神代知花子「増やそう!つながろう!非正規公務員問題に取り組む自治体議員」

反貧困ネット北海道主催で2022年7月7日に開催された、自治体における公務非正規問題をテーマにした学習会での報告(「石狩市の非正規公務員問題と問題解決に向けた議員活動」)のエッセンスが、NPO法人官製ワーキングプア研究会発行の『レポート』第39号(2022年9月号)に掲載されました。どうぞお読みください。

 

 

2022年7月7日に開催された「反貧困ネット北海道」の公務非正規オンライン学習交流会で、これまでの取り組みについてお話をさせていただきました。今年度で議員になって7年目、非正規公務員の問題に取り組んで7年目になります。北海学園大学経済学部の川村雅則教授には、長きに渡り心折れそうになるたびに励ましをいただきました。今回お話するにあたり、これまでの取り組みを改めて俯瞰して振り返ることができました。自分がいかに大海の荒海でひとりもがいているような仕事ぶり(アップアップで周りが見えていない)をしてきたかを省みる良い機会となり、今後は全国で非正規公務員問題に取り組む議員の皆さんとつながりながら、取り組みを広げていければと期待しています。

 

さて、このたびの学習会ですが、まずこの問題に取り組む動機として、私自身が非正規公務員として従事した若い頃(27歳~33歳)に経験したことが、働き手として「自分は一人前でない」「この仕事は自分でなくてもいい」「どうせ大事にされない」という低い自己評価のベースとなっているという話をしました。今となっては、この言わばトラウマ的な経験こそが私のエネルギーの源なのですが、議会活動当初は、自身の当事者性(怒り・憤り)が強いあまりに、問題を客観的に指摘することができずに悩んでいました。

 

その当事者性を超えるためには、実態を知る客観的データを集めることが重要です。しかし、当局が行うアンケート結果からは、なぜか実態が見えてこない。それは一体なぜなのか。こんなにも非正規公務員待遇に対し問題意識が低いのはなぜか。長年当局とのやり取りを通し、感じた6つのポイントを上げました。

それは、「非正規職員は家計の補完的な収入程度を望んでいる」、「子どもに夕食をつくるために早く帰宅したい」など「非正規職員とはこういうものだ」(つまりはジェンダー)という古びた固定観念なのですが、実際の働き方とはひどく乖離したものばかりです。それにも関わらず、非正規職員自身がその「あるべき像」を甘んじて受け入れているのは、実態とのズレから生じる不満を飲み込むことが常態化することで、諦めの心境になっていると、実体験からも推測されます。当事者の本当の望みを「声」として引き出すのは、大変困難なことで、時間ときめ細やかな工夫が必要です。

 

次に、非正規公務員の処遇を定めた法律、自治体が定めた条例、規則、実務的な手引き、会計年度任用職員制度についてご案内し、自分の自治体の制度移行がどのレベルで実行されているか知るためのポイントをお伝えしました。そして、自身の活動を振り返り、未だに当局との間で認識の齟齬がある点を上げ、これまでしっかりと調査することができていないことと、今後取り組むべき課題を洗い出しました。特に、「雇止め」の問題では、本市では公募によらない再度の任用は4回まで(通算5年)と定められていますが、札幌市のような大規模な自治体では2回まで(通算3年)とされており、それが今年度末に一斉に「雇止め・公募」となることについて課題を共有しました。また、現在在職する非正規職員の勤務歴を調査し、する必要のない公募がなされていないか、報酬の経験給は勤続何年で頭打ちとなるのかなど、具体的な職名とその職の処遇を例に挙げながら、自身の喫緊の取り組み課題としてお伝えしました。

 

非正規公務員の働き方の改善は、「持続的な質の高い公務サービス」に直結する問題です。DX改革で行政事務の大半がオンライン化されても、決して置き換えることができないのが、基幹的な行政サービスに従事する専門職員で、直接住民と接する職員としての「自力」が常に問われるストレスフルな業務です。単年度ごとの会計任用職員制度では、その専門性を育てることは難しく、またその「やりがい」を逆手にとり、職務内容や職責と待遇が見合わないワーキングプアを常態化することも大きな問題です。

 

非正規公務員のパートタイムよりも少ない労働時間にも関わらず、年収で2~3倍もらいながら、4年に一度の「雇止め」のたびに再雇用に奮起する「自治体議員」こそ、非正規公務員がどのような業務に配置され、どんな住民サービスを支えているか、そこで活躍する方がどのような思いで公務現場の前線に立っているか思いを知るべきです。

市民に付託された議員だからこそ、議会では最も構造的に弱い立場に置かれる人の「アドボケイト(代弁)」をし、社会に対しては沢山の同士と連帯して「ソーシャルアクション」を起こすことを追究したいと思っています。自治体議員には労働組合とはまた違う側面から、非正規公務員が抱える処遇格差の抜本的解決を目指す運動を展開できると感じています。文末に連絡先を掲載いたしますので、ぜひ今後ともつながりをもっていただければ幸いです。

また、この度の学習会内容は、終了後にすぐに文字起こしをしてくださり、「北海道労働情報NAVI」という北海道の労働問題に関わる方が寄稿するサイトに掲載していただきました。詳細はこちらをご覧いただければと思います。

(終)

 

引用) 神代知花子「石狩市の非正規公務員問題と問題解決に向けた議員活動(2022年度反貧困ネット北海道連続学習会)」『北海道労働情報NAVI』

連絡先)  kuma.appo@gmail.com            石狩市議くましろちかこFacebook

 

 

 

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