過労死防止学会・代表幹事等「「裁量労働制の見直し」方針に対する「反対声明」」

過労死防止学会から、代表幹事と常任幹事名で、「高市早苗首相の裁量労働制の見直し」方針に対する下記の「反対声明」が発出されました。

 

 

声明 「裁量労働制の見直し」方針は、過労死・過労自殺を増加させかねない。

政府に対し、十分な調査研究に基づいた方針に改めることを要請する。

2026年3月16日

 

高市早苗首相が施政方針演説において示した「裁量労働制の見直し」は重大な懸念を伴うものである。

過去にも、裁量労働制の適用拡大を含む制度改正は、安倍晋三政権下において、不適切なデータ問題等を背景に撤回された経緯がある。

過労死等の労災請求件数が急増している現状を踏まえれば、政府はまず違法な長時間労働やハラスメントへの厳格な規制を最優先で講じるべきである。また、残業を前提としなければ生活が成り立たない低賃金構造、労働時間規制の緩さ、そして労働者の発言力の弱さゆえに、際限なく組織の命令に従わざるを得ない労務管理や労使関係こそが問題である。
したがって、最低賃金および実質賃金の引き上げ、労働者の命と健康を最優先とする長時間労働規制の強化、ならびに実効性のある健康確保措置の強化が不可欠である。

本来の裁量労働制は、労働者の裁量に委ねられる業務に適用される制度である。しかし、厚生労働省の「裁量労働制実態調査」では、「業務量が過大」「労働時間が長い」「休暇が取りにくい」との回答が一定割合をしめている。同調査結果を詳細に分析した研究(川口大司氏、黒田祥子氏らの共同研究)においても、労働者の裁量が確保できないにも関わらず裁量労働制を拡大することには、長時間労働や健康悪化のリスクが伴うことが明らかにされている。

現在の長時間労働を十分に規制できていない実態を放置したまま、高市政権のいう経済成長のために裁量労働制を拡大するのであれば、その適用範囲の拡大は長時間労働をより見えにくいものとし、結果としてそれを助長するおそれがある。その結果、過労死・過労自殺の深刻化を招きかねない。さらに、政府自らが決定した「過労死等の防止のための対策に関する大綱」に掲げられた数値目標すら達成できない危険性がある。

私たち過労死防止学会常任幹事会は、過労死・過労自殺をゼロにすることを使命とする学会として、本来の裁量労働制に必要な条件とは何か、過労死・過労自殺につながらないための制度的条件とは何かを十分に調査・分析した上で、裁量労働制の拡大の是非を議論すべきであると考える。

以上の観点から、今回の「裁量労働制の見直し」に対し、重大な懸念を表明する。

 

過労死防止学会常任幹事会 代表幹事 長井偉訓

 

 

 

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