川村雅則「2025年度 大学生のアルバイトとワークルールの認知に関する調査(暫定版)」

 

川村雅則「2025年度 大学生のアルバイトとワークルールの認知に関する調査(暫定版)」『NAVI』2025年4月15日配信

 

本稿は、筆者の授業の教材です。

「暫定版」としているのは、まだ取りまとめ中であることによります。

調査結果をこれから追加をしていくほか、ミスなどが見つかりましたら修正をします。

調査結果の残り(未公開部分)を追加・公開しました(2025年4月19日)。

 

    

 

目次

調査の概要

2025年度の筆者の授業「労働経済論」の仮登録者(履修確定前の者)を対象にして、大学生のアルバイトの現状とワークルールの認知・理解状況などの概略を把握するためのウェブアンケート調査を行った。

本調査の結果は、授業の教材として使う[1]ほか、今後、学生たち自身が、より掘り下げたアルバイト調査を行う上での基礎データとして使うことを想定している。また、上記のとおり、まずは概略の把握を行うことを目的としている。それゆえ、設問の数はそう多くなく、なおかつ、掘り下げて調べはしていない(学生たちが調べる余地を残しておいた)。

調査は、Googleフォームを使って行った。

2025年4月9日(水)にLMSを通じて仮登録者に対して調査票を配信し、15日(火)8時を回答の締め切りとした。

得られた回答は111人である。いずれも有効回答として扱った。なお、仮登録者の人数は15日(火)8時時点で、1部(昼間部)で308人、2部(夜間部)で48人であるから、回答率は約3割にとどまる[2]

調査の内容は、(1)属性(所属、学年、性別)と(2)アルバイトに関する基本的な労働条件のほかは、(3)ワークルールに関する設問をまじえながら、個々の労働条件やアルバイト先での経験などを尋ねた。2023年度の調査内容をベースに作成している[3]

なお、概略の把握という本調査の性格上、一つの質問で二つのことを尋ねたり、言葉の定義をせずに尋ねたりしていることなどは、ご容赦いただきたい。

授業に間に合わせる都合上、まずは、ワークルールの認知状況やトラブル経験などに関する調査結果を報告する。基本的な労働条件などは後日に報告する。

 

 

[1] 授業では、この調査結果と、故・道幸哲也氏(北海道大学名誉教授)や本学法学部教授の淺野高宏氏らが編著の『ワークルール入門』旬報社を使って、ワークルールを学んでいる。

[2] 仮登録の期間中なので授業に参加していない学生もいること、回答は授業中にしてもらわないと回答率が低くなることを考慮する必要がある。

[3] 2023年度調査の概略は、川村雅則ゼミナール「学生アルバイトとワークルール(地域研修報告書2023)」を参照されたい。

川村雅則ゼミナール「学生アルバイトとワークルール(地域研修報告書2023)」

 

 

 

調査の結果

■回答者の属性

111人の回答者のうち、第一に、所属は、「1部」所属が93人(83.8%)、「2部」所属が18人(16.2%)である。

第二に学年は、「2年生」が63人(56.8%)、「3年生」が36人(32.4%)、「4年生」が11人(10.0%)、無回答が1人である。

性別は、「男性」が70人(63.1%)、「女性」が40人(36.0%)、「その他」が1人(0.9%)である。

 

■現在のアルバイト実施状況

 

表 現在のアルバイト実施状況

単位:人、%

全体 1部 2部
111 100.0 93 100.0 18 100.0
現在アルバイトをしている 101 91.0 88 94.6 13 72.2
現在アルバイトをしていないが、過去にしていた 6 5.4 2 2.2 4 22.2
現在アルバイトをしておらず、過去にも全くしたことがない 4 3.6 3 3.2 1 5.6

 

現在アルバイトをしているか尋ねたところ、「現在アルバイトをしている」が101人、「現在アルバイトをしていないが、過去に(大学入学以降)経験がある」が6人、「現在アルバイトをしておらず、過去にも(大学入学以降)全く経験がない」が4人である。以下、「現在就労」群、「過去就労」群、「経験無し」群と呼ぶ。

「現在就労」群には現在従事しているアルバイトのことを、「過去就労」群には過去に最も長く経験したアルバイトのことを、それぞれ回答してもらった[4]。「経験無し」群には、ワークルールに関する設問だけ回答してもらった。「現在就労」群と「過去就労」群のうち、かけもちでアルバイトをしている者には、メインのアルバイトについて回答してもらった。

なお、「過去就労」群と「経験無し」群は回答が非常に少ない上に、設問によっては無回答もみられることから(回答がしづらかったものと思われる)、本稿では、「現在就労」群を中心にみていくこととする。

 

 

[4] 「過去就労」群には、設問で「現在(のアルバイト)」と書かれた箇所は「過去(のアルバイト)」と読み替えてもらった(Googleフォーム上で指示を出した)のだが、回答しづらかったと思われる

 

■アルバイトを最初に始めた時期とワークルールの認知状況など

 

表 アルバイトを最初に始めた時期

単位:人、%

全体 現在就労群 過去就労群
107 100.0 101 100.0 6 100.0
高校生 38 35.5 36 35.6 2 33.3
大学1年生 64 59.8 60 59.4 4 66.7
大学2年生 4 3.7 4 4.0 0 0.0
大学3年生 1 0.9 1 1.0 0 0.0
大学4年生 0 0.0 0 0.0 0 0.0

 

アルバイトを最初に始めた時期を尋ねた。

回答者全体でみると、「高校生」が3分の1強(35.5%)を占めている。最多は「大学1年生」(59.8%)である。

高校段階からのワークルール教育の必要性を提起したい[5]

 

表 アルバイトを最初に始めた際のワークルールの認知状況

単位:人、%

全体 現在就労群 過去就労群
107 100.0 101 100.0 6 100.0
よく知っていた 3 2.8 3 3.0 0 0.0
まあ知っていた 18 16.8 18 17.8 0 0.0
あまり知らなかった 60 56.1 58 57.4 2 33.3
全く知らなかった 26 24.3 22 21.8 4 66.7

 

次に、最初のアルバイトを始めた際のワークルール認知状況について尋ねると、「よく知っていた」はわずか2.8%で、「まあ知っていた」の16.8%を足し合わせても19.6%にとどまる。最多は、「あまり知らなかった」(56.1%)で、「全く知らなかった」も24.3%とおよそ4分の1を占める。

 

表 ワークルールの現在の認知状況

単位:人、%

全体 現在就労群 過去就労群
111 100.0 101 100.0 6 100.0
よく知っている 7 6.3 6 5.9 1 16.7
まあ知っている 49 44.1 47 46.5 1 16.7
あまり知らない 47 42.3 42 41.6 4 66.7
全く知らない 6 5.4 6 5.9 0 0.0
無回答 2 1.8 0 0.0 0 0.0

 

ワークルールの現在の認知状況を尋ねた。

回答者全体でみると、「よく知っている」が6.3%、「まあ知っている」が44.1%で半数に達しており、アルバイトを始めた当初に比べれば、認知状況は改善されている(但し、個別のワークルールの具体的な認知・理解状況は後でみるとおりである)。

 

[5] 高校ではアルバイトは許可制であったために隠れて行っていた(届け出ても認められないとわかっているから)という話を、2025年度の新入生たちとの雑談のなかで、偶然、複数の学生から聞いた。高校側の「親心」なのだろうけれども、学生(生徒)が隠れてアルバイトを行うことになればワークルールを学ぶ機会も逸してしまう悩ましい問題だと思った。

 

■雇用契約時における労働条件の明示の状況やトラブル経験など

 

表 現在のアルバイト先で働き始める際に労働条件通知書や雇用契約書などの書面を受け取ったか

単位:人、%

全体 現在就労群 過去就労群
107 100.0 101 100.0 6 100.0
受け取った 86 80.4 82 81.2 4 66.7
受け取っていない 9 8.4 8 7.9 1 16.7
わからない、覚えていない 11 10.3 10 9.9 1 16.7
無回答 1 0.9 1 1.0 0 0.0

 

現在のアルバイト先で働き始める際に労働条件通知書や雇用契約書などの書面を受け取ったかを尋ねた。

「書面を受け取った」には、インターネット上で確認できる場合も含む、と設問では書いた。

「現在就労」群では「受け取った」が81.2%で、合計で2割弱が「受け取っていない」か「わからない、覚えていない」である。

 

表 労働条件の明示に関するワークルールの認知状況

単位:人、%

全体 現在就労群 過去就労群 経験無し群
111 100.0 101 100.0 6 100.0 4 100.0
よく知っている 7 6.3 6 5.9 1 16.7 0 0.0
まあ知っている 49 44.1 47 46.5 1 16.7 1 25.0
あまり知らない 47 42.3 42 41.6 4 66.7 1 25.0
全く知らない 6 5.4 6 5.9 0 0.0 0 0.0
無回答 2 1.8 0 0.0 0 0.0 2 50.0

 

雇用契約を結ぶ際に、賃金などの重要な労働条件は書面で明示されなければならないことを知っているか尋ねた。

「現在就労」群では、「知っている」が73.3%で、「知らない」が25.7%である。

 

表 求人情報の掲載内容や面接で聞いた内容と、実際の仕事内容・労働条件とが異なっていた経験の有無

単位:人、%

全体 現在就労群 過去就労群
107 100.0 101 100.0 6 100.0
ある 31 29.0 29 28.7 2 33.3
ない 76 71.0 72 71.3 4 66.7

 

過去のアルバイト経験を含め、これまでに、求人情報に書かれていたり面接で聞いたりしていたのと、実際の仕事内容や労働条件とが異なっていたことがあるかを尋ねた。

回答者全体では、「ある」が29.0%であった。

 

表 (求人情報に書かれていたり面接で聞いたりしていたのと)異なっていた内容・条件【複数回答可】

単位:人、%

全体 現在就労群 過去就労群
31 100.0 29 100.0 2 100.0
雇用期間 1 3.2 1 3.4 0 0.0
勤務場所 2 6.5 2 6.9 0 0.0
勤務内容・仕事内容 16 51.6 16 55.2 0 0.0
賃金関連のこと(金額・昇給・賞与・手当等) 8 25.8 7 24.1 1 50.0
働き方関連のこと(シフト回数・勤務時間・休憩・休日・所定外労働) 12 38.7 11 37.9 1 50.0
その他 2 6.5 2 6.9 0 0.0

注:対象は、異なっていたことが「ある」と回答した者。

 

前の設問で「ある」と回答した者31人に対してどの内容・条件が異なっていたかを尋ねたところ、多いのは、「勤務内容・仕事内容」51.6%であった。

その他には、「働き方のこと(シフト回数・勤務時間・休憩・休日・所定外労働)」が38.7%、「賃金のこと(金額・昇給・賞与・手当等)」が25.8%であった。

なお、「その他」の2人は、いずれも「髪の色」のことであった。

 

■有給休暇制度や休憩時間に関するワークルールの認知状況など

 

表 有給休暇制度について知っているか

単位:人、%

全体 現在就労群 過去就労群 経験無し群
111 100.0 101 100.0 6 100.0 4 100.0
よく知っている 29 26.1 26 25.7 2 33.3 1 25.0
まあ知っている 52 46.8 50 49.5 1 16.7 1 25.0
あまり知らない 26 23.4 23 22.8 3 50.0 0 0.0
全く知らない 2 1.8 2 2.0 0 0.0 0 0.0
無回答 2 1.8 0 0.0 0 0.0 2 50.0

 

有給休暇制度について知っているかを尋ねた。

回答者全体では、「よく知っている」が26.1%、「まあ知っている」が46.8%で、程度はともかくとして、全体の半数以上が「知っている」と回答していた。

残りは「あまり知らない」が23.4%、「全く知らない」が1.8%である。

 

表 現在のアルバイト先で学生アルバイトは有給休暇を使用できるか

単位:人、%

全体 現在就労群 過去就労群
107 100.0 101 100.0 6 100.0
使用できる 52 48.6 48 47.5 4 66.7
使用できない 13 12.1 13 12.9 0 0.0
わからない 42 39.3 40 39.6 2 33.3

 

一方で、現在のアルバイト先で学生アルバイトは有給休暇を使用できるかを尋ねたところ、「現在就労」群では、「使用できる」は47.5%にまで減少し、「わからない」が39.6%、さらには、「使用できない」という回答も12.9%を占めた。

 

表 休憩時間のワークルールに関する認知状況

単位:人、%

全体 現在就労群 過去就労群
111 100.0 101 100.0 6 100.0
知っている 103 92.8 95 94.1 6 100.0
知らない 6 5.4 6 5.9 0 0.0
無回答 2 1.8 0 0.0 0 0.0

 

1日の労働時間が6時間を超えた場合、少なくとも45分の休憩時間が、同じく8時間を超える場合には少なくとも1時間の休憩時間が、必要であることを知っているか尋ねた。

回答者全体では、92.8%が「知っている」と回答していた。

 

■給料に関するワークルールの認知状況

給料[6]に関する現状やワークルールの認知状況などを尋ねた。

まず、アルバイト先での給料の支払い単位時間は何分かを尋ねた。このことは、残業時に問題になることを想定し、丸括弧で「残業時の」と付けた。

 

表 アルバイト先での(残業時の)給料の支払い単位時間

単位:人、%

全体 現在就労群 過去就労群
107 100.0 101 100.0 6 100.0
1分単位 54 50.5 51 50.5 3 50.0
5分単位 5 4.7 5 5.0 0 0.0
10分単位 1 0.9 1 1.0 0 0.0
15分単位 15 14.0 14 13.9 1 16.7
わからない 29 27.1 28 27.7 1 16.7
その他 2 1.9 1 1.0 1 16.7
無回答 1 0.9 1 1.0 0 0.0

 

「現在就労」群では、「1分単位」は50.5%にとどまった。「わからない」が27.7%と多いほか、「15分単位」も13.9%である。「その他」のうち1人は30分単位と書いていた[7]

 

表 給料の支払い単位時間に関するワークルール(給料の支払い単位時間が1分単位でなければならないこと)の認知状況

単位:人、%

全体 現在就労群 過去就労群 経験無し群
111 100.0 101 100.0 6 100.0 4 100.0
知っている 70 63.1 67 66.3 3 50.0 0 0.0
知らない 37 33.3 33 32.7 3 50.0 1 25.0
無回答 4 3.6 1 1.0 0 0.0 3 75.0

 

 

もっとも学生たちの間では、給料の支払い単位時間が1分単位でなければならないことはそれなりには知られている。

このことを尋ねたところ、「現在就労」群では、およそ3分の2(66.3%)が「知っている」と回答している。

ただ、言い換えれば、およそ3分の1は「知らない」というのが現状である。

 

表 制服の着替え時間に関するワークルール(制服の着替え時間にも賃金が支払われなければならないこと)の認知状況

単位:人、%

全体 現在就労群 過去就労群 経験無し群
111 100.0 101 100.0 6 100.0 4 100.0
知っている 69 62.2 66 65.3 3 50.0 0 0.0
知らない 39 35.1 35 34.7 3 50.0 1 25.0
無回答 3 2.7 0 0.0 0 0.0 3 75.0

 

制服への着替えの時間にも「賃金」[8]が支払われる必要があることを知っているかを尋ねた。

回答者全体でみると、「知っている」が62.2%で、「知らない」が35.1%である。

 

表 時間外・深夜割増手当のワークルールに関する認知状況

単位:人、%

全体 現在就労群 過去就労群 経験無し群
111 100.0 101 100.0 6 100.0 4 100.0
知っている 87 78.4 85 84.2 2 33.3 0 0.0
知らない 21 18.9 16 15.8 4 66.7 1 25.0
無回答 3 2.7 0 0.0 0 0.0 3 75.0

 

法定労働時間である8時間を超えて働く場合には、あるいは、深夜時間帯である22時以降に働く場合には、通常の賃金の1.25倍の割増手当が支給されることを知っているかを尋ねた。

回答者全体でみると、「知っている」が78.4%で、「知らない」が18.9%である(「現在就労」群に限定すると「知っている」は84.2%にまで増加する)。

 

 

[6] 「賃金」でなく「給料」という一般的な言い回しを使った。

[7] 30分単位はずいぶんと長いように思われるかもしれないが、過去の筆者のゼミでもそういう学生がいた。

[8] 語句の不統一で質問で「賃金」と書いてしまった。

 

 

■アルバイトでのトラブル経験や困った経験

これまでのアルバイト経験のなかでのトラブル経験や困った経験などを尋ねた。「その他」を含めて11の選択肢を準備して該当するものに回答をしてもらった(複数回答可)。なお、経験が「とくになし」という選択肢を設けるのを忘れていた。何も回答していない者は、経験が「とくになし」とみなして整理した。

 

表 これまでのアルバイト経験でのトラブル経験や困った経験の有無(現在就労群、過去就労群)【複数回答可】

単位:人、%

全体 現在就労群 過去就労群
107 100.0 101 100.0 6 100.0
解雇や雇い止めを経験したことがある 1 0.9 1 1.0 0 0.0
人手不足のため、自分が希望する以上にシフトに入らなければならない 34 31.8 32 31.7 2 33.3
休憩が取れないほど忙しいことが多い 21 19.6 21 20.8 0 0.0
アルバイトが忙しくて体調を崩したり学業に支障が出ていることを感じたりすることがある 12 11.2 11 10.9 1 16.7
給与の未払いを経験したことがある(ex.全額、残業代、残業・深夜割増し分など) 7 6.5 7 6.9 0 0.0
交通費が支給される契約・約束だったのに支払われなかったことがある 2 1.9 2 2.0 0 0.0
仕事上のミスをして弁償をさせられたことがある 1 0.9 1 1.0 0 0.0
売れ残った商品等やノルマの未達成分を自腹で購入させられたことがある 0 0.0 0 0.0 0 0.0
店長や従業員・アルバイトスタッフ等からパワハラやセクハラ受けたことがある 8 7.5 8 7.9 0 0.0
客・利用者から、カスハラ(理不尽なクレームや言動)やセクハラを受けたことがある 28 26.2 27 26.7 1 16.7
その他 0 0.0 0 0.0 0 0.0

注:回答がない者は「とくになし」とみなした。

 

回答者全体でみると、「人手不足のため、自分が経験する以上にシフトに入らなければならない」が31.8%で経験されていたほか、「客・利用者から、カスハラ(理不尽なクレームや言動)やセクハラを受けたことがある」が26.2%、「休憩が取れないほど忙しいことが多い」が19.6%で相対的に多かった。

教員としては、「アルバイトが忙しくて体調を崩したり学業に支障が出ていることを感じたりすることがある」11.2%も気になる。

ところで、以上の調査結果は、アルバイトの業種別に分析する必要がある。

本調査では、現在のアルバイトの業種・業態を複数回答可で尋ねている(本稿では示していない)。このうち、「現在就労」群で「飲食店」だけに回答をした者と、同じく「現在就労」群で「小売店」だけに回答をした者のそれぞれを抽出してまとめたのが次の表である。

 

表 これまでのアルバイト経験でのトラブル経験や困った経験の有無(現在就労群のうち「飲食店」及び「小売店」で働いている者)【複数回答可】

単位:人、%

現在就労群(飲食店) 現在就労群(小売店)
42 100.0 27 100.0
解雇や雇い止めを経験したことがある 0 0.0 1 3.7
人手不足のため、自分が希望する以上にシフトに入らなければならない 15 35.7 7 25.9
休憩が取れないほど忙しいことが多い 10 23.8 4 14.8
アルバイトが忙しくて体調を崩したり学業に支障が出ていることを感じたりすることがある 4 9.5 3 11.1
給与の未払いを経験したことがある(ex.全額、残業代、残業・深夜割増し分など) 1 2.4 2 7.4
交通費が支給される契約・約束だったのに支払われなかったことがある 0 0.0 0 0.0
仕事上のミスをして弁償をさせられたことがある 0 0.0 1 3.7
売れ残った商品等やノルマの未達成分を自腹で購入させられたことがある 0.0 0.0
店長や従業員・アルバイトスタッフ等からパワハラやセクハラ受けたことがある 3 7.1 2 7.4
客・利用者から、カスハラ(理不尽なクレームや言動)やセクハラを受けたことがある 7 16.7 12 44.4
その他 0 0.0 0 0.0

 

注:対象は、「現在就労」群のうち、業種・業態を尋ねた設問で、「飲食店」のみに回答した者あるいは「小売店」のみに回答した者。

 

顕著なのは、「現在就労群(小売店)」で「客・利用者から、カスハラ(理不尽なクレームや言動)やセクハラを受けたことがある」の割合が44.4%に及ぶことである。

もう一方の「現在就労群(飲食店)」では、「人手不足のため、自分が経験する以上にシフトに入らなければならない」と「休憩が取れないほど忙しいことが多い」が「現在就労」群全体でみたときよりも3,4ポイント多くなっている。

 

(続く)

残りの調査結果の追加公開(2025年4月19日)

順序が逆になったが、彼ら学生たちのアルバイト経験や基本的な労働条件について、ここでは紹介する。

すでに記載のとおり、(1)現在働いている「現在就労」群の回答を中心にみていく。(2)「過去就労」群には、過去に最も長く経験したアルバイトのことを回答してもらっている(が、回答はしづらかったと思われる)。

■スキマバイトの経験など

いわゆるスキマバイト(スポットワーク)[1]について今年の授業では扱おうと思っている。そこで、スキマバイトの経験を本調査では最初に尋ねた。

表 スキマバイト経験の有無とトラブル経験の有無

全体 現在就労群 過去就労群
107 100.0 101 100.0 6 100.0
スキマバイト経験の有無 全く使ったことはない 83 77.6 78 77.2 5 83.3
何度か使ったことがある 19 17.8 18 17.8 1 16.7
たまに使っている 5 4.7 5 5.0 0 0.0
よく使っている 0 0.0 0 0.0 0 0.0
24 100.0 23 100.0 1 100.0
スキマバイトでのトラブル経験の有無 ある 3 12.5 3 13.0 0 0.0
ない 21 87.5 20 87.0 1 100.0

 

まず、これまでにスキマバイトで働いた経験があるかを尋ねたところ、回答者全体では、「全く使ったことはない」が77.6%と多数であった。ほかは、「何度か使ったことがある」が17.8%、「たまに使っている」が4.7%で、「よく使っている」は0%であった。利用者・利用頻度は、予想より少なかった。

次に、スキマバイトを経験したことがある24人に尋ねた、スキマバイトでのトラブルの経験の有無をみると、「ある」が3人、「ない」が21人であった。

可能な範囲で回答してもらったその内容は、「応募条件とは異なる業務を途中から行なった」、「最低賃金に満たない給与しかもらわなかった」である。

さて、アルバイト全般の話に移る。

 

[1] (1)『労働法律旬報』第2068号(2024年11月25日号)で特集が組まれており、収録論文は必見 (2)労働組合の全国組織である「連合が」調査を行っている。連合「スポットワークに関する調査2025」2025年1月23日発表

■現在のアルバイト実施状況、業種・業態、勤続期間

表 現在のアルバイト実施状況(固定/単発、1つ/かけもち)【複数回答可】

全体 現在就労群 過去就労群
107 100.0 101 100.0 6 100.0
固定のアルバイト1つのみをしている 79 73.8 74 73.3 5 83.3
固定のアルバイトをかけもちでしている 21 19.6 21 20.8 0 0.0
単発のアルバイトのみをしている 0 0.0 0 0.0 0 0.0
固定のアルバイトと単発のアルバイトをかけもちでしている 9 8.4 9 8.9 0 0.0
無回答 1 0.9 0 0.0 1 16.7

 

固定のアルバイトか単発のアルバイトか、アルバイト1つのみかかけもちかを組み合わせて、現在のアルバイト実施状況を尋ねた。

「現在就労」群では、「固定のアルバイト1つのみをしている」が全体のおよそ4分の3(73.3%)を占めて多数であったが、「固定アルバイトをかけもちでしている」も20.8%に及ぶ。

表 現在のアルバイトの業種・業態【複数回答可】

全体 現在就労群 過去就労群
107 100.0 101 100.0 6 100.0
飲食店 52 48.6 51 50.5 1 16.7
小売店 37 34.6 36 35.6 1 16.7
接客・サービス 8 7.5 8 7.9 0 0.0
教育・保育関連 8 7.5 7 6.9 1 16.7
倉庫・物流・ドライバー 1 0.9 1 1.0 0 0.0
オフィスワーク 6 5.6 6 5.9 0 0.0
肉体労働 4 3.7 4 4.0 0 0.0
アミューズメント・レジャー・イベント・レンタル 8 7.5 8 7.9 0 0.0
その他 2 1.9 0 0.0 2 33.3
無回答 1 0.9 0 0.0 1 16.7

現在のアルバイトの業種・業態を尋ねた(複数回答可)。調査票では、それぞれの例を次のように示している。

 

飲食店(居酒屋、バー、ファストフード、ファミレス、専門料理店、食堂、ビアガーデン、カフェ・喫茶店など)

小売店(コンビニ、スーパー、百貨店、専門店、衣服小売、ドラッグストアなど)

接客・サービス(ガソリンスタンド、ホテル、受付、冠婚葬祭関連、旅行・トラベルなど)

教育・保育関連(塾講師、家庭教師、保育など)

倉庫・物流・ドライバー(配送・配達、仕分け、宅配、ウーバーイーツなどオンラインの注文・配達の仕事など)

オフィスワーク(コールセンター、テレアポ、事務職など)

肉体労働(引っ越し、警備・交通誘導、製造ライン、イベント設営、自動車整備、その他肉体労働)

アミューズメント・レジャー・イベント・レンタル

その他

 

結果は、「飲食店」と「小売店」に回答が集中している。「現在就労」群でみると、前者が50.5%、後者が35.6%である。

 

表 現在のアルバイトの勤続期間

全体 現在就労群 過去就労群
107 100.0 101 100.0 6 100.0
働き始めたばかり 9 8.4 9 8.9 0 0.0
1、2か月 10 9.3 9 8.9 1 16.7
3か月~6か月 7 6.5 6 5.9 1 16.7
6か月~1年未満 26 24.3 24 23.8 2 33.3
1年~2年未満 30 28.0 30 29.7 0 0.0
2年~3年未満 18 16.8 17 16.8 1 16.7
3年以上 6 5.6 6 5.9 0 0.0
無回答 1 0.9 0 0.0 1 16.7

 

現在のアルバイトの勤続期間は、「現在就労」群でみると、「1年~2年未満」が最も多く29.7%で、次に「6か月~1年未満」が23.9%である。1年以上働いている者を合計すると半数を超える(52.5%)。

 

■現在のアルバイトの働き方と賃金

表 現在のアルバイトはシフト制か

全体 現在就労群 過去就労群
107 100.0 101 100.0 6 100.0
シフト制(自由シフト制、固定シフト制) 98 91.6 93 92.1 5 83.3
完全な固定勤務制 5 4.7 5 5.0 0 0.0
登録型派遣 3 2.8 3 3.0 0 0.0
無回答 1 0.9 0 0.0 1 16.7

シフト制で働いている者は、「現在就労」群では9割を超える(92.1%)。

 

表 1週間の平均的な勤務時間数

全体 現在就労群 過去就労群
107 100.0 101 100.0 6 100.0
10時間未満 13 12.1 12 11.9 1 16.7
10~15時間未満 25 23.4 25 24.8 0 0.0
15~20時間未満 37 34.6 36 35.6 1 16.7
20~25時間未満 17 15.9 16 15.8 1 16.7
25~30時間未満 8 7.5 6 5.9 2 33.3
30時間以上 6 5.6 6 5.9 0 0.0
無回答 1 0.9 0 0.0 1 16.7

 

1週間の平均的な勤務時間数を尋ねた。かけもちで働いている場合には合計をしてもらった。

「現在就労」群で結果をみると、「15~20時間未満」が全体の3分の1強(35.6%)を占める。次は「10~15時間未満」で24.8%である。20時間以上が27.7%を占める。

なお、この20時間以上就労者の割合は、昼に働き夜に学ぶ「2部」回答者で高い。同就労者の割合は、「1部」(88人)では23.9%であるのに対して、「2部」(13人)では53.8%である。

 

表 現在のアルバイトの時給

全体 現在就労群 過去就労群
107 100.0 101 100.0 6 100.0
1010円未満 0 0.0 0 0.0 0 0.0
1010円 19 17.8 17 16.8 2 33.3
1011円~1050円 20 18.7 20 19.8 0 0.0
1051円~1099円 19 17.8 19 18.8 0 0.0
1100円~1199円 26 24.3 26 25.7 0 0.0
1200円~1299円 16 15.0 16 15.8 0 0.0
1300円以上 4 3.7 3 3.0 1 16.7
無回答 3 2.8 0 0.0 3 50.0

 

現在の時給を尋ねた。時間帯や曜日によって異なるなど複数ある場合には、もっともよくあるパターンで回答してもらった。

「現在就労」群の結果をみると、北海道の最低賃金である「1010円」は16.8%であった。最低賃金を超える1000円台、つまり、「1011円~1050円」と「1051円~1099円」を足し合わせた値は38.6%で、「1100円~1199円」が25.7%であった。

 

表 1か月の平均的なアルバイト収入

全体 現在就労群 過去就労群
107 100.0 101 100.0 6 100.0
2万円未満 1 0.9 0 0.0 1 16.7
2万円~4万円未満 7 6.5 7 6.9 0 0.0
4万円~6万円未満 27 25.2 27 26.7 0 0.0
6万円~8万円未満 32 29.9 31 30.7 1 16.7
8万円~10万円未満 31 29.0 28 27.7 3 50.0
10万円~12万円未満 8 7.5 8 7.9 0 0.0
12万円~14万円未満 0 0.0 0 0.0 0 0.0
14万円以上 0 0.0 0 0.0 0 0.0
無回答 1 0.9 0 0.0 1 16.7

 

1か月のアルバイト収入を2万円刻みで尋ねた(交通費は除く)。かけもちの場合には合計してもらった。

「現在就労」群の結果は、「4万円~6万円」が30.7%と最も多く、その両端、すなわち、「2万円~4万円未満」と「6万円~8万円未満」がそれぞれ26.7%、27.7%となっており、この範囲に回答が集中している。

 

■アルバイト先の労働条件等を改善したいと思ったことの有無とそのときの行動

さて、アルバイトでのトラブル経験や困った経験などはすでにみたとおりだが、調査票では、その設問の次に、これまでのアルバイト経験のなかで、アルバイト先の労働条件や労働環境を改善したいと思ったことの有無を尋ねてみた。

 

表 これまでのアルバイト経験のなかで、アルバイト先の労働条件や労働環境を改善したいと思ったことの有無

全体 現在就労群 過去就労群
107 100.0 101 100.0 6 100.0
ある 49 45.8 45 44.6 4 66.7
とくにない 58 54.2 56 55.4 2 33.3

 

回答者全体で結果をみると、「ある」が45.8%であった。では、そのときにどうしたかを複数回答可で尋ねた。

 

表 そのときにどうしたか【複数回答可】

全体 現在就労群 過去就労群
49 100.0 45 100.0 4 100.0
店長や従業員など上司に相談した 12 24.5 12 26.7 0 0.0
アルバイト同士で相談をした 17 34.7 17 37.8 0 0.0
本社などにトラブル改善を訴えた 0 0.0 0 0.0 0 0.0
友人や知人に相談した 8 16.3 8 17.8 0 0.0
大学・大学の先生や親に相談した 4 8.2 4 8.9 0 0.0
労働局や労働基準監督署に相談した 2 4.1 2 4.4 0 0.0
アルバイトを辞めた 14 28.6 12 26.7 2 50.0
とくになにもしなかった 16 32.7 14 31.1 2 50.0

注:「とくになにもしなかった」に回答しながら他の項目を選択している者が2名いたが、そのまま取り扱う。

 

結果は、回答者全体でみると、「アルバイト同士で相談をした」が34.7%で最も多く、それについで、「とくになにもしなかった」が32.7%である(表の注に記載のとおり、「とくになにもしなかった」に回答しながら他の項目を選択している者2名を含む)。

ほかには、「アルバイトを辞めた」28.6%、「店長や従業員など上司に相談した」が24.5%で続いている。

どんなことを改善したいと思ったのか、また、そのときの行動で状況はどうなったのかなど詳細に把握したいところである。

 

■現在のアルバイト先の労働条件等の総合的な満足度

表 現在のアルバイト先の労働条件や労働環境の総合的な満足度

全体 現在就労群 過去就労群
107 100.0 101 100.0 6 100.0
とても満足している 21 19.6 19 18.8 2 33.3
まあ満足している 71 66.4 69 68.3 2 33.3
あまり満足していない 14 13.1 13 12.9 1 16.7
全く満足していない 0 0.0 0 0.0 0 0.0
無回答 1 0.9 0 0.0 1 16.7

さて、最後に、現在のアルバイト先の労働条件や労働環境の総合的な満足度を尋ねた。

「現在就労」群では、「まあ満足している」が68.3%で最多で、次に「とても満足している」が18.8%、「あまり満足していない」が12.9%で、「全く満足していない」はゼロであった。

 

 

 

 

(関連資料)

学生アルバイトの現状やワークルール教育に関する筆者の調査・研究及び教育実践

厚生労働省「これってあり?~まんが知って役立つ労働法Q&A~」

 

 

>北海道労働情報NAVI

北海道労働情報NAVI

労働情報発信・交流を進めるプラットフォームづくりを始めました。

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