川村雅則「【未定稿】江別市非正規公務員(会計年度任用職員)調査報告」

川村雅則「【未定稿】江別市非正規公務員(会計年度任用職員)調査報告」『北海学園大学経済論集』第73巻第2号(2025年11月号)掲載予定

 

本稿は、当初、本学経済学部紀要(第73巻第1号、2025年7月発行)への投稿を予定していましたが、内容の確定に時間を要してしまい、投稿が間に合いませんでした。

よって本稿は、未定稿という性格の文章ではありますが、内容はおおむね確定されたものであり、他の自治体関係者にとっても有益な内容を含むと思われるため、先行して配信する次第です(繰り返しになりますが、本稿の性格にはご留意ください)。

今回の調査でも明らかになったとおり、労働施策総合推進法第27条に基づく「大量離職通知書制度」は、まだまだ正確に理解されていない可能性が高いです。他の自治体におかれましても、正確な理解、対応がされているかの確認作業を、関係者に対してお願いしたいと思います(もちろん、離職を発生させない仕組み作りがそもそも必要である、というのが筆者の考えです)。

なお、(1)本稿では、筆者の考察は割愛しています。(2)本稿は、紀要の第73巻第2号に投稿を予定しています(2025年11月発行予定)。

 

 

江別市非正規公務員(会計年度任用職員)調査報告

 

川村雅則(北海学園大学)

 

 

1.はじめに

本調査は、江別市からの聞き取り調査結果に基づき、江別市の会計年度任用職員制度に関する情報をまとめたものである。筆者の調査・研究の問題意識などは、参考文献にあげた最近の拙稿などを参照されたい。

さて、今回、江別市を調査の対象に選んだ理由は、一つは、江別市の会計年度任用職員の人数が多いことである。

総務省が全ての自治体・一部事務組合(自治体等)に対して2023年に行った調査[1](以下、2023総務省調査)によれば、短期間・短時間勤務者を含めて、1003人である。江別市は、人口あたりの正職員数が少ない自治体である[2]。そのことが会計年度任用職員の人数の多さに反映しているかもしれない。

いずれにせよ、江別市は会計年度任用職員数が多い自治体であることから、同市ではどのような労務管理がなされているのか、人数が多いゆえの特徴や課題などはないかを知りたいと思った。

江別市を選んだ理由のもう一つは、(本稿で説明するとおり、これは誤情報であったのだが)一部の職種で、再度任用時における公募を実施していないという情報が2023総務省調査から得られたことによる[3]。この点は、実際にはそうではないことが聞き取りで江別市から回答された。詳しくは公募の箇所で述べる。

 

 

Ⅱ.調査の概要

2024年12月18日(水)10時~、江別市庁舎にて、担当者(総務部職員課職員)から2時間弱の聞き取りを行った。お伺いしたい調査項目・調査票は事前に送付しておいた。

江別市における臨時・非常勤職員(以下、非正規職員ともいう)制度について尋ねた。言うまでもなく、会計年度任用職員制度(以下、新制度ともいう)の聞き取りが中心である。現状を知る上で、新制度が導入される以前の制度(旧制度)のことも、必要に応じて尋ねた。首長部局の制度が中心である[4]

聞き取りの結果をまとめ、後日に、内容に誤りがないかの確認をお願いした。あわせて、聞き取り調査を経てもなお分からなかった点の再度の質問や資料の照会を行ったが、末尾に記載のとおり、多くの内容が不明なままである。本稿は、そのような性格のものであること、今後の調査・研究課題を残したものであることをはじめにお断りしておく(経緯などは、考察の箇所であわせて述べる)。

なお、本稿に残りうる誤りは全て筆者の責任によるものである。

 

 

Ⅲ.調査の結果

1.総務省調査にみる非正規職員の人数など

まず、先に紹介した2023総務省調査の結果と、総務省が2020年に自治体等に対して行った調査(以下、2020総務省調査)[5]の結果から、江別市の臨時・非常勤職員の人数情報などを簡単にみておく。

 

表1 部門別にみた、正職員、非正規職員の人数及び非正規職員の割合(2020年)/単位:人、%

正職員 非正規職員計 会計年度任用職員 特別職非常勤職員 臨時的任用職員 非正規職員割合
短期間・短時間勤務者を除く フルタイム 計 6月以上 6月未満 パートタイム 計 6月以上かつ19時間25分以上 6月未満又は19時間25分未満 6月以上かつ19時間25分以上 6月未満又は19時間25分未満 6月以上 6月未満 短期間・短時間勤務者を除く
一般行政 485 443 252 443 2 2 0 441 250 191 0 0 0 0 0 0 47.7 27.2
教育 97 296 167 296 0 0 0 296 167 129 0 0 0 0 0 0 75.3 42.5
消防 130 5 3 5 0 0 0 5 3 2 0 0 0 0 0 0 3.7 2.2
公営企業 428 140 118 139 0 0 0 139 117 22 1 1 0 0 0 0 24.6 20.8
合計 1,140 884 540 883 2 2 0 881 537 344 1 1 0 0 0 0 43.7 26.7

注:表中の期間は任用期間、勤務時間数は週当たりの勤務時間数。
出所:2020総務省調査より作成。正職員は、「地方公共団体定員管理調査」による(いずれも基準日は2020年4月1日)。

 

第一に、2020年4月1日時点の数値でみると(表1)、正職員が1140人に対して臨時・非常勤職員が合計884人で、非正規職員割合は43.7%である。臨時・非常勤職員のうち、特別職非常勤職員の1人を除く883人が会計年度任用職員である。

第二に、会計年度任用職員883人のうち、2人を除く全員(881人)がパートタイム職員である。そのうちおよそ6割が「任用期間が6月以上かつ1週間当たり19時間25分以上」(表中では、「任用期間が」と「1週間当たり」を省略。以下、本文でもそのように表記する。)の職員である。

第三に、2020総務省調査と2023総務省調査を使って職員の増減をみてみる(表2、表3)。

 

表2 部門別にみた、正職員、非正規職員の人数及び非正規職員の割合(2023年)/単位:人、%

正職員 非正規職員計 会計年度任用職員 特別職非常勤職員 臨時的任用職員 非正規職員割合
短期間・短時間勤務者を除く フルタイム 6月以上 6月未満 パートタイム 6月以上かつ19時間25分以上 6月未満又は19時間25分未満 6月以上かつ19時間25分以上 6月未満又は19時間25分未満 6月以上 6月未満 短期間・短時間勤務者を除く
一般行政 498 459 280 459 4 4 0 455 276 179 0 0 0 0 0 0 48.0 29.3
教育 94 335 192 335 2 2 0 333 190 143 0 0 0 0 0 0 78.1 44.8
消防 131 5 3 5 0 0 0 5 3 2 0 0 0 0 0 0 3.7 2.2
公営企業 425 205 183 204 7 7 0 197 176 21 1 0 1 0 0 0 32.5 29.0
合計 1,148 1,004 658 1,003 13 13 0 990 645 345 1 0 1 0 0 0 46.7 30.6

注:表中の期間は任用期間、勤務時間数は週当たりの勤務時間数。
出所:2023総務省調査より作成。正職員は、「地方公共団体定員管理調査」による(いずれも基準日は2023年4月1日)。

 

表3 会計年度任用職員及び非正規職員割合の推移(2020年、2023年)/単位:人、%

会計年度任用職員 非正規職員割合
フルタイム パートタイム 6月以上かつ19時間25分以上 6月未満又は19時間25分未満 短期間・短時間勤務者を除く
2020 2023 2020 2023 2020 2023 2020 2023 2020 2023 2020 2023 2020 2023
一般行政 443 459 2 4 441 455 250 276 191 179 47.7 48.0 27.2 29.3
教育 296 335 0 2 296 333 167 190 129 143 75.3 78.1 42.5 44.8
消防 5 5 0 0 5 5 3 3 2 2 3.7 3.7 2.2 2.2
公営企業 139 204 0 7 139 197 117 176 22 21 24.6 32.5 20.8 29.0
合計 883 1,003 2 13 881 990 537 645 344 345 43.7 46.7 26.7 30.6

出所:2020総務省調査、2023総務省調査より作成。

 

正職員は、「一般行政」部門を中心に、合計で1140人から1148人へと8人の増加に対して、会計年度任用職員の人数は大きく増加している。2020年が883人に対して23年は1003人である。非正規職員の割合も43.7%から46.7%に増加している。公営企業における「6月以上かつ19時間25分以上」が増加している。

この背景について照会をしたところ、市立病院における健診センターの直営化による職員の増員、看護師の負担軽減のための看護補助者の増員のほか、市役所における給付金支給業務、新型コロナウイルス対応業務、マイナンバー対応業務、教育支援業務のための増員による、とのことであった。

さて、2020総務省調査に戻って、第四に、職種別に会計年度任用職員の人数をみる(表4)。

 

表4 職種別にみた、非正規職員の人数と割合、男性・女性の非正規職員の人数と女性割合(2020年)

合計 一般事務職員 技術職員 医師 医療技術員 看護師等 保育士等 給食調理員 技能労務職員 教員・講師 図書館職員 その他
うち事務補助職員 うち看護師 うち保健師 うち保育所保育士 うち清掃作業員 うち義務教育 うち義務教育以外 うち消費生活相談員 うち放課後児童支援員
実数 883 192 188 5 10 35 93 62 10 87 75 48 117 6 107 107 0 33 156 0 31
割合 100.0 21.7 21.3 0.6 1.1 4.0 10.5 7.0 1.1 9.9 8.5 5.4 13.3 0.7 12.1 12.1 0.0 3.7 17.7 0.0 3.5
男性の人数 98 44 40 3 4 2 1 1 0 0 0 2 8 0 20 20 0 0 14 0 0
女性の人数 785 148 148 2 6 33 92 61 10 87 75 46 109 6 87 87 0 33 142 0 31
女性割合 88.9 77.1 78.7 40.0 60.0 94.3 98.9 98.4 100.0 100.0 100.0 95.8 93.2 100.0 81.3 81.3 100.0 91.0 100.0

出所:2020総務省調査より。

 

「その他」を除くと、職種で多いのは順に、「一般事務」が21.7%、「技能労務職員」が13.3%、「教員・講師」が12.1%、「看護師等」が10.5%、「保育士等」が9.9%──以上が、全体に占める割合がおよそ1割以上の職種である。後でみるとおり、「事務補助員」という名称の職種が江別市会計年度任用職員では最も多いという。

次に、同表の下段に移る。

会計年度任用職員は女性に偏っていることが全国的な特徴であるが、江別市もそれは同様で、第五に、女性が占める割合をみると、会計年度任用職員全体のおよそ9割(88.9%)が女性である。先ほど取り上げた人数の多い職種についてみると、「一般事務」と「教員・講師」がやや低いとはいえ割合は80%前後(77.1%、81.3%)に達する。その他は、「技能労務職員」は93.2%、「看護師等」は98.9%、そして、「保育士等」は100%、つまり、全員が女性である。

 

表5 週の勤務時間別にみた、会計年度任用職員の人数及び割合(2020年)/単位:人、%

合計
19時間25分~23時間15分未満 23時間15分~31時間00分未満 31時間00未満~37時間30分未満 37時間30分~
実数 537 27 427 83 0
割合 100.0 5.0 79.5 15.5 0.0

注:対象は、「6月以上かつ19時間25分以上」の会計年度任用職員職員(パートタイム)。
出所:2020総務省調査より作成。

最後に、週の勤務時間数をみる(表5)。対象は、「6月以上かつ19時間25分以上」群である。結果は、「23時間15分~31時間」が8割と最も多い。後でみるとおり、江別市では週30時間の勤務時間が基本パターンとのことである。

 

 

2.職種、職員の属性など

先にみた総務省調査の職種は大分類であったため、職種や職種別人数に関する資料照会を江別市に対して行ったが、提供はなかった[6]。よって、詳細は不明なままである。

聞き取りで補足をすると、第一に、会計年度任用職員の多くは女性であったが、男性で人数が多いのは、技能労務や学校関係の職種であるという。後で市に確認したところ、男性が任用されている職種のうち、その人数が多い職種は、事務補助員や学校業務主事(用務員)などとのことである。

第二に、「教員・講師」に配置されているなかで人数が多いのは、教育職ではなく、特別支援学級における障がいのある児童生徒の身辺の介助、あるいは、通常学級で何らかの支援を必要としている児童生徒への学習支援などを行う職である。名称は特別支援教育支援員である。資格要件が設けられており、前者の場合には教員免許、保育士資格、介護系の資格を有している者、後者は教員免許を有している者である。江別市には25校の小中学校があり、80人程度が配置されているという。

第三に、職員の属性のうち年齢については、集計をしたことがないため不明であること、女性の場合、印象としては、20,30歳代よりは子育てに一段落した40,50歳代が多いという印象であることが説明された。

江別市では、事務補助員の場合には週30時間勤務(1日6時間×5日間)が基本である。

なお、週30時間勤務者の場合には、当然扶養を外れることになるが、本人収入が世帯収入に占める割合・位置づけなどは不明とのことである。

 

 

3.一部会計年度任用職員の特徴的な働き方や、職種の補足説明など

江別市では、「スポット」的な働き方をする会計年度任用職員がいる。乳幼児検診や健康保険事業など、臨時的な業務が発生して既存の職員(時間数はともかく常勤的に働く職員)では対応が困難な際にスポットで入ってもらう職員である。旧制度時代には、1種職員(スポット的に働く非常勤)と呼ばれていた。それ以外の、常勤的に働く職員は2種職員という名称で呼ばれていた。人数は、2種が圧倒的に多い。

現在も、便宜上、旧1種、旧2種という呼び方を市内部では使うことがある。ちなみに、旧1種の職員は、総務省調査では「6月未満又は19時間25分未満」に分類され回答されている。

 

 

4.公募制など任用ルール

江別市では、旧・非常勤職員制度時代から公募制度が採用されている。

任用の期間は1年で、勤務実績に基づく「更新」[7]が2回、計3年間は公募を経ずに働くことができる。3年の後に、希望者は公募による試験を受験し、合格した者は、さらに最長で3年(1年の任用、2回の「更新」)を働くことができる。

以上の1部署で通算6年の任用を上限とした運用が旧制度時代から行われており、新制度移行後にもそれは継続されて、現在に至る。この制度について市で使われている名称はとくにないとのことなので、以下では、「通算6年制」と呼ぶ[8]

但し、資格や経験を必要とする職種などでは、公募をかけても新規の求職者があらわれないことがある。その場合は、結果的に、既存の職員に7年目(以降)も働いてもらうことがある。しかし、繰り返しになるが、全ての職種における原則的な任用ルールは、3年ごとの公募制と、同一部署での任用期間が(3年+3年の)通算6年である。

さて、通算6年制を原則にしていては事業・職場がまわらないのではないかと疑問に思い、この点を尋ねたところ、実情としては、人が集まらずに7年目以降も働いている職員は特定の職種のみである、というのが市の認識である(後述の筆者の推察も参照)。市のホームページで年に数回募集をかけている職種もあるという。なお、応募等がなく特例的に7年目の任用がなされた場合には、1年ごとに公募がかけられることになる。

通算6年制が始まったのは、2007年からとのことである。国等の〔非常勤職員の〕取り扱いを参考としつつ、設定したとのことである。

会計年度任用職員制度に移行する際の労働組合との協議を経て、これらの運用はそのまま引き継がれることとなった。

3年公募は国の例示だが、通算6年制はとくに国が示したものではなかったので、新制度移行時に見直しの対象にはならなかったかをあらためて聞き取りで尋ねたが、とくに議論にはならなかったという。江別市に限ったことではないが、過去(旧制度時代)の制度に規定された一例と思われる。

なお、江別市では、会計年度任用職員として働く人数が多いものの、労働施策総合推進法第27条に基づく「大量離職通知書制度」の通知書提出要件に該当することはなく(1か月の間に任命権者単位で30人以上の離職者数の発生)、それゆえ、2023年度末も2022年度末も、通知書は提出されていないとのことだった。

このことについて、合計で1000人を超える会計年度任用職員が働いていながら、大量離職通知書を提出しなければならない状況が発生しない、というのは──確かに、離職者数のカウントは任命権者ごとに細分化されるとはいえ──筆者には疑問に思われた[9](7年目以降も継続で働いている職員が少なくないことによるのか、とも思われた)ため、市にあらためて照会をしたところ、更新可能な場合に退職した職員は自己都合退職として取り扱うことをハローワーク札幌東に確認しているため〔通知書には〕計上していない、との回答であった。

なお、この点は「調査・研究上の課題」で再度ふれる。

 

 

5.人事院・総務省通知発出後の公募継続の検討状況

公募の例示は、2024年6月の人事院通知、総務省通知で削除されている。その後、公募の見直しを検討する自治体もみられた一方で、江別市では、むしろ9月議会で早々に、3年公募の継続が市長によって表明された(「会計年度職員の再任 市「2回まで」変えず*後藤市長、市議会で表明」『北海道新聞』朝刊2024年9月14日付)。

記事によれば、「平等の取り扱いの原則など法律の趣旨にのっとり、現在の運用を継続する」と市長が述べた、とある。国の例示が削除されたことをうけて江別市ではこの点の検討などはされなかったかを聞き取りでは尋ねた。

結論としては、江別市では、(1)総務省マニュアルを踏まえ、平等取り扱い原則と成績主義の考えを採用し、もって、住民に対して雇用の機会を広く設けること、能力実証の機会を一定期間ごとに設けることが必要であると従来通りの判断をし、これまでの運用(3年公募と通算6年制)を継続することとなった。(2)1部署で6年という上限を撤廃してしまうと、職場の意向か本人の意向かはともかくとして同じ部署で働き続けることが基本となって、現在働いていない住民の入職の機会を制限してしまうことになる、と江別市では判断したという。(3)加えて、正職員にも定期的な異動がある。会計年度任用職員もそれに準じて定期的な異動が必要である、という考えに基づくとのことである。逆に言えば、長期で同じ職場・部署に在籍して職員が働くことを江別市では前提にはしていない。長く働くことで知識や経験が蓄積されるというメリットもあるが、一方で、デメリットもあると市では考えられている。

とはいえ、欠員が生じている職場・職種もあるとのことだったので、制度・運用と実態にズレが生じているのではないかと筆者は感じてその点を尋ねたところ、(1)事務補助員に関しては、採用したい以上の人数の応募があるため問題はとくに生じていないことが説明された。(2)また、事務補助員は職員課で一括して公募・選考を行っている。その他の職種の公募・選考は原課で実施しているという事情もあって、全体の状況を詳細には把握できていないが、欠員は特定の職種であり毎年度の事ではない一方、職種によっては、公募をしても応募がなく、長期で〔ここでは、6年を超えて、の意味〕同じ部署で働いている職員もいる、とのことだった。

なお、選考については、面接で合否を決定しているとのことであった。

 

 

6.人事評価制度

能力実証にあたっては、公募ではなく、人事評価制度を活用できないかと筆者は考えている(拙稿を参照)。そのような問題意識で会計年度任用職員に対する人事評価制度のことを尋ねた。

第一に、江別市では、正職員と同様に、年に2回(上期、下期)の評価(能力評価、業績評価)が行われている。能力評価は「倫理・知識・技術」の観点から評価が行われており、業績評価は、「担当業務」の観点から評価が行われている。

第二に、評価は、3段階で行われており、評価結果を開示する制度があるほか、評価に対する苦情相談窓口も庁内には設置されているとのことである。

なお、会計年度ごとの任用制度であることから、複数年にわたった評価で再度任用の可否を判断することなどは江別市では想定されていない。

第三に、人事評価は所属長(課長職)によって行われている。評価は、所属長の1回の評価(1次評価)のみである。

会計年度任用職員に直接関わっている(指導や情報の連絡などしている)のは、非管理職かと思ったので、所属長による評価で問題がないかを尋ねたが、課を統轄する立場にある所属長が評価を行うことでとくに問題は生じていないとのことであった。

なお、任用はあくまでも会計年度ごとであるが、毎年の人事評価による更新や、3年公募による試験を受験することも可能であるため、結果として通算の6年を働いているケースが「多いと思う」とのことであった。

もちろん、本人の意向で離職するケースが存在するほか、職員数の減員で再度任用されないケースはあり得る。

 

 

7.選考試験の内容

江別市では、採用時の試験も(再度任用時における)公募の試験も、履歴書の提出と面接のみである。

事前に提出された履歴書に基づき面接が行われる。事務補助員も専門職もそれは同じである。但し、専門職の場合には、資格の有無などが要件となっているケースもある。

公募・選考のスケジュールは、1月に公募がかけられて2月に面接試験という流れが基本である。公募はハローワークにもかけられている。

採用の時期は職員によって異なる(分散している)とはいえ、選考する側も負担ではないかという感想を筆者はもったが、市によれば、例えば、昨年度(2023年度)の実績で言えば、事務補助職員の面接試験は2日間で終えることができたとのことである。選考については、面接で合否を決定しているという。

なお、事務補助員には登録制度が設けられている。職員課で一括で公募・選考が行われ、合格した者が登録され、事務補助員の配置が予定された課に振り分けられていく。登録イコール採用を意味するものではない。

事務補助員以外の職種の公募・選考は原課にゆだねられている。もちろん、予算の範囲内で任用されるのであって、原課で採用人数を独自に決定ができるわけでは、ない。

 

 

8.新制度への移行時のこと

会計年度任用職員制度に移行後は、全員が統一的な任用条件の下で働いている(旧制度下で働いていた者が特別な条件下にあるわけではない)。

旧制度下の臨時・非常勤職員のうち2種の非常勤職員については、旧制度下の勤続年数は新制度下に継続することになった。例えば、旧制度下で1年をすでに働いていた場合には、新制度移行時に勤続2年目となり、新制度下で2年働いた後に公募を受けることになった。新制度移行時にあたっては、新規採用者と対象者の面接が行われた。結果として、公募の年次(面接が行われる年次)は分散している。

 

 

9.賃金制度

会計年度任用職員の賃金には、(江別市以外の職種経験を含め)前歴・経験加算制度がある。具体的には、同一の職種で1年度継続勤務した場合、翌年度の4月1日に4号俸上位の号俸に格付される。

基礎号俸と上限号俸は職種による。国のマニュアルのほか、旧制度における各職種の報酬額を基本に原課からの意見や近隣他市の状況などを踏まえて設定されている。

給与表は正職員と同じものが使われている。但し、正職員、すなわち、フルタイム職員の給与表なので、会計年度任用職員の週の勤務時間で再計算する必要がある。

一例を示すと、会計年度任用職員で人数が最も多い職種である事務補助員では、基礎号俸は1級1号俸であるが、前歴加算により1級13号俸(176,100円〔金額は聞き取り調査時点。以下、同様〕)で任用されるケースが多く、上限号俸は1級25号俸である。1級13号俸で任用された場合、2回の更新があれば8号俸(1級21号俸、187,300円)「昇給」する。大卒の正職員の場合には、1級25号に配置される。

会計年度任用職員にも期末・勤勉手当は支給されている。期末手当は2020年から、勤勉手当は2024年から、それぞれ支給されている。正職員との間で月数に差は設けていない。要件を満たす一部の会計年度任用職員には給与の遡及改定も行っている。国の通知にならっている。

 

 

10.職員の働き方、休暇制度

先にみたとおり、江別市では事務補助員が最も多く、その勤務パターンは週30時間に設定されている。但し、「6月未満又は19時間25分未満」など、勤務時間数の短いケースも少なくない。これらはどのような考えで設計されているのかを尋ねたところ、勤務時間は職種によって分かれており、各職場で必要となる勤務時間に応じて決められている。同じ職種であっても、複数の勤務時間数が設定されている職種も存在するのとのことであった。

休暇制度は国に依拠して設計されている。よって例えば、今般の人事院・総務省からの通知(総務省「人事院規則15-14(職員の勤務時間、休日及び休暇)の一部改正等について」2024年12月2日発出)に基づき、休暇制度の見直しを検討しているところである。現状では、病気休暇は、日数は10日間で、無給で処理されている。

 

 

11.制度の全般的な課題など

3年公募制や通算6年制を含め、会計年度任用職員制度のことで、市で何か課題になっていることはないかを尋ねた。

結論としては、(1)会計年度任用職員制度に関して、2020年度から始まった制度だが、市は、地方公務員法の適用のある一般職として任用し、労働基準法などを踏まえて休暇等を措置してきたので、期末手当の支給開始はあったが、任用制度としては大きな変更はなかった。細かな点での改善課題はこれから出てくる可能性はあるが、大きな支障などは現時点ではとくに生じていない、とのことであった。(2)3年公募制や通算6年制については、現時点では変更の予定はない。繰り返しになるが、現在働いていない住民も含めて、平等取り扱い原則、機会均等や成績主義の原則を考えるべきである、と市では判断されている。(3)また、公募に代わって人事評価制度を活用する可能性が(筆者から)照会されたが、人事評価の課題として、評価者によって統一的な評価基準の確保が難しいということがあげられる。つまり、厳しい評価を行う評価者もいれば逆に甘い評価を行う評価者もいる、とのことであった(この点は正職員への評価の場合でも同様であり、改善の余地があるように筆者には思えたが、市の回答は以上のとおりである)。

会計年度任用職員に長く働いて欲しいという要望が原課からは出されていないかを尋ねたところ、「ゼロではない」とのことであった。しかしそれにこたえることも平等取り扱いの原則に反することになるので、統一的な任用ルールで対応しているという。

もちろん、今後も国の動きは注視していく予定であるという。

期末・勤勉手当の支給月数について正職員と差をつけていたり、給与の遡及改定を行っていない自治体もある中で、江別市ではそのような対応はせずに、国からの通知を踏まえて適切な運用をしているというのが、市による自己評価である。

 

 

Ⅳ.調査・研究上の課題と、調査結果の考察

1.調査・研究上の課題

調査結果の考察に入る前に、調査・研究上の課題を整理しておく。

2024年12月に聞き取り調査を終えた後、調査結果を取りまとめ、調査でもなお分からなかったことなどを追加で尋ねたが、以下のことについては資料提供や回答が得られずに(繰り返しになるが、資料不存在の可能性を含む)、不明のままである。冒頭にも述べたとおり、本稿は、調査・研究上の課題を多く残したものである。引き続きの情報収集に努めたい[10]

 

第一に、会計年度任用職員の任用制度に関する文書(内規)について。

本稿に記載のとおり、江別市には「通算6年制」という他の自治体にはみられない制度がある。内規などに規定があるのかと思い資料照会をしたが、提供はされなかった。

なお、「江別市会計年度任用職員の給与等に関する条例」、「江別市会計年度任用職員の給与等に関する条例施行規則」、「江別市会計年度任用職員の勤務条件等に関する規則」については例規集からダウンロードした。

第二に、職種の詳細及びその人数も不明である。聞き取り当日の話では、総務省調査で「給食調理員」に分類される者のなかには「調理補助員」のほか「配膳員」が含まれていることや、「図書館職員」のなかには「司書」のほか「図書館業務補助員」も含まれていることを教わった。市が提供するサービス情報とあわせて、詳細な職種情報や人数情報の把握が必要である。

第三に、上限3年による任用を基本としている、とのことであったが、「通算」の年数が「6年」に設定された理由が分からなかった。

そもそも同一部署での勤続上限(や公募制)を導入することに筆者は疑問をもっているが、その上限年数が6年というのも短いと筆者には思われた。制度が導入された当時は人手不足感がそれほどでもなかったのかもしれないが、新制度になって現在でも「6年」で運用されていることや、そもそも「通算6年制」が維持されている理由が、筆者には十分に理解ができなかった(江別市からの回答は本文で示したとおりである)。

関連して、会計年度任用職員全体のうち、どの位の人数が、同一部署で7年目以上を継続で勤務しているのかが不明である。

すでに述べたとおり、江別市では、労働施策総合推進法第27条に基づく大量離職通知書は提出されていない。本文に記載したとおり、更新可能な場合に退職した職員は自己都合退職として取り扱い大量離職通知書には計上をしていないとのことであった。

この点については、江別市とハローワークとの間でどのようなやり取りが行われたのか詳細は定かではないが、もしも、自己都合退職の人数は大量離職通知書に計上する必要はないと説明されたのであれば、その説明は誤りであると思われる。この点、すなわち、大量離職通知書に計上すべき離職者の範囲については、江別市からの回答を受けて、筆者も、北海道労働局にあらためて確認をしたところである(2025年5月20日)。大量離職通知書の作成について是正が求められる[11]

以上の事実を踏まえた上で、第四に、まず、江別市で離職者がどの位発生しているか、を明らかにし、その上で、離職理由(離職理由ごとの離職者数)が明らかにされる必要がある。この点が今回の調査では明らかにならなかった。

第五に、選考は履歴書と面接のみとのことであったが、その詳細は不明である。

関連して、事務補助職員の場合には、選考後にまずは登録制度があるとのことであったが、登録されるだけで実際に採用されないケースはどの位発生するのかは不明である。

第六に、賃金について。人数の多い事務補助職員の「昇給」に関する情報は本文に記載したとおりであるが、その他の、主な職種における、基礎号俸と上限号俸・昇給上限については、各職種の基礎号俸及び上限号俸は「江別市会計年度任用職員の給与等に関する条例施行規則」の別表第1[12]に記載されている、とのことであった。金額の妥当性を検証したい。

第七に、人事評価制度について、どのような評価項目になっているか、その具体的な内容などは不明である。

 

2.江別市の会計年度任用職員制度について

〔略〕

 

 

 

 

[1] 「令和5〔2023〕年度会計年度任用職員制度の施行状況等に関する調査」。

[2] 2023年4月1日現在の職員数と2024年1月1日現在の住民基本台帳人口を使って人口1万人当たりの職員数を計算したところ、(1)一般行政職員に限ると42.0人(政令市を除く道内34市の平均は85.4人)、(2)普通会計職員でみると60.9人(同113.8人)である。(3)なお、総務省による類似団体別にみた職員数の比較でも、江別市のそれは平均値を下回っている。総務省「類似団体別職員数の状況」より。

[3] 2023総務省調査の集計結果は、川村雅則「(暫定版)総務省・会計年度任用職員制度等の2023調査データの集計」『NAVI』2024年1月15日配信を参照。

[4] 江別市には市立病院が設置されている。同病院は地方公営企業法が全部適用され自律的な運営がされている。

[5] 総務省「地方公務員の臨時・非常勤職員に関する実態調査」「会計年度任用職員制度の施行状況等に関する調査」。

[6] 資料提供はなかったと書いたが、理由として、資料が不存在であった可能性もある。以下の資料についても同様である。

[7] 総務省が説明しているとおり、会計年度任用職員制度では、民間でいう更新概念はない。よってここでの「更新」とは、公募によらない再度任用を意味する。また、会計年度ごとの任用が制度の基本であるから、「更新」は保障されたものでは必ずしもないことには留意が必要である。

[8] 総務省調査では、「空白期間」の設定やフルタイムよりも1日に15分だけ勤務時間が短い働かせ方の有無などが調べられている。そのなかに「応募制限の有無」というものがある。「令和3(2021)年度会計年度任用職員制度の施行状況等に関する調査の結果では、「各部門・職種において一部でも応募制限がある団体」は、一部事務組合等を除くと、わずか47団体である(逆に、ない団体は1741団体である)。但し、これらのなかには、江別市のように、1部署では応募制限があるが部署を変更すれば働き続けることが可能なケースは含まれていないと思われる。実際、江別市は総務省調査に対して、応募制限が「無し」を選択している(同一部3年ルールが存在する札幌市でも応募制限は「無し」と回答されている)。この点について、総務省調査の結果を読む際には注意が必要である。

[9] 他の自治体では、提出要件に該当するのに通知書が提出されていないケースもある。

[10] 情報公開制度を活用すべきだったのではないか、との指摘もあろうかと思う。機会をあらためたい。

[11] 大量離職通知書の取り扱いや記載内容については、この問題に取り組む労働組合や当事者団体の有志メンバーが関係省庁(厚生労働省、総務省)との間で「懇談」の場を設けて、内容の確認を行っている。安田(2023)を参照。

[12] 江別市会計年度任用職員の給与等に関する条例施行規則

 

資料

表 会計年度任用職員の再度任用における公募状況等(2023年)

部門/職種 再度任用における公募状況 同じ職種への長期間任用(10年以上同一の者が同じ職種へ任用される場合の有無)
再度任用の方法 上限回数を設けている場合、上限回数 公募を行わない場合、理由
一般行政 一般事務職員 公募 2回 ×
保育所保育士 なし ①職務遂行上の特別な事情がある
技能労務職員 なし ②職務に特殊性がある ×
放課後支援員 なし ②職務に特殊性がある
給食調理員 なし ②職務に特殊性がある
教育 教員・講師 なし ②職務に特殊性がある ×
一般事務職員 公募 2回 ×
技能労務職員 公募 2回 ×
給食調理員 なし ②職務に特殊性がある
図書館職員 なし ②職務に特殊性がある
消防 一般事務職員 公募 2回 ×
公営企業 一般事務職員 なし ②職務に特殊性がある
看護師 なし ②職務に特殊性がある

注1:「再度任用の方法」の「公募」は「公募を行わない回数等の基準を設けている」、「なし」は「毎回公募を行わず再度任用する」。
注2:「同じ職種への長期間任用」の○は「有り」、×は「無し」。
注3:本文に記載のとおり、江別市会計年度任用職員の原則的な任用ルールでは、全ての職種において、3年公募+通算6年制が採用されている。表の内容は実態と異なる点に留意されたい。
出所:2023総務省調査より作成。

 

(参考文献)

 

 

>北海道労働情報NAVI

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