建交労北海道本部「労働組合・建交労北海道本部における1年の取り組み(2024年)」

NPO法人建設政策研究所北海道センター(建政研道センター)では2024年12月19日に、年に1度の総会を開催しました。

建交労北海道本部は建政研道センターの会員です。センターの総会にあたり、1年間の取り組みなどを建交労北海道本部から報告しました。

 

 

 

 

 

○2024年4月5日 建交労北海道本部建設部会第21回総会および建退共学習会

建交労北海道建設部会は4月5日に第21回総会をひらきました。討論では、函館での公共工事現場調査、旭川の生活困窮者支援での事業団活動、十勝における労働者・地元企業をとりまく状況、札幌での公契約条例のとりくみなどについて報告されました。

総会終了後、「建退共学習会」を開催し、全日自労や建設一般の時代に建退共の制度を拡充させてきたこと、さらに建交労としても工事完了後の「証紙貼付実績報告書」によるチェック方式を帯広市や函館市に導入させ、それを全国に波及させてきたことなどの歴史を学びました。今後、建退共実務学習会を開催していく予定です。

 

○2024年5月8日 北海道労働局交渉

5月8日、建交労北海道本部労災職業病部会が労働局との交渉をおこないました。交渉では、振動障害の防止対策について北海道でも熊本にならって「3軸合成振動レベル計」を配備するよう強く求めました。道内で施工しているトンネル工事が46件であり、令和5年に54件の監督指導をおこなったほか、アスベストアナライザーの貸し出しは令和5年度に5回だったことが明らかにされました。道内に複数配備することを重ねて求めました。

石綿健康管理手帳の申請は70件で発給も70件、じん肺管理区分の申請は84件で決定数は繰越をふくめ90件でした。「建設アスベスト給付金」にかかわって、石綿肺の管理区分をもっていれば合併症がなくても給付対象になることから、その対象者数を明らかにするよう求めましたが局からの回答はありませんでした。

このほか、労災職業病の認定業務、振動障害の「適正給付管理」や社会復帰対策、労働行政の体制強化などについても交渉しました。

 

○2024年5月24日 北海道労働局交渉および北海道建設業協会(道建協)との懇談

5月24日、建交労北海道本部建設部会は北海道労働局交渉と、「建設労働者の賃金・労働条件改善に関する要求書」にもとづいて交渉しました。要求内容は、❶雇用・失業対策の強化と高齢者の雇用・就労機会の拡大、❷建設労働者にかかわる働き方改革関連法について、❸季節労働者対策の強化、❹一人親方・中小事業主等労災保険について、回答を求めました。

公的就労事業の確立、高齢者事業団などのへの仕事を随意契約で行うよう配慮することや、雇用保険の特例一時金を50日分に戻すことなどを重ねて求めました。また、2024年4月1日から建設業にも時間外労働の上限規制(月45時間、年360時間)が適用されることから、日給月給の労働者が週休二日制で収入の減少などの影響を受けることについて、局側は「この規制によって日給月給の労働者が減収にならないよう賃金の引き上げが有効だということを行政としても働きかけている」ことなど、回答を受けました。

また、労災保険特別加入の過去5年の加入状況の資料提供や、通年雇用促進支援事業や通年雇用奨励金の活用実績などについても明らかにされました。特別加入については加入時健診を実施する医療機関の拡大を求めました。

同日、北海道建設業協会(道建協)と懇談をおこないました。

適正な賃金支払については「道建協として1丁目1番地の課題として捉えている」、担い手確保のためにも「建設キャリアアップシステムで労働者の技能が適切に評価され、さらにレベル別年収の浸透によって技能に見合った賃金の支払いとなるよう積極的にとりくんでいきたい」との回答を引き出しました。

道建協の問題意識として、若者が業界で働きつづけるために「完全週休二日制度の実現」、「月給制にしていくことを下請け企業などにも働きかけていく」ことなどが話され、「建退共の加入状況の本人への通知制度」や建設キャリアアップシステムなどについて意見交換しました。

建退共については「12ヵ月、60ヵ月に達したとき、本人に納付状況をハガキで通知している」ことなどが話されました。函館支部で取り組んだ公共工事現場アンケートの結果にもとづき、設計労務単価に満たない賃金が支払われていることなどの実態についても意見交換しました。

 

○2024年6月13日 北海道開発局交渉

6月13日、建交労北海道本部建設部会として開発局交渉をおこないました。交渉では、「公共工工事設計労務単価が12年連続で引き上げられているが函館の現場調査でも労働者の賃金が上がっていない実態があり、設計労務単価に対する実際に支払われている賃金の比率が年々下がっている状況にある」こと踏まえて公共工事設計労務単価を決める際に用いられる労務費調査では発注者の責任として事業者だけではなく労働者に対して調査をおこなうべきだと強く要請しました。

現場閉所による「週休2日モデル工事」では、過去3年分の達成率について公表されたほか【令和3年度97%(1399件中1357件)、令和4年度99.6%(1245件中1240件)、令和5年度97.3%(1279件中1244件)】、現場閉所による週休2日ではなく、休日に作業が必要な工事においても技術者及び技能労働者が交替しながら休日確保に取り組む「週休2日交替制モデル工事」の過去3年間の達成率についても公表【令和3年度57.8%(147件中85件)、令和4年度99.1%(124件中123件)、令和5年度100%(174件中174件)】されました。特に「週休2日交替制モデル工事」では、3年間で達成率が57.8%から100%に大幅に改善されています。

建退共制度ついては下請代金に算入することは値引きの対象になるため現物で払い出すよう要請しました。また、今年度の北海道開発局発注のトンネル工事は9件あることが明らかになりましたが、トンネル工事現場では1日10時間の労働時間が常態化している実態を明らかにし、トンネルじん肺防止の観点から是正すべきだと質しました。

 

○2024年7月25日 「2024年春闘建交労全国統一要求書」にもとづく、札幌市および道庁との交渉

建交労北海道本部がおこなった札幌市との交渉では、「公契約条例の制定など適正な賃金・労働条件の確保」「建設労働者の賃金・労働条件の改善」「じん肺・アスベスト被害の防止と補償の拡充」について交渉しました。建物の清掃・警備などの契約については「複数年契約において、賃金水準の上昇に応じて契約代金の変更を可能とするスライド制度を試行導入しており、受注者との話し合いで対応している」と回答しました。工事契約での賃金実態調査については「対象工事は5件程度だ。積算労務単価との乖離があるが、改善を求める法的な根拠がない」との回答で、対象工事をもっと広げるよう求めるとともに「だからこそ公契約条例が必要だ」と追及しました。アスベストアナライザーの活用状況については、昨年度の実績は66年だった」ことを明らかにしました。

道庁との交渉では、「高齢者事業団の状況調査を実施している」というものの対象は自治体がかかわる事業団だけであることから、自主的に運営している事業団についても対象とするよう求めました。

清掃や警備などの委託業務について「経費節減のために一般競争入札を実施している」と回答していることに対して「労働者の生活を守る立場ではない」と厳しく批判しました。道庁発注工事の下請け状況調査で賃金が設計労務単価を下回っている事業主に適切な水準の支払いを文書で要請していることについては評価できます。道が発注しているトンネル工事は現在1件で、年度内にもう1本発注する予定であることを明らかにしました。アスベストアナライザーについて相変わらず否定的な考えを示していますが「この夏以降に環境省から借りて使ってみる」という回答がありました。

 

○2024年8月1日 第31回全国ダンプキャラバン開発局・道庁交渉

8月1日、建交労札幌ダンプ支部が、「第31回全国ダンプキャラバン」の一環として北海道開発局と道庁への要請をおこないました。この日の行動は建交労中央本部の森谷副委員長(建交労全国ダンプ部会顧問)のほか建交労道本部の森国委員長、宮澤書記長、建交労札幌ダンプ支部役員など7人が参加しました。北海道開発局交渉では開発局から工事管理課・技術管理課・建設産業課などが対応し、道庁交渉では建設部建設管理課・経済部雇用労政課などが対応しました。それぞれ要請事項への回答を受けたあと、森谷副委員長が「ダンプ規制法」成立までの経緯を詳しく説明し、同法12条団体(建交労加入ダンプ)に対する優先使用措置の指導を徹底するよう求めました。また、参加した札幌ダンプ支部の役員から「白ナンバー排除」についての発言があり、森谷副委員長は「背番号を持つダンプはすべて合法だ」と強調しました。

 

○2024年8月20日 建交労北海道本部労災職業病部会第22回総会

2024年8月20日、建交労北海道本部労災職業病部会第22回総会がひらかれました。新規の労災認定では、1年間(2023年7月~2024年6月)で119件(振動障害48/じん肺6/じん肺遺族補償6/アスベスト疾患2/アスベスト遺族補償4/騒音性難聴53)となり、48人があらたに要療養となりました。

また、全道各地で健康(建退共)相談会を実施しました。相談会は、延べ日数31日・47会場で実施し、相談者数148人(アスベスト70件、じん肺23件、振動病57件、難聴49件、その他13件)となりました。

 

○2024年10月3日 なくせじん肺北海道キャラバンと道庁要請

2024年(第35回)「なくせじん肺北海道キャラバン」がスタートし、集会と総会がひらかれました。同日午後からキャラバンの最初の行動として道庁に要請しました。道庁からは経済部・建設部・環境生活部の担当課長補佐などが対応し、トンネルじん肺防止対策、アスベスト台帳、アスベスト除去などへの補助制度、アスベストアナライザーの配置、アスベスト粉じんのばく露防止対策、建設アスベスト補償基金、建設アスベスト給付金の対象範囲の拡大などについて回答を受けました。

アスベストアナライザーについては「精度が測定基準を満たしていない」などと相変わらず否定的な姿勢で、今年8月に環境省から貸し出しを受けたアナライザーもわずか2週間程度で実際には1度も使わずに返したと回答しました。参加者は「厚労省は全国的に配備をすすめている。他県や自治体でも導入している」ことをふまえ、「国の動向を注視すると言うなら、大規模災害時などのために道庁でも導入すべきだ」と強く求めました。ハザードマップの公表については「災害時にボランティアなどへ周知されるよう市町村へ助言をおこないたい」との回答にとどまり、「災害時に住民やボランティアなどをアスベストに暴露させないための対策が必要だ」と質しました。

「トンネルじん肺救済法」や「建設アスベスト補償基金の創設」「建設アスベスト給付金の対象範囲の拡大」などについては「国会に請願が出されているのでその動向を注視する」という回答で、参加者は「鈴木知事がじん肺・アスベスト被害についてきちんと知り対策を強め、国に意見を上げてほしい」と要請しました。

 

○2024年10月18日 なくせじん肺北海道キャラバンと北海道労働局要請

10月18日、「なくせじん肺北海道キャラバン」で北海道労働局に要請をおこないました。

要請では、2022年4月1日から始まった「石綿の事前調査結果等の報告制度」について、実効性確保のため「届け出件数と届け出のあった事前調査結果および分析調査結果の内容のチェック方法」などについて回答を求めましたが、「局において算出することができない仕様になっている」「届け出審査手法に関わることであり回答できない」と繰り返しました。

アスベストアナライザーの局から署への「貸し出し件数」については、令和5年度は5件、令和6年度上半期で2件と明らかにしましたが、「作業現場の特定につながることから貸し出した監督署名は公表しないをおこなわない。署での個別の使用実績などについては局では積極的に把握していない」と回答しました。

ハザードマップの作成と公表については、「北海道との連携については機会をとらえて情報交換したい」との回答にとどまり、「震災などによるアスベストばく露を防止するために、いつ起きるかわからない災害に備えるべきだ」と質しました。

このほか、粉じん作業をおこなっている事業所は全道で1826事業所であることを公表し、そのうち「監督指導」件数について文書回答は控えるとし、「監督」をおこなった件数は令和5年が89件であることを公表しました。また、「呼吸用保護用具の使用の徹底」、「アーク溶接、岩石の裁断、金属の研磨の事業所を中心に監督指導している」ことを明らかにしました。

石綿などの健康管理手帳制度については、ホームページやリーフレットなどで周知をしていると回答しましたが、労働者がホームページやリーフレットにアクセスする機会は少なく、監督署などの窓口に置くだけでは不十分だと指摘し、「効果的な周知方法について検討する」と答えました。なお、令和5年度の「じん肺管理区分決定状況」と「石綿関係労災請求・決定状況」の資料の提供を受けました。

 

以上

 

 

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