ.当該職員がその仕事に就くのに相応しい能力があるかどうかを、一定期間ごとに実証する必要があるから」が7件
- 「ウ.同一人物が同じ職場で長く働き続けるのは、好ましくない影響をもたらすことになるから」が2件
- 「エ.その他( )」が0件
第三に、公募の継続によって生じている支障はないかを尋ねた。「その他」を含め5つの選択肢を準備し、いずれにも該当しない場合には、「カ.以上のような支障はとくに生じていない」を選択してもらう設計にした。
まず、17市のうち2市が無回答であった。残り15市について回答をみると、以下のとおりである。
- 「ア.公募・選考の負担が大きい」が8件
- 「イ.選考の方法・内容に苦慮している」が0件
- 「ウ.公募で、定員を満たすほどの応募がない」が5件(うち1件は「職種によっては」との記載)
- 「エ.行政サービスの継続という点で支障が生じている」が0件
- 「オ.その他( )」が1件(「一部の職で、人材確保に苦労するとの声が聞こえている」との回答)
- 「カ.以上のような支障はとくに生じていない」が4件
3)公募を実施しない効果など
次に、逆に、公募を実施していない自治体(16市が該当)に対して尋ねた質問のうち、2つの結果をみていこう。
第一は、公募を廃止したこと/実施していないことによる効果である。「その他」を含め6つの選択肢を設け、いずれにも該当しない場合には、「キ.以上のような効果はとくに生じていない」を選択してもらう設計にした。
結果は、まず、16市のうち1市が無回答であった。残り15市の回答は以下のとおりである。
- 「ア.職員の定着状況が改善された」が6件
- 「イ.職員のモチベーションが上がった」が1件
- 「ウ.仕事の質が改善された」が1件
- 「エ.公募・選考に要する負担が解消された」が7件
- 「オ.職場の雰囲気がよくなった」が0件
- 「カ.その他( )」が1件(「安心して働いていただく環境づくりに寄与している」との回答)
- 「キ.以上のような効果はとくに生じていない」が6件(そのうち1件は、「以前から公募を実施していないため、実施していないことによる効果は不明」と記載)
第二は、公募を実施しないことでの現時点での支障や将来的な懸念を尋ねた。
結果は、「どちらもとくにない」が14件で、「ある」が2件であった。
「ある」というその内容は、次のとおりである[21]。
- 富良野市:会計年度任用職員〔の〕任用継続の協議の機会が減る可能性。新たに会計年度任用職員を希望する方への就労機会の減
- 深川市:公募廃止後は、業務に支障をきたす者に対して任用更新をしない理由を示す必要が生じ、任用未更新が難しくなる傾向がある。
2.大量離職通知書調査の結果
上記のとおり、北海道労働局への情報開示で9市から12件の情報が得られた。首長部局が9件で、残りは、水道局が1件、消防局が1件、教育委員会が1件である。
記載されていた情報12件分を合計すると、離職者数が2203人、うち「常勤職員」が630人、うち「非常勤職員」が1573人である。
このうち首長部局に限定すると、人数は、それぞれ、1976人、512人、1464人である。本調査(大量離職通知書調査)で自治体に対して照会をかけたのはこの部分(首長部局部分)なので、以下、この数値を使う。
さて、上記のとおり、この人数は幾つかの確認を要する。すなわち、(1)「常勤職員」には会計年度任用職員が含まれていないかどうか、(2)「非常勤職員」の人数は確定した数値かどうか、ということである。それらを照会した。
小樽市以外の8市から回答が得られた。
結果をまとめた一覧が大量離職通知書調査の結果一覧表である。
まず、「常勤職員」には会計年度任用職員が含まれていないか、という問いに対しては3市が「含まれている」と回答した。その人数の合計は173人である。
次に、(この点が重要だが)「非常勤職員」の人数は確定した数値か、という問いに対しては、3市が「暫定的な離職者の人数」と回答した。その場合、実際の離職者数は集約されているだろうか。これら3市の大量離職通知書上の数値と本調査への回答は、以下のとおりである。
- 北見市:大量離職通知書上の「非常勤職員」の離職者数は「744人」は暫定的な離職者の人数で、実際の離職者数は「未集約」
- 苫小牧市:同「184人」は暫定的な離職者の人数で、実際の離職者数は「44人」
- 札幌市:同「161人」は暫定的な離職者の人数で、実際の離職者数は「197人」
以上を踏まえ、1464人から人数を除いたり足したりする必要がある。
まず、「非常勤職員」の暫定的な離職者数を実際の離職者数にする必要がある。1464-744人-(184人-44人)-(161人-197人)=616人となる。
なお、未回答であった小樽市の「非常勤職員」の離職者「75人」については、同市の大量離職通知書の記載によれば、「4月1日より外部委託が決まって」いる「放課後児童クラブ支援員」であって、「退職扱いとなる」者であるため、確定した離職者数としてそのまま扱った[22]。
これに、「常勤職員」に分類されていたうちの173人(のうちの実際の離職者数)が加わることになる。
以上の数値(人数)は、大量離職通知書を提出していた自治体の分である。実際の離職者数には、これに加えて、大量離職者通知書を作成・提出する必要があるのにそれを行っていない自治体[23]の分、そして、大量離職通知書を作成・提出する必要はない[24]けれども離職者を発生させている自治体の分が加わる。
Ⅳ.まとめに代えて
ILOが提唱するディーセント・ワーク(厚生労働省訳では、働きがいのある人間らしい仕事)にとって、雇用の安定は重要な位置を占める。会計年度任用職員制度ではそのことが無視されているかのようである。
そのようななかで、本調査(公募状況等調査)の結果によれば、公募を廃止したという自治体が増えていた。また、公募を廃止した自治体では、現時点では、そのことによる支障は生じておらず将来的な懸念もとくに示されていなかった。詳細を明らかにすることは今後の研究課題であるものの、朗報であった。
一方で、大量離職通知書調査によれば、把握されただけでも離職者数は少なくなかった。民間化のケースも確認された[25]。離職状況がそもそも把握されていない、という課題も確認された。会計年度任用職員制度という、雇用が不安定な制度の下で離職者数を把握することが課題である(言うまでもなく、関係者の意思があればそれは可能である)。
人手不足や多忙を嘆く声が自治体からも聞こえてくる。(そもそも筆者はディーセント・ワークの観点から公募に反対しているが)そのような人手不足・多忙な状況にあってもなお、こうした公募・選考作業を継続することは合理的なのだろうか。このような制度を作った国の責任はもちろん言うまでもないが、自治体関係者──繰り返しになるが、首長・行政だけでなく、議員・議会や労働組合──の姿勢もまた問われているのではないか。
(謝辞)
お忙しいところご回答をいただいた自治体担当者の皆さまにあらためて感謝を申し上げます。
(参考文献)
川村雅則(2021)「札幌市の会計年度任用職員制度の現状──2021年調査に基づき(非正規公務労働問題研究会レポート)」『北海道自治研究』第634号(2021年11月号)pp.2-21
川村雅則(2023a)「札幌市非正規公務員(会計年度任用職員)調査報告」『北海学園大学経済論集』第71巻第1号(2023年6月号)pp.17-37
川村雅則(2023b)「旭川市非正規公務員(会計年度任用職員)調査報告──制度と労働条件の概要」『北海学園大学経済論集』第71巻第3号(2023年12月号)pp.37-54
川村雅則(2025a)「【未定稿】江別市非正規公務員(会計年度任用職員)調査報告」『北海学園大学経済論集』第73巻第2号(2025年11月号)掲載予定
川村雅則編著(2025b)『お隣の非正規公務員──地域を変える、北海道から変える』北海道新聞社
坂本勇治「根室市の会計年度任用職員制度と労働組合の取り組み(2022年度反貧困ネット北海道連続学習会)」『NAVI』2022年11月26日配信
[1] 本文に記載のとおり、今後聞き取りなどを行う必要がある。中間報告と称したのはそのような趣旨である。
[2] ディーセント・ワークの実現を目指す筆者は公募制には反対の立場を示している。そのことを踏まえると、本調査には回答しづらい面があったのではないかと推測される。そのようななかでこうしてご回答をくださったことには感謝を申し上げます。なお、この問題に対する筆者らの考えなどは、川村(2025b)を参照。
[3] ちなみに、「3年公募の助言規定が削除されたとはいえ、公募を設けること自体は違法では」ない。「それぞれの自治体の考えがあろうかと思います。あるいは、国が制度設計した会計年度任用職員制度にしばられている部分もあるのではないかと感じています。公募に関する現状やお考えをお聞かせいただければ幸いです。」と本調査の依頼文書には記した。
[4] 例えば、北海道及び道内35市では、小樽市、赤平市、名寄市、根室市、滝川市、伊達市の計6市が「毎回公募を行わず再度任用する」と回答しているが、これは2024年4月1日時点の情報である。
[5] 公募制の導入/廃止状況だけでなく、聞けるものであれば、例えば、(1)公募で不合格となった現役職員の人数や不合格の理由(不合格の理由別不合格者数)、(2)公募・選考の時期とその妥当性、(3)選考の方法・内容の詳細などを尋ねたかったが、割愛した。いずれも制度の検証を行う上で不可欠の情報と思われる。労働組合や議員にはぜひ、これらの情報収集に努めていただきたい。
[6] 例えば、札幌市では、原則として、同じ部で働くことができる年数が3年に限定されている(同一部3年ルール)。また、江別市では、同じく原則として、同一の部署で働くことができる年数が通算6年に限定されている(通算6年制)。以上の詳細は、川村(2021)、川村(2025a)を参照。こうした自治体独自のルールが札幌市や江別市の他にもあるのかと思い、本調査では照会をしてみた。
[7] 直近の報道では、例えば、「非正規公務員、待遇改善へ 常勤化や給与見直し 会計年度任用職員」『朝日新聞』朝刊2025年6月5日付。賃金等に関する記述を中心にいわゆる総務省マニュアルも6月下旬に改定された(「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル(第2版)」の改正について(通知)(2025年6月25日総行給第29号))。
[8] 総務省による調査では、一般行政部門、教育部門、警察部門、消防部門、公営企業部門の5つに分けて質問をしている。
[9] 念のため付言しておくと、関係者が自らのマチの会計年度任用職員の離職状況を知りたければ、行政に対してストレートに情報を求めればよいだけである。そうした情報、すなわち、公務の担い手である会計年度任用職員の離職状況にもっと関心がもたれ、そして、離職の背景の検証作業や対策が各自治体で進められることを願う。
[10] 厚生労働省「「再就職援助計画」と「大量離職届・大量離職通知書」」。
[11] 2023年、2024年の経験を踏まえ、北海道労働局に対して質問をし、回答をいただいている。川村雅則「大量離職通知制度に関する北海道労働局への質問とご回答」『NAVI』2024年6月15日配信を参照。
[12] 自治体への聞き取りの「感触」では、周知はまだ十分に図られていないと思われる。直近の例では、江別市からの聞き取り調査で、誤った理解がなされていることが明らかになった。川村(2025a)を参照。
[13] 例えば、なくそう!官製ワーキングプア東京集会の実行委員会がこの取り組みを大規模に行っている。同実行委員会による「106自治体の公募検討状況(最新版)」『NAVI』2025年1月23日を参照。
[14] 自治体(公務職場)は、民間事業者に対して模範的な使用者であること、率先垂範が本来は求められるところだが、こと非正規雇用問題では、自治体は民間に後れを取っている。よってまずは民間並み(民間法制度を意識した振る舞い)が、求められる水準である。
[15] 会計年度任用職員は非常勤職員であるため、「非常勤職員」の欄に数値が記載されるのが適切なのだが、大量離職通知書の説明(様式(裏面))では、「「非常勤職員」とは、「常勤職員」以外の職員をいう。勤務形態としては、①日々雇い入れられる職員、②勤務時間が常勤職員の1週間の勤務時間の4分の3以下の職員、③再任用短時間勤務職員等をいう。〔略〕」と記載されているために、誤った記載を誘発することになっている。
[16] ここでも本来であれば、離職者の職種情報や離職理由、あるいは、(暫定的な離職者数を記載している自治体に対しては)確定した離職者数を記載できない理由などを尋ねたいところである。関係者による情報収集作業に期待する。
[17] 本報告書を公表した7月29日の時点でも回収数は同様(33市)である。
[18] 電話による照会を行ったが、公募を残している部署もある、というニュアンスの回答であった(部署や規模は不明)。後日にあらためてお話を伺いたい。
[19] 公募廃止時期を尋ねた本調査への回答から判断すると、6件(市)のほかに、もう2,3件(市)は公募をすでに廃止していた可能性もあるが、ここでは問わない。
[20] 無回答が多いことに違和感が残った。是非はともかく、公募を行うその理由が示されることによってはじめて、その妥当性や必要性の検証が可能になると思われるがどうか。
[21] これらの2つの回答内容をどう考えるべきか。(1)前者は、誰かが職に就けば、その分だけ就労機会が減るのは、公務でも民間でも、正規雇用でも非正規雇用でも、同じである。もし仕事を分かち合うことを目指すのであれば、ワークシェアという手法がある。とりわけ日本では、長時間残業(労働)の解消も併せ目指すワークシェアが追求されてよいと考える。(2)後者は、当事者に対して教育指導をしっかり行うことや、恣意的な/合理的な理由のない雇い止めの禁止あるいは当事者からの異議申し立ての権利の確立を前提とした上でだが、「業務に支障をきたす者」の任用を更新しないことはあり得ることである。雇い止めに関する厳格なルールを定めることが必要であって、そうした負担を回避するために会計年度任用職員全員を一定期間ごとに公募にかけるようなことはあってはならないと考える。
[22] 本稿テーマとは直接は関係がないが、委託先に雇用が引き継がれるかどうかが気になるところである。
[23] 提出条件を誤って理解しているケースもあれば、独自の解釈で作成・提出していないケースもあると思われる。
[24] 厚生労働省のリーフレットには、30人以上に達しない場合でも、次のように記載されている。「30人未満の離職者が生じる場合については、「大量離職通知書」の提出義務はありませんが、一定程度の規模の離職が予定されており、再就職先が確保されていない場合には、円滑に再就職支援を行う必要があるため、ハローワークに「大量離職通知書」の提出等についてご相談ください。」
[25]会計年度任用職員制度の賃金・労働条件が改善されることで、逆に、民間化を進めようとする力が強くなることが懸念される。本調査の直接のテーマではないが、公契約条例・公契約運動の必要性をここに記しておく。
資料
公募状況等調査の調査票(レイアウトは変更、罫線等は削除)
自治体名
ご担当者・ご連絡先
※ 各設問にご回答ください。複数回答可の設問では当てはまる全てに○をつけてください。
Ⅰ.貴自治体では、会計年度任用職員に対して公募制を導入していますか。首長部局における2025年4月1日時点の状況をご回答ください。前記のとおり、ここでの公募制とは、再度任用時における一定期間ごとの公募を指します。
①全ての職種に公募を導入している
②一部に例外はあるが、原則として公募を導入している
例外の職種・条件等は(
)
③公募は導入していない/廃止した →Ⅲ(裏面)へお進みください
Ⅱ.公募制を導入しているという自治体にお伺いします
問1 公募の周期(ex.●年ごと/▲回の再度任用ごと)について2点をお伺いします。
1)公募の周期は ①1つのみ設定している ②複数設定している
2)具体的な周期をお答えください。「年」または「回」にも○をつけてください。なお、複数ある場合には、人数ベースで多いパターンの順にご回答ください。
( 年 / 回 )ごとに公募を実施
( 年 / 回 ) 〃
( 年 / 回 ) 〃
問2 公募以外に、「●年まで」など、同一部署での任用や同一職種での任用に上限を設けていますか。設けている場合には、その内容を教えてください。
①設けている → その内容は ( )
②設けていない
問3 公募や同一部署等での任用上限を導入している理由についてお伺いします。当てはまるものの全てに○をつけてください。
ア.ほかの地域住民に対しても平等に雇用機会を提供する必要があるから
イ.当該職員がその仕事に就くのに相応しい能力があるかどうかを、一定期間ごとに実証する必要があるから
ウ.同一人物が同じ職場で長く働き続けるのは、好ましくない影響をもたらすことになるから
エ.その他( )裏面へ
問4 公募の継続について何か支障は生じていませんか。当てはまるものの全てに○をつけてください。
ア.公募・選考の負担が大きい
イ.選考の方法・内容に苦慮している
ウ.公募で、定員を満たすほどの応募がない
エ.行政サービスの継続という点で支障が生じている
オ.その他( )
カ.以上のような支障はとくに生じていない
Ⅲ.公募制を導入していない/廃止したという自治体にお伺いします
問1 公募の廃止時期を教えてください。会計年度任用職員制度が導入される以前から公募は実施していないという場合についても、その時期をご回答ください。
( )年度から公募を実施していない
問2 公募を廃止したこと/実施していないことによる効果は何かありますか。当てはまるものの全てに○をつけてください。
ア.職員の定着状況が改善された
イ.職員のモチベーションが上がった
ウ.仕事の質が改善された
エ.公募・選考に要する負担が解消された
オ.職場の雰囲気がよくなった
カ.その他( )
キ.以上のような効果はとくに生じていない
問3 逆に、公募を実施しないことでの現時点での支障や、将来的な懸念があれば教えてください。
①どちらもとくにない
②ある → その内容は ( )
Ⅳ.骨太方針の策定に関わって、先頃、国が非正規公務員制度の改善を検討していることが報じられました。財源の確保問題を含め、会計年度任用職員制度の設計・整備に関連して、国に対する要望などが何かあればお書きください。
ご多忙のところご協力を賜りましてまことにありがとうございました。同封した封筒に入れてご返送くださいますようよろしくお願い申し上げます。
大量離職通知書調査の調査票
令和6(2024)年度末に
大量離職通知書をハローワークに提出された自治体担当者さまへ
※「情報公開制度」を通じて全ての自治体の大量離職通知書を開示していただきました。
貴自治体の大量離職通知書に関連して3点のことを質問させてください。
■■■ では、
離職者数が合計 ○○○人
うち常勤職員が ○○○人
うち非常勤職員が ○○○人
と回答されていました
問1 上記の人数のうち「常勤職員」には、会計年度任用職員は含まれていますか。
①含まれていない
②含まれている → 上記「常勤職員」のうち( )人が会計年度任用職員
問2 上記の人数のうち「非常勤職員」の人数は、確定した離職者数でしょうか。
①公募・選考を経て、離職が確定した職員の人数である
②庁内の別の部署などで再度任用される可能性をもつ職員を一部に含むが、公募・選考を経て、離職が確定した職員の人数である
③公募・選考はまだ経ておらず、公募の条件に合致した職員の人数をそのまま記載したもの(暫定的な離職者の人数)である
問3 上記の問2で「③」を選択された担当者さまへ質問です。2024年度末の会計年度任用職員の実際の離職者数が集約されておりましたら、ご回答ください。
実際の離職者数は( )人
質問は以上となります。この用紙も同封した封筒に入れてご返送くださいますよう、なにとぞよろしくお願い申し上げます。調査へのご協力を賜りまして、まことにありがとうございました。