川村雅則「札幌市の公共調達及び総合評価落札方式に関する中間報告(3)【完全版】」

川村雅則(2024)「札幌市の公共調達及び総合評価落札方式に関する中間報告(3)──2024年調査に基づき【完全版】」『建設政策』第217号(2024年9月号)pp.38-49

川村雅則(2024)「札幌市の公共調達及び総合評価落札方式に関する中間報告(3)──2024年調査に基づき【抜粋版】」『建設政策』第217号(2024年9月号)pp.38-44

下記の続きです。

川村雅則(2024)「札幌市の公共調達及び総合評価落札方式に関する中間報告(1)──2024年調査に基づき」『建設政策』第215号(2024年5月号)pp.8-12

川村雅則(2024)「札幌市の公共調達及び総合評価落札方式に関する中間報告(2)──2024年調査に基づき」『建設政策』第216号(2024年7月号)pp.36-43

 

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『建設政策』今号の特集は、「公共事業は国民視点になっているか」です。

 

 

 

札幌市の公共調達及び総合評価落札方式に関する中間報告(3)──2024年調査に基づき【完全版】

 

川村雅則(北海学園大学)

 

1.はじめに──調査の概要
2.自治体発注の仕事をめぐる問題──調査にあたっての問題意識
3.総合評価落札方式の概略
4.札幌市の問題意識と対策の概略──建設工事を中心に
5.社会保険未加入対策とCCUSの活用(試行)
6.資料にみる札幌市における公共調達と労働者の賃金

(以上、前号・前々号の拙稿)

 

 

7.札幌市における総合評価落札方式

本稿では、今回の調査のメインの一つであった、札幌市の総合評価落札方式についてみていきます。

第一に、すでに述べたとおり、札幌市の総合評価落札方式については、その沿革や運用などの詳細が正木(2022)にまとめられています。あわせて、工事等の分野については、「札幌市工事等総合評価落札方式施行要綱(令和5年12月1日決裁)」(それ以前は、「札幌市工事等総合評価落札方式試行要綱(平成18年3月29日決裁)」)を、役務委託の分野については、「札幌市建物清掃業務総合評価一般競争入札実施要領(令和2年3月30日決裁、一部改正令和4年4月8日[1])」(それ以前は、「札幌市建物清掃業務総合評価一般競争入札試行要領(平成26年5月30日決裁)」)をご参照ください。

第二に、詳細は本文で述べますが、要点などを述べておきます。(1)札幌市においては、2006年度に総合評価落札方式が導入されて以降、新たな型式が追加で整備されてきました。(2)一方で、総合評価落札方式の発注割合を拡大していくことに対しては現時点では必ずしも積極的ではないように感じられました。(3)札幌市のそのような姿勢の背景には、総合評価落札方式の拡大に建設事業者から積極的な賛意が示されていないことがあります。総合評価落札方式(各型式)にこめられた札幌市の考えや制度設計の妥当性、建設業者の受け止めやニーズなどを明らかにすることが新たな研究課題として残されたことをあらかじめ述べておきます。

第三に、本稿は「完全版」と「抜粋版」の2種類があります。紙幅の都合で本誌には後者を掲載し、前者は北海道労働情報NAVI(https://roudou-navi.org/)に掲載しますのでそちらをご覧ください。

では順にみていきましょう。

 

1)札幌市の総合評価落札方式の概略

表7-1 総合評価落札方式(工事)の各型式の導入時期など

2006年度(1型式) 2007年度(2型式) 2009年度(3型式) 2011年度(3型式) 2015年度(5型式) 2016年度(8型式) 2024年度(8型式) 実施目的・評価内容
簡易型 簡易型 簡易型 簡易型 計画審査型 計画審査型 計画審査型 工事の品質確保のため、企業や技術者の能力・実績を重視。
特別簡易型 特別簡易Ⅰ型 技術評価重視型 実績評価Ⅰ型 実績評価Ⅰ型 実績評価Ⅰ型
特別簡易Ⅱ型 地域貢献重視型 実績評価Ⅱ型 実績評価Ⅱ型 実績評価Ⅱ型
人材育成型 人材育成型 人材確保・育成型 将来の担い手の確保・育成のため、若者や女性の雇用・育成を重視。
地域貢献型 地域貢献Ⅰ型 地域貢献Ⅰ型 災害対応の担い手の確保・育成のため、防災活動・除排雪事業の実績を重視。
地域貢献Ⅱ型 地域貢献Ⅱ型
一括審査Ⅰ型 一括審査Ⅰ型 受発注者双方の事務効率化等を図る観点から、入札参加要件や評価基準等を共通化できる複数の工事について適用される。Ⅰ型は実績評価Ⅱ型、Ⅱ型は地域貢献Ⅱ型がベースになる。
一括審査Ⅱ型 一括審査Ⅱ型

出所:札幌市提供資料より。

 

表7-2 総合評価落札方式(工事関連業務)の各型式の導入時期など

2016年度(1型式) 2018年度(2型式) 2019年8月(3型式) 2024年度(4型式) 実施目的・評価内容
測量業務型 測量業務型 測量業務型 測量業務型 技術的能力の高い契約の相手方を選定し、履行品質を確保するため。
一括審査測量業務型 一括審査測量業務型 一括審査測量業務型
設計業務型(試行) 設計業務型
一括審査設計業務型

出所:表7-1に同じ。

 

札幌市では、2006年度に総合評価落札方式が導入されています。それ以降、現在に至るまで、新たな型式が追加で整備されてきました。札幌市から提供された、工事と工事関連業務の各型式の導入時期などをまとめた表7-1、表7-2に示されたとおりです。本稿では、工事を中心にみていきます。

第一に、工事では、型式が8つにまで拡充しています。「実施目的・評価内容」によれば、札幌市では、「工事の品質確保のため、企業や技術者の能力・実績」に加え、「将来の担い手の確保・育成のため、若者や女性の雇用・育成」、「災害対応の担い手の確保・育成のため、防災活動・除排雪事業の実績」などが重視されてきました。

第二に、それぞれの型式ではどのような評価項目が設定されているでしょうか。正木(2022)にならって、当日の配付資料(「札幌市工事等総合評価落札方式施行要綱」の別記3-1~3-12)に基づき、型式ごとの評価項目を一覧にしてみました(表7-3)。評価項目欄の「○」は必須項目、「△」は任意の項目を意味します。あわせて、それぞれの型式×評価項目(大分類)別に、点数を、表7-4にまとめました。

評価項目(大分類)は、「施工計画」、「企業の評価」、「配置予定技術者の評価」、「地域貢献等の評価」の4つに分類されます。但し、「施工計画」に関する評価項目が設定されているのは、(国が提示した型でいうところの「簡易型」に該当する)「計画審査型」のみです。

 

表7-3 総合評価落札方式(工事)の型式別の評価項目

評価項目 計画審査型 実績評価Ⅰ型 実績評価Ⅱ型 人材・確保育成型 地域貢献Ⅰ型 地域貢献Ⅱ型 一括審査Ⅰ型 一括審査Ⅱ型
施工計画 施工計画の実施手順の妥当性
工期設定の適切性
工事材料等の品質確認方法及び管理方法の適切性
施工上配慮すべき事項の適切性
企業の評価 同種工事の施工実績の規模
公共工事の施工実績
提出された工事実績の成績点
企業の工事成績の平均点(注1)
過去5年間の本市工事被表彰回数
ISO9001取得状況
ISO9001又はサッポロQMSの取得状況
ISO14001取得状況
環境対策認証等の取得又は提出の状況(注2)
本工事における主要建設機械の保有状況
市内企業活用の施工計画
新規学卒者又は満35歳未満の中途採用者の雇用状況
資格保有者の育成状況
若手・女性技術者の育成状況
札幌市ワーク・ライフ・バランスplus企業認証の取得状況
正社員の奨学金返還の支援状況
配置予定技術者の評価 過去10年間の主任(監理)技術者等としての従事経験
過去の従事工事における成績点
主任(監理)技術者に係る資格保有状況
本工事に関連する資格等保有状況
現場代理人としての従事経験
主任技術者としての経験年数
継続教育(CPD)の取組状況
若手技術者の活用状況
女性技術者の活用状況
若手・女性技術者の資格保有状況
若手・女性技術者の現場代理人としての従事経験
地域貢献等の評価 本店所在地等
本市の社会資本を支える地元企業の契約件数の状況
過去3年間の災害対応等の活動実績等
災害協定締結団体への加入状況
経営事項審査評価対象の建設機械の保有状況
過去5年間の本市雪対策事業等の従事実績等
※従事実績及び被表彰実績のそれぞれにおいて該当する配点を合計した値を入札者の得点とする。なお、本年度において、工種ごとに、当該申請をした工事(  年  月  日以降の告示分。ただし、調達案件番号の最初の二桁が  から始まる工事を除く。)を一件受注するまで、任意の案件に申請可能。ただし、本工事の入札期間の初日から落札決定通知日の前日までの期間に
おいて、他の案件への重複申請は不可。
障がい者の雇用状況
本工事に関連する本市まちづくり事業等の活動実績
過去3年間継続した本市ボランティア等まちづくり事業の活動実績(注3)

注1:「企業の工事成績の平均点」における「○」は、「本項目を評価することにより、入札の競争性及び公平性が著しく阻害されるおそれがあると見込まれる場合は例外的に本項目を採用しないことがある。」とのことである。
注2:「環境対策認証等の取得又は提出の状況」は、次のいずれかを対象とする。ア.ISO14001の認証の取得、イ.環境保全行動計画書の提出、ウ.エコアクション21の認証の取得、エ.北海道環境マネジメントシステムスタンダードの認証の取得。
注3:「過去3年間継続した本市ボランティア等まちづくり事業の活動実績」は、次のいずれかを対象とする。ア.福祉除雪事業の地域協力員、イ.公園ボランティア等、ウ.森林ボランティア
出所:札幌市提供資料(「札幌市工事等総合評価落札方式施行要綱」の別記3-1~3-8)より作成。

 

表7-4 総合評価落札方式(工事)の型式×評価項目(大分類)別の点数

評価項目(大分類) 計画審査型 実績評価Ⅰ型 実績評価Ⅱ型 人材確保・育成型 地域貢献Ⅰ型 地域貢献Ⅱ型 一括審査Ⅰ型 一括審査Ⅱ型
1  施工計画 11.00
2  企業の評価 43.00 43.00 30.50 9.00 23.00 23.00 27.50 23.00
3  配置予定技術者の評価 23.00 21.50 5.00 12.00 1.50 1.50 5.00 1.50
4  地域貢献等の評価 9.00 10.00 10.00 12.50 9.50 9.00 9.50
合計 86.00 74.50 45.50 21.00 37.00 34.00 41.50 34.00

出所:表7-3に同じ。

 

この後の3)で述べるとおり、札幌市の総合評価落札方式は「本格導入」に変更されています。それにともない、制度変更がなされています。

表7-3、表7-4に関わることでいうと、まず、「Ⅱ.工事の品質確保」のための「成績評価項目に係る無段階インセンティブ方式の採用(「人材・確保育成型」は除く)」、「型式別加算点の変更」の二点です。前者は、「工事等成績点が上昇するほど得点の上昇幅が大きくなる制度とし、事業者の工事成績向上に向けたインセンティブを強化する」もので、なおかつ、「無段階の得点制度とすることで、より成績点の良好な事業者が有利になる制度」とのことです。後者の加算点の変更についても、「技術点の価値を高める」ことが企図されたものです。

次に、「Ⅲ.その他の見直し」では、第一に、「人材育成型」という型式が「人材確保・育成型」と更新されました。

「人材育成型」は、工事品質ではなく、文字どおり人材の育成を重視した型式です。2024年度からは、育成だけでなく、人材の「確保」も重視するという観点から、「人材確保・育成型」に名称が変更され、従業員の奨学金返金を支援していること(「正社員の奨学金返還の支援状況」)が評価項目に設けられました。同型式の具体的な評価項目等は表7-5に示したとおりです。

第二に、表7-6のとおり、評価項目の追加と変更が行われています。工事の品質確保、技術力の評価、人材育成に資することなどをより一層強化することを企図したものと理解しました。

 

表7-5 人材確保・育成型の技術評価項目配点表

評価項目 必須○任意△ 評価区分 配点
1  企業の評価  ※JVを結成して入札に参加する者は、各項目の得点を出資割合で按分する。
(1) 新規学卒者又は満35歳未満の中途採用者の雇用状況 ①過去3年間に新規学卒者の雇用有り
②過去5年間に新規学卒者又は過去3年間に満35歳未満の中途採用者の雇用有り
③過去5年間に満35歳未満の中途採用者の雇用有り
④その他
①3.0
②2.0
③1.0
④0.0
/    9.00
(2) 資格保有者の育成状況 ①満30歳未満の一級の資格保有者(配置予定技術者を除く。)の雇用が有り、雇用期間が3年以上
②満30歳未満の二級の資格保有者(配置予定技術者を除く。)の雇用が有り、雇用期間が3年以上
③満35歳未満の一級又は二級の資格保有者(配置予定技術者を除く。)の雇用が有り、雇用期間が3年以上
④その他
①2.0
②1.0
③0.5
④0.0
(3) 若手・女性技術者の育成状況 ①配置予定技術者が満40歳未満又は女性であり、雇用期間が3年以上
②その他
①2.0
②0.0
(4) 札幌市ワーク・ライフ・バランスplus企業認証の取得状況 ①札幌市ワーク・ライフ・バランスplus企業認証ステップ3
②  〃  ステップ2
③  〃  ステップ1
④無し
①1.5
②1.0
③0.5
④0.0
(5) 正社員の奨学金返還の支援状況 ①次のいずれかに該当
ア  奨学金返還に係る金銭的な支援の実績有り
イ  奨学金返還に係る金銭的な支援を行う旨の社内規定を策定・保持している。ウ「さっぽろ圏奨学金返還支援補助金交付要綱」に基づく認定を受けている。 エ  独立行政法人日本学生支援機構のホームページの「企業の奨学金返還支援
(代理返還)制度」に登載されている。
②無し
①0.5
②0.0
2  配置予定技術者の評価  ※JVを結成して入札に参加する者は、各項目((5)は除く)の得点を出資割合で按分する。
(1) 継続教育(CPD)の取組状況 ①各団体で指定する推奨単位以上の取得有り
②各団体で指定する推奨単位の2分の1以上の取得有り
③その他
①1.0
②0.5
③0.0
/   12.00
(2) 若手技術者の活用状況 ①配置予定技術者が満30歳未満
②  〃  満30歳以上35歳未満
③  〃  満35歳以上40歳未満
④  〃  満40歳以上
①4.0
②2.0
③0.5
④0.0
(3) 女性技術者の活用状況 ①配置予定技術者が女性である。
②  〃  女性ではない。
①2.0
②0.0
(4) 若手・女性技術者の資格保有状況 ①配置予定技術者が満40歳未満又は女性であり、一級
②  〃  二級
③その他
①3.0
②2.0
③0.0
(5) 若手・女性技術者の現場代理人としての従事経験 ①配置予定技術者が満40歳未満又は女性であり、本工事と同種工事(公共工事)の現場代理人経験有り
②配置予定技術者が満40歳未満又は女性であり、公共工事の現場代理人経験有り
③その他
①2.0
②1.0
③0.0
合計      /   21.00

出所:札幌市提供資料(「札幌市工事等総合評価落札方式施行要綱」の別記3-4)。

 

表7-6 総合評価落札方式(工事)の本格導入にあたっての評価項目の追加と変更

評価項目 型式 備考
追加 I S O9 0 0 1 又はサッポロQMSの取得状況 地域貢献Ⅰ・Ⅱ 工事の品質確保や技術力の評価に資する評価項目であるため追加し、配点(1.0点)を設定。
一括審査Ⅱ
継続教育( C P D) の取組状況 人材確保・育成 人材育成に資する評価項目であるため追加し、配点(1.0点) を設定。
変更 継続教育( CP D) の取組状況 一括審査測量業務 「任意項目」から「必須項目」に変更。
一括審査設計業務
過去5 年間の本市工事被表彰回数 計画審査 成績点を評価の基本とする表彰のみを加点対象とし、それ以外の表彰は加点対象としない。ただし、令和5 年度以前に受けた表彰については経過措置あり。
実績評価Ⅰ・Ⅱ
札幌市ワーク・ライフ・バランスplus企業認証の取得状況 人材確保・育成 評価区分の内容から常時雇用する労働者数の条件を削除し、札幌市ワーク・ライフ・バランスplus企業認証のステップのみで評価。

出所:札幌市提供資料(後述の図7-1)より抽出。

 

役務委託については、対象は建物清掃業務のみです(履行期間が原則12か月超で、WTOの「政府調達に関する協定」が適用される、令和4年4月1日から令和6年3月31日までは予定価格3千万円以上のもの)。型式の導入はなく、「札幌市建物清掃業務総合評価一般競争入札実施要領」の表に示された評価項目が用いられています(表7-7)。

 

表7-7 建物清掃業務における総合評価落札方式の評価項目

分類 細分類 評価項目例
価格評価 価格評価
履行体制評価 履行体制 当該業務に係る人員配置量の提案
適正な履行確保のための業務体制
有資格者の配置
効果的な清掃方法の提案 など
履行実績 履行実績等
自主検査体制 自主検査体制の内容等
その他 障がい者の雇用の取り組み
環境配慮機材の使用状況 など
研修・雇用条件評価 研修体制 技術向上のための研修制度等の有無
資格取得支援制度の有無
従業員に対する社内表彰制度の有無 など
雇用条件 従業員の支払賃金の提案
健康保険加入の提案
通勤手当支給の提案
健康診断の実施の提案 など

出所:「札幌市建物清掃業務総合評価一般競争入札実施要領」より。

 

2)札幌市の総合評価落札方式の実績

 

表7-8 総合評価落札方式(工事、工事関連業務)の型式別の発注件数の推移

型式 2016年度 2017年度 2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
工事 計画審査型 0 0 0 0 0 0 0
実績評価Ⅰ型 26 25 24 37 32 21 31
実績評価Ⅱ型 13 12 11 14 12 17 21
人材育成型 11 8 11 10 10 9 8
地域貢献Ⅰ型 20 16 21 22 19 21 22
地域貢献Ⅱ型 19 12 6 6 7 7 10
一括審査Ⅰ型 22 34 38 44 63 63 70
一括審査Ⅱ型 15 35 79 67 73 81 75
合計 126 142 190 200 216 219 237
工事関連業務 測量業務型 3 5 5 4 2 3 8
一括審査測量業務型 13 28 35 30 26
設計業務型 6 43 31 36
合計 3 5 18 38 80 64 70

注1:企業局を含む。
注2:工事の2015年度分を参考までに示すと、「計画審査型」0件、「実績評価型Ⅰ」23件、「実績評価型Ⅱ」16件、「人材育成型」6件、「地域貢献型」31件、合計76件。
出所:表7-1に同じ。

 

 

表7-9 総合評価落札方式(工事、工事関連業務)の件数及び金額の割合の推移

工事 工事関連業務
一般競争入札 うち総合評価落札方式 一般競争入札 うち総合評価落札方式
件数 価格 件数 割合 価格 割合 件数 価格 件数 割合 価格 割合
百万円 百万円 百万円 百万円
2015年度 1,311 85,816 76 5.8 7,930 9.2 538 2,230 0 0.0 0 0.0
2016年度 1,264 73,340 126 10.0 10,825 14.8 517 3,156 3 0.6 32 1.0
2017年度 1,370 99,353 142 10.4 12,108 12.2 481 2,797 5 1.0 65 2.3
2018年度 1,234 91,264 190 15.4 12,068 13.2 566 3,701 18 3.2 111 3.0
2019年度 1,199 93,720 200 16.7 15,512 16.6 571 3,712 38 6.7 219 5.9
2020年度 1,221 101,129 216 17.7 17,141 16.9 565 3,301 80 14.2 600 18.2
2021年度 1,101 83,421 219 19.9 13,594 16.3 549 4,129 64 11.7 494 12.0
2022年度 1,169 144,485 237 20.3 17,936 12.4 554 3,883 70 12.6 524 13.5

出所:表7-1に同じ。

 

次に、札幌市から提供された資料で総合評価落札方式の実績(件数、金額)をみていきます。表7-8には型式別の発注件数が、表7-9には全体に占める割合などが、それぞれ示されています。

第一に、工事においては、2022年度に、件数ベースで全体の2割を総合評価落札方式が占めています。型式別にみると、「受発注者双方の事務効率化等を図る観点から、入札参加要件や評価基準等を共通化できる複数の工事について適用される」一括審査Ⅰ型、Ⅱ型のウェイトが大きいです(一括審査型のベースは、実績評価型です)。後述のとおり、札幌市では、総合評価落札方式の数値目標を20%に設定した運用がされてきました。なお、金額ベースでみると、ピークは2020年度の16.9%で、最新値である2022年度には12.4%に下がっています。

第二に、工事関連業務では、件数ベースで全体の12.6%、金額ベースで全体の13.5%を占めています。

第三に、どの工種でどのランクの工事がどの型式で発注されているのかを知りたくて、関連資料を追加で照会しました。提供されたのは2023年度の数値です(表7-10)。

合計162件のうち、工種では、「土木」が46件と最も多く、「舗装」が28件、「下水道」が27件、「造園」が21件と続いています。等級別にみると、「A(A1、A2)等級」が81件、「B等級」が67件と続きます。

 

表7-10 2023年度総合評価落札方式(工種・等級・型式別)

工種 等級 型式 件数 工種 等級 型式 件数
土木 A1 実績評価Ⅰ型 5 舗装 A 人材育成型 1
実績評価Ⅱ型 1 地域貢献Ⅰ型 1
人材育成型 4 一括審査Ⅰ型 17
10 19
A2 実績評価Ⅱ型 3 B 一括審査Ⅱ型 9
人材育成型 1 9
地域貢献Ⅰ型 2 造園 A 実績評価Ⅰ型 6
6 実績評価Ⅱ型 5
B 実績評価Ⅱ型 3 人材育成型 1
地域貢献Ⅱ型 3 地域貢献Ⅰ型 7
一括審査Ⅱ型 24 一括審査Ⅱ型 2
30 21
C 0 B 0
下水道 A1 実績評価Ⅰ型 4 C 0
地域貢献Ⅰ型 2 建築 A 実績評価Ⅰ型 2
6 2
A2 実績評価Ⅱ型 2 B 0
地域貢献Ⅰ型 4 電気 A 実績評価Ⅰ型 2
6 2
B 地域貢献Ⅱ型 4 B 一括審査Ⅰ型 13
一括審査Ⅰ型 11 13
15 C 0
C 0 A 実績評価Ⅰ型 3
一括審査Ⅰ型 6
9
B 0
塗装 一括審査Ⅰ型 14
14
合計 162

注:不調・中止案件は含まない。
出所:表7-1に同じ。

 

 

表7-11 総合評価落札方式(建物清掃業務の委託)の実績

件数 案件
2022年度 10件 交通局地下鉄駅舎他 3件
札幌市本庁舎他 7件
2023年度 10件 交通局地下鉄駅駅舎 4件
水道局本局庁舎 1件
下水道河川局庁舎他 5件

出所:表7-1に同じ。

 

表7-12 札幌市が契約締結した清掃業務に係る集計(2021年度・2022年度)

契約締結案件全体 うち、総合評価案件 総合評価案件の契約金額が全体に占める割合(%)
案件数(件) 契約金額・1年間換算(円) 案件数(件) 契約金額・1年間換算(円)
a b b/a
2021年度 69 839,941,146 12 352,940,280 42.0
2022年度 68 721,128,649 10 219,138,480 30.4
合計 137 1,561,069,795 22 572,078,760 36.6

注1:通年(履行期間:12か月以上)の案件のみを対象に集計。
注2:企業局の案件を含む。
注3:総合管理業務、清掃と警備を同一案件でまとめて発注している案件は含まない。
出所:表7-1に同じ。

 

第四に、建物清掃業務では(表7-11)、総合評価落札方式による委託件数は、2022年度も2023年度もともに10件です。

(1)正木(2022)の図表7-2によれば、2017年度から2021年度までの各年度の件数は4件→4件→6件→11件→12件ですから、20年度、21年度に比べると減ったとはいえ、2桁が維持されています。(2)川村(2024b)の表7-6によれば、2022年度の建物清掃業務は143件ですから、総合評価落札方式の占める割合は、件数ベースで全体の約7%ということになります。(3)金額ベースではどの位の割合になるかの資料照会を追加で行い、表7-12のデータを提供いただきました。総合評価落札方式の適用条件を反映して、件数ベースに比べると、金額ベースでは非常に大きなウェイトを占めています。

 

3)札幌市の総合評価落札方式の本格導入とその背景

先述のとおり、札幌市の総合評価落札方式は2024年度の早期発注工事等から本格実施(「本格導入」)されています。言い方を変えると、それまでは「試行導入」であって、川村(2024a)の表3-1でいえば、札幌市は、20市のうち3市のなかにありました。今回の政策変更[2]の背景や今後の方針などを尋ねました。

 

図7-1 総合評価落札方式の本格実施について

出所:札幌市提供資料より一部を転載。

 

第一に、当日札幌市から提供いただいた資料(図7-1に一部を転載)によれば、「これまで型式の多様化や評価項目・配点の調整など継続的に制度の見直しや改善を行ってきたが、この度、公共工事の品質確保やダンピング対策の強化といった総合評価の本旨を軸に見直しを行い、総合評価落札方式を本格実施することとした。」(下線は札幌市)とあり、その柱は、Ⅰ.ダンピング対策の強化、Ⅱ.工事の品質確保、Ⅲ.その他の見直しの三つに分かれています。

Ⅰは、「総合評価点の算出方法を変更し、調査基準価格を下回った場合に総合評価点が大きく下がる制度とし、ダンピング対策の強化を図る」ことがその内容です。

Ⅱは、上記1)でみたとおりで、「成績評価項目に係る無段階インセンティブ方式の採用(「人材確保・育成型」は除く)」と「型式別加算点の変更」の二点です。

Ⅲも、上記1)でみたとおりで、①型式の名称変更、②評価項目の新設・追加、③評価項目の変更の三つに分かれています。

第二に、今回、総合評価落札方式の本格導入に切り替えた理由などを尋ねたところ、概略、以下のような回答を得ました。

本格実施に切り替えた理由については、これまでの試行実施の結果、低入札落札が散見されていたことや工事等成績評定において総合評価落札方式と一般案件との工事等成績平均点に顕著な差が見受けられなかったこと等から、総合評価の本旨を軸に主要な方針である「ダンピング対策の強化」及び「工事等の品質確保」の見直し改善を行ったためとのことでした。

札幌市からのこの回答を踏まえて、試行導入期における一連の取り組みについての総括文書のようなものの存否を尋ねましたが、とくに存在しないとのことでした。市からの説明によれば、そもそも、2016年度に型式を8つに増やしてからすでに長い期間が経過しており、大枠は定着したと判断した。そこに、ダンピング対策や成績評価点の改善などの今回の変更点を加えてこのタイミングで本格実施をしようということになった、とのことでした。

第三に、なぜこの時期に切り替わったのか、あるいは、言い換えれば、試行導入から本格導入に切り替わるのになぜ長い期間を要したのかについて、なお十分に理解ができなかったので、当日の質問の繰り返しになると思われましたが、以下の2つの点を追加で尋ねました。

一つは、総合評価落札方式の「本格導入」と「試行導入」に質的な違いは何かあるのか、両者にどのような違いがあるのか(ないのか)という点です。

札幌市からの回答によれば、総合評価落札方式の「試行導入」と「本格導入」に質的な違いはない。本格導入時に、「ダンピング対策の強化」と「工事の品質確保」に資する工事成績点を、落札者を決定する際に使用する総合評価点において、評価の比重を高めるよう改善している、とのことでした。

もう一つは、一つ目の質問とも重なりますが、札幌市が今回、「本格導入」を選択するに至った理由・背景は何であるのか、という点です。

回答によれば、前質問に対する回答の繰り返しになるが、「試行導入」と「本格導入」に違いはない。これまで約17年間、試行実施した結果、低入札落札が散見されていたことや工事等成績評定において総合評価と一般案件との工事等成績平均点に顕著な差が見受けられなかったことの2つの課題があった。これらの課題である「ダンピング対策の強化」と「工事等の品質確保」について見直し改善を行い、本格導入する運びとなったものである、とのことでした。

この点については、後述の4)の回答とも合わせて、なお疑問の残るものとなりました。

さて、第四に、1)でもふれましたが、型式「人材確保・育成型」の設置(更新)、評価項目「正社員の奨学金返還の支援状況」の新設について取り上げておきます。

札幌市働きやすいまち推進協議会(後述)で配布された資料によれば、「昨今、建設業における人手不足が顕著となっており、将来の担い手の確保・育成支援策としての取組を図る必要があることから、この度、若年者雇用の取組として正社員の奨学金返還支援の取組を行う企業を総合評価落札方式(人材確保・育成型)の入札において加点評価する」とのことでした。

人材確保は今後非常に重要になると筆者は考えていること、但し、「人材育成型」の発注件数は2022年度で8件にとどまること、更新された「人材確保・育成型」の拡大の予定はどうなっているのか、一方で、「人材育成型」では入札参加者の間で評価点の得点差がつき辛いという評価を聞いたことがある──以上のような問題意識などを伝え、質問・再質問をしました。

市からの回答は、「人材確保・育成型」を今後増やしていくなどの計画は現時点ではないが、人材確保ということは常に意識せざるを得ない。「人材確保・育成型」において成績に係る評価項目を設けていないことから、参加者間で得点差がつき辛いといった課題があるが、若年者や女性の人材育成・確保に資することから、今後、同型式の活用を検討している、とのことでした。

 

4)札幌市の総合評価落札方式の拡大の予定

札幌市からの以上のような説明や実績を踏まえて、総合評価落札方式のウェイトを増やしていく予定の有無を尋ねました。

札幌市からは、大きく増やすことを現時点で企図しているわけではない、という趣旨の回答でした。

公契約条例の制定こそ札幌市の明確な課題として認識されていないものの、総合評価落札方式に関する大きな方向性としては、拡大が予定されていると筆者は思っていたため、札幌市からのこの回答は意外に感じました。その後、札幌市議会での議論を調べるなかで、総合評価落札方式を拡大していくかどうかは、以前から議会でも取り上げられ、議論がされていたことを知りました[3]。冒頭に述べたとおり、この辺りから、筆者の新たな研究課題が生じてくることになりました。では、調査の結果をみていきましょう。

 

表7-13 総合評価落札方式の目標値

地元企業の受注機会の拡大、公共工事などの品質確保や、過度な低価格受注の防止などを目指して、総合評価方式の更なる拡大や最低制限価格の設定の見直しなど、入札・契約制度の改善を進めていきます。また、工事や委託業務に従事する労働者が、適正な労働環境の下で働くことのできる取組について検討します。
指標 工事の競争入札に占める総合評価方式の割合 2018年 2022年
15% 20%

出所:札幌市「札幌市まちづくり戦略ビジョン・アクションプラン2019」p.177より。

 

札幌市からは、総合評価落札方式のさらなる拡大については、事業者アンケートの詳細分析などを踏まえて判断を行うことと説明がされました。

すなわち札幌市によれば、これまでの「アクションプラン2019」の目標数値20%(表7-13)の設定については当時の状況から競争入札に占める総合評価落札方式の発注割合を15%から20%に拡大すべく取り組んできた[4]。また、「アクションプラン2023」の数値目標については、「入札参加者アンケート」(正式名称は、「札幌市総合評価落札方式に係る入札参加者アンケートの実施結果(速報値)」)の結果で総合評価落札方式の拡大に否定的な意見が68.8%と多数であったことを踏まえ、段階的な目標設定が必要と判断し25%に設定したもの、とのことでした。

この入札参加者アンケートは、追加で札幌市からご提供いただきました。次号で紹介しますが、札幌市がいう「拡大に否定的な意見」(現状維持志向、縮小志向)が全体の3分の2以上を占めることをどう考えるか、事業者側への聞き取りなどでこの点を明らかにするのが研究上の課題です。

なお、工事における目標値は上記のとおりですが、建設関連業務や建物清掃業務における目標値を尋ねたところ、(1)建設関連業務においては、総合評価落札方式の目標値は設定していない。(2)建物清掃業務については、政府調達案件を対象としており、基本的に総合評価を実施済み、とのことでした。

 

5)札幌市の総合評価落札方式、入札・契約に関するその他の質問

札幌市の総合評価落札方式や、札幌市の入札や契約に関する総合的なビジョン・方針などについて追加で3つ質問をしました。

第一に、総合評価落札方式の運用上の課題について尋ねました。正木(2022)には、受注者の事務負担が大きいことや入札執行の過程で技術評価を実施するために時間を要することなどが記されていました。この点は現時点においても同様であると考えてよいか、また、何か技術的な工夫などは図られているか、などを尋ねました。

市からは、技術審査書類の作成・提出や審査に時間を要することなど受発注者双方の事務負担が大きいことと通常の一般競争入札よりも落札者決定までに要する期間が長いことが運用上の課題となっていること、事務負担については、事前審査方式を前提とする計画審査型を除くすべての型式で簡易確認方式を採用する運用としており、受発注者双方の事務負担の軽減を図っていることが回答されました。

第二に、型式・評価項目に関して、建物清掃業務における「従業員の支払賃金の提案」のように、賃金関連を建設工事の型式で評価項目として導入するのは、技術的に不可能なことなのかを尋ねました。公契約条例の制定が現時点では厳しいようであることを踏まえての質問です。

市からの回答は、地域貢献等の評価については、災害対応や本市ボランティア等の活動実績、ISO9001(サッポロQMS)取得等さまざまな評価項目があり、いずれも工事の品質確保に資するものとして導入している。賃金関連を評価項目として導入することについては工事の品質確保に直結するものではないため、今のところ検討していない、とのことでした。

第三に、制度の細部を尋ねてきた上で質問の順序は逆になるのですが、札幌市の入札や契約に関する総合的なビジョンや方針の有無を尋ねました。各地で制定されている公契約条例の前文──例えばよく引き合いに出される野田市の公契約条例の前文を参照──のようなものを念頭においての質問です。

札幌市からの回答は、「札幌市工事請負契約に関する基本方針」の他、「アクションプラン2023」[5]において「入札契約制度の改善」を事業目標として掲げています、とのことでした。

そこで、同プランの該当部分(p.99)を抜き出すと以下のとおりです。(1)まちづくりの第12番目の基本目標として、「雇用が安定的に確保され、多様な働き方ができるまち」が掲げられています。そして、「充実・強化する取組」として、「人手不足の解消に向けた人材確保への支援」と「求職者への就業支援と働きやすい職場環境の整備」の二点が示されています。(2)その上で、「主な事業」として、「さっぽろ圏人材育成・確保基金造成事業」、「働きやすいまち推進に向けた協議会の設置及び新たな仕組みの創設事業」に加えて、「入札・契約制度の改善事業」があげられています。(3)同事業における具体的な「事業内容」は、「現場で働く労働者の適正な処遇の実現とキャリアパスの明確化等、担い手確保につながる取組を促進します。また、公共工事の品質確保とダンピング対策の強化を図るため、総合評価落札方式の改善を進めます。」とあり、「事業目標」として掲げられているのは、「工事の競争入札に占める総合評価落札方式の割合」を「2022:22%⇒2027:25%」に上げること、とあります。

 

 

8.その他

最後に、本稿テーマにも関わると思われる「働きやすいまち推進協議会(以下、協議会)」のことにふれておきます。誰もが働きやすいまちを目指す「協議会」が札幌市に設立され、初会合(第1回会議)が2023年12月14日に開催されています[6]

「協議会」は、政労使(札幌市、札幌商工会議所、連合北海道札幌地区連合)で構成され、設立目的は、「札幌市では、誰もが働きやすいまちを目指し、さまざまな課題がある中で、人手不足の解消による地元企業の経営の安定化と労働者の雇用環境向上の両立を図るため、新たな仕組みの創設に取り組」む。「この検討を進めるため、札幌市との課題認識の共有と、将来に向けた対策について意見交換を行うことを目的として、経済界や労働界の関係団体と協議会を設立」するとあります。

事務局は、財政局管財部と経済観光局経営支援・雇用労働担当部で、年に2回程度会議の開催が予定されています。第1回会議では、指定管理者制度への人件費スライド導入が札幌市側から報告された後、「人手不足について」意見交換が行われています。意見交換では、札幌市からは「札幌市の就業状況と実施事業について」のほか、CCUSの活用、人材確保・育成型総合評価落札方式等の説明が行われています。

なお、2024年6月21日には通算で第2回目となる会議(2024年第1回会議)が開催されています。本稿テーマにも関わる、札幌市における入札・契約制度や各産業の働き方に関する仕組みがどう扱われるのか注視していきたいと思います。

 

(かわむら まさのり 北海学園大学教授)

 

[1]調査では、「同要領」の2022年4月8日の一部改正の内容を尋ねましたが、同改正は、会社法が変更されたことに伴う参加資格の整理の要領改正であり、総合評価の内容を変えたというものではありませんでした。

[2]試行導入から本格導入への変更には質的な違いはないとのことですが、制度の拡充があったのは確かですから、政策変更と表現しました。

[3]例えば、「令和5年第一部予算特別委員会札幌市議会第一部予算特別委員会記録(第2号)令和5年(2023年)3月1日(水曜日)」における、ふじわら広昭議員の質問などを参照(「札幌市議会会議録検索システム」で検索)。同議員への聞き取り調査も実施しました。

[4]補足しておくと、工事における総合評価落札方式の数値目標は「アクションプラン2019」で初めて設定され、競争入札全体に占める割合を20%と定められました。では、この20%とはいかなる根拠で設定されたのか。ふじわら広昭議員への管財部長による答弁(令和5年3月1日、第一部予算特別委員会)によれば、「この数値目標の設定の根拠につきましては、設定する直前の年度であります平成30年度の発注割合は、市長部局で16.9%となってございまして、さらなる拡大を視野に20%を目指すということにしたものでございます。」とのことでした。

[5] 札幌市のウェブサイト「第2次札幌市まちづくり戦略ビジョン・アクションプラン2023」を参照。

[6]「協議会」の会議資料や議事録は、札幌市のウェブサイト(「札幌市働きやすいまち推進協議会」)で公開されています。

 

 

(参考文献・資料)

  • 川村雅則(2024a)「札幌市の公共調達及び総合評価落札方式に関する中間報告(1)──2024年調査に基づき」『建設政策』第215号(2024年5月号)8-12
  • 川村雅則(2024b)「札幌市の公共調達及び総合評価落札方式に関する中間報告(2)──2024年調査に基づき」『建設政策』第216号(2024年7月号)36-43
  • 正木浩司(2022)「札幌市の公共調達における総合評価落札方式の実践の現況──2021年度調査に基づき(非正規公務労働問題研究会レポート)」『北海道自治研究』第642号(2022年7月号)23-36

 

 

 

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