小松康則「参加したくなる! 元気の出る楽しい労働組合活動を進めよう(第2回)対話から生まれる関係づくり──「やらなければならない」だけでなく「やりたい」でつながろう」『学習の友』第848号(2024年4月号)pp.34-37

 

 

 

 

 「説得」ではなく、共感・共有する「対話」を

  労働組合活動を進めていくうえで、より多くの人に参加してもらうことが大きな課題です。どんなに方針を決めて戦略を立てても、たくさんの人に声をかけて行動に参加する人を増やさなければ、方針や戦略は「絵に描いた餅」になってしまいます。そうならないように、がんばって声をかけても、つれない返事が返ってくることも多く、心が折れそうになることもあると思います。次第に「人を集めなければ」という気持ちばかりが強くなって、気づくと「動員型」になってしまうこともあるのではないでしょうか?

労働組合活動をしていると、いろんな場面で「対話が大事」と言われることがよくありますが、その「対話」の多くが一方的に意義を伝えるような「説得」になっていないでしょうか?「説得」や「動員」がうまくいったとしても、それだけでは次につながる可能性は低く、逆に「もう参加したくない」となることもあると思います。そうならないように、その人の参加が次の参加へ、まわりの人の参加へとつながる「仲間を増やし広げるサイクル」にしていくことが必要です。

そのためには「参加してよかった」と思える会議や取り組みにする必要があります(これについては次回の連載で書きます)し、「説得」や「動員」ではなく、自分自身の経験や感情を通じて大切にしている思い(価値観)を共有し、相手の動機を刺激する、心を動かす対話が必要になります。

 

「対話」は信頼関係をつくるベース

 「対話」は会話や雑談とは区別されるものです。「対話」はお互いの理解を深め合うことで行動の変化を生み出す(「一緒にやろう」という思いを引き出す)創造的な会話です。一方的に話したり、インタビューのように聞くだけでなく、異なる意見も受け止めつつ、お互いの価値観やポジティブな意図を共有することが大切です。

こう書くと、「対話って難しい」と思う人も多いと思います。そうなんです。「対話」は難しいんです。だからこそ、トレーニングの場が必要になります。トレーニングもないまま「対話しよう」ということは、スポーツで例えると、練習もせずに試合に出場するようなものです。

 

チャレンジを引き出す対話手法―コーチング

 「対話」の一つの手法として「コーチング」というものがあります。最近では企業の人材育成などにも取り入れられ、耳にする機会も増えたのではないでしょうか。

労働組合活動には、さまざまなチャレンジや学習の機会であふれています。しかし、ついつい没頭するうちに、まわりが見えなくなったり、一人で抱えて〝いっぱいいっぱい〟になったり、モヤモヤしたりすることもあります。いま、どんな困難に直面しているのか、その困難をどのように解決しようとしているのか見えなくなることもあります。

このような問題の軽減に役立つのがコーチングです。個人やチームに対してコーチングすることで、妨げになっている「動機面」「戦略面」「知識・スキル面」の困難を乗り越えるのに役立ちます。

コロナ禍の2020年8月より「大阪府の保健師、保健所職員増やしてキャンペーン」に取り組みました。

保健師や保健所で働くケースワーカー、青年役員といっしょにチームを作って、このキャンペーンを進めました。私はチームリーダーを務めたのですが、実は、このキャンペーンの立ち上げ当初より、キャンペーンの実践伴走コーチングを受けていました。

保健所がひっ迫する中、メンバーが寝る間もなく仕事をしている状況を見て、チームミーティングを設定するだけでも何度も心が折れそうになりました。また、取り組んでいたオンライン署名が行き詰まって悩むことや声をあげる恐怖感も常にありました。そんなときにコーチングを受けることで、課題が整理されたり、やさしく背中を押されるように「よし、やろう」という気持ちが湧いてきました。

 

わずか半年で若者チームのメンバー倍増

  こうした経験をいかし、その後の活動でもコーチングを活用することを心がけています。大阪府では、コロナ禍ということもあって、青年のつながりが希薄になり、一人で悩みを抱えて退職したり、メンタル疾患で休職する青年が増加するという状況でした。そこで青年部役員が「若者のつながりを広げる場をつくりたい」と声をあげ、数年ぶりに若者が集まるイベントを企画することになりました。そして、私が青年部役員に定期的にコーチングを実施しました。

コーチングを進める中で、当初14人の青年部役員が21人の若者チームへと広がり、イベントも若者だけで話し合い、初めての人も含めてそれぞれが役割を担い、定員40人満員でイベントを成功させました。また、次につなげようと、つながりづくりも意識して取り組み、新たに本部や支部の役員になるメンバーも増えました。現在、大阪府職労の拡大執行委員会は42人で構成されていますが、そのうち12人が30歳代以下の若者で、全体の28%を占めるようになりました。

 

労働組合活動にトレーニングの場を

 コーチングをはじめ、さまざまな「対話」は、初めは上手にできないのは当たり前です。だからこそ、トレーニング(練習)の場や失敗した経験を持ち寄ってフィードバックし合う場が必要です。

「対話が大事だ」「もっと対話しよう」と言われる場はたくさんありますが、トレーニングやフィードバックの場が圧倒的に少ないのではないかと感じています。

大阪府職労では、労働組合を大切に思う気持ちを共有したり、「対話」の手法を学んで練習をする「仲間づくりワークショップ」を開催したり、札幌地区労連と共同で、コーチングを学んで実践する「コーチング道場」などの取り組みを進めています。

一部の「できる人」に何でも任せてしまうのではなく、誰もが活動に参加できるように、労働組合活動にもっとトレーニングの場をつくることが、労働組合の足腰を強くし、組織強化につながるのではないでしょうか。

 

 

小松康則「連載①元気の出る組合活動:みんなが参加しようと思える会議や活動がしたい」

小松康則「連載②元気の出る組合活動:対話から生まれる関係づくり」

小松康則「連載③元気の出る組合活動:「参加したくなる」「話したくなる」会議へ」

 

小松康則さんの投稿はこちらより

 

 

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