川村雅則「非正規公務員問題に取り組んで思うこと」『JSA北海道支部ニュース』第459号(2026年1月■日発行)

 

日本科学者会議北海道支部が発行するニュース第459号への投稿原稿に加筆をし、表も加えたものです。お読みください。

 

 

地方自治体における非正規公務員問題の調査・研究に取り組んでいます。本稿で取り上げる会計年度任用職員制度は、2020年度から地方で新たに導入された非正規公務員制度で、その人数は、短期間・短時間勤務者を含めると全国で100万人を超えます(表1、2025年4月1日時点)。私たちの足下(全道)でも、その数は合計で4万人を超え(41881人)、特別職非常勤職員と臨時的任用職員を足し合わせた非正規公務員割合は、政令市である札幌市を除く34市では38.3%、144町村では45.7%に達します(表2)。そもそも日本は小さな政府であったところを、公務員を削減する「改革」が進められてきました。全国では、ピーク時から50万人もの正規公務員が減らされましたが、公共サービスのニーズが減ったわけではありません。代わりになし崩しに増やされてきたのが非正規公務員でした。

 

表1 地方自治体における非正規職員(臨時・非常勤職員)の人数/全国

単位:人

合計 任用期間が6か月以上かつ1週間当たりの勤務時間が19時間25分以上 任用期間が6か月未満又は1週間当たりの勤務時間が19時間25分未満
任用根拠別
会計年度任用職員 1,009,708 686,636 323,072
臨時的任用職員 90,771 77,366 13,405
特別職非常勤職員 133,408 4,750 128,658
団体区分別
都道府県 309,565 181,499 128,066
市区町村等 924,322 587,253 337,069
指定都市 154,484 82,562 71,922
市区 623,998 401,155 222,843
町村 126,440 86,923 39,517
一部事務組合等 19,400 16,613 2,787
合計 1,233,887 768,752 465,135

出所:総務省「令和7(2025)年度 会計年度任用職員制度の施行状況等に関する調査結果」より作成。

 

表2 団体区分別にみた、正職員の人数、任用形態別にみた非正規職員の人数、非正規職員割合及び会計年度任用職員の女性割合/北海道

単位:人、%

正職員
非正規職員
非正規職員割合
会計年度任用職員の女性割合
合計
会計年度任用職員
特別職非常勤職員
臨時的任用職員
男性 女性
北海道 60,839 8,452 4,555 1,763 2,792 2,256 1,641 12.2 61.3
札幌市 23,096 4,978 4,167 1,105 3,062 167 644 17.7 73.5
市群 29,645 18,401 17,367 3,364 14,003 1,011 23 38.3 80.6
町村群 20,254 17,058 15,385 3,972 11,413 1,617 56 45.7 74.2
一般事務組合 413 407 112 295 0 6 72.5
合計(全道) 133,834 49,302 41,881 10,316 31,565 5,051 2,370 26.9 75.4

出所:表1に同じ。正職員は、総務省「令和7(2025)年地方公共団体定員管理調査結果」より。

 

非正規公務員の仕事は、事務職に限りません。保育士や介護職、看護師・保健師など医療職、教員・講師、図書館職員、給食調理員、学童保育指導員、各種の相談員などさまざまな仕事に彼女たちは従事しています。彼女たち、と書いたように、会計年度任用職員の4分の3は女性です。これは全体の数値であって、職種によっては、90%超からほぼ100%が女性です。ジェンダーの問題は、非正規公務員の分野でも確認されます。

 

図1 公務と民間の非正規制度の比較

出所:筆者作成。

 

ところで、民間を含む、非正規雇用者に多くみられる特徴の一つが有期雇用に伴う雇用不安でした。先にあげたとおり、会計年度任用職員の仕事は、臨時的な性格のものではありません。しかしながら彼女たちの雇用(任用)は、会計年度ごとの雇用であることが強調されます。1年を超えて働くことは可能ですが、民間であれば「更新」とされるところも、新たな職に就くと解釈されます。つまり、基本はあくまで1年とされるのです(図1)。それゆえ、毎年1か月の試用期間(条件付採用期間)が設けられています。その上に、一定年数ごとに公募にかけられ、新たな求職者との間の競争に勝たなければ働き続けることができません。この公募問題は、運動によって一定程度、改善されてきましたが(※)、それでも、1年ごとの雇用であることには変わりありません。公務員に労働契約法は適用されませんから、無期雇用に転換することもなく、不安定な雇用のもとに置かれ続けます。その上に、有効な雇い止め規制もなければ、労働基本権には制約を受けているという、ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)とは対極の状況にある、と言えるでしょう。

川村雅則「会計年度任用職員制度をめぐる問題といま取り組むべき課題──議員ネットへの期待とあわせて」『NAVI』2025年8月21日配信古川晶子「はむねっと調査2025&首都圏106自治体情報公開請求 会計年度任用制度の不合理を解消するために」『ふぇみん』第3435号(2025年11月15日発行)などを参照。

 

こうした制度を製造した国の責任が大きいことは言うまでもありません。しかし、地方政府──具体的には、首長や、首長・行政の監視役である議会が抗議の声を上げないのはどうしたことでしょうか。地方政府もまたこの問題を容認してしまっています。

さて、このような性格を持つ非正規公務員問題の解決主体はいったい誰なのでしょうか。非正規公務員をはじめ自治体労働者・労働組合だけなのでしょうか。そもそも地方における行政や議会のあり方、公共サービスのあり方に最終決定権を持つのは私たち住民ではないのでしょうか。そう考える人たちで運動や交流は全国各地で始まっています。2024年11月には、日本労働弁護団から『非正規公務員制度立法提言』が出され、関係者を勇気づけています。地方議員を中心とするネットワーク(「公務非正規自治体問題議員ネット」)も2024年8月に発足しました。

私たちもまた、地方を変える、そして、地方から国を変える多様な取り組みを、北海道から始めていきましょう。

 

※詳しくは、総勢14人で昨年に取りまとめた編著『お隣の非正規公務員──地域を変える、北海道から変える』北海道新聞社をお読みください。

 

 

 

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