山口県地方自治研究所「【特集】会計年度任用職員の現状と課題」

山口県地方自治研究所が発行している『やまぐちの自治』第141号(2023年8月号)で「会計年度任用職員の現状と課題」が特集されました。特集で掲載された論文をお送りいただきました。どうぞお読みください。

 

団結と連帯-自治体職場からの報告-・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・本誌編集部

声を届けるために組織化を-周南市会計年度任用職員の現状と課題-・・・・・・・・・亀谷 忠史

粘り強い交渉が成果を生む-下松市における会計年度任用職員の現状と課題-・・・・・谷本 誠一

当事者として訴え、処遇改善を目指す-防府市における会計年度任用職員-・・・・・・三沢 孝之 

 

 

 

団結と連帯

-自治体職場からの報告-

                       

本誌編集部

課題の多い会計年度任用職員制度

 

自治体で働く非正規職員が、「官製ワーキングプア」あるいは「非正規公務員」と呼ばれて10年以上が経過しています。そうした職員の処遇を巡って様々な声が上がり、問題点が浮きぼりになり、警鐘が乱打されてきました。その後地方公務員法と地方自治法の改正があり、2020年度から会計年度任用職員制度が導入。これによって非正規職員の処遇改善が実現するのではないかといった〝期待感〟もありました。ところが蓋を開けてみれば、「官製ワーキングプア」を是認するために法定化(上林陽治『非正規公務員のリアル』)されたに過ぎなかったのです。

制度導入からわずか3年あまりで再び法改正が行われ、短時間勤務の会計年度任用職員にも勤勉手当が支給されるようになる(施行は2024年4月)など、その矛盾解消に向けた運動の前進はあります。しかし、会計年度任用職員という名称が示す通り、会計年度限りの任用(雇用)とされ自治体に必須の恒常的な業務に細切れの任期の職員をあてる、という最大の矛盾が解消されない限り根本的解決には程遠いでしょう。

年々自治体は非正規職員依存体質が強まり、「正規・非正規複合体」(大森彌『自治体職員再論』)となり、いまでは非正規職員抜きに業務を遂行することができない状況にあります。例えば、今回の報告を見ると、会計年度任用職員の占める割合は周南市約47%、防府市約40%、下松市約34%となっており、とりわけ図書館司書、保育士などは正規職員よりも会計年度任用職員が多い自治体もあり、学童支援員に至っては正規職員が配置されておらず、すべてが会計年度任用職員です。また、補助職員の域を超えて基幹職員となっている事例もありますがその処遇は劣悪です。

自治体において会計年度任用職員がどのような処遇を受けているのか、住民には見えていません。本誌編集部は、会計年度任用職員の処遇改善を実現するためにまずは「見える化」が必要と考え、三つの自治体職員労働組合から報告を受けることにしました。

会計年度任用職員の処遇改善に向けた取組は、一つの自治体だけでは限界があります。「権利のための闘争」に向けてまずは権利感覚を身につけて、団結(労働組合に結集)と連帯(他団等との連携強化)が必要不可欠です。最後に、連帯を強めるために、非正規雇用関連を取り上げたウェブサイトを紹介しておきます。

 

ウェブサイトの紹介

 ◎川村雅則ウェブサイト  

筆者は、北海学園大学経済学部教授。非正規雇用問題等について精力的に調査研究を続けています。このサイトは、非正規雇用等の実態調査を実施する人や処遇改善を求める人にとって必読です。

 

◎北海道労働情報NAVI

「働く人の人権がないがしろにされ、働くことが粗末にされている」現状をなんとか変えたいと思い、サイトを立ち上げました。「サイトが交流の『場』になり、個人だけでなく、労働組合など既存の団体につながるきっかけになればよい」、といった目的のもとで立ち上げられたサイトです。冠は「北海道」となっていますが、各地域から論文、講演録などが掲載されています。

 

◎NPO法人・官製ワーキングプア研究会

情報収集(裁判・労働委員会の事例、国・自治体情報、研究者・研究機関の発表論文、報道・運動資料)、調査研究、非正規当事者相談(弁護士などの紹介、各地の労働相談窓口の紹介など)、学習会、研修会などへの講師の派遣、研究会の定期開催等を行っています。理事長は白石孝。竹信三恵子(和光大学名誉教授)や川村雅則らが理事に就任しています。

 

◎公益社団法人・北海道地方自治研究所・非正規公務労働問題研究会

この研究会は2014年度に発足しました。その活動状況や同研究所の機関誌『北海道自治研究』に掲載された論文等を閲覧できます。

 

◎公務非正規女性全国ネットワーク(通称:はむねっと)

2021年3月20日、緊急集会「官製ワーキングプアの女性たちを」の開催準備にあたった者が中心となり、公務非正規問題に継続して取組ために新たな団体を立ち上げました。以後、関係省庁や全国の自治体への要望書の提出、調査研究会活動を行っています。

(参考)「ハムネットアンケート2023-会計年度任用職員制度3年目に何が起きたのか」 対象者:自治体の会計年度任用職員

上記のアンケートが発表されています。参照してください。

 

◎自治労連(日本自治体労働組合総連合) 

「会計年度任用職員」のあなたと つながる つづける たちあがる(〝3T〟アクション)

 

◎自治労(全日本自治団体労働組合) 

「非正規雇用労働者のみなさんへ」

 

参考文献の紹介

篠田徹・上林陽治編著『格差に挑む自治体労働政策』日本評論社、2022年

上林陽治『非正規公務員のリアル-欺瞞の会計年度任用職員制度』日本評論社、2021年

竹信三恵子、戒能民江、瀬山紀子『官製ワーキングプアの女性たち-あなたを支える人たちのリアル』岩波書店、2020年

黒田兼一・小越洋之助編著『働き方改革と自治体職員-人事評価、ワーク・ライフ・バランス、非正規職員、AI・ロボティクス』自治体研究社、2020年

 

 

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