小松康則「参加したくなる! 元気の出る楽しい労働組合活動を進めよう(第6回・最終回)ひとりひとりの組合員が主体性を発揮できる活動を」『学習の友』第853号(2024年9月号)pp.70-73

 

 

 

 

プロローグ

これまでの連載では、コミュニティ・オーガナイジングとの出会い、みんなが参加しようと思える会議、チャレンジを引き出す対話手法(コーチング)、当事者を主体としたキャンペーンなどについてお伝えしてきました。いよいよ今回が最後になります。これまで読んでいただいたみなさんに心から感謝申し上げます。ありがとうございます。

今回はこれまでの連載の内容を踏まえ、私自身がどんな労働組合活動をめざし、これからどんなことをしようと思っているかをお伝えしたいと思います。

 

主体性を発揮するための場づくり

今回の連載のテーマである「参加したくなる!元気の出る楽しい労働組合活動」を進めるためには、より多くの組合員が主体的に参加できる、「参加したくなる!」と感じられる環境を作ることが必要不可欠です。「いつも難しい話ばかりで疲れる」と思われてしまうと、参加者はどんどん減ってしまいます。

また、一部の役員だけが責任や役割を背負わなければならない活動をしていれば、いつのまにか資源(※)を使い果たし、活動は衰退せざるを得なくなります。逆に、多くの組合員の資源を集め、その資源を使ってアクションすることで、さらに新しい資源※を集めるという循環を作り出すことができれば、活動はどんどん大きくなり、組織や活動が活性化します。こうした好循環をつくり出すことが大切です。(図参照)

 

※資源:組合員ひとりひとりが持っているスキルや能力、知識など。特技や熱意、経験、使える時間なども資源に含まれる。

 

こうした好循環を作り出すには、組合員一人一人が自由に参加でき、話せる(思いを伝えられる)場を作るということが重要です。私自身、長い間役員をしていますが、そのことに気づけたのはつい最近です。

それまでの私は、役員というのは常に組合員の先頭に立ち、新しい知識を得て、それを教えること、指示することが重要な役割だと思い込んでいました。そのため、自分自身がいつもいっぱいいっぱいの状態で活動していて、誰よりも自分自身が楽しいと感じることができていなかった気がします。その「しんどさ」が会議などを通じて、まわりの役員や組合員に伝わっていたかもしれません。どんなに口で「楽しい活動を」と言っても説得力はなかっただろうと思います。これでは「役員になりたい」と思う人がいなくなるのも当然かもしれません。

現在、大阪府職労の会議や定期大会、学習会などのあらゆる取り組みは、何も話さずに帰る人は一人もいなくなりました。(ただし、話したくないときは話さないというルールを決めて、話さない自由も保障しています。)まだまだ「主体性を引き出している」といえる状態ではないかもしれませんが、「ひとりひとりの組合員が話せる場」をたくさん作ることで、少しずつ変化も生まれています。(「参加したくなる」「話したくなる」会議については5月号を参照してください)

 

これまでを振り返ると、学習会や集会などを開催するとき、より多くの人を集めることに重点を置いて、「何人集まったか」を成功の可否の主要な基準としていました。しかし、その学習会や集会に参加した人の多くは一方的に話を聞く(聞かされる)状態だったなと思います。

今後は少ない人数であっても(むしろ少ない人数で回数を増やすことが必要)、参加した人が自分の思いや感じたことを話すことができ、どうすべきかを一緒に考える場をたくさん作ることに力を注ぎたいと考えています。

そのためにはファシリテーション(その場を作り、運営する)スキルや安心して話せる環境づくりが必要なので、そういうスキルを学び、広げることにも力を注ぎたいと思っています。

 

当事者を主体とした活動へ

労働組合活動では、情勢に合わせたさまざまな活動が提起されます。署名や集会などへの動員も次々にあります。しかし、持てる資源には限界がありますし、それらの動員に応えるだけの活動では組合員の主体性を引き出すことはできません。「強引に誘われ参加させられるのが嫌だ」「忙しいので関わりたくない」といった声が聞かれることも多くあります。

そうならないように、組合員の関心を聞き、今起きている問題や解決したいことを共有し、「あとは組合に任せて!」と役員が請け負うのではなく、当事者を主体として解決策を考える活動スタイルへと変えていくことが必要です。

 

署名提出、記者会見には多くのマスコミが集まる中、断酒会や難病連の代表とともに、保健師や保健所職員も参加して力強く発言した。

 

コロナ禍に取り組んだ「大阪府の保健師、保健所職員増やしてキャンペーン」(キャンペーンの詳細は6月号を参照してください)は、コロナ禍の超多忙な状況の中、当事者である保健師や保健所職員が自分たちの持っている資源(職場実態やつながり、保健師としての思い、特技など)を使って取り組みました。これらの資源は専従役員の私にはありません。当事者だからこそできる、当事者であれば誰もが参加できるキャンペーンによって大きな成果を得ることができました。

このキャンペーンを通じて成果を得たことも重要ですが、最も大切なのは当事者が「声をあげれば変えることができる」「自分たちにはパワーがある」「あきらめなくていいんだ」と思えたことです。

キャンペーンを始めたときは「記者会見に出るのは絶対に無理」と言っていた仲間が「とても恐かったけど、目には見えない大きな力をもらえた気がする」と言って記者会見に参加して堂々と話してくれたこと、「もっと声をあげて職場環境を変えたい」と言って組合役員に立候補する若者が増えたことなど、組織強化につながる数々のドラマも生まれました。

そして何より、このキャンペーン期間に保健所で新たに50人以上の新しい組合員を迎えることもできました。コロナ禍で保健所が忙しいのはわかっていたので「組合員を増やして」と呼びかけたことはほとんどありませんでした。職場の組合員が自ら「組合員を増やしたい」と感じたことが加入へとつながったのだと思います。

 

たくさんの課題に埋もれてしまうと「手いっぱい」となって大事なことを忘れてしまいがちですが「主体性を発揮するための場づくり」と「当事者を主体とした活動」、この2つのことを忘れずに、これからも楽しく元気に労働組合活動を進めていきたいと思います。

 

 

 

 

小松康則「連載①元気の出る組合活動:みんなが参加しようと思える会議や活動がしたい」

小松康則「連載②元気の出る組合活動:対話から生まれる関係づくり」

小松康則「連載③元気の出る組合活動:「参加したくなる」「話したくなる」会議へ」

小松康則「連載④元気の出る組合活動:私たちにはパワーがある 現場の声から始まるキャンペーン」

小松康則「(番外編)元気の出る組合活動:レイバーノーツ大会2024に参加して感じたこと」

小松康則「連載⑤安心して声をあげることのできる労働組合活動へ」

小松康則「連載⑥元気の出る組合活動:ひとりひとりの組合員が主体性を発揮できる活動を」

 

小松康則さんの投稿はこちらより

 

 

 

 

 

 

 

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