松崎真介「コロナ禍での会計年度任用職員の組織化実践」

松崎真介「コロナ禍での会計年度任用職員の組織化実践」『学習の友』第846号(2024年2月号)pp.50-53

学習の友社が発行する『学習の友』第846号(2024年3月号)に掲載された松崎真介さん(東京公務公共一般労働組合 書記長)による論文の転載です。どうぞお読みください。

 

 

 

コロナ禍での会計年度任用職員の組織化実践

 

東京公務公共一般労働組合 書記長 松崎真介

 

 

自治体で働く非正規労働者は、2020年度から「会計年度任用職員」という新たな制度に移行しました。同時に、2020年は新型コロナウイルス感染拡大が世界を覆い、私たちもこれまでの組合活動に大きな制限が加えられた中での活動を余儀なくされました。その中で組織化をどのように進めてきたのかレポートします。

 

 

統一の組織化リーフレットを作成

これまで公共一般では、自治体ごとに設けている支部を中心に組織化の取り組みとして、職場懇談会や学習会、茶話会など、実際に集まって交流する中で組合を知ってもらい加入する方法を行ってきました。しかし、新型コロナウイルス感染拡大により、未加入者と直接会って話すことが困難となってしまいました。そこで、対象者と直接合わなくてもできる組織化方法を考え、未加入者に組合のリーフレットを送る組織化を取り組んできました。

親しみやすいオリジナルのイラストを入れ、支部の連絡欄など独自にアレンジできる部分は空欄にし、オリジナルの情報も加えられる統一の組織化リーフレットを作成しました。豊島支部や墨田支部では、リーフレットを積極的に活用し約3年間(2020年10月~2023年10月)で墨田支部35人、豊島支部38人の加入に結び付けることができました。

 

1人職場が抱える不満や怒りを集め組織化へ

臨床心理士ユニオン(支部)は、2021年9月に東京都のスクールカウンセラーとして働いている会計年度任用職員、約1500人に対しアンケートを送り、700近い回答を集約しました。アンケートの回答では「5年雇い止めへの不安」「採用通知が来る時期が年度末ギリギリなこと」「上司からのパワハラ」など、様々な不満や怒りが書かれていました。また、団体交渉の報告会をWEBで開催したところ、40人もの申込者があり当日は20人の未加入者の参加がありました。スクールカウンセラーは1人職場で、業務のやり方などで聞きたいこと、職場の不満や要求などがあっても周りに聞ける人もいないため、同じ職種同士で集まる場を設けること自体が切実なものとなっていました。全スクールカウンセラーのアンケートに半数近い回答が寄せられていることは、そこに不満、怒り、要求が渦巻いている証であり、組合への関心の高さが窺えます。アンケートの調査の取り組みで、組織拡大への大きな足掛かりを掴むことができました。

 

地域の繋がりを活かし空白自治体で支部結成

今年6月22日、新たに公共一般府中支部が結成されました。支部長の石田さんは長年正規保育士として勤務してきました。定年退職後は、会計年度任用職員として保育園で働いてきましたが、非正規になり同じ非正規同士で夏季休暇や慶弔休暇について、元臨時は無給、元嘱託は有給など、同じ非正規なのに差別的な取り扱いがあることを知り、これはおかしい!と公共一般に加入し府中支部を結成しました。支部結成に至るまで、府中在住の公共一般役員のサポートを得ながら結成に向けた取り組みを進め、7人の支部で活動を開始しました。その後、府中市との団交、ビラまき宣伝、会派要請など旺盛に活動を展開し、ついに夏季休暇、慶弔休暇について元臨時も有給として取り扱う要求実現を勝ち取りました。同時に、支部ニュースを発行し組織拡大にも取り組み、早くも2ケタの支部として成長しています。これからも、大幅賃上げ、5年雇い止め撤廃をめざし、取り組みを進めていきます。

 

委託民営化攻撃で組織化前進

東久留米市の公立保育園は、これまで市による全園廃止計画が進められそうになりながらも地域運動や組合の取り組みもあり、全園廃止計画から委託民営化路線へと方針転換が「なされました。現在、委託民営化の対象園となっているちゅうおう保育園では、会計年度任用職員の保育士の雇用不安が浮上しています。東久留米支部は、対象園で働いている保育士に対し雇用継続を市に要求し実現しようと働きかけ、10人もの新たな加入がありました。現在、市は2025年度から公私連携型保育所として委託化する考えを示す一方、委託の公募、選定時期などについて決められていない状態です。今後も、対象園で働く非正規労働者も巻き込んだ組織化と雇用継続実現の闘いを両輪で進めます。

 

自治体、職種、職場の状況に応じた多彩かつ柔軟な組織化を

この3年間、コロナ禍で組織化の取り組みの動きが封じられ、会計年度任用職員の組織化の取り組みはこれからです。組織化拡大を取り組む対象の状況は様々です。対象の自治体や職場に協力者がいるのか、組織化に熱心な当事者がいるのか、対象者と会える糸口があるのか、など千差万別です。対象となる自治体、職種、職場の状況に応じた、柔軟な組織化の方策をその都度作り取り組みを進めています。

 

職種横断型の組織化前進を展望する

保育士や学童クラブの指導員、図書館司書、栄養士など、自治体の職場では専門的な職で働いている会計年度任用職員がたくさんいます。同じ職種同士が集まり、抱える仕事の不満、改善点、やりがい、喜びなどが話せる、分かり合えることは、彼らの職種への帰属意識や職の誇りをいっそう高めていくことに繋がると考えています。労働組合が職種別で組織化を進めることで同職種同士の団結強化、職種別の働き方の共通ルール、処遇、職種別賃金確立といった職種統一の労働条件を作り出していく可能性も生まれてきます。

同じ職種で団結し、行動する運動発展の可能性は、前述した臨床心理士ユニオンの実践でも明らかです。また、東京自治労連保育部会と公共一般東京保育ユニオンが共催した「会計年度任用職員と保育について考える学習会(WEB)」(2023年9月15日)でも、最大回線数100のZOOM会議設定に対し、150人もの参加申込があり大変盛況な学習会でした。このことも、会計年度任用職員の保育労働者同士で交流したいという当事者による強い要求の現れではないでしょうか。しかしながら、まだ職種別の大幅な組織拡大実現という成果には至っていません。今後、職種別を意識した組織化を実践し、公共一般5000人建設を実現したいです。

 

 

 

 

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