川村雅則「図書館職場の雇用にみる不条理(2011年)」

勤務校である北海学園大学の『図書館だより』第33巻第3号(2011年10月27日号)に掲載した原稿です。

なお、(1)図(「雇用形態別にみた大学図書館職員数の推移等」)は、冒頭に配置しました。(2)図のデータは、日本図書館協会のウェブサイトからダウンロードして、2022年の値まで追加しました。(3)「職員」の定義を調査の「記入要領」から転載するなど、図の注は更新しました。どうぞお読みください。

 

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図 雇用形態別にみた大学図書館職員数の推移等

注1:職員数は、当年5 月1 日現在。
注2:職員の種類は以下のとおり。
(1)専任:雇用形態において、正規の職員として雇用されている者をいう。
A専従職員:職務において、図書館業務に専従しているもので、現員数を記入する。
B兼務職員:専任職員で図書館以外の職務を兼ねている者をいう。
(2)非専任:図書館の正規の職員以外のものをいい、短期間雇用も含める。年間実働時間の合計を 1500 時間で除したものを1人と換算。実人数ではない。小数点第2位を四捨五入。
C非常勤職員:健康保険、失業保険、厚生年金等の措置があり、雇用契約は1年毎でも、経常的に雇用されているもの。嘱託はここに含める。
D臨時職員:主として、パート・アルバイトを指す。経常的な雇用関係にあるものも含む。
(3)派遣職員等:委託契約、派遣契約に基づいて図書館に配置され業務を行う職員数を、(2)非専任と同様に算出して記入する(清掃、設備管理、警備が主である者は除く)。上記「(1)専任」「(2)非専任」と重複しない。
注3:2006年から「派遣職員等」のデータが公表されている(カウントは2003年から開始されている)。
注4:専任職員割合は、全体に占める専任職員(専従職員、兼務職員)の割合。非正規職員割合は、全体に占める非正規職員(非常勤職員、臨時職員、派遣職員等)の割合。注2にも記載のとおり、非正規職員は実人数ではないことに注意。

出所:日本図書館協会『日本の図書館』各年版より作成。

 

 

ここ数年、非正規雇用をめぐる問題の調査研究活動に力を入れている。

非正規労働者からよく聞かれる不満や怨嗟の声を整理すると、(1)仕事は恒常的に存在するにもかかわらず、期間を定められて雇用され、更新時期が近づくといつも不安など、雇用に関する問題群、(2)かつては正規雇用が行っていた業務を担うなど仕事内容の高度化の一方で、ワーキングプアという言葉が象徴するような賃金水準の低さで、しかも長期の勤続にもかかわらず、昇給や退職金等はないなど、処遇に関する問題群、(3)労働契約・労使関係がまるでないかのごとく労働条件を一方的に変更されたり、正規雇用で組織される職場の労働組合もそのことを「我関せず」と見てみぬふりをする、関係性に関する問題群、となるだろうか。

順に、仕事の恒常性と有期雇用の矛盾(ある研究者はそれを「偽装有期労働(雇用)」と表現するが言い得て妙である)/均衡・均等待遇をめぐる問題、処遇の不公正/労使・職場関係からの排除とまとめておこう。

場違いに思われるかもしれないこんな話題をここに書いているのは、図書館職場もまた、数多くの非正規労働者に支えられているからだ。利用者にはそのことはわからないだろう。他の職場と同様に、非正規雇用の基幹労働力化が進む中で、彼らもまた、補助的・臨時的な業務に従事しているわけではないからだ(図書館司書の資格をもって働くものが多数である)。

自治体職場でひろがる非正規雇用の実態を調べた労働組合[1]によれば、図書館職場では62.7%が臨時・非常勤職員だという。拡大しているとはいえ約3割である自治体職場全体の非正規割合と比べても、その値は突出している。いや、図書館に限らず、公民館、保育園など出先機関で非正規化は顕著である。それらの職場の特徴は女性が多いことだ。図書館職場の非正規も、91.9%が女性だという。わが国の女性の社会的な位置づけをこの数値は物語る。

では彼らの処遇はどうか。2009年に労働組合と共同で実施した非正規労働者調査[2]の結果から、図書館職員の結果を抽出すると、例えば年収(税込み)は、200万円未満が58.9%、250万円まで範囲を広げると全体の88.4%がそこにおさまる。

「自分だけの収入では生活できない」、「仕事は専門的で、業務量も多く、正職員と同じだけの時間を働く日もあるのに残業代は出ない」、「非正規で諸手当もないのに業務面では正職員と同じ1人と数えられ理不尽」、「とにかく身分が不安定」「非正規で図書館を運営している割に賃金が安い」等々、寄せられた声をあげればきりがない。

ところで、図書館職場のこうした非正規化は、大学図書館も同様である。日本図書館協会[3]によれば、非常勤・臨時職員に派遣職員等を足し合わせた人数は、専従職員の人数を上回る(図)。

「教育、文化、情報の活力であり、男女の心の中に平和と精神的な幸福を育成するための必須の機関である」(ユネスコ公共図書館宣言1994年)という公共図書館の位置づけと、そこで働く人々のおかれた状況との乖離は、あまりに著しい。

 

 

[1] 全日本自治団体労働組合『臨時・非常勤等職員の実態調査報告(完全版)』2009年

[2] 『北海道非正規労働者白書2009』日本労働組合総連合会北海道連合会、2009年。

[3] 同協会で発行されている雑誌『現代の図書館』の「特集:図書館ワーキングプア(vol.49 No.1)」がこの問題を取り上げているので参照されたい。

 

 

 

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