神代知花子「国は制度をどう変えようとしているのか──総務省レクチャー(9月1日)で見えてきたこと」

神代知花子「国は制度をどう変えようとしているのか──総務省レクチャー(9月1日)で見えてきたこと」『官製ワーキングプア研究会レポート』第51号(2025年10月号)p.5

 

国は制度をどう変えようとしているのか

総務省レクチャー(9月1日)で見えてきたこと

公務非正規問題自治体議員ネット代表世話人

神代知花子(北海道石狩市議会議員)

 

石破茂政権がなにやら「非正規の常勤化」「経験に見合った給与の改定」を考えているらしいと耳にしたのが、今年の6月。それが一体何を意味するのか想像もつかないまま、私たち公務非正規問題自治体議員ネット(通称議員ネット)は、今年度行う連続学習会のテーマを探していました。「そうだ、今条例改正をしている子育てと仕事の両立支援はどう?」「そうだね。妊娠で辞めなきゃいけない会計年度は多いよね」と何気なく、総務省のHPを調べていると何やら見たことのないマニュアル変更の通知があるではないですか!! それが、令和7年6月25日に発出された「会計年度任用職員の給与の決定」に関する通知だったのです。(総行給第29号)

「会計年度任用職員の給料又は報酬の水準の決定に当たっては、常勤職員と同様に、職務遂行上必要となる知識、技術及び職務経験等の要素を考慮して定めるべきであり、その際、必ずしも上限を設ける必要はないと考える。」

「保育士や看護師等の専門職種について、職務の内容や責任の程度によっては、民間の給与水準等も踏まえ、1級の水準に限る必要はないと考えられる。」

ええええええ!!?? これ突然どういうこと? ついでに「非正規の常勤化」も意味不明だし、これは総務省に直接聞くしかない!となり、議員ネットの旭川市議の江川あやさんが、旭川市選出の国会議員を通じて、オンラインでのレクチャーの機会を設定してくれたのでした。

それが、9月1日に実施した連続学習会の1回目「国は制度をどう変えようとしているのか─総務省担当者に聴く、マニュアル変更の意図」です。当日は総務省自治行政局公務員部公務員課より、これまでの制度改正の経緯、制度導入後の取り組み、制度の施行状況、直近の動向の4項目について、内容たっぷりの資料をもとに1時間の大変分かりやすいレクチャーを受け、その後4名の職員が参加者からの質問に応じてくださいました。

説明を担当された方は、冒頭で川村教授(官製ワーキングプア研究会の理事で、当会では事務局を担ってくださっています)の精力的な研究に触れ、「1時間いっぱい会計年度任用職員制度の説明を求められるのは初めてのことで、全国に66万人いるこの制度について、強い関心が向けられていると認識した」とお話されました。レクチャーの数日前の8月28日には、これまで「制度導入のための事務処理マニュアル」だったものを、「制度の運用のための事務処理マニュアル」と改め、これまでの改正を網羅した新たなマニュアルが全国に向けて発出されており、ひょっとするとこれまでの組合運動に合わせて、自治体議員までもが会計年度任用職員の処遇を問題視しているということが、国の背中を後押したのかもしれない? とじんわりと、国にアクションを起こす意味をかみしめました。

参加された方が様々なことを確認してくださったのですが、私が尋ねたことは2つです。ひとつは、国が言う「非正規の常勤化」とは何か。・・これは「会計年度フルタイム職員」を増やすことではなく、専門的技量を持った非正規人材を「正規職員採用」する道を開いていくことを指しているそうですよ。そして、二つ目。給与水準の見直しについては、これまでほとんどの職で1級または2級の給与表をもとに昇給上限があったために、低報酬で長年勤めている方が多かったわけですが、2級の給与表の範囲の中であれば上限の設定は必要ないという考えでした。そして、その財源措置(地方交付税)も当然考えているとのこと!!

興奮冷めやらぬ状態で、さっそく数日後の石狩市議会9月の一般質問で「会計年度任用職員の給与など処遇改善の考え」について、国のマニュアル変更を取り上げて部局に質問しました。答弁は「総務省が具体的に示さないうちにはなんとも言えないが、示されたのちにはしっかり取り組む」とのこと、多少勇み足ではありましたが、ジャブ打ちくらいにはなったかな? と思っております。

私たち公務非正規問題自治体議員ネットでは、公務サービスに従事する非正規労働者の働き方、処遇について少しでも改善を促していくために、議会活動の取り組みノウハウを共有しながら、全国各地の議会で取り組む議員を一人でも増やしたいという思いで活動をしております。自治体議員は会員、それ以外の関心のある市民の方はサポーター登録できます。ぜひ、共に取り組みを進めませんか? ご連絡ください。hiseikinet@gmail.com

 

 

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