別記事でお伝えしたとおり、金融・労働研究ネットワーク主催で、「働き甲斐ある職場をどう実現するか──ジェンダーの視点を基軸に」をテーマとする研究会が都内で2024年6月30日に開催されました。研究会では、今年出版された駒川智子・金井郁編著(2024)『キャリアに活かす雇用関係論』世界思想社がテキストに使われました。金融労連さわやか信金従組委員長である倉澤友輔さんの、研究会での報告をご紹介します。どうぞお読みください。
育児短時間勤務制度拡充の取り組みについて
金融労連さわやか信金従組委員長 倉澤友輔
組合活動活性化に女性組合員参加が不可欠
さわやか信金従組委員長の倉澤です。従組書記局でも3名がZOOM参加させていただいています。さわやか信用金庫従業員組合の紹介をさせていただきます。組合員は今700人くらい、金庫の支部数は59支部で従組の中央執行部は13名の体制です。今回育児短時間勤務制度について報告させていただきます。さわやか信用金庫は昔3つの信用金庫が合併しています。3つの信用金庫にそれぞれ労働組合があって、経営者に労働者の要求をしっかり主張する労働組合もあれば、経営との協調路線を重視する組合もありと色々なカラーがあったそうですが最終的には3つの労働組合も統合し現在のさわやか信用金庫従業員組合になっています。
労働組合の発展的な存続を考えた時に、労働組合の運動をどう引き継いでいくかが当従組の課題となりました。その中で考えたのは労働組合活動への参加が男性の比率が高いのはどうしてかということを追求し改善させることでした。短期的な目線で見れば、ユニオンショップである当従組の労働組合の活動を引き継がせるには次期幹部をどう育てるかに焦点がいきがちです。現在の私は今支店で課長で、昇格すると非組合員です。そうなると非組合員となることを視野に入れて、組合をまとめるという大事な役割を後継に託すべく、次期幹部をどう育てていくかを考えて幹部育成を第一に力を注いだ時期もありました。そんな中で、私は人事部とぶつかって「私はもう上に上がらない。もう組合一筋だ」と思う出来事がありました。
組合の幹部として長くいることを前提に長い目で組合運動を見ると、短期的な目線も大事ですが本当に長く組合員でいてくれる女性組合員を組合運動の中心にして、男性中心の組合役員の中で、将来的に対等に女性組合員もその役割を担ってくれることが当従組の発展に繋がると考え、女性組合員の働き方を考えました。そして、従業員組合の総会で何でもいいから言ってほしいと訴えたところ、女性組合員から手書きで何枚にも亘る訴えが来たのです。今、子供をおんぶしながらこれを書いていますという切実な訴えで育児短時間勤務制度の充実を訴えていました。
女性組合員から切実な訴え 「このままでは働き続けられません」
さわやか信金では、3歳まで2時間短縮(5時間20分の就労)する育児短時間勤務制度だったのですが、育児短時間勤務が3歳まででは働き続けることができないという訴えでした。そういう切実な訴えを受けて、その組合員といろいろなやり取りをして、育児短時間勤務制度拡充を目指し、アンケートに取り組み署名にも取り組むなどしました。
その取り組みの中で、私たち男性の役員と女性の気持ちのすれ違いが大きいこともわかりました。そのすり合わせに時間を要して私自身考えさせられたといいますか、勉強させられました。
さわやか信金では8時40分から17時まで7時間20分の就業時間です。それを2時間短縮で5時間20分、その時間短縮が3歳まででした。これを3歳から延長してほしいと人事部と交渉しました。
しかし、さわやか信金の職場の現実ではここ6年間で1200人いた職員が大幅に減らされていて今は900人です。2時間短縮して本当に仕事を回していけるのかが問題になりました。これに対して、交渉の中で他金庫の事例としてアンケートの声であげられた『他では2時間と言わないまでも例えば1時間で対応している』という内容に着目して1時間短縮にするのはどうかという方向性が出ました。私は個人的にはこれでも前進だから組合員の納得を得られると思い再度アンケートを実施しました。
しかし、組合員からの回答は非常に辛辣な意見もありました。執行部と女性組合員の思い・要求とのすり合わせを本当にやっていかなければならないと思いました。組合執行部の中もそうなんですけれど、女性組合員と対話をしました。その中で交渉の経過も全て説明した中で、とりあえず1時間の短縮で1日でも早く実現していこうとの了解を得て進めました。
何とか当該の女性組合員と方向性を揃えても色々な利害が絡むのが組合運動です。組合の会議でも悪気はなくても組合員から、例えば時間短縮で職場に遅く来ることになる、とその人が出てくるまでは、2人で職場をまわしていかなければならないという発言が出てきたりします。育児時間短縮勤務を拡充しようと取り組んでいるときにそういう発言が出てくると寂しいですが、時間短縮が必要な職員を支えていこうとする気持ちが必要だと議論しました。
育児中の組合員を仲間が支えよう
制度として時間短縮する枠組みを作っていくときに、職場の理解が必要になります。職場の理解がなければ、本当に女性の働きやすい職場ができない。育児をしている仲間を本気で応援するのだという職場の声を作っていかないと、制度を堂々と利用できないし育児短時間勤務制度の本当の運用はできないと思い会議や組合情宣でも中央執行部のメッセージとして発信し続けました。
いろいろと動いていく中で、機関誌の「金融労連」の原稿の話を中島委員長からいただき書かせていただきました。お話しいただいてから、1週間で仕上げ、制度を求める組合員の声も紹介しました。最終的にはアンケートのとりくみ、署名のとりくみ、組合ニュースや会議の発信、労使間での交渉、金融労連の寄稿と多くのとりくみをしてやっと実現まで漕ぎつけたというのが今回の育児時短勤務拡充のとりくみでした。
その中で思ったのは、理想とする形は本当に実現するのが難しい。組合運動をやっていると常にそうなんですけれど、なかなか要求が前進しない中でどう変えていくか。今回もいろいろと団体交渉もやってますし、制度を変えていく、企業を変える、職場を変えることの難しさを本当に感じた半年間でした。
そういった経験をもとに、今回一緒にやってきた組合員、組合に少し協力的な部分も含めて、少しずつさわやか信金従組という労働組合の大切さ、存在感を職場に示していきたいと考えています。(関連レポート 「キャリアに活かす雇用関係論」に寄せて①.pdf (leaf-line.jp))
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