安田真幸「『17条一般職非常勤条例』補論/一般職非常勤職員の『給与』」

安田真幸「『17条一般職非常勤条例』補論/一般職非常勤職員の『給与』」『NAVI』2026年2月11日配信

 

安田真幸「『(任期の定めのない)短時間公務員制度』は『17条一般職非常勤職員条例』で実現できる!?」『NAVI』2026年2月8日配信 の補論です。

 

「17条一般職非常勤条例」補論

一般職非常勤職員の「給与」

 

安田 真幸(連帯労働者組合・杉並)

 

総務省によれば、17条非常勤制度を活用するにあたっての一番の問題は「期末・勤勉手当が支給できないこと」とされています。この問題を解決するために、一般職非常勤職員の賃金=「給与」について考えてきたことを取りまとめてみます。ポイントは自治法と地公法の関連規定をどのように解釈するか? です。以下、会計年度制度以前と以後の地公法と自治法の推移も交えて、検討します。

 

<そもそも「給与」と「報酬」の違いは??>

1 常勤職員に支払われる「給与」とは?

 ① 給与=給料+手当

地公法及び自治法に、直接的に給与を定義した文言は見当たらない。しかし、地公法25条で「給与に関する条例」に規定すべき事項として、「給料表」と「手当」があげられている。このことから、給料と手当とを合わせて給与と解釈されている。地方公営企業法(地公企法)では、38条で「企業職員の給与は給料及び手当とする」と明確に定義されている。

2 非常勤職員に支払われる「報酬」とは?

① 地公法で「報酬」という文言が出てくる条文は、第38条(営利企業への従事等の制限)の「報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない」とする部分のみである。ここでの「報酬」は、「給料、手当等の名称のいかんを問わず、労働の対価として支給されるもの」と素直に解釈されている。(鹿児島重治「逐条地方公務員法」1991.3.10第4次全訂版)

② 「非常勤には報酬のみ、手当はダメ」との固定観念は、(地公法ではなく)自治法203条の2で「非常勤の職員に対し、報酬を支給しなければならない」から発している。総務省の説明は「報酬は勤務への対価で、生活給的要素は含まない」、「(報酬に手当は含まれないから)手当は支給できない」というものである。「勤務への対価=生活給的要素は含まない」は論理の飛躍であり、上記の地公法38条での(まっとうな?)「報酬=給料・手当等の労働の対価(生活給的要素を含む)」解釈と矛盾している。

③ 地公法25条(給与に関する条例及び給与の支給)の3項6号では「非常勤の職その他勤務条件の特別な職があるときは、これらについて行う給与の調整に関する事項」とある。つまり、「給与条例」「非常勤の給与の調整」を盛り込むことが義務付けられていることに注目しなければならない。

 

(給与に関する条例及び給与の支給)

第25条 職員の給与は、前条第五項の規定による給与に関する条例に基づいて支給されなければならず、また、これに基づかずには、いかなる金銭又は有価物も職員に支給してはならない。

2 職員の給与は、法律又は条例により特に認められた場合を除き、通貨で、直接職員に、その全額を支払わなければならない。

 給与に関する条例には、次に掲げる事項を規定するものとする。

① 給料表

 等級別基準職務表

 昇給の基準に関する事項

 時間外勤務手当、夜間勤務手当及び休日勤務手当に関する事項

 前号に規定するものを除くほか、地方自治法第二百四条第二項に規定する手当を支給する場合には、当該手当に関する事項

⑥ 非常勤の職その他勤務条件の特別な職があるときは、これらについて行う給与の調整に関する事項

 前各号に規定するものを除くほか、給与の支給方法及び支給条件に関する事項

 前項第一号の給料表には、職員の職務の複雑、困難及び責任の度に基づく等級ごとに明確な給料額の幅を定めていなければならない。

 第三項第二号の等級別基準職務表には、職員の職務を前項の等級ごとに分類する際に基準となるべき職務の内容を定めていなければならない。

 

<自治法203条の2と204条の改訂>

1 会計年度任用職員制度以前~以後の自治法203条の2と204条

① 以前の203条の2では「非常勤には報酬」、204条では「常勤職員には給料と諸手当」とシンプルに定められていた。

② 会計年度制度導入に合わせ、以下の改定が行われた

a) 203条の2を改訂し、パートタイム会計年度職員には「期末手当(後に勤勉手当も追加)」を支給できるようにした。

b) 204条にフルタイム会計年度職員を追加し、常勤職員と同様に給料と諸手当を支給できるようにした。

【地方自治法(現行)】

第203条の2 普通地方公共団体は、その委員会の非常勤の委員、非常勤の監査委員、自治紛争処理委員、審査会、審議会及び調査会等の委員その他の構成員、専門委員、監査専門委員、投票管理者、開票管理者、選挙長、投票立会人、開票立会人及び選挙立会人その他普通地方公共団体の非常勤の職員(短時間勤務職員及び地方公務員法第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員※1を除く。)に対し、報酬を支給しなければならない。

※1 フルタイム会計年度任用職員のことで、次の204条で「給料及び旅費を支給」するための除外規定。

② 前項の者に対する報酬は、その勤務日数に応じてこれを支給する。ただし、条例で特別の定めをした場合は、この限りでない。

③ 第一項の者は、職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる。

④ 普通地方公共団体は、条例で、第一項の者のうち地方公務員法第二十二条の二第一項第一号に掲げる職員※2に対し、期末手当又は勤勉手当を支給することができる。

※2 パートタイム会計年度任用職員のことで、期末・勤勉手当を支給できることを規定。

⑤ 報酬、費用弁償、期末手当及び勤勉手当の額並びにその支給方法は、条例でこれを定めなければならない。

第204条 普通地方公共団体は、普通地方公共団体の長及びその補助機関たる常勤の職員、委員会の常勤の委員(教育委員会にあつては、教育長)、常勤の監査委員、議会の事務局長又は書記長、書記その他の常勤の職員、委員会の事務局長若しくは書記長、委員の事務局長又は委員会若しくは委員の事務を補助する書記その他の常勤の職員その他普通地方公共団体の常勤の職員並びに短時間勤務職員及び地方公務員法第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員に対し、給料及び旅費を支給しなければならない。

② 普通地方公共団体は、条例で、前項の者に対し※3、扶養手当、地域手当、住居手当、初任給調整手当、通勤手当、単身赴任手当、在宅勤務等手当、特殊勤務手当、特地勤務手当(これに準ずる手当を含む。)、へき地手当(これに準ずる手当を含む。)、時間外勤務手当、宿日直手当、管理職員特別勤務手当、夜間勤務手当、休日勤務手当、管理職手当、期末手当、勤勉手当、寒冷地手当、特定任期付職員業績手当、任期付研究員業績手当、義務教育等教員特別手当、定時制通信教育手当、産業教育手当、農林漁業普及指導手当、災害派遣手当(武力攻撃災害等派遣手当及び特定新型インフルエンザ等対策派遣手当を含む。)又は退職手当を支給することができる。

※3 フルタイム会計年度任用職員に、諸手当を支給することができることを規定。

③ 給料、手当及び旅費の額並びにその支給方法は、条例でこれを定めなければならない。

 

2 総務省解釈への対抗

総務省の「非常勤には報酬のみ」との解釈に対抗する主張は以前からあった。手元にある「基本法コンメンタール 地方自治法(1992.6.20日本評論社)」の浜川清法政大学教授の論考(P194)で、その論旨はおおむね以下である。

① 地公法25条3項6号で、給与条例に「非常勤への給与の調整事項」を盛り込むことが定められている。この地公法の規定と「非常勤は報酬のみ」とする自治法203条の規定とが矛盾することとなる。

② (矛盾解消のためには)地公法と自治法の「非常勤職員」との用語は、必ずしも同一ではないというべきである。自治法203条を適用する非常勤職員は特別職非常勤職員と解し、一般職の非常勤職員には自治法204条を適用されると解し、給料・手当を支給する余地がある。

 

<浜川さんの提起を受けて>

私は、浜川提起に触発され地公法25条3項6号にこだわってきた。以下、私なりに浜川提起を補強してみたい。

1 地公法(25条3項6号)は自治法の特別法!

① 地公法に先んじで制定された1947年自治法は、ざっくりとした人事・給与に関する規定も含めて成立し、詳細は地公法に委ねる(172条4項)こととしている。3年遅れて1950年に成立した地公法は自治法の特別法と言える。

② ここでの問題は、より詳細に人事・給与を規定した地公法と、大まかに規定した自治法の規定とが矛盾した場合、どちらを優先すべきか? である。私見では、特別法であり、より詳細な地公法を優先すべきと考える。地公法から2年遅れて成立した地公企法は自治法の特別法とされ、38条の「給与は給料及び手当」、「給与の種類及び基準は条例で定める」との規定が、現業の非常勤職員に適用される。であるならば、地公法25条3項6号も非現業の一般職非常勤職員に適用される、と言いうるのではないだろうか。

③ 自治法203条の2で例示されている非常勤は「非常勤の委員、非常勤の監査委員、自治紛争処理委員、審査会、審議会及び調査会等の委員その他の構成員、専門委員、監査専門委員、投票管理者、開票管理者、選挙長、投票立会人、開票立会人及び選挙立会人」であり、いずれも特別職に該当する。浜川教授の「203条の非常勤は特別職と解すべき」を裏付けている。

 

<結論>

 以上の検討から、非現業の一般職非常勤職員にも「給料と手当」を支給できるはずである。

 

 

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