北海道の大学・高専関係者有志アピールの会(HUAG)声明「日本学術会議法案の撤回を求める」

北海道の大学・高専関係者有志アピールの会(HUAG)

声明「日本学術会議法案の撤回を求める」

(2025年3月17日)

 


※ 北海道の大学・高専関係者有志アピールの会(HUAG)(正式名称「集団的自衛権の行使を容認する閣議決定に反対する――戦争をさせない、若者を再び戦場に送らないために――北海道の大学・高専関係者有志アピール運動をすすめる会」)は、声明「日本学術会議の「特殊法人」化――〈学問の自由の終わりの始まり〉――に反対し、「日本学術会議法案」の撤回を求める」を2025年3月17日(月)午後、道政記者クラブで発表しました。また当日、内閣総理大臣、内閣府特命担当大臣、衆議院・参議院両院議長、各政党本部、日本学術会議に「声明」を郵送しました。

当会Facebook
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当会の声明についての『北海道新聞』報道(2025年3月17日)
→ https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1136292/


 

 

声明「日本学術会議の「特殊法人」化――〈学問の自由の終わりの始まり〉――に反対し、「日本学術会議法案」の撤回を求める

政府は、現在の日本学術会議を廃止して、新たに特殊法人・日本学術会議を設置する「日本学術会議法案」を第217回通常国会に提出した。私たちは学問の自由と学術研究の独立を否定するこの「日本学術会議の法人」化に強く反対し、撤回を求める。
政府が提出しようとする「日本学術会議法案」は以下のような大きな問題点を持っている。

1)日本国憲法23条を逸脱し、学問の自由と人権を侵害し、ひいては、民主主義を破壊するものである。

2)日本学術会議が強く求めている5要件―①学術的に国を代表するアカデミーであること、②国家財政によって活動が支えられること、③学術会議法による公的資格をもつもの、④政府からの独立性、⑤会員選考における自主性・独立性(「日本学術会議のより良い役割発揮に向けて」、2021年4月22日)―が満たされていない。

3)政府案の日本学術会議「特殊法人」化は立法事実が不存在であり、日本学術会議を、政府のシンクタンクへと変質させる。

4)政府の法人化案にある外部者からなる「選定助言委員会」、「監事」、および「評価委員会」の導入は日本学術会議の権力的統制に繋がる。また役員、会員、職員には「職務上知ることができた秘密を漏らしてはならない」など、守秘義務が課され、公開原則に反する制度設計となっている。

5)学術会議の重要な役割であった「勧告」権を残したものの、それは実効性のないものになりかねない。

6)学術会議の財政は国からは補助金のみで、財源を自ら確保しければならず、国家的財政保証がない。

7)新法により設立される新法人は、最初の会員選考は現行方式をとらないなど、戦後の日本学術会議の理念と決別したものとなっている。

以上を問題点と考える背景を、日本学術会議の設立理念から立ち返って述べることにする。日本学術会議は、第2次世界大戦終結後、1949年に「科学が文化国家の基礎であるという確信に立って、科学者の総意の下に、わが国の平和復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命」とし、「わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的」に設立された(日本学術会議法)。この理念は、かつて戦争に向かって行った学術のあり方にたいする真摯な反省に基づいており、「日本学術会議の発足にあたって科学者としての決意表明」(1949年)、「戦争を目的とする科学の研究には絶対従わない決意の表明」(1950年)、「破壊活動防止法案の成行に重大な関心を寄せる声明」(1952年)、「軍事目的のための科学的研究を行わない声明」(1967年)等に受け継がれてきた。

日本学術会議は、時に、政府の進める政策に対して、勧告、声明、要望、報告などによって、ブレーキをかけることもあり、歴代保守政権にとって疎ましい存在だった。そこで、政府は総合科学技術会議(2001年)を改組発展させて総合科学技術・イノベーション会議(CISTI、2014年)を発足させた。さらに統合イノベーション戦略推進会議(2018年)が内閣府に設けられ、防衛大臣を含む閣僚、知財本部長・健康医療本部長・宇宙本部長・海洋本部長としての内閣総理大臣が委員となっている。CISTIは、その中で歴代政権が望むシンクタンクとして機能している。

戦後平和学術政策の転換点となったのは、2014年の第2次安倍晋三内閣による集団的自衛権の行使容認の閣議決定とその後の安保3法の可決である。これにより、軍拡予算の増大、防衛装備品(武器)の輸出が可能となり、2015年には防衛装備庁の安全保障技術研究推進制度が発足した。この推進制度の予算は、当初3億円だったのが、翌年6億円、 2017年には100億円に上がり、現在さらに引き上げられている。研究機関では、デュアルユースを理由に応募するケースが出てくる中で、日本学術会議は「軍事的安全保障研究についての声明」(2017年)を発表し、政権と日本学術会議の間の緊張が高まった。安倍内閣を引き継いだ菅義偉内閣は、かねて用意したかのように、2020年に日本学術会議会員候補6名の任命拒否を断行した。

この任命拒否は、日本学術会議会員候補6名の人権侵害であり侮辱である。だが国民の大きな抗議の声が起こるにもかかわらず、自民党PT「日本学術会議の改革に向けた提言」(2020年12月9日)は、任命拒否問題をすり替えて、日本学術会議自体の解体・変質を目ざすものであった。岸田文雄内閣の下、内閣府は、同提言を下敷きに「日本学術会議の在り方についての方針」(2022年12月6日)を示し、「改革」を迫る圧力を強めた。2023年6月16日には、閣議決定「経済財政運営と改革の基本方針2023」で「国から独立した法人とする案を俎上に載せて議論し早期に結論を得る」とした。そこで内閣府は「日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会」(2023年8月29日、以下「有識者懇」)を開催し、「中間報告」(同年12月21日)をまとめ、それを受けて内閣府特命担当大臣決定「日本学術会議の法人化に向けて」(同年12月22日)が出された。

それに対して、「日本学術会議のより良い役割発揮に向けて」(2021年4月22日)で前述の5要件を既に示していた日本学術会議は、第191回総会で声明「政府決定『日本学術会議の法人化に向けて』に対する懸念について」(2024年4月23日)を発表し、日本学術会議幹事会は「より良い役割発揮のための制度的条件」(同年6月7日)も示した。さらに元会長6名による「再び、岸田文雄首相に対して日本学術会議の独立性および自主性の尊重と擁護を求める声明」(同年6月10日)も出され、「有識者懇」第12回会議で光石衛日本学術会議会長は「法人化をめぐる議論に対する日本学術会議の懸念」(同年7月29日)を表明した。

しかし、政府は聞く耳を持たないかのように、「有識者懇」の最終答申「世界最高のナショナルアカデミーを目指して」を受けて、坂井学内閣府特命担当大臣(国家公安委員長)が、記者会見で「速やかに法制化の作業を進めたい」と表明した(同年12月20日)。そこで光石会長は、談話「有識者懇談会最終報告及び日本学術会議第193回総会を受けて」(同年12月22日)を公開した。だが、石破茂内閣は、それら一切を無視し、日本学術会議を「特殊法人」化する「日本学術会議法案」を「閣議決定」した(2025年3月7日)。同日、光石会長は談話「日本学術会議法案について」で、「自主性・独立性の観点から指摘してきた懸念が払拭されていない中で法案の閣議決定が行われたことについては遺憾」とし、今後、法案について日本学術会議も「検証」を行なうとともに、「法案に関する日本学術会議の懸念」にたいする内閣府の見解を明らかにすることを求めている。

このような経過の中で現在出されている「日本学術会議法案」は、これまでのあり方での日本学術会議を解体し、多くの問題を含む特殊法人「日本学術会議」を新たに創ろうとしている。私たちは、「日本学術会議法案」に強く反対し、その撤回を求める。

 

2025年3月17日

北海道の大学・高専関係者有志アピールの会(HUAG)運営会議

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