川村雅則「検証・宜野湾市図書館会計年度任用職員雇い止め事件その1」『NAVI』2026年3月18日配信

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■はじめに──民間ではありえない

長年働いていても簡単に雇い止めがされてしまい、法制度上もそのことが容認されてしまう(実効性ある救済制度が存在しない)のが非正規公務員の雇用(任用)である。

民間の非正規雇用者に設けられた制度設計が十分であるとはまったく思わないけれども、雇用安定に関しては、労働契約法第19条で雇い止め法理が明文化され、第18条で無期雇用転換制度が設けられてきた。それに対して新たな非正規公務員制度である会計年度任用職員制度では、「有期雇用の濫用」が制度化されたようなもので、民間ではあり得ない事態が生じている[1]。そのことを「民間ではおよそあり得ない」という言葉で批判してきた[2]

 

図 民間非正規と公務非正規の制度設計の違い

注:公務におけるaの墨塗箇所は、条件付採用期間(試用期間)。bの点線は勤務実績に基づく能力実証が認められた箇所。cの実線は、公募制による能力実証が必要とされる箇所。
出所:筆者作成。

 

そのような中でも、現場からの批判を踏まえ、総務省は、再度任用時におけるいわゆる3年公募の助言規定を廃止する(2024年6月)などしてきた。そして全国の自治体の中では、公務職場における人手不足・欠員の状態を受けて、あるいは、労働組合や議員から後押しされるかたちで、公募を廃止するケースが増えてきた[3]。その過程で、任命権者としての責任を自覚するに至ったケースもあると思われる。

もっとも、以上のことは、第一に、総務省によって、会計年度任用職員制度の基本が変更されたことを意味するものではない。公募が廃止された自治体でも、任用は、原則として会計年度ごとであることには変わりはない。彼らの雇い止めが法的に救済されることを意味するものではない。何よりも、総務省が制度の基本部分を変更する必要性を感じていないようにみえる[4]

第二に、それでも自治体が任命権者としての責任を自覚するのであれば、適切な労務管理が期待できるし、そうしている自治体も実際にある。しかし、そうではない自治体においては、総務省が制度の基本部分の変更まで行っているわけではないことに自信を持ってか、恣意的な雇い止め、あるいは、内容面でも手続き面でも乱暴な雇い止めが行われている。

以上のような国(総務省)と自治体の関係は、「共犯関係」にあると表現してきた[5]

今回(2026年2月)、労働組合(沖縄県公務公共一般労働組合。以下、沖縄自治労連)から寄せられた、宜野湾市図書館で働く会計年度任用職員5人に対する雇い止めもその一つであると思われる。

 

本稿は、同労組からの聞き取りや提供資料に基づきまとめたものである[6]。今回の雇い止めの理不尽さを明らかにするのとあわせて、会計年度任用職員の雇用がいかに守られていないものであるかを浮き彫りにし、もって、会計年度任用職員制度の改善を求める関係者の取り組みに貢献したい。

なお、(1)本稿は、市側や当事者からの聞き取りをまだ行い得ていない段階でまとめたものである。よって細部は修正する可能性があることをご承知おきいただきたい。(2)第2回の団体交渉が3月19日に予定されている。そこで明らかになったことは第二報でまとめたい。(3)宜野湾市の会計年度任用職員に関する情報を、総務省による2025年の調査[7]で「資料」として整理している。ただ、誤って回答されているのか、人数が正確ではないように思われる。その点に留意して参照されたい(一部は2024年調査の結果を示した)。

 

 

■事件の概要

2026年2月5日に、宜野湾市図書館で働く会計年度任用職員5人が雇い止めを通告された(以下、便宜上、被解雇者と呼ぶ)。いずれも女性である。勤続年数は最も長い職員で11年、最も短い職員で3年である。

労働組合からの聞き取りを整理すると、(1)同市の図書館で働く会計年度任用職員は、合計18人である[8]。(2)会計年度任用職員は、二人の統括の下に設けられた5,6つの班に配置されて働く。班は、扱う書籍の内容・性格によって編成されている。(3)今回雇い止めにあった職員のうち、1人は統括として、2人は班長として、それぞれ働いていた。

なお、2025総務省調査によれば、宜野湾市では、3年公募が採用されている[9]。但し、今回の公募・選考では、2026年3月末で勤務歴が3年以上の者(3年を終える者を含む)の全員=14人が選考対象となっている。

 

仕事内容 勤続年数

(2026年3月時点)

備考
Aさん 司書 11年終了 統括
Bさん 司書 9年終了 班長
Cさん 司書 4年終了 班長
Dさん 事務 3年終了
Eさん 事務 3年終了

出所:労働組合からの聞き取りに基づき作成。

 

表 図書館職員の公募~雇い止め通告~第1回団体交渉まで

1月8日 図書館職員の公募が掲示される(応募期間は1月30日)

1月22日 人事課長名で所属長各位宛に「令和8(2026)年度会計年度任用職員の任用について」という文書が発出される

1月中旬~ 図書館職員の選考が開始される

2月5日 5人が雇い止めを通告される

   被解雇者が図書館長に対して雇い止め理由を文書で示すよう求める

2月6日 被解雇者のうち3名(残り2名は休み)が図書館長等と面談

2月6日 労働組合が、市役所を訪問し、人事課と教育委員会に対し5名の雇い止めの撤回等を求める

2月8日 被解雇者のうち残り2名が図書館長等と面談

2月10日 被解雇者5名が労働組合事務所を訪問

2月13日 労働組合が市に団体交渉を申し入れる

2月20日 第1回団体交渉が開催される(人事課から3名、教育委員会から2名が参加)

出所:労働組合からの聞き取りと提供資料に基づき作成。

 

先にも述べたとおり、宜野湾市では3年公募が採用されている。そして、今回は勤続3年以上の職員全員の公募が行われている。

この点に関わって、1月22日付けで人事課長名で所属長各位宛に「令和8(2026)年度会計年度任用職員の任用について」という事務連絡文書が発出されている。

文書では、「令和8年度の会計年度任用職員の任用にあたっては、下記の点に留意していただいた上で、募集・選考・内定等を行っていただきますようお願いいたします。」という一文に続き、次のように記されている(下線は引用者)。

 

1.任用について

任用する会計年度任用職員の選考にあたっては、できる限り広く募集を行うという観点から公募を行うことが望ましいですが、例外的に、令和7年度の勤務実績に基づく能力の実証により、公募をせずに同じ職員を再度任用することも可能です。

ただし、こうした場合においても漫然と同じ者の任用を繰り返すのではなく、勤務実績をもとに再度の任用をするのはおおむね連続して2回までとするなど、定期的な公募の実施を検討していただきますようお願いいたします

以上のことを踏まえ、令和8年度の任用事務に際しては、下記いずれかの手順で進めていただくようお願いいたします。〔以下、略〕

出所:宜野湾市作成事務連絡文書「令和8年度会計年度任用職員の任用について」

 

 

■5人はなぜ雇い止めされたのか──雇い止めの理由

今回の公募・選考では、在職中18人のうち14人のほか、新規で応募をしてきた15人が──つまり計29人が──選考対象となった。

では、5人の雇い止めの理由は何であったのか。

結論から言えば、雇い止めの理由は市から示されていない。より正確に言えば、「選考の結果、(被解雇者より)もっといい人がいた」という程度の理由は示されている。しかし、そもそもどのような基準・内容で選考が行われ、被解雇者の選考結果はどうであったかなど、具体的なことは示されていない。この点をまず、被解雇者からの申し入れで2月6日に行われた、図書館長・係長との面談の結果で確認する。

 

当日は、被解雇者3名に対して、図書館長と係長による対応がなされている。被解雇者の記録によれば、面談では、館長と係長から次のことが回答されている。

 

係長「落としたという扱いではない。採用したい人がいたから採用した」「応募は30人いた。書類選考で落とした人もいる。〔被解雇者を〕恣意的に5人選んだわけではない」「落としたわけではない。選考の結果、もっといい人がいたからそちらを選んだ」「選んだ基準としては宜野湾市民図書館にふさわしいと思う人」

館長「選んだ人は何がどう良くて選んだかは個人情報だから言えない」「誰を選ぶかは職員6人で協議した。それぞれの意見の中には私と違う意見もあるが、館長の独断では決められない」

 

館長・係長による以上の回答内容に、筆者の推測もまじえて整理すると、第一に、雇い止めではないという市側の認識の背景には、実態として3年働いていようが10年働いていようが、会計年度任用職員の任用はあくまでも会計年度ごとの任用である、という制度設計者=総務省の考えを忠実にベースにしていることが推測される。

第二に、そのような、あくまでも会計年度ごとの任用であるという認識がベースにあるためであろうか、どのような基準で選考を行ったのか、とか、なぜ雇い止めをした(再度任用をしなかった)のか、などは、被解雇者に説明する必要がないと考えているようにみえる。

 

もちろん総務省は、そのようなことにならぬよう、自治体への通知文書(「会計年度任用職員制度の適正な運用等について」)や総務省マニュアル(「会計年度任用職員制度に係る事務処理マニュアル」)において、例えば、次のようなことを自治体に助言している。

「なお、結果として複数回にわたって同一の者の任用が繰り返された後に、能力実証の結果や業務の見直しによる業務自体の廃止その他の合理的な理由により再度の任用を行わないこととする場合においては、事前に十分な説明を行う、他に応募可能な求人を紹介する等配慮をすることが望ましいです。この点については、公務員は適用除外とされているものの、労働基準法第14条第2項に基づく「有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準」(厚生労働省)において、契約を更新しない予告や理由の明示等が定められていることにも留意ください。」

出典:総務省マニュアル(2025年8月)p.41より。

 

しかしながら、任命権者としての自覚がない自治体にとってはこうした通知内容はまったく意味をもたないことが今回の雇い止めからも明らかである。総務省は、自治体の任用実務のこうした実態をみて制度設計を行う必要があるだろう。

 

その後(2月20日)に行われた団体交渉における市側の回答(組合側による記録)をみても、「選考の結果、(被解雇者より)もっといい人がいた」を上回る理由はとくに示されていない。被解雇者の選考結果も示されていない。以下は、労働組合側による記録の転載である(表記はそのまま)。

 

教育部次長「14名しかいない枠の中で面接の中で専門性であったり、また協調性であったり、次年度の期待度とかもいろんなこと含めた上で。総合相対的に客観的判断をして比較検討をしてで皆さんで決めたということのお話しをしておりまして、正当にルールに則ったあの面接をして判定はしているんですね。」

教育部次長「皆さん頑張ってくれていたけど、今回来る方が少し上回っていっていくことが来たので、それからそれを細かい部分についてはこれは個別具体的なものなので、お答えできない。だからなかなかやっぱり理解できないこともあるし、皆さんあの厳しい状況おかれているっていうのはここは理解をしてるんですけれども、今回はそのルールに則った正式な組織として、ご理解頂きたい。」

 

この教育部次長の回答を読む限り、面接では、専門性、協調性、次年度の期待度が聞き取られ、その結果で合否が判断されたようであるが、そうなのだろうか。

被解雇者からの聞き取りに基づく労働組合の整理によれば、(1)選考は、面接のみであった。(2)面接時間は1人20分(長い者は40分)程度で、(3)面接で聞かれた内容は、図書館の改善点、次年度はどのようなことをやりたいか、所属を希望する班はあるか、家族のこと(要介護者の有無)などで、専門性、協調性、次年度の期待度に関するような質問はとくになかったとのことである。

これで果たして市は図書館職員の適否を判断できたのだろうか、というのが労働組合からこれを聞いたときの筆者の率直な感想である。面接内容の詳細については、市の担当者や被解雇者に直接尋ねてみたい。

 

なお、第一に、その後、選考にあたった職員から労働組合が聞き取ったところによれば、(1)職員の選考は館長に一任されていたこと、(2)相対的・客観的に判断したと団体交渉では回答されているが、そのような判断方法ではなかった(具体的な基準に基づく選考ではなく、主観的な選考であったこと)ことが、職員から回答されているという。

第二に、被解雇者5人のうち、雇い止めが通告される前に労働組合に加入していたのは1人であった──余談であるが、組合員がいたことが労働組合による今回の迅速な対応につながっている──が、公然化はしていなかった。よって、今回の雇い止めは組合員を狙い撃ちにしたものではないと思う、というのが労働組合側の推測である。

第三に、被解雇者やその他の図書館職員からの聞き取りに基づく労働組合側の整理によれば、被解雇者は仕事に積極的で、とりわけ統括は、誰からみても仕事ができる職員で、図書館業務全体を切り盛りしている職員であるという。そして5人は、よりよい図書館を目指してよく意見を述べている職員でもあるという。この点、つまり、よく意見を述べている点が館長たちにけむたがられたのではないかと労働組合は考えている。

 

 

■5人の人事評価はどうであったのか──人事評価制度をめぐる問題

被解雇者の仕事ぶりはどうであったのだろうか。5人中3人が統括や班長を務めていたことを考えると、評価の低いことはあまり考えにくい。被解雇者の人事評価はどうであったのだろうか。

 

表 会計年度任用職員に対する人事評価の内容

評価項目 1次評価欄
評価記号(可、不可) 所見(必要に応じ)
業績評価 目標 達成基準
業務の内容を把握し、定められた手続きや上司の指示に従い、与えられた業務を適切に行う。 左記について、特に留意すべき問題がない。
能力評価 ①服務規律を遵守し、業務に取り組んでいる。
②基本的な接遇マナーを身につけている(公務員として相応しい身だしなみや丁寧な言葉遣いをしている。)
③チームワークを尊重し、自ら進んで又は依頼があれば積極的に協力している。
④係員や上司等への報告・連絡・相談を適切に実施し、係員や上司の指示に適切に従っている。

出所:宜野湾市「会計年度任用職員 人事評価シート」より作成(レイアウトは異なる、注釈は割愛)

 

労働組合から提供された宜野湾市の人事評価シートによれば、市の会計年度任用職員は、業績評価が1項目、能力評価が4項目(①服務規律、②基本的な接遇マナー、③チームワーク、④報告・連絡・相談等)で評価が行われている。被評価者のこれらはどうであったのか。

もっとも、このシートの下部には5つの注釈が設けられており、その一つには、「評価結果は再度の任用における参考資料とするため、被評価者に対し原則開示しないものとします。」(下線は引用者)と記されている。

結果が被評価者に開示されない人事評価制度など適切だろうか。

 

この点について総務省は、地方公務員に人事評価制度が導入されるに先立ち、通知(総務省自治行政局長「地方公務員法及び地方独立行政法人法の一部を改正する法律の運用について」2014年8月15日)を発出していた。制度は常勤職員より簡易なものであってよいと思うが、同文書中の「1 人事評価制度に関する規程等の整備」の考え方については、会計年度任用職員の人事評価制度の設計に際しても参考になるだろう。

各地方公共団体の任命権者においては、改正法の趣旨を踏まえ、以下の点に留意しつつ、評価の基準及び方法などの人事評価制度に関する規程等の整備を行うことが適当であること。既に現行の勤務評定の運用として人事評価を実施している団体においても、改正法及び本通知に照らして必要な場合には、所要の充実や改善を行うこと。

① 人事評価制度に関する規程等においては、国の人事評価制度などを参考に、評価基準等の明示、自己申告、面談、評価結果の開示、苦情対応、評価者訓練などについて、必要な規定等を設けておくことが適当であること。

② 規程等の整備に当たっては、職員への十分な周知と理解を踏まえながら進めていくことが重要であること。また、規程等を制定又は変更した場合には、職員への周知に努めること。

③ 人事評価制度を円滑に導入するためには、簡易かつ実効性の高い制度を構築することが必要であること。また、試行や実際の運用を通じ、必要に応じて改善していくことが重要であること。

出所:総務省自治行政局長「地方公務員法及び地方独立行政法人法の一部を改正する法律の運用について」2014年8月15日より転載。

 

そもそも人事評価の目的は──とくに、人事評価結果に基づく昇給などのない会計年度任用職員の場合には──人材育成・能力開発におかれるべきであると筆者は考えているが、本人への開示がなければ、そのようなことは期待できないばかりか、恣意的な評価や雇い止めさえ可能となってしまうであろう[10]

 

なお、市に対する労働組合からのその後の要請によって、(1)被解雇者の2023年度と2024年度の人事評価の結果が開示されることが回答されたとのことである。但し、現時点(3月18日時点)では、結果は開示されていない。(2)2025年度の人事評価については、再度任用されない職員には開示されない(できない?)と回答されたという。市のこの回答には違和感をもった。被解雇者こそ自らの働きぶりがどう評価されていたかを知りたいと思うのは当然ではないだろうか。

 

あらためて思う、5人はなぜ解雇されたのだろうか。

建設的な議論・交渉を行う上では、次のような点は少なくとも開示される必要があると思われる。(1)宜野湾市は3年公募を採用しているようであるが、今回、図書館で、3年公募「以上」の公募(勤務年数が3年の倍数に該当する職員以外にも公募)を行った理由は何であるのか。(2)選考では、どのような選考基準が設けられ、面接では何が聞かれたのか。面接シートなど面接内容や面接結果を記録した文書は存在しないのか。(3)被解雇者5人の選考結果はどうであったのか。短い者で3年、長い者で11年も働いていた5人──とくに統括や班長──の選考結果の、どこが新規採用者に劣ったのか。(4)5人の人事評価──「再度の任用における参考資料」にもされる人事評価──はどのような内容であったのか。統括や班長として働く者も人事評価は低いものであったのか。人事評価を開示せずにこうして雇い止めするようなことは公正なのか[11]

 

 

■会計年度任用職員の更新関係は管轄外──公平委員会の現状

ところで、公務員は労働基本権が制約されている。そのことへの代償措置として、首長など任命権者から独立した人事機関として、人事委員会や公平委員会が設置されている(前者は、都道府県・政令市・特別区・一部の市において、後者は、その他の市町村において)。そして、同機関では、表のとおり、措置要求・審査請求・苦情処理など、任命権者の人事権の行使をチェックするなどして、人事行政の適正化が期待されている。

 

表 措置要求・審査請求・苦情処理

措置要求 職員の給与や勤務時間等の勤務条件について、当局が維持改善等の適切な措置を執るよう、人事委員会・公平委員会に要求できる制度
審査請求 職員がその意に反して懲戒処分や分限処分などの不利益な処分を受けた場合に、人事委員会・公平委員会にその処分が適切な内容であるかなどについて審査を請求できる制度
苦情処理 職員の勤務条件や服務等に関する苦情について、相談を受け付け、迅速に対応することを目的とした制度

出所:自治労(2023)pp.110-115より。

 

もっとも、以上は教科書的な説明であって、今回のケースでは、市の公平委員会に対して被解雇者が直接、電話で尋ねたところ、「会計年度任用職員の更新関係[12]は管轄外」と回答をされたとのことである。

総務省は、公平委員会(や人事委員会)の現状がこのようであることを踏まえた制度設計を行う必要がある[13]

 

 

■まとめに代えて

宜野湾市図書館では、2025年12月にすでに2名が辞めているという。そして今回5名が3月末に辞めさせられようとしている。こうした状況は市民サービスの低下にもつながりかねない。その点からも今回の雇い止めは容認されるものではない、と労働組合側は主張している。

そのことに強く賛同した上で、やはりこの事件で何よりも強調されるべきは、合理的な理由が示されぬこうした一方的な雇い止めが、民間の模範とされるべき公務職場で行われることはそもそも許されるのか、という点である[14]

あわせて言えば、会計年度任用職員の多くは女性であり、今回の被解雇者も全員が女性である。会計年度任用職員の雇用を市側が軽んずる背景に、女性は夫など誰かに扶養されていることを前提にした発想がないだろうか。今回の雇い止め・一連の対応は、市が定めた「宜野湾市男女共同参画推進条例」と果たして整合性がとれているだろうか。

 

繰り返しになるが、現行制度の下では、会計年度任用職員には、雇い止めに対する実効性ある救済制度が存在しない[15]。自治体は恣意的な雇い止めさえできてしまうのが現状である。制度の改善が必要である。そのことを踏まえた上で、法制度が未整備であることと、任命権者としての自覚を欠いてよいかということは別問題である。宜野湾市による今回の雇い止めは、社会通念上、果たして許されるのだろうか。

 

 

資料 総務省調査にみる宜野湾市会計年度任用職員

総務省による2025年の調査によれば、第一に、宜野湾市の会計年度任用職員は401人である。但しこの人数は、教育部門などが含まれていない可能性がある(「図書館職員」のほか、「教員・講師」がゼロ人となっている。参考までに、表のとおり、2024年の総務省調査では、同市の会計年度任用職員は683人である)。

表 部門×任用期間・勤務時間数×男女別にみた宜野湾市の会計年度任用職員の人数等

単位:人

部門 職員数計(パートタイム) 任用期間・勤務時間数×男女 (再掲)男女
任用期間が6月以上かつ1週間当たり19時間25分以上 任用期間が6月未満又は1週間当たり19時間25分未満 人数 割合(%)
男性 女性 男性 女性 男性 女性 男性 女性
①一般行政 317 293 45 248 24 7 17 52 265 16.4 83.6
②教育 291 274 41 233 17 5 12 46 245 15.8 84.2
③警察 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0.0 0.0
④消防 3 3 1 2 0 0 0 1 2 33.3 66.7
⑤公営企業 72 71 8 63 1 0 1 8 64 11.1 88.9
合計 683 641 95 546 42 12 30 107 576 15.7 84.3

注:フルタイムの会計年度任用職員はいないため欄は割愛。
出所:2024総務省調査より作成(本文中に記載のとおり、2025総務省調査による人数は誤りと思われる)。

 

以上のことに留意しながら2025年調査の結果をさらに紹介する。

第二に、留保付きの、宜野湾市会計年度任用職員の401人は、いずれもパートタイムで、男女の内訳は、男性が55人(13.7%)、女性が346人(86.3%)である。全国的な動向であるが、女性が多い。

第三に、同市では、再度任用にあたっては、いわゆる3年公募が採用されている。

第四に、同市の会計年度任用職員は全員がパートタイム職員と書いたが、1週間当たりの勤務時間が37時間30分(週5日勤務、1日7時間30分相当)以上の職員[16]が数多く働いているのも同市会計年度任用職員の特徴である。その数は、182人である。そのうち図書館職員が20人で、内訳は、「事務補助」に分類された10人、「司書業務」に分類された10人である。

 

 

[1] 会計年度任用職員制度をめぐる問題の総論として、川村(2026b)を参照。

[2] (1)タイトルのとおり、「会計年度任用職員にも民間並みの雇い止め規制を」と提起する川村(2024b)を参照。(2)民間非正規雇用制度と比べた際の会計年度任用職員制度の問題点は、日本労働弁護団による「非正規公務員制度立法提言」2024年11月8日と、同提言をコンパクトに紹介した城塚(2026)を参照されたい。(3)会計年度任用職員に対する雇い止めがいかに理不尽なものであるかを象徴する事件として、東京都のスクールカウンセラー大量雇い止め事件・裁判があげられる。この事件については、笹山(2026)、原田(2024)を参照。

[3] 首都圏106自治体の公募継続/廃止等の状況をまとめた、なくそう!官製ワーキングプア集会 東京実行委員会(2025)川村(2026a)を参照。

[4] 総務省や厚生労働省との懇談の記録がまとめられた、非正規公務員の雇用安定を考える懇談会(2025)を参照。

[5] 名古屋市非正規保育士に対する雇い止めを扱った川村(2024c)を参照。

[6] 情報を最初に提供いただいたのは2026年2月24日である。その後、3月5日にオンラインで沖縄自治労連から聞き取りを行い、草稿を取りまとめ、電話で追加で質問等を行って本稿を完成させた。

[7] 総務省「令和7(2025)年度 会計年度任用職員制度の施行状況等に関する調査結果」の集計データより。

[8] 2024総務省調査では、市は、会計年度任用職員の「図書館職員」を29人と回答している。

[9] この点について労働組合によれば、過去に市に対して労働組合が申し入れを行った際に、公募は撤廃をしたと市は回答をしていた(のに撤廃をしていなかった)という。

[10] 会計年度任用職員の人事評価制度をめぐるこのような問題は、(1)公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)による2025年調査の結果や、(2)非正規公務員の人事評価を問う院内集会実行委員会(参加団体:非正規公務員voices、NPO法人官製ワーキングプア研究会)主催で2026年3月4日に開催された集会動画記録を参照。

[11] 人事評価制度のあり方については、黒田・小越・榊原(2015)や黒田・小越(2020)を参照。

[12] 正確には、「更新」ではなく「再度任用」。

[13] 雇い止めにまったく機能しなかった人事委員会の事例として、川西(2025)を参照。

[14] 数字の精査が必要であるが、労働組合が過去に行った調査(沖縄県労連等調査)によれば、宜野湾市の会計年度任用職員の2024年3月末の離職者数(自己都合による離職を含む)は114人であった。これがもし確定した離職者数であったとすれば、当時の市の会計年度任用職員全体に占める離職者割合は16.9%となる。宜野湾市は、毎年このような離職者を発生させているのだろうか。川村(2024a)を参照。

[15] 福岡県小郡市で起きた会計年度任用職員の雇い止めに対する裁判判決は、公募機会を侵害するものとして慰謝料が認められた一歩前進の判決であったとはいえ、言い方を変えれば、下記のような内容であっても、期待権は認められないのが現状である。「訴状などによると、女性は2023年1月、担当者から4月以降の業務の説明を受け、任用継続を期待した。だが同2月15日に文書で任用打ち切りを告げられた。判決は期待権を「合理性があっても、法的な利益として保護されない」とする一方、任用継続を期待した職の公募締め切り(2月14日)の翌日に打ち切りを伝えたことを「機会を喪失させた」と指摘した。」「任用打ち切り訴訟:会計年度職員、任用打ち切り訴訟 公募機会の喪失認める 小郡市に5万5000円支払い命令 /福岡」『毎日新聞』2026年2月23日付

[16] フルタイム職員で採用すると退職手当の支給などが必要になることから、その回避のためにパートタイム化が進められている。しかしそれでは仕事がまわらなくなることなどからこうした、フルタイム勤務からわずかばかり短時間勤務の職員がパートタイムとして任用されることになるのだと推測される。「どう守る 仕事 暮らし 非正規地方公務員 進む「パート」化 5万8000人時短 退職金対象外に 「自治体、恣意的に勤務減か」」『東京新聞』朝刊2024年5月9日付

 

 

(参考文献)

 

 

>北海道労働情報NAVI

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