小松康則「参加したくなる! 元気の出る楽しい労働組合活動を進めよう(第3回)「聞いてるだけで疲れる」「発言できる雰囲気じゃない」会議から「参加したくなる」「話したくなる」会議へ」『学習の友』第849号(2024年5月号)pp.70-73

 

 

 

プロローグ

労働組合活動にとって最も大きな力となるのは「現場の声」です。その声を引き出して共有し、思いと行動を結びつけていくための場が「会議」です。

しかし、「会議に人が集まらない」「みんな意見を言わない」「報告が長くて疲れる」などの声もよく聞かれます。どうすれば主体的に参加でき、たくさんの意見が出る会議ができるでしょうか。

かつての私はみんなを鼓舞しなければと、いつもたくさんの資料を準備し、時間をかけて力いっぱい報告していました。「報告を聞いてるだけで疲れる」と言われたり、「この会議はとても発言できる雰囲気じゃない」と言われたこともあります。どうすれば、みんなが主体的に参加し、自由に意見を出し合ったり、思いを共有できるのかということが大きな悩みでした。(詳しくは連載1回目(2月号)をご参照ください)

コミュニティ・オーガナイジングの学びをいかして、少しずつ「会議改革」を始めた結果、今では参加者も増え、「楽しくてあっという間だった」「自由に意見が言える」「落ち込んでたけど元気になれた」などの声が出されるようになりました。「この会議に参加できるから楽しいよ」と声をかけてくれる人もいて、役員を引き受ける人も増えています。

 

話しやすいし、意見が湧いてくる

学習会(ワークショップ)などでお話をすることがありますが、よくこんなシーンがあります。「誰か感想や質問を話してください」と呼びかけても、なかなか手は挙がりません。「2~3人組にわかれて感想や質問を話し合ってください」と声をかけると、みんな一気に話し出します。時間が経つにつれ、表情も明るくなり、笑い声が飛び交うこともよくあります。

感想や意見、質問があったとしても、全体の場で発言するのはなかなか難しいのです。「もし的外れな内容だったらどうしよう」「他の人にどう思われるか不安」などの気持ちになる人もいると思います。心理的な安全性が確保されていない会議ではなおさらです。

また、本当に感想や質問が思いつかない場合もあります。以前、会議の「振り返り」でこんな話がありました。「○○について話し合ってと言われて、とくに意見はなかったけど、少人数グループで他の人の話を聞いているうちに意見や思いが湧いてきて、気づいたらいっぱい話してました」と。少人数で話すことは、話しやすいだけでなく、新たな思いやアイデアを引き出し、共有できる場にもなります。

 

みんなでつくる会議へ

会議の中で「経過報告や総括」の時間はあっても、お互いのチャレンジをお祝いし合う時間はあまりありません。会議の初め(チェックインの後)に「セレブレーション」というお祝いの時間をつくっています。前回の会議以降に成果があったことや成果はなくてもチャレンジしたことなどを共有し、みんなで拍手を送り合います。

セレブレーションは成果を共有し、みんなで喜び合い、お互いのチャレンジを歓迎し合う場です。この場があることで、チャレンジが促進されたり、会議の心理的安全性を高めることができます。

心理的な安全性を高めるには、会議のルールをみんなでつくることも一つの方法です。みんなが安心して自由に意見が出し合えるように、どんなルールがあれば良いかをみんなで出し合って決めます。このルールを決めるときも少人数で出し合うことが効果的です。そして、毎回の会議の初めに確認し、見直すことで心理的な安全性を高めることにもつながります。

 

進化し続ける定期大会

労働組合にとっての最大の会議の場が「定期大会」です。大阪府職労の場合、一番多く組合員が集まる場です。中には初めて組合活動に参加するという人もいます。「勉強になったけど難しかったし、自分の関心とは少し違った」「長時間ずっと聞いているだけで疲れた」「ほとんど寝ていた」というのが率直な感想だったのではないかと思います。

そこで、この組合員が最大に集まる場を参加者が労働組合を「自分ごと」に感じ、主体的に参加できる場にしようと、数年前から「大会改革」を続けています。

 

大阪府職労の定期大会の様子

 

まず取り組んだのは、「大会とはこういうもの」という考えをいったん横に置いて、ゼロから考え直すということでした。毎年、大会の数か月前の会議で「今年の定期大会はどんな大会にしたい?」ということから話し合います。

その話し合いでは、初めに少人数グループにわかれて、「理想の定期大会」と「最悪の定期大会」をみんなで出し合います。「理想の定期大会」では「若手組合員がたくさんいる」「いろんな人と話ができる」「グループで話したことが共有できる」「大会に参加した人がもっと組合活動に参加したいと思える」「普段は仕事で疲れてるけど元気になれる」などの声が出されました。また、「最悪の定期大会」では「役員しかいない」「座って長い話を聞いてるだけ」「みんな寝てる」「役員だけが熱く語ってる」などが出されました。

そして、出された「理想」と「最悪」をもとに、どうすれば最悪を回避し、理想に近づけられるかを話し合い、どんな大会にするかを決めていきます。

その結果、数年前からは少人数での話し合いを取り入れ、昨年は「運動方針の柱」を聞いたうえで、各グループで運動の具体化案を出し合い、全体で共有して決めるということにもチャレンジしました。もちろん大会でも「振り返り」をしてみんなで評価し、さらにブラッシュアップをめざしています。まだまだ課題は残っていますが、初めて参加した若手組合員からは「大会ってどうせつまらないと思って参加したけどめちゃくちゃ楽しかった」「この様子をみんなに知らせたい」「もっといろんな職場の人と話したい」「長いと思ったけどあっという間だった」などの感想が寄せられ、大会参加を機に役員となって活躍しているメンバーもいます。寝ている人は一人もいなくなりました。

 

大切な時間を有効に使うために

働く仲間は仕事や生活に追われ、みんな忙しい日々を送っています。時間はとても貴重です。だからこそ「無駄な時間を過ごした」「時間を奪われた」とならないように、どんな会議もタイムスケジュールを明確にして、タイムキープして時間どおりに初めて、時間どおりに終わることも大切です。もし、どうしても延長せざるを得ない場合は、事前に参加者に許可を得る、時間に余裕がない人は退出して良いことを伝えることも必要です。

会議は「現場の声」を引き出して共有し、思いと行動を結びつけていくための場なのです。報告や提案で大半の時間を使ってしまったり、話したい人だけがたくさん話すのではなく、みんなが話し合える時間を確保することが何よりも大切なのではないでしょうか。

 

小松康則「連載①元気の出る組合活動:みんなが参加しようと思える会議や活動がしたい」

小松康則「連載②元気の出る組合活動:対話から生まれる関係づくり」

小松康則「連載③元気の出る組合活動:「参加したくなる」「話したくなる」会議へ」

 

小松康則さんの投稿はこちらより

 

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