当事者として訴え、
処遇改善を目指す
-防府市における会計年度任用職員-
三沢 孝之(みさわ たかゆき)
(防府市職員労働組合副執行委員長)
1.現状
(1)職員数と職種
防府市では、2023(令和5)年4月1日現在、フルタイムで171人、パートタイムで442人、計613人の会計年度任用職員が働いています(表1)。正規職員が852人、再任用職員が54人で会計年度任用職員の割合は40.36%になります。
表1 任用別職員数
区分 | 職員数 | 割合 | |
正規職員 | 852人 | 56.09% | |
再任用職員 | 54人 | 3.55% | |
内、フルタイム | 31人 | 2.04% | |
会計年度任用職員 | 613人 | 40.36% | |
内、フルタイム | 171人 | 11.26% | |
その他(嘱託等) | 0人 | 0.00% | |
合計 | 1,519人 | 100.00% |
(出所)防府市人事課資料
(2)賃金と諸手当
会計年度任用職員の賃金のうち、月例給については正規職員と同じ一般行政職給与表(一)のうち、1級のみが適用されています。初任給は一般事務が1級1号、学童保育指導員が1級38号と、職種ごとに定められています。昇給は1年で2号、上限は4号までです。
一時金の支給額については、正規職員の期末手当相当分である2.4か月で、支給対象については、週の勤務時間が25時間超の職員とされています。
一時金以外の手当について、フルタイム会計年度任用職員には、通勤手当、時間外手当、夜間勤務手当、休日勤務手当があり、支給要件などは概ね正規職員と同じです。パートタイム会計年度任用職員には、時間外勤務報酬、夜間勤務報酬、休日勤務報酬の他、通勤にかかる費用弁償があり、時間外等の割増率は1.25となっています。また、通勤にかかる費用弁償は、月10日以上出勤する場合は正規職員の通勤手当と同様になっています。
(3)休日と休暇
休日は原則土・日・祝祭日で、正規職員と同じです。パートタイム会計年度任用職員については、上記以外に追加で休日が設定されていることもあります。
表2 主な休暇制度とその内容
休暇の種類 | 正規職員 | 会計年度任用職員 | |||
給与 | 日数等 | 給与 | 日数等 | ||
年次有給休暇 | 有 | 20日以内 | 有 | 20日以内 | |
病気休暇 | 有 | 90日以内 ※一定条件で180日以内 |
無 | 10日以内 | |
特 別 休 暇 |
ドナー休暇 | 有 | 必要な期間 | 無 | 必要な期間 |
結婚休暇 | 有 | 8日以内 | 有 | 5日以内 | |
産前休暇 | 有 | 8週間以内 | 有 | 6週間以内 | |
産後休暇 | 有 | 8週間以内 | 有 | 8週間以内 | |
保育休暇 | 有 | 30分以内 ※1日2回 | 無 | 30分以内 ※1日2回 | |
看護休暇 | 有 | 5日以内 | 無 | 5日以内 | |
生理休暇 | 有 | 3日以内 | 有 | 3日以内 | |
被災休暇 | 有 | 7日以内 | 無 | 7日以内 | |
感染症休暇 | 有 | 必要な期間 | 無 | 必要な期間 | |
介護休暇 | 無 | 必要な期間 | 無 | 必要な期間 | |
組合休暇 | 無 | 30日以内 | 無 | 30日以内 |
(出所)「防府市職員の勤務時間、休暇等に関する条例」及び同条例規則から抜粋
休暇は、年次有給休暇、病気休暇、特別休暇、介護休暇、介護時間及び組合休暇があり、基本的には正規職員と一緒ですが、年次有給休暇や病気休暇などは日数が異なります。また、年次有給休暇と特別休暇の一部を除き、無給の休暇となっています(表2)。
2.課題
(1)会計年度任用職員の割合と職場環境
本市における会計年度任用職員の採用状況は、県内の他の自治体と比べてフルタイムの割合が高く、保育や窓口職場における育休代替、不足人員の補填などで雇用されています。
正規職員の不足分を会計年度任用職員に置き換えている現状は、これまで正規職員が行ってきた業務の一部を会計年度任用職員に担わせないと業務が回らない状況を生んでおり、責任が重くなっています。市民課を例にすれば、20年前には正規職員しか行っていなかった証明書の認証作業や印鑑登録業務の大半を会計年度任用職員が担っています。その内、印鑑登録業務は「許可行為」のため、毎回、最終確認は必ず正規職員が行うようにしていますが、窓口担当の正規職員は現在2人しかいないため、他の窓口や電話の対応をしていると確認に回れず、来庁者を無駄に待たせる上、担当した会計年度任用職員もその間他の業務に回れず、全体の業務効率が落ちてしまいます。
一方で、先に紹介した許可業務や法定の届出、財務会計など、内容によってはどうしても会計年度任用職員に担わせることができない業務もあります。それが残った正規職員の業務の増加を招いており、さらには、慢性的な長時間過密労働に繋がっています。
また、パートタイムの中には、同様の業務に従事する正規職員が居ない状態で従事している人もいます。留守家庭児童学級や放課後児童クラブの指導員がまさにそうです。こうした職場では、現場での判断やその責任が全て会計年度任用職員にかかり、補助的業務どころか完全な〝主担当〟と化しています。
(2)上がらない賃金ともらえない手当
会計年度任用職員に適用されている給与表が一般行政職(一)の1級のみで、最大でも4号給しか上がらないということは、一般事務の会計年度任用職員(初任給:1級1号)は、何年勤めてもどれだけ知識や経験を蓄えても、高卒初任給(1級9号)に追いつかないということです。今のように会計年度任用職員の業務の比重が高まっている状態でこの待遇は、職員のモチベーションや業務効率の低下を招きます。
一時金の支給月数は、制度開始3年目までは再任用職員と同程度の1.35~1.45か月分でしたが、交渉を重ねた結果、2023年度から正規職員並に引き上がりました。
一方、支給対象となる週の勤務時間(25時間超)は、一般事務のパートタイム会計年度任用職員(週25時間以下)は対象にならないが、学童保育指導員(平均週25.6時間)は対象になるという設定になっています。しかし、国の示す基準(週15.5時間以上)と比べると支給が制限されています。
その他の手当について、扶養手当は支給対象になっていません。会計年度任用職員にも、家族を扶養している人が居てもおかしくないのに、手当を支給しないことに合理的な理由があるのでしょうか。
また、パートタイム会計年度任用職員に適用される時間外勤務報酬等の割増率(1.25)は、正規職員やフルタイムの時間外手当等の割増率(1.35)より低くなっています。これも、低くする理由があるのでしょうか。むしろ、パートでまかなえるはずの勤務で時間外対応が必要になったのなら、よほどの事態だと思われますので、他と同様に割増率は高くあるべきではないでしょうか。
(3)休日手当のない土曜出勤と、取れば給与が減る特別休暇
休日については原則正規職員と一緒ですが、職種によっては週休日が違うケースがあり、その場合、土曜日に出勤しても「平日」扱いになっています。その結果、正規職員より多い「週6日勤務」がパートタイム会計年度任用職員に発生することもあります。「パート(=一部)」なのに「フル(=全部)」より多く働くのが平常とされるのは違和感があります。
また、特別休暇などは正規職員とほぼ同等に整備されていますが、いくつかは給与が減額される「無給」の休暇になっています。ただでさえ給与が低く抑えられているのに、特別休暇が認められるようなやむを得ない事情で休んだら給与が減るというのはいかがなものでしょうか。せめて、正規職員が有給で取得できる休暇は会計年度任用職員も有給に揃えるべきです。
取得できる日数が異なるのも気になります。特に、出産にかかる産前の休暇は、正規職員は8週間なのに、会計年度任用職員は6週間です。防府市で働く女性は、会計年度任用職員で雇用されると妊娠時の体の負担や胎児への影響が小さくなるのでしょうか。そんなはずありません。職員の身体を第一に考えた待遇の統一を図っていかなければなりません。
3.今後の取組
(1)人員要求と一体の職場環境・労働条件改善
会計年度任用職員の賃金等が低く抑えられているのは、担っているのが「補助的業務」だという大義名分があるわけですが、業務によっては正規職員と同等かそれ以上の業務を担っている状況にあるのは、火を見るより明らかです。つまり、その分正規職員が必要である事の証であるため、そういう業務に関しては今後組合として正規職員の増加を求めていきます。その中で、同一業務での経験が長い会計年度任用職員を、正規職員に任用替えできる仕組みがあれば、「即戦力」の加入で効率的な業務を維持できます。
一方、正規職員の増配が難しいのであれば、こうした状況を支えている会計年度任用職員の待遇を改めるべきです。少なくとも昇給幅の拡大、2級以上の給与表の適用は必要で、安上がりな労働力という認識を改め、経験や知識に応じた給与の増加は必要経費として考えるように要求していかなければなりません。
それを抜きにしても、一般事務のパートタイムの会計年度任用職員の初任給は時給910円となっており、今年(2023年度)の最低賃金の上がり幅によっては、それを下回る可能性が高くなっています。
かつて、公務員賃金は民間のパート労働者と比べればかなり高かったため、最低賃金なんて無関係でしたが、今では最低賃金近傍で働く学生のアルバイトの方が、採用試験を受けて就職した新人公務員より時給ベースで高いという時代になっています。これでは優秀な人材は集まらず、不足人員の穴埋めで長く勤める人も給与が頭打ちでモチベーションが下がるなど、良いことがありません。会計年度任用職員だけでなく、全体の初任給の見直し、底上げを図る必要があります。
(2)会計年度任用職員の組合加入促進
一方、組織的な課題として、当事者である会計年度任用職員の組合員が少ないということがあります。児童厚生員や留守家庭児童学級指導員などは、それぞれの組合が連携しながら奮闘してきたことで、多くのものを得てきました。しかし、本庁や保育所などで働く会計年度任用職員の個別の課題はこれまで大きく取り上げることができませんでした。
低賃金、不安定雇用など、組合に加入してもらう際にネックとなる条件もありますが、組合に加入し当事者として意見を出し、当局に直接訴えて改善を勝ち取っていくことの重要性を説明し、仲間を増やしていけたらと思います。