川西玲子「奈良県庁会計年度任用職員の任用拒否問題(2021年)」

川西玲子「奈良県庁会計年度任用職員の任用拒否問題(2021年)」『NAVI』2025年12月4日配信

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■はじめに

※はじめに部分のみ川村雅則(北海学園大学)による執筆

公務非正規問題自治体議員ネット主催の学習会(2025年11月18日)にて、新潟市議会議員・中山均さんによる報告を聞いて、川村雅則は、レポート(「新潟市議会議員・中山均さんの実践報告を聞いて」)をまとめた。市の人事委員会に対して議員から働きかけることによって、労働基準監督権など人事委員会が本来もつ機能を発揮させたという内容である。

レポートにも記載のとおり、筆者はそれまで、会計年度任用職員に関わることで言えば、人事委員会の機能や取り組みをとくに評価していなかった。筆者が不勉強ゆえ、という事情はあるものの、会計年度任用職員の救済に人事委員会が機能したという話は聞いたことがなく、むしろ、機能しなかったという話を聞く機会が多かったからである。川西玲子さん(なくそう!官製ワーキングプア大阪実行委員会NPO法人働き方ASU-NET)が整理した本稿もその一つである。

本稿は、川西さんが以前に作成されていた「レジュメ・資料」(注)を再構成し、必要な加筆修正を行ったものである。タイトルに示される「奈良県庁会計年度任用職員の任用拒否問題」とは、会計年度任用職員として奈良県の保健所で働いてきたAさんの任用拒否をめぐる問題である。

結論から言えば、(1)会計年度任用職員の任用がいかに軽んじられているか、(2)加えて、こうした問題に本来は対応すべき人事委員会がいかに機能しなかったが、この事件からは明らかである。

そのような事例であるが、そのような事実は事実として、きちんと記録され、可視化される必要がある。そうしなければ、人事委員会が機能していないことが認識されないからである。その上で、人事委員会がその機能を全うするよう人事委員会に対して求めていくことが必要である。そのように考え、川西さんにお願いをして、本稿を整理していただいた次第である。次のような手順をとった。

  • 川西さん作成の「レジュメ・資料」を川村が再構成した。
  • 川西さんからヒアリングを行い、結果を加筆した。
  • 下書きを川西さんにご確認いただき、さらに加筆修正を行った。

 

以下は、川西さんによる報告である(川西さんの一人称でまとめている)。

 

(注)2022年1月28日にこの件をテーマにオンライン学習会が開催されている。このときに川西さんが作成したレジュメ・資料を指す。

 

■Aさんの勤務歴等と任用拒否

Aさんの勤務歴等は次のとおりである。

 

  • 勤務先:奈良県中和保健所
  • 勤務歴:
    • フルタイムの日々雇用職員(注)  平成30(2018)年6月~令和2(2020)年3月31日(1年10か月)
    • フルタイム会計年度任用職員 令和2(2020)年4月1日~令和3(2021)年3月31日(1年間)
    • 通算任用期間  2年10か月
  • 業務内容:一般事務
  • 賃金:7,220/日、150,600/月

 

(注)会計年度任用職員制度が導入される直前まで、日々雇用職員という任用形態で職員が任用されていたことも驚きである。

 

Aさんは、2021年2月の時点で、保健所次長の面談により、次年度も再度任用されることが決定された。必要書類一式も渡された。それにも関わらず、再度の面談が行われ、Aさんの次年度の再度任用は撤回された。理由は、「(Aさんが)世帯主でないこと」による。

(1)次年度の任用が面談で決定されたにもかかわらずその決定が撤回されたこと、(2)また、その理由が、「世帯主でないこと」であったことに納得ができなかったAさんは、上司に何度も説明を求めたものの、納得いく理由は示されなかった。「会計年度任職員は世帯主でないといけない」、「世帯主でないから退職してもらう」との説明がなされた。

奈良県のこのような制度(会計年度任用職員制度)に絶望したAさんは、奈良県庁への復職は求めないものの、任用拒否の理由には納得ができず、労働組合や労働基準監督署に相談をしたものの、申し立ては奈良県人事委員会に対して行うよう言われる。

もっとも、非正規公務員(公務員)のそうした救済制度の仕組みなど全く分かっていなかったAさんは、どう対応したらよいか分からず、労働相談のネット検索で、当事者団体である「公務非正規女性全国ネットワーク(通称:はむねっと)」のウェブ調査にたどり着き、同調査への回答を経由して、川西とつながることになる。そして、奈良県人事委員会委員長宛に、支援者である川西との連名で、2021年8月2日に次のことを申し入れるに至った。

 

人事委員会への要請内容(実際の要請書は資料1)。

  1. 「世帯主でない」ことを理由として、納得のいく説明もないまま「再任用拒否」され期待権を裏切られた。明確な理由と人選の正当性の立証を求める。
  2. 何らの説明なく一方的に支給された「退職手当」5万6,026円の条例上の支給根拠の説明と正当な支給を求める。
  3. 「会計年度任用職員」に対して、今後このような理不尽で安易な再任用拒否事態が起こらないように人事委員会として、必要な措置を講ずること。
  4. 人事委員会として会計年度任用職員の苦情申し立てや措置要求、審査請求などの労働基本権制限に対する保護制度の周知徹底と相談窓口の設置を行うこと。

 

項目①は、すでに述べたとおりである。

項目②は、Aさんに支給された退職金の金額で疑義が生じたことに関する照会である。この件は、あらかじめ言えば、(1)退職金に関する条例整備を奈良県が怠っていたこと、また、(2)条例の整備(会計年度任用職員にとって不利益変更となる条例の整備)を奈良県が非民主的な手続きで行っていたことも明らかになる。

要請書を提出後、問題点の指摘とあわせて、面談に応じるよう川西側から繰り返し要請した結果、奈良県人事委員会との面談が2021年9月13日に行われる(以下、第1回面談)。しかし、県からは納得いく回答が得られなかったため、次回面談までにあらためての回答をするよう求めて、第1回面談は終了する。

第2回面談は、面談の候補日を当方から指定するものの、延長の申し入れが県側からある。メールや文書でやり取りを行ったものの、最終的に、2021年10月19日付で、奈良県人事委員会事務局長名で「苦情相談について終了する」という書留文書が送りつけられてきた。

以上がこの事件の概要である。

では、第1回の面談の詳細や、奈良県の退職手当条例をめぐる問題をみていこう。

 

■奈良県人事委員会委員長宛に行った今回の要請の性格

その前に、まずはAさん・川西が奈良県人事委員会委員長宛に行った今回の要請の「性格」を確認する。

人事委員会に対する措置要求や苦情相談を行うには、当事者が職員としての身分を有していることが必要である。申し入れの時点でAさんの退職からすでに4か月が経過していた。また要請書には、Aさんの名前に加えて、支援者である川西の名前を連ねている。原則的な考えに基づけば、人事委員会は今回の要請文を受理して対応をする必要はなかった、ということになる。

では、奈良県人事委員会が今回の要請に対応したのはなぜか。

一つには、当方が、問題を厳しく追及しながら面談を要望したことがあげられるが、加えて、奈良県の側にも、Aさんの雇い止めを非常に乱暴なかたちで行ったこと──上記のとおりAさんは、納得のいく説明を求めたが、結局、納得のいく説明が得られないまま出社したある日に、私物をまとめて持ち帰るように、そして、残りの勤務日は有給休暇を処理して対応をするように、求められ、半ば強制的に職場を追い出されることになる──、退職金というお金に関わることについて何らの説明もなくAさんを雇い止めにしたこと、に対して、自分たちの側にも落ち度、瑕疵があると認識していたことによるのではないか。川西はそのように推測している。こちらが要請したとおり、第1回面談に課長が出席してきたことにも、そのような事情が反映しているのではないかと推測している。

 

■第1回面談(2021年9月13日)の内容

第1回面談は、奈良県人事委員会事務局次長、任用審査課職員、中和保健所課長、Aさん、川西の5人で行われた。

○任用拒否について

要請書の詳しい主旨説明と質問を川西から行い、Aさん本人も、任用拒否の理不尽を訴えた。

それに対して保健所課長は、Aさんの任用拒否はAさんの人事評価が2であったことが理由であると突然に主張をしてきた。次年度の再度任用が撤回されて以降にAさんが行った面談では、「世帯主でないから」といったこと以外、任用拒否の理由は聞かされていない。人事評価の話などは一切なく、ましてや、自身の評価が2であるということも、Aさんは、この席(第1回面談)で初めて知らされることになる。職員に対する通常の評価が3であるところ2の評価が与えられているということは、相当の理由があるはずであって、勤務評価が任用拒否の理由であるというのであれば、その立証責任は、雇用主側にあると川西は考え、人事評価の開示をその場で要求したが、県の側は応じず、「次回部長に許可を得てくる」と回答を避けた。

補足すれば、ここには、会計年度任用職員に対する人事評価(制度)をめぐる問題が示されている。すなわち、人事評価の結果が会計年度任用職員の任用拒否の理由にいとも簡単に使われてしまうこと、人事評価の結果に納得のいく理由が説明されないこと、本人が人事評価に関する情報開示を求めても開示がなされないこと、などである。今後、(公募廃止と並行して)人事評価を濫用したこうした事例は増えてくることが懸念され、適切な対応がなされる制度設計が不可欠である。

○退職金について

「退職金」の要請事項については、第1回面談では回答がされなかった。

次回までに県庁人事課に聴取すると人事委員会事務局から言われたため、川西は、以下の4点を指摘して次回の回答を求めた。

  1. 計算方法と支給額と振込額の差額についての説明、
  2. 「フルタイム臨時に支給」して「フルタイム日々雇用」に支給しない条例上の根拠の説明、また、フルタイム日々雇用として任用している法的根拠
  3. 会計年度任用制度導入以前の勤務期間を在職期間に加算しない理由、
  4. 雇用保険加入時との差額支給についての説明と手続き、

 

人事委員会事務局側は、事務局として県庁人事課に説明を求め、次回に回答すると約束して持ち帰った。

あわせて、面談でのやり取りの中で、今後会計年度職員の労働基準を守るために、苦情申し立てや措置要求などの保護的制度を積極的に周知するために、人事委員会の役割や制度についてのパンフレットを作成中である、相談窓口は現在設置されている、との回答が人事委員会事務局から得られた。

Aさんがまさにそうであったが、会計年度任用職員は、自らの任用や勤務条件で困ったことがあったときにどこに相談をすればよいかなどまったく知らされていない。せめて、当事者に対してそうしたことの周知を図るべきではないかという当方からの追求が実ったものであり、この点は評価をしたい。パンフレットは本稿の資料3に添付した。各自治体でこうしたパンフレットが作成され周知が図られれば、有益ではないだろうか。

以上のとおり、第1回面談は終了したが、第2回面談が行われなかったことは先述のとおりである。

 

■奈良県人事委員会からの、苦情相談処理の終了宣告(2021年10月19日)とその理由

先述のとおり、2021年10月19日付で、奈良県人事委員会事務局長名で「苦情相談について終了する」という書留文書が送られてきた。苦情相談を終了させた理由はいかなるものか。文書に示された理由は、次のとおりである。

 

  1. 人事委員会の立場はあくまでも仲介者で苦情を解決する強制的な権限は与えられていない。
  2. 当事者(県庁人事課)の理解と協力を得て行うもの。
  3. 証人喚問や書類の提出は適用されないものと解される。
  4. 本件については苦情相談の域を超えているので対応を終了する

 

以上が、奈良県人事委員会事務局が苦情相談処理を終了させた理由である。

しかし、川西が調べたところ、奈良県の「職員からの苦情相談に関する規則」(注)には、「苦情相談」であっても、「人事委員会の指揮監督の下に、指導、あっせんその他の必要な措置を行う(第4条)」「人事委員会は、申出人、当該申出人の任命権者その他の関係者に対し、必要に応じて、事情聴取、照会その他の調査〔略〕を行うことができる(第5条)」「職員相談員は、事案ごとにその概要及び処理状況について記録を作成し、人事委員会に報告しなければならない(第6条)」とうたわれている。

つまり、「調査権限」と「あっせん権限」があるにもかかわらず、人事委員会は、それらをきちんと行使しなかったといえる。また、事務局は、人事委員会にはこの件を果たして報告したのであろうか。

以上のことについて質す内容とあわせて、人事委員会としての役割を最後まで果たすよう抗議文を事務局に対して川西はメールで送付したが、回答はなかった。

 

(注)奈良県「職員からの苦情相談に関する規則」は、こちらを参照。

 

■奈良県人事委員会/人事委員会の問題点

以上の経験を踏まえ、人事委員会の問題点を川西は次のとおり整理した。

第一に、自治体で働く非正規職員には、人事委員会の存在は見えていない。ましてや人事委員会の役割や、会計年度任用職員等の代償機関として労働基準監督業務を取り扱っていることなどは、まったく周知されていない。

第二に、人事委員会に対して非正規職員が個人で申し出るにはハードルが非常に高い。支援者がいなければほぼ不可能であると思われた。Aさんの今回の件では、労働組合も労働基準署も役には立たなかった。

第三に、人事委員会委員長宛てに要請書を出したものの、事務局による対応がなされた。今回の要請書はどのような扱いを受けたのか。苦情相談としての扱いを受けたのであれば、上記の「職員からの苦情相談に関する規則」の第4条、第5条、第6条に記載されたような対応が必要と思われるが、そのような対応がなされた痕跡はない。要請書は、人事委員会事務局任用審査課から人事委員会に果たして届いているのか。制度の仕組みと対応組織の関係が不明である。

第四に、人事委員会事務局に何度も催促して面談にこぎつけても、主張の食い違う点については、公平に事実を見極めるための的確な関係者への調査や事情聴取をしてもらえず、公平とは言い難い面談の進行であった。

第五に、人事委員会の人選はどのように決定されるのか。奈良県人事委員会の場合、委員長はパナソニック関連の元社長(当時)である。地方公務員法・地方自治法などに習熟しているのだろうか。ましてや今後は、会計年度任用職員などの非正規職員に関連する問題も取り扱うことになるが、複雑な法と実態の乖離や、民間非正規労働者との「制度格差」(労働契約法、パートタイム・有期雇用労働法の適用除外など)の不当性などについて認識して、労働基準監督の役割発揮をしてもらえるのか、不安・疑問を感じた。

第六に、奈良県の退職手当条例をめぐる問題がある。この点は項を改めて整理する。なお、近年、非正規雇用者の退職金要求がようやく争点化されてきたが、民間のパートタイム・有期雇用労働法における均等・均衡待遇にみる考え方と比較するなど、関係する条例等の再点検が必要である。

第七に、人事委員会がチェック機能を果たせていない。

Aさんの任用拒否問題のほか、退職金に関して奈良県がとってきた特別な条例措置は非正規職員への差別的な意識が根底にあるのではないかと認識せざるを得ない。このようなことこそ人事委員会がチェック機能(条例や規則に対して意見を言う役割)を発揮してほしいのに、その役割が果たせていなかったことは問題である。

 

■奈良県の退職手当をめぐる問題

この点は、文字どおり「驚愕」の内容であった。

すなわち、奈良県の場合、60年も前に総務省から準則として示され、条例化しておくべき規定(退職手当条例2条2/常勤の非正規職員に支給できる規定)が設けられていなかったことが今回の事件で判明した(資料2の【問題1】を参照)。これは全国でもほとんど例を見ない。

また、今回の改定では、総務省マニュアルにも準則にもない、非正規職員に不利益変更をもたらす、奈良県独自の「経過措置(附則3)」が議会での理由の説明もなく追加されている(資料2の【問題2】を参照)。準則にないものを規定するなら、それ相応の理由を説明するべき。

結果としてAさんは、会計年度任用職員以前(フルタイムの日々雇用職員として働いていた1年10か月分)の退職金分を受け取ることができなかったのである。言うまでもなく。Aさん以外にも、会計年度任用職員以前にフルタイムで勤務していた者(しかも、Aさんよりも長期で勤務していた者)は少なくなかったと思われる。彼らも一方的に、何も知らされぬまま、その利益を奪われることになった。

しかも、上記のとおり、奈良県は、民主的な手続きも踏まずに、勤務条件の改悪を条例に定めた。議員の協力も得ながら川西が調べたところによれば、「総務警察委員会」において、「職員の分限に関すること」という題で審議・決定がなされていたことが判明した。そのため、委員会のメンバーであった議員も気がつかなかったおそれがある。

その上に、本稿のテーマに関わることでもあるが、人事委員会は、このような条例改定に対して、「妥当」であると安易に意見を表明しているのである。

 

以上のとおり、本件は、会計年度任用職員の任用がいかに軽んじられているか、加えて、こうした問題に本来は対応すべき人事委員会がいかに機能しなかったが明らかな事件であった。

 

 

資料1 奈良県人事委員会委員長宛の要請書

要 請 書

奈良県人事委員会委員長

松村 二郎 様

2021年8月2日

〇〇 〇〇(前奈良県会計年度任用職員)

川西 玲子(NPO法人働き方ASU-NET・

NPO官製ワーキングプア研究会)

 

 

1.私たちは以下の理由により、奈良県庁福祉医療部地域福祉課における、〇〇〇〇の不当な「再任用拒否」について、現下での調査と今後このような事態が起こらないように必要な措置を講ずることを求めます。また、何らの説明なく一方的に支給された「退職手当」5万6,026円の支給根拠の説明を求めると同時に、奈良県退職金支給条例に基づいた正当な支給を求めます。

 

雇止めの経緯は別紙に詳しくまとめたとおりです。本人と面談の上、事実を正確に把握し、その不当性を認識し、二度とこのような事態が起こらないように必要な措置を講ずることをまず第一に求めます。

 

2.主要な問題点は以下の通りです。

①2021年2月 再任用に関する面談という公式な場で、責任者から任用を継続することを確認し、再任用の書類一式を受け取ったにも関わらず、後日前言を突然破棄し、納得のいく説明もしないまま再任用拒否を行い期待権を裏切ったこと。

 

総務省公務員部公務員課通知(平成30年8月22日付)「会計年度任用職員制度導入等に向けた質疑応答の追加について」(都道府県人事担当課宛て)では「予告なく再度の任用を行わないことは、当該者に多大な影響を及ぼすことが想定されるために、事前に十分な説明を行うこと、他に応募可能な求人を紹介するなど配慮が望ましい」「そのほかにも様々な配慮が考えられるものである」として、今回のような納得できる十分な説明もない、突然の雇止めを厳に慎むように通知を出し指導している。

 

今年は「会計年度任用制度」発足後の初めての再任用手続きの年に当たり、総務省も全国の自治体の動きに注目し、私たちの運動団体(「はむねっと」公務非正規女性全国ネットワーク)も全国の再任用をはじめ実態を把握するべく全国対象のネット調査も行い、先日厚労省記者クラブで記者会見も行い、NHKはじめ各種メディァも高い関心を示したところである。(朝日新聞7月5日/7月18日報道参照)

今回の福祉医療部の突然の「再任用拒否」は、総務省通知にも反する、大変理不尽な経過と言わざるを得ず、到底納得のいくものではない。

 

②再任用拒否の人選の理由を「世帯主でないから」としたこと。

直属の上司からは何度も「会計年度任用職員は世帯主でないといけない」「世帯主でないから退職してもらう」という回答があった。そのような回答の根拠を示すべきである。

もし、そのようなことを決めている「規定」や「申し合わせ」などがあれば、それ自体が大問題といえるが、任用拒否についての基準を定めているものがあれば提示を求める。

 

※日本の公務非正規職員の「間接差別」は国際的にもILOや国連女性差別撤廃委員会からも「雇用形態を装った女性差別である」と指摘されているとおり、まさにジェンダー差別の最たるものである。なぜならば会計年度任用職員は到底生活できない低賃金、不安定な雇用と処遇で「世帯主」としての生活賃金が確保されない実態にある。その劣悪さゆえに公務非正規は圧倒的多数(8割)が女性となっている。実質「世帯主でない」ことを利用して安上がりの雇用をしておきながら、首を切るときは「世帯主でないから」簡単に首が切れると悪用している。このようなことがまかり通ると考えているのであれば、社会的に糾弾されてもしかたがない。「女性活躍」と言いながら、いつまでも女性を雇用の調整弁として利用している大変遅れた実態であり、雇用においても率先垂範たるべき奈良県庁のあきれた事実である。なぜこのような発言になったのか釈明を行い、早急に認識を改めるべきである。

また、本人の納得のいく再任用拒否の理由と、人選の正当性を立証するべきである。

 

③退職金5万6,026円の算出根拠を明らかにしてください。

1)4月21日交付の「退職票」には退職者に支払われた額として6万3,026円と記載しているが、4月26日に銀行に振り込まれた額は5万6,026円である。この差額7,000円について説明を求める。

2)〇〇〇〇の前歴は 臨時職員1年、日々雇用職員1年、会計年度任用職員1年、いずれもフルタイムで勤務している。この3年間をどう認識し、計算したのか説明を求める。

3)国の指導では、「国家公務員に準拠して、フルタイムで18日以上勤務した日が6ケ月以上ある場合は雇用形態に関わらず退職金を支給する」となっている。その基準からいえば、当然この3年間が支給対象となるべきである。

4)また会計年度任用職員は雇用保険に加入できないため、加入していた場合支給される金額との差額については保障するとしている。このことについてもどう考慮し、どう計算されたのか説明を求める。また、今後の失業期間の取り扱いについても説明を求める。

 

3.「会計年度任用職員制度」の問題点がいろいろ指摘される中、総務省の様々な通知、マニュアルが発出されている。 奈良県人事委員会として、これらの通知、マニュアルが現場で適用されているのかを実態把握する責任がある。今後二度とこのような理不尽な再任用拒否などの事態が起こらないように、どのような措置を講ずるのか説明を求める。

また多くの会計年度任用職員が2020年から人事委員会制度の管掌下に入った。これらの非正規職員の労働基準を守るために、貴人事委員会が苦情申し立てや措置要求などの保護的制度を積極的に周知するとともに、相談窓口を創設するよう要請する。

 

以上、文書での回答と早急に面談での説明を求めます。

 

資料2 奈良県職員に対する退職手当に関する条例

 

※問題を2つ(1と2)に分けて、それぞれに解説をつけた

 

【問題1】

2条

2 職員以外の者のうち、職員について定められている勤務時間以上に勤務した日(法令又は条例若しくはこれに基づく人事委員会規則の規定により、勤務を要しないこととされ、又は休暇を与えられた日を含む。)が十八日以上ある月(以下「常勤相当勤務月」という。)が引き続いて十二月を超えるに至つたもので、その超えるに至つた日以後引き続き当該勤務時間により勤務することとされているもの(以下「支給対象非常勤職員」という。)は、職員とみなして、この条例(第四条中十一年以上二十五年未満の期間勤続した者の通勤による傷病による退職及び死亡による退職に係る部分以外の部分並びに第五条中公務上の傷病又は死亡による退職に係る部分並びに二十五年以上勤務した者の通勤による傷病による退職及び死亡による退職に係る部分以外の部分を除く。)の規定を適用する。ただし、地方公務員法第二十二条の二第一項第一号に掲げる者については、この限りでない

「退職金、臨時・非常勤にも支給できる」

1996年5月参議院 地方分権特別委員会 公務員部長答弁

「地方公務員の非常勤につきましても、常勤職員と同じ勤務時間で18日以上ある月が12ケ月以上ならば、退職手当を支給できる。常勤職員とおなし扱いをする。」

 

【解説】昭和28年自治省が準則として出した条例案、全国のほとんどの自治体はこのひな形に沿って、条例化した。しかし奈良県庁はこの2条2がすっぽり抜けていて、令和2年の改定まで60年以上もそのままであった。

 

【問題2】

(施行期日)

1 この条例は、令和二年四月一日から施行する。

(奈良県職員に対する退職手当に関する条例の一部改正に伴う経過措置)

2 第三条の規定による改正後の奈良県職員に対する退職手当に関する条例(以下「新条例」という。)の規定は、この条例の施行の日(以下「施行日」という。)以後に新たに採用される者の退職に係る退職手当について適用し、施行日前に採用された者の退職に係る退職手当については、なお従前の例による。

3 新条例第二条第二項の規定により職員とみなされる者の施行日の前日を含む月以前における勤務した期間は、職員としての引き続いた在職期間に加算しないものとする。

 

【解説】経過措置3 赤字部分。今回の改定では、総務省の準則にも、総務省のマニュアルにもない、大きな不利益変更になる、「会計年度任用職員」以前の勤務した期間を在職期間に加算しない規定を、奈良県独自に入れていた。それならば相当の理由を示すべき。

 

 

資料3 奈良県人事委員会苦情相談制度に関するパンフレット(奈良県人事委員会作成)

 

 

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