『まなぶ』労働大学出版センター(799):19-20 2023所収
格差をなくしまっとうな公共職場を
「非正規雇用にもかかわらず、正職員並みの業務量と業務内容を要求され、昇給はなく、健康診断も受けられずに、体調を悪化させられて病気休暇の制度もないまま雇止めにされるかもしれない毎日で公務に従事しています。」
「人手不足でとにかく休めない。サービス残業は当たり前、体調不良でも無理して出勤するのが日常茶飯事です。病欠で有給を使うくらいで有給消化など夢のまた夢。やりがい搾取以外のなにものでもありません」
「臨時職員だった時は年休もなく、家族の通院のために急に休まなければならなくなった時に、後日「休まれたら困るって話していたんですよね〜」と事務職員に言われた。同じ人間なのに自分は休む権利もないのかと愕然として体調を崩した。今は年休があるので、精神的負担は減ったが、少ない勤務日数の中で年休を取ることに罪悪感も感じる。」
いずれも、公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)が2022年度に行ったアンケート調査に寄せられた公共現場で働く非正規職員からの声です。
続く待遇格差
ご存じのように、現在、全国の地方自治体では、直雇用や行政の委託先の事業所に雇われるかたちで、多くの「非正規公務員」が働いています。仕事は、“公務”に位置付けられている職であるため、それ相応の責任が課され、住民対応にあたる職場も少なくありません。住民サービスの拡充という理由で、休日や夜間に、非正規が館の運営に当たっている職場もあります。
しかし、正規と非正規の待遇には大きな格差があるのが現状です。給与は、時給換算で正規職員の3~4分の1で、休暇も、例えば私傷病休暇のように、正規であれば有給となる休暇が無給で、日数も短い現状があります。病気休暇については、国家公務員の非常勤職員の病気休暇が無給であるため、地方自治体においても同様の扱いになっているとされます。ただ、2022年1月に公表された総務省の調査によると、8割が無給としている私傷病休暇を、有給の扱いとしている地方自治体も全体で16.8%存在しています(都道府県12.8%、指定都市35.0%、市区21%、町村10.6%)。
過去にも、病気になれば仕事は続けられないという不安の声や、無理をしてでも出勤しないと休暇の日数が少ないために欠勤となり、翌年は働けなくなってしまうという声を聞いてきました。
私傷病休暇をはじめとした休暇制度の有給化に向けた取り組みなど、休暇制度における常勤職員との格差是正・均等待遇は、切実で重要な課題です。
調査でも対象外の非正規
一昨年、はむねっとは、総務省に、要望書「メンタルヘルス調査対象に非正規公務員を加えてください」を提出しました。この要望書は、新聞で、「総務省は、すべての地方自治体を対象として、メンタルヘルスの不調に伴う休職職員数や予防策を尋ねる初めての大規模調査に乗り出した。職員は、新型コロナウイルスや災害対応などで業務量が増えている。住民への対応業務では近年、悪質なクレーマーの増加が指摘され負担は増加傾向にある」(読売新聞2021年7月18日)と報道されたことを受け、住民への対応業務には、非正規職員も多く当たっており、メンタルヘルスの不調を抱えている人も多いのに、その調査対象に非正規職員が入らないのはおかしいという思いから提出したものでした。
結果、総務省からは、「自治体の事務負担を考慮し、まずは首長部局の正規職員を対象としたもの」、「今後同様の調査を行うかも含め未定ですが再度調査をする場合には、自治体の事務負担も考慮のうえ、対象に非正規公務員を加えるか等、調査の対象範囲を含め、その内容については改めて検討する予定」とする回答がありました。
調査結果は、2021年12月に、また、翌年3月には調査に基づく報告書が出されています。そこには、会計年度任用職員などの非常勤職員を含む、「全ての職員を対象にメンタルヘルス対策を講じること」という文言が示されていました。
ただ、現状では、正規公務員と非正規とでは、メンタルヘルスの不調を抱えた際に使える休暇制度等に大きな格差があります。均等待遇に向けた方策が必須です。同時に、メンタル疾患の背景にある人手不足や過密労働といった、前提の課題を解決していく方策がなければ、問題は起こり続けていきます。
はむねっとでは、グループが結成された昨年と一昨年の2回、全国の公務非正規従事者を対象にインターネットでアンケートを行いました。結果、2年続けて約3割が身体不調を、約4割がメンタル不調を抱えていることが明らかになっています。
不調の原因ともなる不公正な待遇格差をなくしていくことが急務です。
(関連記事)
瀬山紀子さん(はむねっと副代表、埼玉大学ダイバーシティ推進センター准教授)の投稿記事一覧は こちら から